Interview With Rhye

PORTRAITS | Jun 21, 2018 9:00 PM
ロマンティックで緻密なサウンドや、男性ながらシャーデーを彷彿とさせ、官能的なマイクのボーカルで多くの人を魅了している Rhye (ライ) こと、Michael Milosh (マイケル・ミロシュ) にインタビュー 。これまでアートワークにしてきた “身体” というモチーフ、そして歌詞に綴ってきた親密な誰かとの関係について描くという行為という2つの側面から、RHYE という音楽プロジェクトにかける譲れない気持ちや制作のプロセスで起きた悲喜こもごもを “包み隠すことなく” 語ってもらった。

思い出してみてほしい。Rhye (ライ) が喉元をクローズアップした写真をアートワークに起用した1stアルバム『Woman』を引っさげて登場した2013年当初、カメラを見つめる Michael Milosh (マイケル・ミロシュ)という存在はまだそれほど多くの人に認知されていなかった。しかし “シャーデーにも似た” という枕詞とともに伝えられた彼の伸びやかな中性的な歌声は、その声の主が誰であれ、耳を傾けずにいられないものであった。

いざライブでその全貌 (演出の都合上、照明はいつも抑えめではあったのだが) が披露されると、彼の存在は次第に驚きとともに迎え入れられた。当時、自らの寝室で恋人との細やかな愛の日々を綴った彼の歌は、いくつもの国境を越え、しっくりと肌合いのなじむ親密な誰かとの関係のようにリスナーの心を深く揺さぶってきた。そのときにはもう Rhye を形容する様々な枕詞は不要なほど、時代を牽引する代え難いアーティストとなっていた。それから5年。実はプロジェクト継続自体が危ぶまれるほど様々な別離を重ねていたようだが、Milosh は選りすぐりのバンドメンバーを携えて強靭な身体性を伴い、バンドサウンドに重きをおいたソウルフルなアルバム『Blood』を完成させた。

先日行われた Zepp DiverCity Tokyo での公演。定刻まで2時間を切っていたが、あてがわれた楽屋に姿を見せた Michael Milosh は特にナーバスな素振りもみせず、穏やかに握手を求めてきた。これまでアートワークにしてきた “身体” というモチーフ、そして歌詞に綴ってきた親密な誰かとの関係について描くという行為という2つの側面から、Rhye という音楽プロジェクトにかける譲れない気持ちや制作のプロセスで起きた悲喜こもごもを “包み隠すことなく” 語ってもらった。

 

 

—前作『Woman』発売からおよそ5年弱かかりました。その間制作に至る過程にはどのようなヒストリーがありましたか?

 1stアルバムをリリースして以降、世界各地をツアーで巡っていたので、今作を制作をした期間は2年くらいですね。それから発売にこぎ着けるまで、思ったよりたくさんのコストがかかりました。それはお金という意味でも、心理的な意味合いにおいても。それでも僕は割に楽観的な人間なので、絶対にやり遂げられるという希望的観測に基づいてこのプロジェクトを進めていました。考えてもみてください。ある程度楽観的じゃないとミュージシャンなんて続けていられないですよ (笑)。

—前作『Woman』に引き続き、扱うモチーフは恋人や親密な感情を抱いている人に対する感情を歌にしていると思いますが、恋のはじまりのみならず、良い関係を続けていくためにどうすればいいのか、関係を続ける上での葛藤みたいなものを描いている気がしました。近しい人たちとの関係性がクリエイションのインスピレーションになっているのでしょうか?

………。僕は心理学者ではないので、自分の感情を客観的に分析することはできないし、言葉で制作の過程を説明するのは難しいです。僕は恋人に限らず親しい友人・仕事仲間など近しい関係性の人たちとの間における僕から見た真実や感情を描こうとしています。そして何より自分が抱いたフィーリングを表現者として描ききることにモチベーションがあります。

—自分と身近な存在における関係性を描くとき、時間的にも物理的にもある程度距離をとってないと俯瞰できないとおもうのですが、どのようにバランスをとったのでしょうか?

そこが僕が大事にしている一番のポイントです。身の回りで起きている物事を僕は俯瞰したり、バランスをあえてとることはしません。とにかくその “渦中” からドキュメントしてみようとしました。自分のなかにある感情を信じて、それをどんどん掘り下げて見つめていくんです。その時、自分の客観的に見ようとする意識を完全に切ってしまうんです。気をつけていたことは、実際あった物事を別の物語に置き換えないことです。フィルターを通さず、自分のエモーションに身を浸して、その状態のままスタジオにいって、音楽を作る。そういう行為を続けました。それはある意味、自分のプロデューサーとしてのスキルを信じているからこそできるのかもしれないですが。

©︎Takayuki Okada

「Phoenix」のサウンドもとりわけアグレッシブなものになっていますし、既に今のメンバー体勢で披露されていくつもの動画チャンネルであがっている「Taste」のライブアレンジを含めて、アグレッシブになっているように感じました。そこになにか理由はありますか?

Phoenixの楽曲を制作したとき、自分は以前のレーベルとのいざこざがありました。それに伴って多額の出費を支払わないといけなかったし、前妻 (『Woman』発売後にリリースされた Milosh のソロアルバム『Jetlag』のアートワークや「This Time」、「slow down」などいくつかの楽曲のMVにも登場している) との離婚にまつわる諸般の手続きとか大変なことが重なって。でもそれを乗り越えようとした時期に描いた曲だから、自然とそうなったのかもしれません。とはいえ、Phoenixという楽曲が掴もうとしたフィーリングやこのアルバム全体はポジティブなものだと思います。自分のなかにある激情をパンク・ロック的に描いたわけでもなく、ジェントルなやり方で表現しようとしたわけですから (笑)。

—離婚という人生のなかでもとびきり大きな別れを経験した後でも、これまでと同じように親密な他者との関係性について描ききりたい。ある意味苛烈とも言えるそのモチベーションはどこから湧いてくるのでしょう?

それは今の時代においてただのポップソングでも、コマーシャルではないものをじっくりと聴いてもらうことが大事だという信念に基づいていると思います。ことアメリカにおいては、ドラッグがらみのものか、マーケティング戦略に基づいたものかそのどちらかの状況でしか音楽が生まれていない気がしていて。僕はもっと本質的な人間同士のコミュニケーションから生まれる表現が今の世の中に重要だと信じてるからこそ、こういう曲を書き続けているのだと思います。ちょっと理屈っぽいかもしれませんが、映画の脚本のように何か別のストーリーに転換しないで、自分自身が体験したことから見えたこと感じたことを自分という身体を通じて歌うし、楽器を奏でるからそのバイブレーションが聴き手に響くと信じているからです。ライブはとりわけそのフィーリングを共有できる場ですよね。

©︎Takayuki Okada

©︎Takayuki Okada

©︎Takayuki Okada

©︎Takayuki Okada

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—今作が『Blood』というタイトルになった経緯について教えてください。

「Blood Knows」という楽曲でもそうですが、歌詞を書く上で自分がよく Blood という言葉を使うと気付いたのがきっかけです。生きていくなかで、何かを理解して言葉に変換する以前に、脈絡と流れる血や身体そのものを通じて知っていることがたくさんある気がしていて。例えば祖先から脈々と遺伝して受け継がれる記憶やトラウマなどもそうです。 まったく別のところで、女性の月経も月と呼応するように起こることも印象的に感じられました。よく旅先で山に行くのですが (ジャケット写真はアイスランドのレイキャヴィックから車で10時間以上走らせた山道で Milosh 自身が恋人の Geneviève Medow Jenkins (ジュヌビエーヴ・メドウ・ジェンキンス) を撮影したものが採用されている)、そこで何度か神秘的な体験もしましたし、自然と彼女のつながりに思いを巡らせたりもしました。そういう経験のなかで『Blood』という言葉がふさわしいと思うようになっていきました。

—女性の裸体をモチーフにしたアートワークに使う以外にも、「Count to Five」のMVも世界中の女性達がダンスしているものになっていますし、謝罪の気持ちを描いたという「Please」も複数の女性がコンテンポラリーダンスをしています。お話を伺って “身体が先に知っている” ということと、身体表現をモチーフにしたMVに通じる部分があると思いました。

確かにそうかもしれないですね。幼少期に5年ばかしバレエをやっていたので、身体表現はそもそも自分にとって馴染みがあるものなんです。「Count to Five」ではインスタグラム上で世界各地の女性達がおもいおもいに自分を表現して踊っている姿に感銘を受けて。それを作品として1つにまとめたら素敵だと思いました。それから「Song For You」のMVは、僕たちが経験したこと見てきたことを題材に彼女が脚本を書いて、俳優を僕ら2人でキャスティングして僕自身が撮影したのですが、見てくれました?

 

Rhye - Song For You (Music Video)

 

—もちろんみました。

ありがとう。MVもアートワークの写真もどれも恋人としてだけではなくて、クリエイティヴなパートナーとして彼女と一緒に活動を共にしていることを誇りに思っているんです。そうだ! 先ほど例に挙げてくれたPhoenixと共作のMVがそのうち公開されると思うので、是非それも見てほしいですね。

—Rhye というプロジェクトにまつわるあらゆることを自らの手で、自らの動機を曲げずにピュアなモチベーションに基づいて自由に創作を手がけているということがわかりました。

そうですね。レーベルもなしで作ったし、誰も僕たちを見張っていなかったから (笑)。これは若い表現者たちへのアドバイスになるのですが、自分が愛して信じているものがあるならば、生活のため、お金のため、セレブレティのためじゃなくて、自分の表現を貫いたほうがいいと思います。実際、自分はその気持ちが報われたので。

<プロフィール>
Rhye (ライ)
カナダ出身の Michael Milosh (マイケル・ミロシュ: Vo) が率いるバンド。ロマンティックで緻密なサウンドや、男性ながらシャーデーを彷彿とさせる、官能的なマイクのボーカルで多くの人を魅了している。2012年から Rhye の活動と曲作りを開始。バンドの素性を明かさないまま、2012年から2013年にかけて「Open」、「The Fall」の2曲を発表すると、音楽メディアを中心に大きな話題となる。2013年5月、アルバム『Woman』でデビュー。2013年にフジロックフェスティバルで初来日を果たすと、2015年には単独来日公演を行っている。2017年に再びフジロックのフィールド・オブ・ヘヴンのヘッドライナーを務めた。2018年2月に5年振りとなる2ndアルバム 『Blood』をリリース。5月には東京/大阪を周る日本ツアーを開催した。

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