Interview With Cigarettes After Sex

PORTRAITS | Jan 8, 2019 9:00 PM
聴く者を包むようなシルキーな歌声と空間いっぱいに広がるリヴァーヴィーなギターとシンセ。2012年のデビューEP『I.』リリースからじっくりと、そして確かに音楽ファンの心を掴んできた Cigarettes After Sex (シガレッツ・アフター・セックス)。同時代のバンドに例を上げようとすればトーンの近しいものはいくつかあげられるが、彼らがが埋没することなく支持を集め続けたのは何故なのか。リリックとアンサンブルの妙、オリジナリティの源泉に迫るべく、バンドの首謀者 Greg Gonzalez (グレッグ・ゴンザレス) に話を聞いた。
Photo by UTSUMI

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聴く者を包むようなシルキーな歌声と空間いっぱいに広がるリヴァーヴィーなギターとシンセ。彼らのバンド名よろしく、それぞれの部屋で適切な時間帯に鳴り続けてきたであろう Cigarettes After Sex (シガレッツ・アフター・セックス)。アメリカはテキサスでフロントマンの Greg Gonzalez (グレッグ・ゴンザレス) が恋人とのロマンスの情景描写を映画的に描いたep『I.』(2012) をリリースしてから4年。大手音楽メディア『Rolling Stone』で2016年に取り上げられて以降、暗がりを照らすロウソクの明かりのように静かでも確実に世界中の音楽ファンの夜を灯してきた。一昨年リリースされたバンドと同名のデビュー・アルバム『Cigarettes After Sex』で世界的にデジタルヒットチャートの上位に躍り出た。同時代のバンドを例に挙げようとすればトーンの近しいものはいくつかあげられるが、彼らが埋没することなく支持を集め続けたのは何故なのか。リリックとアンサンブルの妙、オリジナリティの源泉に迫るべく、バンドの首謀者 Greg Gonzalez に話を聞いた。

 

 

—今回のアジアツアーの調子はどうですか?

とてもいいと思います。アジアのファンは高い熱量で僕たちのことを迎え入れてくれるから、毎回嬉しくて。2013年に描いた楽曲群が、時間差でここまで注目されるとは思っていなかったので、今こうして与えられた環境が正直今でも不思議に思う気持ちがあります。

—一昨年リリースされたアルバムのリードトラックともいうべき『K.』や『Apocalypse』などについて質問があります。どちらも描写がとても具体的でロマンスのあるシチュエーションをシネマティックに描いているように思います。なぜ作品を通じてそうしたセクシャルでロマンスのある瞬間を描き出そうとするのでしょう?

音楽を作るときは自分が視覚的に捉えたものを音楽に置き換えて表現しているんです。やっぱり自分の頭の中にある記憶が映像として頭の中に残ってますし、常にそういう映像に引っ張られるように、音楽のアイデアが出てくるんですよ。視覚で捉えた記憶やフィーリングを音にしてるから、シネマティックでコンセプチュアルなものが生まれると思います。映画も大好きですし、僕たちの作品がシネマティックと言われるのは納得がいくところですね。

—自分たちの音楽もそういったロマンティックなシチュエーションや寝室で流れていてほしいと思いますか?海外のインタビューで自分は眠りにつくためにドラッグはやらない、音楽を聴くんだという発言をされていたので。そういう処方箋のような音楽を作りたいと考えているのかなと予測していたのですが。

まさしくその通りですね。悲しいことがあって傷ついている時、眠りにつけないようなことって誰しもがあると思うんです。そんなときにいろんなアーティストのレコードに何度も辛い夜に救われてきた経験があります。音楽には辛い夜を乗り越える手助けをする力があるものだと信じているんですよ。だから自分もそういう処方箋のような音楽を作りたいと思うのは、自然なことでした。今も寝室のキャビネットに沢山のレコードを置いているくらいですからね (笑)

—ともすれば、そうした音楽を目指した場合音像のトーンが統一されて単調になってしまいそうですが、Cigarettes After Sex がオリジナリティを保てているのは何故でしょう。

それは色々なジャンルの音楽のそれぞれのアプローチに影響を受けているからだと思います。例えば Erik Satie (エリック・サティ) のシンプルでスローなピアノであったり、Steve Roach (スティーヴ・ローチ) のダーク・アンビエントだったり、Brian Eno (ブライアン・イーノ) のオーケストラっぽいシンセの使い方とか。あとは…クラシックだとショパンのシンフォニックなストリングスの使い方とか。そういう音楽から自分のなかに取り入れたいと思うものがあったら、どんどん試すようにしているんです。ギターの音色ひとつにしても、そういう積み重ねがあるから独自の質感が出せるんじゃないかと思っています。あとは全然違うところで、リスナーとしてデスメタルだって聴くし、Michael Jackson (マイケル・ジャクソン) や Madonna (マドンナ) のようなポップスも好き。共通しているのは、時代の移り変わりに左右されないタイムレスな作品の価値を知ることなのかなと思います。

—タイムレスな作品の価値ですか。

そう。先程挙げた Erik Satie なんか特にわかりやすい例じゃないでしょうか。シンプルなピアノで、懐かしい感じがありながらも今聴いてもモダンな気もする。何回聴いてもいつの時代に作られたものかわからない。そういう作品を自分達は作りたいんですよね。どの時代に作られたものか簡単に予測できないようなもの。そういうフィーリングを出すことがこのバンドで達成したいことのひとつだと言えます。

Cigarettes After Sex

Cigarettes After Sex

—昨年リリースされた『Crush』と『Sesame Syrup』について制作の背景を教えてください。

この2曲は実は前作製作中の2015年の12月にレコーディングしたものだったんです。当時14曲ほどレコーディングしたけれど、やっぱりアルバムにするには長すぎると感じました。なので仕方なく4曲削って、10曲入りのアルバムにしたんです。今年リリースされたのは、その未発表だった音源から選んだ2つです。この2曲は時間が経ってもタイムレスに良い曲だと感じられたし、世の中に出したいなと。書いたのは、2013年のことだから、もう5年も前になるんですよ。

—デビューアルバムの反響を受けて、世界を巡る長いツアーを行うことで自分の考え方や楽曲制作のスタンスに変化はありましたか?

実はそんなに楽曲制作のやり方に変化はなくて。皆で一緒に作るんですけど、その中で生まれていくフィーリングをそのまま表現するというスタンスに変わりはないですね。

—同じフロアでの一発録りにもこだわってるというお話を、過去のインタビューで読みましたが。そのスタイルを変えず自分の中にある描き出したいシチュエーションの描写の表現力を高めている感じでしょうか?

その通りですね。ライブ・レコーディングという手法は自分達の中でも特別なものなんです。50年代のロックンロールやポップミュージック、あるいは Frank Sinatra (フランク・シナトラ) が表現していたような空間の中でしか起こりえないスペシャルなフィーリングや空気を閉じこめることができるんです。今自分達が作っている楽曲も以前より描きたい瞬間を精緻に捉えられるようになってきたと思いますね。

—前作の発売から丸2年。今後どんな展開が待っているのでしょうか?

自分達が作った音楽を持って世界を回ることは、自分の考え方・人生に大きな影響を与えるものです。今もなお自分の記憶や思い出をベースにした楽曲制作を続けているので、今出てくる楽曲というのは、『Cigarettes After Sex』のアルバムを世の中に出して、リスナーからの嬉しい反応を受けて以降の僕たちの旅の大きな一枚の写真みたいなイメージですね。実は去年にスペインで録音したものがあるんですそれをまとめて来年の夏頃にはリリースできたらいいなと思います。

—きっとグルーヴがより強靭な作品になっているのでしょうね。そして今回の来日もその旅の記憶の一つになると。

そうなるといいですね。

Photo by UTSUMI

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<プロフィール>
Cigarettes After Sex (シガレッツ・アフター・セックス)
2008年、フロントマンの Greg Gonzalez (グレッグ・ゴンザレス) を中心に米テキサスのエル・パッソにて結成されたドリーム・ポップ/アンビエント・ポップ・バンド。2012年に発表したEP『I.』が2016年に突如話題となる。ローリング・ストーン誌の「2016年知っておくべき10のアーティスト」に選出され、ライブはアメリカやヨーロッパで即完売に。アルバムリリースに先駆けて原宿 Astro Hall (アストロ ホール) にて行われた初来日公演はソールドアウトとなった。 2017年6月、全世界待望のデビュー・アルバム『Cigarettes After Sex』をリリースし、世界15カ国の iTunes オルタナティブ・チャートでTOP10入り。同年8月開催の HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER (ホステス クラブ オールナイター) で再来日を果たした。2018年、7月の2曲入りのシングル『Crush』をリリース。

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