Interview with Charlotte Gainsbourg

PORTRAITS | May 24, 2018 9:00 PM
Charlotte Gainsbourg (シャルロット・ゲンズブール)、その名を聞いてあなたはどんな彼女を思い浮かべるだろうか?ミュージシャンとしても様々な変遷を経て、新たな境地へ足を踏み入れた最新作『Rest』携え約8年ぶりの来日公演を果たした彼女にインタビュー。
Photo by AMY TROOST

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Charlotte Gainsbourg (シャルロット・ゲンズブール)、その名を聞いてあなたはどんな彼女を思い浮かべるだろうか?ある人は女優としてのデビュー作となった『なまいきシャルロット』のあどけない姿を、ある人は Lars von Trier (ラース・フォン・トリアー) 監督のミューズとしての彼女を、ある人は若かりし頃の Jane Birkin (ジェーン・バーキン) と彼女を重ね合わせるかもしれない。そして、彼女はミュージシャンとしての一面も併せ持っている。若干13歳にして、自身の父であり、フランスの国民的なアーティストである Serge Gainsbourg (セルジュ・ゲンズブール) とデュエット果たした時から、彼女はすでにアーティストだったのかもしれない。

父との合作であるアルバム『魅少女シャルロット』から始まり、Nigel Godrich (ナイジェル・ゴッドリッチ) や AIR (エール) と手を取り合った『5:55』、Beck (ベック) がプロデュースした『IRM』などミュージシャンとしても様々な変遷を経て来た彼女が、新たな境地へ足を踏み入れた。それが、7年ぶりのリリースとなった『Rest』だ。フランスのエレクトロミュージックシーンの鬼才である SebastiAn (セバスチャン) をプロデューサーに迎えた本作は、Paul McCartney (ポール・マッカートニー) や Daft Punk (ダフト・パンク) の Guy-Manuel de Homem-Christo (ギ=マニュエル・ド・オメン=クリスト)、Danger Mouse (デンジャー・マウス)、Connan Mockasin(コナン・モカシン) らが参加。その錚々たるクリエイター陣からも『Rest』が規格外の作品であることは伝わってくるだろうが、何よりもこのアルバムを特別にしているのが彼女にとって初めての挑戦となった自作の歌詞だ。そこに込められてるのは、彼女が失ってきた愛する人々への深い悲しみと怒り。それと同時に、郷愁と刹那的なきらめきを感じることが出来る。

そんなアルバムを携え、彼女は約8年ぶりの公演のため来日を果たした。憂いのある瞳でオーディエンスを見つめ、繊細ながらも一つ一つの言葉をしっかりと歌い上げた彼女のウィスパーボイスが会場を優しく包み込んだ一夜。はやる気持ちを抑えながら、開演前の楽屋裏で彼女に話を伺う機会に恵まれた。その時の録音をそのままお届けしたいほど、彼女の声は穏やかで、そこから紡ぎ出される言葉たちは美しかった。

−今回のアルバムは、姉である故 Kate Barry (ケイト・バリー) さんに宛てた作品でもありますよね。今回の来日のタイミングで、原宿の BOOKMARC (ブックマーク) で写真展も開催されており、昨日のオープニングにも足を運ばれたとお伺いしました。すごく素敵な展示でしたね。

そうですね。昨日の写真展のオープニングはあまりにも多くの方がいらっしゃって、実は展示自体を見ることはあまり出来ませんでした。ただ、みなさんがケイトに対して愛情を感じてくださっていることがわかって、すごく感動しました。どんな写真が展示されていたかは勿論、私もよく知っています。彼女の撮った女優のポートレートや私を撮ってくれたポートレートもあります。この写真展は、ケイトの友人である村上香住子さんが企画してくれました。ケイトの死をきっかけに私も彼女とさらに親しくなりました。彼女がケイトがよく行った日本の場所に連れて行ってくれたので、ケイトを身近に感じることができて、とても嬉しかったです。ケイトは日本がすごく好きだったのですが、一緒に来る機会がなかったので、彼女を通して彼女の足跡を辿ることができました。実は、写真展のオープニングはケイトの誕生日でもあったんです。

BOOKMARCで開催された写真展で展示されたシャルロットのポートレート | © Kate Barry / Renate Gallois Montbrun

BOOKMARCで開催された写真展で展示されたシャルロットのポートレート | © Kate Barry / Renate Gallois Montbrun

−バーキンさんとセルジュさんが初めて共演された映画『スローガン』も最近東京でリバイバル上映されるなど、日本にとってもあなたの家族は大きな存在だと思います。久しぶりの来日公演かと思いますが、日本のオーディエンスの印象は?

以前のライブは本当に最初のツアーだったので、色々と学ぶことがありました。東京と大阪で公演を行ったのですが、とても優しいオーディエンスだと思いました。とはいえ、その経験は自分の中では非常に大変なものでした。自分がシャイであるということがその時には消化しきれていなかったんです。今はもう少し自分の声や体、動きなどが理解できています。例えば、今日見に来てくれる方たちがビヨンセを期待しているわけではないということも(笑)。

−アルバムについても聞かせてください。4年もの歳月を費やした作品ですが、どういうきっかけからスタートしましたか?最初からお父様やお姉様のために作るという構想があったのでしょうか?

そうですね。このアルバム自体、本当に少しずつ作られていった作品です。最終的にセバスチャンがニューヨークに来てくれて、アクセルがかかったと言えます。まず経緯からお話ししますと、7年前にポールとランチをしていた時に曲を書いて欲しいとお願いして、曲を作ってもらったのが、このアルバムのスタート地点になるかと思います。しかし、それから何年も何もしない時期が続きました。その後、コナン・モカシンと一緒にツアーをしている時に彼が「絶対君は詩が書けるはずだから一緒にスタジオに入ろう」と言って、いわゆる練習期間を設けてくれました。それからセバスチャンに会ったのですが、最初はお互いに距離があって、なかなか歩調が合いませんでした。しかし、その間にも父について、子供達についての詩が少しずつ出来上がっていきました。姉を亡くした6ヶ月後にニューヨークに引っ越したのですが、その時には彼女のことばかり書いていて、そこで本格的にアルバムを作ろうという気持ちになりました。そこでセバスチャンに再び連絡して、今ならアルバムを作れそうだからニューヨークに来て欲しいと伝えました。彼と一緒にスタジオに入って、このフレーズはあるけど、このサビの部分が足りない、このコーラスの部分が足りないというように一つ一つパズルのように組み合わせていきながら出来上がったのが、このアルバムです。

−初めて歌詞に挑戦したという意味でもこのアルバムは特別ですね。歌詞を書く時にインスピレーションを受けたものはありますか?女優業との両立も大変だったと思いますが、どんな時に詩を書いていましたか?

色々なものからインスピレーションを受けましたが、偶然出来たものもすごくあります。例えば、このアルバムの中の「Sylvia Says」という曲は、シルヴィア・プラスという詩人の作品からインスパイアされています。これも本当に偶然の出会いでした。何かメソッドがあるわけではありません。ニューヨークでの生活では、子供達が寝静まった後にセバスチャンから来た音源を聴きながら詩を書いていましたが、時にトランス状態になるようなこともありました。ニューヨークだからこそ書きやすかったということもあるかもしれません。音がない状態で歌詞を書いて見たこともあったのですが、やっぱり音があって、それを繰り返しききながら書いている方が心地よかったです。

Photo by Kazumichi Kokei

Photo by Kazumichi Kokei

−個人的にセバスチャンは以前から好きだったのですが、あなたとのコラボレーションは意外でした!彼のアグレッシヴな音楽に死をテーマにした歌詞とあなたのウィスパーボイスが乗せられることで、今までにない作品に仕上がっていると思います。全体的にはアップテンポなフレンチエレクトロですが、内容は結構重いですよね。非常にチャレンジングな作品だと思います。

おっしゃる通り、最初からそれを目指していました。自分の中でこのアルバムのコンセプトは、ホラー映画でした。すごくアグレッシヴで威圧感のあるような音楽。少し大仰なところもあるセバスチャンの音楽に、自分の弱々しい声を乗せたいと思いました。合うのかどうかという疑問は勿論ありましたが、そういった矛盾だったり相反する要素が私はとても好きなので、それを探していたということもあります。また、「死」というテーマは本当に少しずつアルバムの中で立ち上がってきました。姉を失った悲しみの中で、やっと方向性が見えてきたのです。ただ、私の中で悲しいことを歌うにあたって、優しい音楽だったり、悲しい音楽では絶対に歌いたくないと思いました。自分の感情との距離を取るためには、エネルギッシュな音楽が必要だと思いました。

−セバスチャンとの楽曲も勿論素晴らしいですが、ギ=マニュエルとの表題曲「Rest」もすごく好きです。メランコリックでありながら、お天気の日に聞きたくなるような曲ですよね。

随分前からダフト・パンクに一緒に仕事がしたいと言っていました。ある日、ギ=マニュエルから「メロディが一つあるから、もし気に入れば君にあげるよ」と連絡がありました。すぐに会いに行って、そのメロディはすごく気に入ったのですが、ちょうどケイトを亡くした直後だったので私は混乱している時期でもありました。持って行った歌詞が膨大な量だったので、ギ=マニュエルは「それは長すぎるから短くしなさい、1つのフレーズを4つに分けなさい」と助言してくれて、曲を作りました。出来上がったものはイノセントで、ナイーヴで、その時の私の状態をよく表していると思います。その時に録音して、すぐにミックスしてくれたので、4年前にはもうすでに出来ていたのです。アルバムに入れたいとは思っていたのですが、最後までフィットするかどうかわかりませんでした。そういう意味でも、このアルバムの中で「Rest」は特別な曲だと思います。

−計り知れないほどの悲しみの中でこのアルバムを作られたと思います。あなたにとって音楽とはどういう存在ですか?音楽が救いになったりしたのでしょうか?

よく音楽にセラピーのような役割があったかと聞かれるのですが、そうは思いません。たとえ歌を歌っても、ケイトについて書いても、悲しみが消えることはありません。ただ「Kate」という曲を録音した時、一番最初の録音が一番良いということになりました。それは、きっとそこに何か特別なものがあったからかもしれません。作業しているということで、少しだけ何かが軽くなったかもしれません。しかし、やはりニューヨークに行ったからと言っても、何かが変わったわけではありません。ケイトが生き返るわけでもありません。何かしら別のことをすることで、深呼吸をすることが出来る環境が生まれて、そこから音楽が生まれたのです。

タイトル:Rest レーベル:Because Music

タイトル:Rest レーベル:Because Music

<プロフィール>
Charlotte Gainsbourg (シャルロット・ゲンズブール)
女優/ミュージシャン
1971年、ロンドン生まれ。セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの間に生まれ、若干13歳にしてカトリーヌ・ドヌーヴ主演の『残火』(1984)でスクリーンデビュー。同年には、「レモン・インセスト」で父とデュエットを果たし、ミュージシャンとしてのデビューも果たしている。初主演作『なまいきシャルロット』(1985)でセザール賞有望若手女優賞受賞。ラース・フォン・トリアー監督作品『アンチクライスト』(2009)では、第62回カンヌ国際映画祭女優賞も受賞している。これまでに5作品のアルバムを発表しており、デビューアルバムである『魅少女シャルロット』から20年ぶりにリリースされたアルバム『5:55』は、フランスのチャートで初登場1位に輝くなど大ヒットをおさめた。2017年11月に待望の新作アルバム『Rest』を発表した。

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