Interview With Sousuke Ikematsu

PORTRAITS | Nov 29, 2018 10:29 PM
ここ数年、『永い言い訳』(西川美和監督/2016)『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也監督/2017)『万引き家族』(是枝裕和監督/2018) など、邦画の歴史において重要な意味をもつ作品に続けて出演。「インディペンデント」という言葉に本来の意味を取りもどすような存在感で、各作品の魅力を高めてきた俳優 池松壮亮にインタビュー。
Photo by Tetsuo Kashiwada

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祝・『斬、』公開!今回は、先日公開した監督インタビューの続編として、主人公の都築杢之進を演じた池松壮亮氏にご登場いただく。ここ数年、『永い言い訳』(西川美和監督/2016)『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(石井裕也監督/2017)『万引き家族』(是枝裕和監督/2018) など、邦画の歴史において重要な意味をもつ作品に続けて出演。「インディペンデント」という言葉に本来の意味を取りもどすような存在感で、各作品の魅力を高めてきた。そんな彼は、演者として本作や塚本晋也という監督をどのように見つめているのか。

 

—過去のインタビューを何本か拝読したんですが、池松さんは日本映画の縦軸、つまり歴史をすごく意識されていますよね。そんな池松さんから見て、塚本さんという映画監督はどういう存在として捉えていましたか?

スターです。会えるとも思っていませんでした。今の50代には才能のある方がゴロゴロいらっしゃるんですが、その中でも塚本さんが撮る映画は特殊。まるで発明家のようです。僕も学生時代に塚本さんの映画から色んなことを教わりました。『野火』(2014) のような監督作だけではなく、『沈黙—サイレンス—』(2016) での演技からも、本人の時代感覚を映画にぶつけているのが伝わってきた。今回、実際に一緒に撮影してみて、やっぱりびっくりするくらい映画作りの才能がある方でした。

—池松さんが塚本映画から教わったものとは、具体的に?

難しいですね……。塚本さんの映画には何回もドキドキさせられた。自分の脈を直接動かされたというか。映画の可能性を教えてもらいましたね。

—たしかに、塚本さんは予算や規模に関係なく、つねに映画を内側から拡張している印象があります。「こんな映画は観たことがないけれど、これが一番格好良いかもしれない」っていう。実は先日、塚本さんにも取材させていただきまして、その際に池松さんを起用した理由を訊いたんですね。そしたら「今の若者をリアルに感じさせてくれる俳優だから」という答えが返ってきたのですが、本人は意識していたところですか?

全然、理解はできます。少なくとも僕は何かを演じることを得意としていなかったし、むしろ、それってつまんないなと思っていた。大げさかもしれないですけど、自分が抱えている気分とか、それまで生きていて感じたことを、映画の中のキャラクターに乗せてきた。ただ、自分が鋭い時代感覚を持っているかと問われると、そうでもないんですけど (笑)。

—杢之進はどうしても人を斬ることに意義を見いだせなかった。つまり、人を斬ることが必然だった時代に個人がフィットしなかったわけです。それは、池松さんが今の時代に対して抱いている感情ともリンクしていましたか?

まさにそうですね。役のオファーをいただいた時、「これは他の人がやったほうがいい」と感じてしまうこともあるんですけど、本作に関しては「これは自分にしかやれないんじゃないかな」と確信を持っていました。今の20代でこの役を一番豊かにできるのは自分じゃないかと。27歳にして、ものすごい出合いを果たしてしまった気がします。

—つまり、今の時代に対する拒否感を持っている?

けっこうあります。ずっと。拒否感、違和感、不安、閉塞感……。まあ、「いや〜良い時代だね」「これから良い時代がくるね」なんて思ったことはない。すごく便利だとは思ったことがありますけど。そして、それって今を生きている自分にも跳ね返ってくる問題なんです。

Photo by Tetsuo Kashiwada

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—これはご本人もインタビューでお話されていたことなんですが、本作には今の社会情勢に対する塚本監督の感覚が反映されています。塚本さんは演者さんに対して、その個人的な思いを言葉にされていたんですか?

特にそういう説明を受けたことはありません。でも、今回のプロットにそれは明確に入っていたので、「これは時代劇であり、同時に現代劇でもある」とすぐに理解しました。

—池松さんも、今の時代が戦争状態に入りつつあることを実感していますか?

よっぽど目をつぶっていない限り、今はみんなその影を感じているんじゃないですか? 明日戦争が始まったっておかしくはない。実は、この映画を山形で撮影している時、人生ではじめてJアラート (全国瞬時警報システム:自然災害や弾道ミサイル発射の際に発動される警告システム) を聞いたんですよ。突然、みんなのスマホから一斉に鳴りだして。それが、北朝鮮がミサイルを飛ばした時 (2017年11月29未明のできごと。青森県西方の沖合約250kmに落下) だった。その体験が本作にはけっこう作用していて、そこで「1日でも早く発表しなきゃ」っていう気分を全員で共有したんだと思います。一本の刀、つまり鉄にまつわる話をつくっているさなか、空には巨大な鉄が飛んでいたわけです。もちろん地上からは全然見えないんですけどね。

—池松さんは『沈黙—サイレンス—』をご覧になられたということで、窪塚洋介さんが演じたキチジローの役から何かインスピレーションを得ましたか? というのは、私はキチジローと杢之進に同じような葛藤を感じていたんですよね。

まさかここでキチジローの話が出てくるとは (笑)。たしかに、キチジローも杢之進も「もう逃げてもいいよ」なんてことをたやすく言えない時代に生きていましたよね。だから、肯定と否定を行ったり来たりする。そして、僕が生きている今、平成の終わりにすべきことも、疑うこと、迷うこと、そして最後に否定すること。それが正解かどうかもわからないんですが。

 

『斬、』

©︎SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

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—日本独自のジャンルである時代劇を経験したことで、この世界の中で「日本人の俳優として日本映画ですべきこと」はある程度クリアになりましたか?

28歳でそれがわかったら、それは天才なんでしょうね (笑)。安易なことを言いたくないのが本音ですが、全てがグローバルになった今、時代劇はまちがいなく日本の特質として存在感を発揮していると思います。ああいうちょっと変な時代があって、その形を全うした人の美しさがあって。だけど、あくまで日本の誇るべき文化ではあるけれど、先人がやったことと同じことを丸々やるつもりはありません。これだけ時代劇の傑作がある中で、方程式や成功例に頼るべきではない。僕たちの手で一コマ進めないと。ノスタルジーを美化することは本当に恐ろしいことだと思うんですよ。今が平和だったらそれでもいいんですけど、良からぬ方向に向かっているのは間違いないから。

—まさに、池松さんがまるで現代人のように振る舞っているのが、この映画をもっとも異質たらしめているところだと思います。最後の質問です。池松さんは杢之進を演じるにあたって、直情的にアプローチしたのか、それとも分析的に組み立てていったのか、どちらでしたか?

僕は、杢之進の人物像を組みたてた上で、飛んだり跳ねたり叫んだり黙ったりしていました。だから後者ですね。誰かの脳内で一筋通るようなキャラクターは良くない。2時間やそこらで人のことなんて掴めないじゃないですか。破綻や矛盾も含めた人間性を表現できるのが俳優力、人間力というものだと思っています。だからこそ、感情だけでやってしまうのではなく、画面で見えない部分までよく意識して計算に入れるようにしています。

Photo by Tetsuo Kashiwada

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<プロフィール>
池松壮亮 (いけまつ そうすけ)
1990年7月9日生まれ。福岡県出身。『ラスト サムライ』(2003) で鮮烈のデビュー。以来、さまざまな作品でその圧倒的な演技力で観客を魅了している。2014年には『紙の月』、『愛の渦』、『海を感じる時』と注目作品に次々と出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞、ブルーリボン賞助演男優賞等を受賞。2017年には『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』に出演し、第9回TAMA映画賞にて最優秀男優賞、第39回ヨコハマ映画祭にて主演男優賞を受賞。2018年は第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した『万引き家族』に出演したほか、『君が君で君だ』、『散り椿』と多数の作品に出演している。

作品情報
タイトル 斬、
監督 塚本晋也
出演 池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
配給 新日本映画社
製作年 2018年
製作国 日本
上映時間 80分
HP zan-movie.com
©︎SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
11月24日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国公開
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