“反モード” を掲げたファッション界の異端児 Martin Margiela (マルタン・マルジェラ) と “私たち” の物語『We Margiela マルジェラと私たち』が公開中

今年観るべきドキュメンタリー映画といっても過言ではない『We Margiela マルジェラと私たち』が現在公開中だ。

言わずもがな、表舞台から姿を消してから10年という月日の経つ今でも熱烈な信奉者があとを絶たない Martin Margiela (マルタン・マルジェラ)。アントワープ王立芸術学院で Dries Van Noten (ドリス・ヴァン・ノッテン) ら “アントワープの6人” に先んじて早くから注目を集め、Jean-Paul GAULTIER (ジャン＝ポール・ゴルチエ) に3年間師事したのち、1988年に自身のブランド「Maison Martin Margiela (メゾン マルタン マルジェラ)」を Jenny Meirens (ジェニー・メイレンス) と共同で創設、翌年にはコレクションを発表した。“反モード”を掲げた彼のファーストコレクションは、当時主流だったゆったりとしたシルエットがタイトへと転換する契機となった作品群としてその場に居合わせた人々の脳裏に強く焼きついたという。その後、軍服やユーズドジーンズをリメイクした“ポペリズム (貧困者風)” や、レコードや靴下などいわゆる “ファブリック” ではない素材を利用するなど、探究心とユニークな世界観に満ちた作品を次々と発表し、ファッション界を揺るがせた。また、コレクションとは豪華な会場で最新のデザインを発表する場という慣習を破り、町はずれの空き地で近隣住民を招いて開催したり、過去のデザインを再構築するなど、高級志向に背を向けた唯一無二の “デストロイコレクション” に、刺激を求めるファッショニスタたちは熱狂した。

©︎2017 mint film office / AVROTROS

挑発的でコンセプチュアルな作品群を発表した Martin Margiela とはどんな人物だったのか。初のドキュメンタリーとなる本作では、彼と共に一時代を築いた共同創設者の Jenny Meirens やクリエイティブチームの “私たち” の証言をもとに激動の20年間と、謎に包まれたままファッション業界を去った異端児についての今まで語られることのなかった真実に迫っている。公にされた写真は存在せず、インタビューは書面のみで行い、「I＝私」ではなく「We=私たち」で答えた Martin Margiela。オランダ出身のドキュメンタリー作家、Menna Laura Meijer (メンナ・ラウラ・メイール) が、“私たち” が封印してきたモードの舞台裏と狂乱の歴史に鋭く食い込み、数々の貴重なアーカイブと証言を掘り起こすことで浮き彫りになったのは、傷ついた天才と空中分解していくチームの葛藤の日々だった。“私たち” がタグの代わりにした白い布に込めた意味とは？ここでしか知ることのできない貴重なドキュメンタリーに仕上がっているので、ぜひ劇場で観てみてほしい。

©︎2017 mint film office / AVROTROS

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