Virgil Abloh
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クリエイティブ ディレクター・Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) インタビュー

Virgil Abloh

Portraits/

建築家、グラフィックデザイナー、DJ、クリエイティブ・ディレクター、そしてかの Kanye West (カニエ・ウェスト) のメンター。Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) という人物を紹介しようとした時、その肩書きは一つや二つではない。今や日本でも珍しく無くなったスラッシー (複数の肩書きをスラッシュで持つことから) というジャンルを確立したこの男は、同時にファッションの世界においてOFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH (オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー) という自身のブランドの名とともに、ラグジュアリーストリートスタイルを世界中に広めたパイオニアだ。誰もが彼になりたがっている、と評したのはアメリカ版『GQ (ジーキュー)』。しかし例えいくつもの肩書きを並べようと、そう簡単に彼のようにはなれまい。いやむしろ彼に会うことすら難しいだろう。何故かといえば、彼は今も新しいプロジェクトの打ち合わせのため上空にいるのだから。

クリエイティブ ディレクター・Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) インタビュー

Editor – Shunsuke Okabe

 

建築家、グラフィックデザイナー、DJ、クリエイティブ・ディレクター、そしてかの Kanye West (カニエ・ウェスト) のメンター。Virgil Abloh (ヴァージル・アブロー) という人物を紹介しようとした時、その肩書きは一つや二つではない。今や日本でも珍しく無くなったスラッシー (複数の肩書きをスラッシュで持つことから) というジャンルを確立したこの男は、同時にファッションの世界においてOFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH (オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー) という自身のブランドの名とともに、ラグジュアリーストリートスタイルを世界中に広めたパイオニアだ。誰もが彼になりたがっている、と評したのはアメリカ版『GQ (ジーキュー)』。しかし例えいくつもの肩書きを並べようと、そう簡単に彼のようにはなれまい。いやむしろ彼に会うことすら難しいだろう。何故かといえば、彼は今も新しいプロジェクトの打ち合わせのため上空にいるのだから。

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先日発表された、2016年春夏ウィメンズウェアコレクションを見て驚きました。ロゴも、シグネチャーのストライプも一切無い、ミニマルなアプローチはどのようにして生まれたのでしょう?

これまで僕のブランドでは分かりやすいスタイルを全面に打ち出してきた。デニムやロゴ、グラフィックのプリントなんかがそれだね。ソーシャルメディアでストリートスタイルがシェアされる時代だから、象徴的なモチーフはブランドの認知度を高める大きな役割を果たしていた。

2012年にブランドを始めたから、今年で3年目。そろそろ新たなステージへ挑戦しようと思っていた。ファッションは常に移り変わるものだからね。今まで提案してきたラグジュアリー・ストリートウェアというコンセプトを、これまで以上に洗練されたワードローブへと昇華させたのが今回のコレクションなんだ。

これまでのコレクションでも、ブラック&ホワイトを基調にしたシックなストリートウェアを発表してきましたが、今回はよりディティールに焦点を置いたルックが多く登場しました

これまでのブランドのアイデンティティは継続しながら、グラフィックプリントの代わりに今回取り入れたのは、プリーツや異素材で切り替えたディティール。OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH というブランドの世界観をベースに、より格式高いオケージョンにも適合する、新たなワードローブを提供したかったんだ。

中でもデニムとオーガンザを切り替えたルックが印象的でした

今まで見たことのない OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH のクリエイションを見せたかったんだ。脱構築的な世界観の中に洗練された現代的なアプローチを織り交ぜた人物像が今回のテーマだね。

 

これまで拠点にしていたミラノから、今回パリでのコレクション発表に至った経緯を教えてもらえますか?

ミラノを選んだのはシンプルな理由さ。繊維産業が盛んで、工場のクオリティが最高だから。今回初めてランウェイショーを開催するにあたり、発表の場にパリが最適だと感じたんだ。とはいえ、ブランドのイメージが変わったとは考えて欲しくない。実際には、レベルアップしたって感じかな。

 

ショーでは一風変わった演出が取り入れられたとのこと

ブランドにとって初めてのランウェイだったこともあって、ショーにはたくさんのオーディエンスが駆けつけてくれた。通常通りのランウェイショーでも良かったけど、どうせなら来た人に面白いと思ってもらいたい。一週間のうちに何十ものブランドがショーを行うファッションウィーク。他のブランドと同じようなランウェイスタイルを真似しても何も印象は残らないと思ったんだ。映像を見てもらうと分かるんだけど、フロンロトーに座ってる男性がいるだろ?一見するとどこかの媒体のエディターにしか見えないけど、彼が突然ショーの最中に立ち上がってモデルの来ているビニール素材のコートにスプレーを吹きかけるんだ。もちろん、演出だけどね。ショーに来た人にしか分からない、ライブならではの臨場感と、その緊迫感が生み出すシナジーをコレクションに取り入れたかったんだ。

観客に扮したモブがスプレーでモデルにペイントするパフォーマンスは、Alexander McQueen (アレキサンダー・マックイーン) 1999年春夏コレクションを彷彿とさせる。

観客に扮したモブがスプレーでモデルにペイントするパフォーマンスは、Alexander McQueen (アレキサンダー・マックイーン) 1999年春夏コレクションを彷彿とさせる。

近年ヨーロッパの多くのデザイナーがメンズとウィメンズをクロスオーバーさせる傾向が見られますが、敢えて別々にコレクションを発表しているのは何故でしょう?

最近よく見るよね、ウィメンズコレクションに突然メンズが登場したり、これ見よがしに「ジェンダーフリューイッド」と銘打ったり。じゃあ何故僕がメンズとウィメンズで別のコレクションを作っているかって?ファッションウィークにメンズとウィメンズがあるからさ。OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH が打ち出すモダンストリートウェアには、もともとジェンダーの境目なんて無い。実際ブランドのファンたちは、メンズ、ウィメンズ問わず僕のコレクションを取り入れてくれてる。あとは、メンズとウィメンズで異なるコンセプトに基づいていることも少なく無い。そういった意味では、メンズとウィメンズの違いというより、打ち出している世界観の違いとして捉えてくれれば分かりやすいんじゃないかな。

 

男女着るものは同じ、ではジェンダーの差異はどこに生ずるのでしょう?

身も蓋もないように聞こえるけど、今の若い子たちにとってジェンダーの差なんて大きな意味を持た無いんじゃないかな。あくまで個人が尊重される時代だからね。ある人が男らしいと感じるアティテュードと、周りからみたいわゆる男らしさは必ずしも一致しない。

 

今やストリートの一大勢力として影響力を及ぼしていますが、そのルーツは建築学に基づいているとのこと

3Dでクリエイションを捉えるという習慣は今やクリエイティブディレクションからデザイン、DJに至るまで全てに共通している。そのものの造形だけでなく、都市景観やそこに住む人のライフスタイルをも反映させて完成する建築を学んだことは、アートに対する造詣を深めるいいきっかけだったね。

 

スラッシーという言葉に代表されるように、実に幅広いフィールドで活躍されていますが、クリエイティブ・ディレクター、デザイナー、DJ、建築家、それぞれどのように時間の配分をしているのでしょう?

全て同時進行だよ。それが僕にとって一番楽なんだ。クリエイティブ・ディレクターという肩書きは、ともすれば胡散臭く聞こえがちだろ。一つの仕事に従事することを嫌う、未成熟な社会を体現する職業。僕の場合で言えば、あまりに色んなことに興味があって、それを全て同時に取り込んでアウトプットしていくうちに、クリエイティブ・ディレクターという肩書きがしっくりきたんだ。全ては自然発生的なものなんだ。

HP: off—white.com