Interview With Nathalie Baye

PORTRAITS | Jul 10, 2018 9:00 PM
1972年にデビューし、約30作品に出演してきたフランス女優 Nathalie Baye (ナタリー・バイ)。François Truffaut (フランソワ・トリフォー)、Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) といったヌーヴェルバーグの巨匠から Xavier Dolan (グザヴィエ・ドラン) といった気鋭の監督にまでに愛され数多くの作品に出演し続けている。今年で70歳を迎え、年々バイタリティ溢れ、魅力を増している彼女に、フランス映画の魅力、女優として50年のキャリアを経て思うこと、そして娘であり、監督、女優として活躍する Laura Smet (ローラ・スメット) との関係について聞いた。
Photo by Eriko Nemoto

Photo by Eriko Nemoto

1972年にデビューし、約30作品に出演してきたフランス女優 Nathalie Baye (ナタリー・バイ)。François Truffaut (フランソワ・トリフォー)、Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) といったヌーヴェルバーグの巨匠に愛され、数多くの作品に出演。1999年には『ポルノグラフィックな関係』でベネチア国際映画祭主演女優賞を受賞し、フランスを代表する女優に。最近では Xavier Dolan (グザヴィエ・ドラン) の作品に出演し、熟練した演技で観客を魅了したことでも話題に。今年で70歳を迎え、バイタリティ溢れ、さらに魅力を増しているそんな彼女に、フランス映画の魅力、女優として50年のキャリアを経て思うこと、そして娘であり、監督、女優として活躍する Laura Smet (ローラ・スメット) との関係について聞いた。

 

—今回フランス映画祭の団長として3度目の来日だと思うのですが、フランス映画がなぜこんなに日本で愛され続けていると思いますか?

日本の人々にフランス映画を受け入れてもらえてとても幸せに思います。その明確な理由を突き詰めるのは難しいし、逆に日本の人になんでこんなに好いてくれるのか聞きたいくらいです。でも、強いて言うならばフランス映画の多様性が人々を惹きつけているのかもしれないですね。私自身、日本映画を観て感銘を受けた経験がたくさんあり、好きな映画も沢山あります。

—ハリウッド映画と比較してもフランス映画は独自の路線を突き進んでいますよね。

確かに、ハリウッド映画は商業的なものも多いですよね。特に最近は大人のための作家主義の映画よりもティーンエイジャー向きのものが持て囃されていて、作品も多いような気がします。昔はもっと作家性の強い作品が多かった印象ですが、今では稀ですよね。でも、ハリウッド映画がダメだとかそういうことではなく、イタリア映画、イギリス映画、アジア映画、それぞれの地域で作られる映画に特色や差異があること、それはとても素晴らしいことだと思います。先ほどフランス映画には多様性があると言いましたが、その多様性を大切にして、フランス映画界がこの先も活気を失わないで欲しいと願っています。

—フランス映画を熱狂的に愛する人たちが日本には一定数いて、それは日本の侘び寂びなどの美意識がフランスの美意識と共通する何かがあるからなのだと感じているのですが、ナタリーさんは日本の美意識についてどう思いますか?

日本に来るたびに日本が持つ独自の美のセンスに感動させられます。繊細で美しいものが日本には本当に沢山ありますね。部屋の小物ひとつひとつとって見ても、その美しさに感銘を受けます。それぞれがとても優美で、日本映画にも同じ魅力を見出すことができると思います。特に日本のファブリックは巧みな技術をもって生み出され、美の極みだと思います。フランスで服のデザイナーをやっている友人がいて、他の国では決して見つけられないような布も日本では手に入れることができると言っていました。布や造形美術、絵画、デッサン、映画、演劇、すべてに共通して繊細さは日本の美を語るうえで欠かせないキーワードになっていると思います。私は日本人の中にそういった魅力を見出すことができますが、フランス文化の中に「繊細さ」があるかと言われれば、自国の文化に慣れきってしまい、実際どうだか分からないですね。でも、フランス料理に関しては繊細さを見出すことはできますし、日本の美意識と共通するものが実は沢山あるのかもしれません。

—ナタリーさんは初めて撮影に臨んだ時の光景や心境は覚えていますか?

自分にとって、本当に初めて出演した作品はアメリカ映画で、Robert Wise (ロバート・ワイズ) 監督の『Two People』(1973) でした。出演したのはたったのワンシーンだったので、実際は François Truffaut 監督の『アメリカの夜』(1973) が私にとっての初めての映画作品と言えるかもしれません。当時の撮影のことはとても印象に残っています。映画の撮影そのものがこの作品のテーマになっていたのもあり、それまで私は、バレエをずっと続けていたので、舞台で踊ることくらいしか知らなかったのですが、多くの人が関わり、沢山の労力と時間が費やされる映画の世界というものを知り、すぐにのめり込んでいきました。

—その当時、今の年齢まで女優を続けると思っていましたか?

映画に出演するようになるまで、私はバレエのレッスンのバーを握りしめながら、とても厳しいトレーニングを続けてきました。踊ることはとても厳しい、それを乗り越えてこそ技術を習得できるものだと信じていました。でも、いざ映画の世界に飛び込んでみたら、そこにいる人たちは (芸術や学問を趣味として愛好する人を指す) ディレッタントという言葉がぴったりで、夢見がちな印象を受けました。私自身は情熱を持って仕事をしたいと思い続けていたのですが、映画の世界で興味と情熱の両方を持つことができました。もし、今の時代に私が若い女優だとしたら、何十年も女優を続けるのはなかなか難しいかもしれません。続けたいと夢をみることは可能だけれども、それを現実にイメージすることはとても難しい。今と昔では状況が全然違うので。

—ナタリーさんは女優として、情熱を持って仕事に取り組み続けられたのは何故だと思いますか?

仕事に対して情熱を持ち、意欲を持つこと、そして仕事を失わないように注意を払って守ることが大切。そして、女優として仕事を続けるための重要なキーワード、それは「選択」だと思います。私自身、仕事があまりない時期もありました。その時に、馬鹿げた内容だけど、とにかくお金は稼げる作品へのオファーを断らずに受け入れるというのも、ひとつの選択としてありましたが、私はそれを受け入れなかった。自分が納得できないクオリティの作品に出るくらいならば、毎日素のスパゲティみたいな質素なものだけで我慢して、節約生活をする方を選ぶ。そういう「選択」を重ねて今があります。

—François Truffaut、Jean-Luc Godard といったヌーヴェルバーグの巨匠から、Xavier Dolan のような新鋭監督など、様々な世代の監督と仕事をしてきたと思いますが、特に印象に残っている監督はいらっしゃいますか?

最近ではやはり Xavier Dolan でしょうか。『わたしはロランス』(2013)、『たかが世界の終わり』(2017) の2作品に出演し、若くてフレッシュな感覚のおかげで新鮮な気持ちになりました。自分より年の上の人たちと仕事をする時にも学ぶことは沢山あります。色んな世代の人々と仕事をするのは素晴らしい経験だと実感しています。最近では娘と仕事をする機会もありましたしね。

—実際に娘さん (Laura Smet) が監督を務める作品に出演するのはどんな気分なのでしょうか?

素晴らしい人間性であることは勿論、女優としても監督しても、彼女はとても素晴らしい能力を持っていると思います。もちろん実の娘なので、母としての愛情を注がずにはいられませんが、一度撮影現場に入れば、娘でも母でもなく、仕事のパートナーという関係になり、仕事モードに切り替わります。

—ナタリーさんのお母さんはどんな人柄でしたか?

私の母は画家でした。彼女はとても素晴らしい美的センスを持っていましたが、それと同時に内面的な苦しみを抱えていたと思います。アーティストというのは、有名になること、多くの人々に知られ、評価されることが重要ですよね。私の母はとても才能に溢れていたと思いますが、最終的にはアーティストとしては無名でした。美術の世界はとても厳しい世界で、その中で認められないまま、作品を作り続けるのは精神的にもとても苦しかったはずです。性格としては面白く、明るい母親ではありましたが。

—ナタリーさんは娘のローラさんにとってどんな母親でしょうか?

彼女が実際ここにいないのが残念!いたら直接言ってもらえるのに (笑)。母親らしさという点で言えば、私の母親よりはるかに自分の方が母親らしい性格だと思います。もちろん、彼女は自分の大切な娘ですけれども、同時に自立した女性でもあるので、彼女の人生に口を出すとか、意見を言うようなことは決してしたくない。彼女はとても朗らかな性格で、今回も私と日本に来る予定だったのですが、仕事の関係でフランスにいなければいけなくなってしまい、とっても残念ですね。

—今年度のフランス映画祭での上映作品に選ばれた『モカ色の車』(2018) に出演したきっかけはなんだったのでしょうか?

まずこの作品に出ようと思った理由が二つありまして、ひとつ目の理由は、主演の Emmanuelle Devos (エマニュエル・ドゥヴォス) がその世代では最高の女優だったこと。私は彼女と一緒に仕事をしてみたかった。そしてふたつ目は、監督がこの作品で私に演じさせようとした女性像に興味を持ったから。自分の年齢よりも若い恋人がいて、いつかパートナーが自分を捨て、若い人にいってしまうのではないかという不安を抱えている。自分は強いんだという自信もある一方で、脆さもある。そんなキャラクターを演じてみたかったんです。

—女性にとって年をとることは恐怖だし、ネガティブな感情を抱えがちですよね。日本ではフランスの女性は美しい年の重ね方ができていると評価されていますが。

年を重ねることへの恐れは世界共通。フランスの女性も同じです。大切なのは年をとるという感覚を忘れること。興味の対象があれば、それによって活力を与えられるし、興味があることに打ち込んでいれば、時間の概念を忘れられる。何もしないで退屈な日々を過ごすことが老けることに繋がると思います。そして自分と正面から向き合うこと。実年齢が40歳になのに、20歳みたいな外見や気持ちを持つことは不可能。そんなことは考えずに、自分のありのままを受け入れることが大切だと思います。年をとることは決して病気ではないですし、ごく自然なことなんですから。自分の経験から言えることは、年齢を重ねると、軽くなるということ。例えば30歳の時に、仕事のアポイントなどがあれば、絶対にそれにいかなければいけないという強迫観念がありました。何をすればいいんだろうとか、自分に対して、沢山の質問を投げかけていた時期もありましたが、今この年齢になると、何とかなるという心持ちで、リラックスして物事を受け入れられるようになるものだから。

—自分もそんな女性になれればいいのですが。

心配しなくて大丈夫よ!何年もかかるかもしれないけれど、必ずなれるものだから!

Photo by Eriko Nemoto

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<プロフィール>
Nathalie Baye (ナタリー・バイ)
1948年フランス生まれ。代表作には、François Truffaut (フランソワ・トリフォー) 監督の『映画に愛を込めて アメリカの夜』(1973)、『緑色の部屋』(1978)、Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) 監督の『勝手に逃げろ/人生』(1979)、『ゴダールの探偵』(1985) など。2000年代に入っても、Claude Chabrol (クロード・シャブロル) 監督の『悪の華』(2003)、Guillaume Canet (ギョーム・カネ) 監督の『唇を閉ざせ』(2006)、Xavier Dolan (グザヴィエ・ドラン) 監督の『わたしはロランス』(2013)、『たかが世界の終わり』(2017) など、話題作への出演が続く。 受賞歴は 1980年『勝手に逃げろ/人生』でセザール賞助演女優賞、1982年『愛しきは、女/ラ・バランス』ではセザール賞主演女優賞、1999年『ポルノグラフィックな関係』でヴェネチア国際映画祭女優賞を獲得。

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