アイスランド新鋭の Benedikt Erlingsson (ベネディクト・エルリングソン) の最新作『たちあがる女』が公開

長編デビュー作『馬々と人間たち』(2014) で鮮烈なデビューを飾り、世界中で20以上もの映画賞を獲得したアイスランド新鋭の Benedikt Erlingsson (ベネディクト・エルリングソン) の最新作『たちあがる女』が公開した。

本年度のカンヌ国際映画祭・批評家週間の優秀な脚本に贈られる劇作曲家協会賞受賞を皮切りに、劇中で一人二役を演じた主演女優 Halldora Geirharosdottir (ハルドラ・ゲイルハルズデッティル) が二つの映画祭で最優秀女優賞を受賞したほか、2019年アカデミー®︎アイスランド代表作品に選出されるなど多くの映画祭を席巻している本作。特に高い評価を得ているのは、合唱団講師と環境活動家という2つの顔を持つ主人公ハットラのキャラクター性だ。自然と音楽を愛し、すべての生物にとって幸せな未来を守るためには政府と戦うことも厭わない、強く自由な女性像はまさにアイスランドの女性たちが歩んできた歴史を体現している。そして彼女の果敢な行動を見守り、フォローしてくれる個性豊かで慈しみに溢れたキャラクターたちもまた男女平等度で十年連続一位を保っているアイスランドの土壌を反映していると言えるだろう。

また、劇中で彼女の心情の変化とともに流れる音楽の演奏者がスクリーンに現れるというユニークな手法にも注目してほしい。物語の節々で登場するブラスバンドと合唱隊は、この物語がファンタジーであるということを観客に繰り返しリマインドする役割を果たしている。張り詰めたシーンへと切り替わり、しばらくしてカメラが彼らを捉える。可笑しいのは、他の登場人物にもきちんと彼らが見えているということ。しかも、よくあるミュージカル映画のように当たり前に同調するのでなく、「なんなんだ？」という観客と同じ目線でコミカルな反応をさせることで、観客の緊張をやさしく解いてくれる。

©︎2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

Jodie Foster (ジョディ・フォスター) 監督・主演でハリウッドリメイクも決定している本作。作品の魅力について Jodie Foster は「この映画は私に言葉では言い表せれない興奮を与えてくれました。ハットラを演じるのが待ちきれません。私はユーモアと情緒を大胆に、そして奇抜に融合させたこの作品に引き込まれ続けています。これは私たちの時代を代弁する作品なのです。」とコメントを寄せている。美しく広大な自然と音楽、そして「自分らしく生きる一人の女性」を通して、人間の強さと優しさ、そして寛容さを謳いあげ、生きていく中で一番大切なものはなにかを教えてくれる本作をぜひとも劇場でご覧いただきたい。

＜あらすじ＞
風光明媚なアイスランドの田舎町。セミプロ合唱団の講師ハットラには、謎の環境活動家「山女」というもう1つの顔があり、地元のアルミニウム工場に対して孤独な闘いを繰り広げていた。そんな彼女のもとに、長年の願いであった養子を迎える申請がついに受け入れられたとの知らせが届く。ハットラは母親になる夢を実現させるため、アルミニウム工場との決着をつけようと最終決戦の準備に取り掛かるが……。

©︎2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

Next

Prev

1/10