Interview with Tomoo Gokita

PORTRAITS | Apr 27, 2018 2:00 PM
個展を開けば、瞬く間に作品が完売する画家・五木田智央。イラストレーターやグラフィックデザイナーとしての経歴を忘れさせるほど、現代アート界はいま、五木田の作品に熱狂している。そのミニマルながらユーモアが見え隠れするモノクロームの世界は、ファッションデザイナーやミュージシャンにもファンが多い。4年ぶりとなる美術館での個展「PEEKABOO」。会場の東京オペラシティ アートギャラリーで話を訊いた。
Photo by UTSUMI | © Tomoo Gokita, courtesy of Taka Ishii Gallery

Photo by UTSUMI | © Tomoo Gokita, courtesy of Taka Ishii Gallery

個展を開けば、瞬く間に作品が完売する画家・五木田智央。イラストレーターやグラフィックデザイナーとしての経歴を忘れさせるほど、現代アート界はいま、五木田の作品に熱狂している。そのミニマルながらユーモアが見え隠れするモノクロームの世界は、ファッションデザイナーやミュージシャンにもファンが多い。4年ぶりとなる美術館での個展「PEEKABOO」。会場の東京オペラシティ アートギャラリーで話を訊いた。

—2014年に千葉のDIC川村記念美術館で開催された個展「THE GREAT CIRCUS」から、約4年ぶりとなる展覧会ですよね。どれくらい前から準備されていたのですか?

オファーがあったのは去年ですね。ニューヨークのメアリー・ブーン・ギャラリーでの個展が2017年11月にあって、正式に決まったのはその後くらいでしょうか。ついこの間ですよ。4月にキュレーターの堀さんにお会いしたのですが、石井さん(五木田の作品を扱うタカ・イシイギャラリーのオーナー)から夏くらいに「都内の美術館で個展をやりたいんだけど」って言われて、「いいっすね〜」なんて軽く返事をしたら、あっという間に決まって。しかも、今年の1月に香港で個展を開催するって話も来たんです。オペラシティもあるのに無理じゃないのって思ったんだけど、石井さんに「香港で展示した作品を持って来ればいいよ」なんて言われてね。オレも流されるまま「なるほど〜」なんつって(笑)。気づけば休む暇もなく、ずっと描いていました。

—もっと前から準備されていたのかと思いました。半数以上が新作ですよね?

新作は16点のキャンバス作品と40点の額装した《Easy Mambo》シリーズです。実質、製作期間は1ヶ月半くらいかな。毎回やばいぞってなるんだけど、なんとか完成するんだよね。

—前半の旧作を含め、五木田さんはこんなに巨大な作品を作られていたのだと、改めて驚きました。

最初の部屋の作品は、海外で展示して既にコレクターに渡っていたものばかりだからね。生で見たことのある人ってすごく少ないと思います。なかなか国内でお披露目できる機会がなくって、今回の展覧会のおかげで借りられたんですよ。

—確かに、コレクターをみると、ZOZOTOWN の前澤友作さんに、アーティストの KAWS、ミュージシャンのテイ・トウワさんといったそうそうたる顔ぶれですよね。

とにかく空間の大きい美術館で個展を開くなら、旧作がどれだけ借りられるかが勝負だなと思っていて。実は、DIC川村記念美術館では、かなり苦労したんです。でも、今回は希望した作品すべてに貸出しOKがでて、これはイケるなと。ちなみに、香港で展示したものは2点《Holiday Flight》《Please Be Kind》だけ持ってきました。ほかにも色々借りられそうだったのですが、自分なりの展示に向けたハードルがあって、そこをクリアしたのがこの2点だったんです。

—では今回は、かなり五木田さんのディレクションが入った展覧会ということですね。

そう、やりたい放題でしたよ。レコードのアルバムジャケットの作品《Gokita Records》は絶対NGがでるだろうって思っていたんだけど、すんなりいいよって。裏テーマは「美術館を中古レコード屋にしてやる」だから(笑)。2002年から16年間、いまも作っているシリーズで、一度、高円寺の『LOS APSON?』というレコード屋さんで展覧会をやったんですけど、ついに美術館にまとめて展示したという。痛快ですね。

—なるほど、五木田さんなりのホワイトキューブに対するアンチテーゼ的な?

いや、照れですね(笑)。100パーセント格好つけたことってできなくて。なにかしらギャグを混ぜたいんです。で、最後に落とそうと。

Photo by UTSUMI | © Tomoo Gokita, courtesy of Taka Ishii Gallery

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—タイトルの「PEEKABOO」は “いないいないばあ”という意味ですが、何か仕掛けがあるのでしょうか?

ないですよ、本当に意味なんてない。こういう展覧会って、先にタイトルを決めなきゃいけないんですよ。1枚も描いて無いのにさ、無理でしょう(笑)。それで、気になる単語をバーっと120個くらい書きだして、抽象的な、なるべく意味をもたない言葉を選びました。それだけです。

—わざわざ意味を探ろうとするなんて野暮な質問だとは思っているのですが、どうしても知りたいんですよね。絵画を観れば言葉なんて必要ない。とはいえ、カタログに収録されているキュレーターの堀さんのテキストにはゲルハルト・リヒターのモノクローム作品《グレイ・ペインティング》との比較について語られています。モノクロームへのこだわりは、より強くなっているのでしょうか?

モノクロだけでいきますと言っているわけではないんですよ。展覧会が立て続けに決まっていて、新しい実験が追い付いていないだけ。9月にはロサンゼルスでの個展もあるんでね。だから実験するよりも、いまのスタイルを極めている段階です。とはいえ、新たな発見もあって。昔は、看板絵のようなチープでツルッとしたタッチをあえてやっていたのですが、最近は止めていて。わりと筆跡が残るようにしているんです。

—確かに後半の新作は、ぽってりと絵の具がのった部分がある一方、キャンバスが透けるほど薄塗りの部分があったりと、絵画を生で観る楽しさを教えてくれます。

どうしてもオレの癖で、きれいに仕上げすぎちゃうんですよ。ついつい描き込んじゃうのを、寸止めして、あえてマチエールを残すのがいまは気持ちよくって。そこに快楽がグッとくる。モノクロの作品が続いているけど、実は細かい変化がいっぱい起きているんです。あと、使う筆も総取っ替えしたんですよ。昔使っていた豚毛の筆がたまたま出てきて、使ってみたら「あ!コレだ!」って。すぐに今まで使っていた筆をやめて、新しく買い揃えました。

—それは新たな色を使うのと同じくらいの大きな変化では?

そう、描き方も変わっちゃったからね。筆跡を残すのも、豚毛のほうが合っていて。安い筆なんですけどね。あとは、去年のメアリー・ブーン・ギャラリーの個展で《FAKE CEZANNE》シリーズというのをやったんです。「オレ空っぽになっちゃったな」「描くモノがないな……」って絵画に行き詰まった時に、たまたまセザンヌの画集があってパラパラ観ていたんです。「なんで林檎なんか描いてるんだろ」と思い、ふと真似してみたらすごく面白かった。最初は単に模写をしていただけなんですけど、段々、見なくてもセザンヌ的な絵が描けるようになってしまい……(笑)。メアリーは絶対嫌がりそうだなって思ったんですけど、出したら意外と評判よかったんだよね。

—アートの文脈を再解釈したというか、すごくコンセプチュアルな作品に捉えられたのでしょうか。

どうかな。いい深読みをされちゃった感じはあるね。でももうやらない。そういう手法で作品を作る人はいっぱいいるじゃない。単純に行き詰まっていただけだから(笑)。つたない英語で説明したから、伝わっていたかわからないけれど。

—五木田さんの経歴は異色で、イラストレーターからスタートしていますが、いまや完全に現代アートのマーケットの中に入っていますよね。サブカルチャーをモチーフにすると批判されたりすることもありますが、現代アートの場での感触はどうですか?

未だに言われますよ「お前の作品はイラストじゃん」て。「うるせーな」って思うけど、言わせておけばいい。海外にでたら全く関係ないから。逆にグラフィックデザインをやっていたってことにビックリされるくらい。日本は勝手に上下関係に置き換えて考えて、イラストレーターを軽くみるんだよね。それにもムカつくしさ。イラストレーターがどれだけ大変な仕事かわかってねーなって。でも今は、画家としか言いようがない。自分は“画家”なんだってね。芸術家とかアーティストとも言いたくないんだよ。

—アーティストというと絵画だけではなく、映像や彫刻作品などメディアは多岐にわたりますよね。シンプルに絵を描いているというところで画家だと言い切りたい気持ちはわかります。

粘土とか、遊びで立体も作ったりするんだけどね。でも作品としては絵画だけ。やってみたいなとは思うけど。設計図だけ描いて、アシスタントや業者に発注するやり方もあるけれど、好きじゃないんだよね。単純に「自分で描きなよ」って思う(笑)。

—Tシャツやレコードジャケットのアートワークなども制作されることが多いかと思うのですが、キャンバスに描くこととどう違いますか?

完全に違うチャンネルですね。今回もTシャツをつくったんだけど、キャンバスの作品を単にTシャツにプリントするのはあまり好きではなくて、TシャツはTシャツ用に着た時の格好良さでデザインしたい。グラフィックデザイナー時代の燃えカスがまだ残っていて、そこは全く別の話で。絵画ではできないことをやらせてもらっている感じです。

—とはいえ、絵画作品のサイズ感は日本の住環境では追いつけないレベルに達していますよね。

作品をスタジオから出す時も大変でね。大きなスタジオならシャッターだと思うんだけど、ウチは工場の跡地を改装しただけだから。200号(2,590mm ×1,940mm)の作品は、引き戸を2枚外して斜めにしながら窓から搬出しているんですよ。本当は300号とか描きたいんだけど、絶対出せないから(笑)。

—流されるままと言いながらも、現代アートのど真ん中に来たからには、これからは自覚的にならないとやっていけないのではと思うのですが。今後の展望は?

大変ですよ、ほんと。来年50歳ですから。キャンバスを貼る作業が辛くってね……。今回はギャラリーのスタッフに手伝ってもらって何とか間に合いました。描くのは3時間くらいでイケるんですけど、展覧会が続くと時間がいくらあっても足りなくって。でも、全然まだまだなんで。もっと頑張りたいですね。

Photo by UTSUMI | © Tomoo Gokita, courtesy of Taka Ishii Gallery

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<プロフィール>
五木田智央(ごきた・ともお)
1969年東京生まれ。イラストレーションから出発し、60〜70年代のアメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドに影響を受け、当時の雑誌や写真にインスピレーションを得た作品を発表。90年代後半にドローイング作品により熱狂的な支持を得る。その後、キャンバスにアクリルグワッシュで描くモノクロームの人物画を中心に制作。ニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリンなどでも作品を発表し、高い評価を受けている。2014年に佐倉市のDIC川村記念美術館で個展「THE GREAT CIRCUS」を開催。また、出版物も多く、作品集に『ランジェリー・レスリング』(2000年)、『シャッフル鉄道唱歌』(2010年)、『777』(2015年)、『Holy Cow』(2017年)などがある。

展覧会情報
タイトル 五木田智央 PEEKABOO
英題 Tomoo Gokita : PEEKABOO
期間 2018年4月14日 (土)〜6月24日 (日)
会場 東京オペラシティ アートギャラリー
住所

東京都新宿区西新宿3-20-2 3F

開館時間 11:00〜19:00(金・土は11:00〜20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日 月曜日 (ただし4月30日は開館)
入場料 一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 800円(600円)、中学生以下無料
HP  http://www.operacity.jp/ag/exh208/

 

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