Interview with Hirofumi Kurino of UNITED ARROWS LTD. on how to creative-direct and predict trends: part 1

PORTRAITS | Mar 18, 2013 11:00 AM
日本のファッション界最重要人物のひとり、栗野宏文氏。日本を代表するファッション小売業 ㈱ UNITED ARROWS (以下: ㈱ UA) のクリエイティブディレクション担当上級顧問であり、日本のファッション業界をドメスティックとインターナショナルな視点から俯瞰的に語ることができる数少ないファッション・ジャーナリストでもある。業界歴35年というキャリアもさることながら、政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとしても、国内外で高く評価されている。栗野氏にとって、ファッション業界の過去・現在・未来とは?

取材・文: 編集部  ポートレート写真: 三宅英正

日本のファッション界最重要人物のひとり、栗野宏文氏。日本を代表するファッション小売業 ㈱ UNITED ARROWS (以下: ㈱ UA) のクリエイティブディレクション担当上級顧問であり、日本のファッション業界をドメスティックとインターナショナルな視点から俯瞰的に語ることができる数少ないファッション・ジャーナリストでもある。業界歴35年というキャリアもさることながら、政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとしても、国内外で高く評価されている。栗野氏にとって、ファッション業界の過去・現在・未来とは?

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– まず現在のお仕事内容について教えてください。

肩書き上はいわゆる上級顧問で、クリエイティブ・ディレクションを担当しています。㈱ UA にはさまざまな事業部がありまして、UNITED ARROWS を筆頭に green label relaxing (グリーンレーベル リラクシング) や Another Edition (アナザーエディション) などたくさんあります。そのおおもとのクリエイティブ・ディレクションを発信するのが私の仕事です。春夏シーズン、秋冬シーズン年に2回発信して、それに従って各事業部のディレクターが、担当事業部なりの解釈をし、カスタマイズして各々の事業部内に発信していきます。したがって、私にとって一番大きい仕事は㈱ UA全体に向けたクリエイティブ・ディレクションの発信になりますね。あと、UNITED ARROWS 事業 には District (ディストリクト) というお店がありまして、そこのディレクションと買い付けは私が直接やっています。

District

District

– 現在、海外にはどれくらいの頻度で行かれていますか?

最低年に6回です。メンズのコレクションで2回、ウィメンズのコレクションで2回、そして Première Vision (プルミエール・ビジョン) という生地展に2回です。

– ニューヨーク生まれと聞いたのですが、いつごろまで海外にいらしたのですか?

ニューヨーク自体は1年くらいなので、まったく記憶には残っていないです。たまたまそこで生まれただけですね。4歳から6歳まではオーストリアのウィーンに住んでいて、それ以降はずっと日本在住です。

– ファッションに興味を持ちはじめたのはいつごろからでしょうか?

たどるのはむずかしいですけど、おそらく小学生くらいのときですね。母親が映画好きだったので、よく映画を観につれて行ってもらっていました。映画って、演じるキャラクターと着ている服に深い関係性があったりしますよね。例えば、極端な話で正義の味方が白馬に乗って白い服を着ていて、悪者が黒馬に乗って黒い服を着ていたり。それを見ていておもしろいなと。当然その白い服を着て白馬に乗った正義の味方の方にシンパシーを感じるわけです。しかしやがてそれはそれで単純すぎて格好悪いなとおもうようになりまして、黒い服を着ている悪役や、まだらの馬に乗っている脇役の方に気持ちがいくわけです。それは自分にとって服と人との関係性みたいなことで、ファッションの目覚めだったのだとおもいます。

– 音楽はどのようなジャンルをお聴きになられますか?

一番多いのはロックとソウルです。最近は50年代のものも聴きますけど、主に60年代から80年代までですかね。一番好きだったのは David Bowie (デヴィッド・ボウイ) です。その前はやはり The Beatles (ザ・ビートルズ) や The Rolling Stones (ザ・ローリング・ストーンズ) などをよく聴いていました。

 

– 栗野さんにとって、ファッションとは?

簡単に言えるようなものではないですけど、一言でいうなら「自己表現」。自分が一体なにを考えているのかというのを外に伝えるのに適したツールだとおもいます。自分にとってはですけど。もちろん、世の中では別の解釈もあるとおもいます。

– 1989年の ㈱UA 設立メンバーのひとりということですが、設立当時から意識していたことはありますか?

ファッション小売業は、ひとりよがりになりがちなのです。自分のやっていることがすごくかっこ良いとおもったり、かっこ良い暮らしをしたいとおもってファッション業界に入る人が多いとおもいます。しかしそれは真逆で、私はよく「街の商店街」という言葉を使うのですが、どんなに企業が大きくなっても、「街の商店街」にある肉屋さんやパン屋さんの“オヤジ”みたいでいたいなと、当時からおもっています。

– クリエイティブ・ディレクションを発信するにあたって、流行の予測をしたり、先のことを考えたりしなければいけないとおもうのですが、情報収集や流行の予測はどのようにされているのでしょうか?

一日24時間、なにからでもヒントはもらえます。やはり一番多いのは新聞ですね。一日に3紙、一般紙と専門紙と経済紙を読みます。隅から隅まで読むわけではないですけれど。㈱UAでは、ソーシャルストリーム・イントゥ・ディレクションという、社会潮流からのディレクションをしています。例えば、「来年“赤”が流行りますよ」とか、「来年服のシルエットが丸くなりますよ」という前に、なぜ赤だとおもうのか、なぜシルエットが丸くなるのか、絶対に理由があります。それを探しにいく。僕らの服を買ってくれるお客様にとっては、なにが流行るとか、どのデザイナーがいま一番新しいかというよりも、自分の子どもを幼稚園に送っていかなければいけないとか、給料が上がるのかどうかなどといったことの方が絶対に気になるとおもうんです。

だからいまお客様・生活者が気にしていることを、新聞やニュース、あるいは美術館や雑誌など、あらゆるところから情報を収集して、ひとつのいまの消費者像というのを自分の中に作っていきます。一昨年だったら、その人たちは震災におののいていた人たちだっただろうし、最近ではアルジェリアで日本人人質が亡くなってしまった事件に心を痛めている人だろうと。その人たちがどういう服だったらお金を出して買いたいとおもうのか、それを探るというのが僕の作っていくクリエイティブ・ディレクションの骨組みです。

去年の12月に総選挙があり、参議院選挙が今年7月にありますけど、現在は保守政治が強くなっています。ファッションというのは、リベラルな政治のときには保守化し、コンサバティブな政治のときにはアヴァンギャルド化したクリエイションに向かうんです。私はいままで35年間、そういう風に分析してきましたし、わりと歴史と社会状況とかを関連付いて述べる人にはそういう見方する人が多いですね。

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栗野宏文 (くりの ひろふみ)
株式会社ユナイテッドアローズ
クリエイティブディレクション担当 上級顧問

1953年生まれ。主に東京・世田谷で育つ。中学・高校時代は音楽やイラストレーションに熱中。1977年からファッション業界に身をおく。

株式会社ユナイテッドアローズでは、長年にわたりバイヤーやブランドディレクターを担うと同時に、社会潮流を読みディレクションを発信する全社のクリエイティブディレクション担当上級顧問を務める。政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとして、またそこからファッションを読むファッションジャーナリストとして数々の連載寄稿・取材や講演を行なう。

国内外におけるファッション文化貢献活動にも参画。Royal Academy of Fine Arts Antwerp (アントワープ王立芸術アカデミー) では度々卒業ショーの審査員も務める。2004年には、英王立芸術大学院「Royal College of Art」からHonorary Fellowship(名誉研究員)を授与。現在日本ファッション・ウィーク推進機構 コレクション事業委員会 委員として東京コレクションの開催運営に関するアドバイザーや、国際的な服地見本市のプルミエール・ヴィジョン(PV)が2009年9月展から新設した、出展社の最新生地を対にした「PVアワード」の初代審査委員メンバーに就く。

UNITED ARROWS LTD.
URL: http://www.united-arrows.co.jp

 

 

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