Interview With Deerhunter

PORTRAITS | Feb 8, 2019 9:00 PM
老舗インディ・レーベル 4AD 設立40周年を記念したショーケースイベントにて来日した Deerhunter (ディアハンター) のフロントマン Bradford Cox (ブラッドフォード・コックス) にインタビュー。リハーサル後の控え室にて、短い時間ながらも語ってくれたのは、今作の楽曲製作のインスピレーション、過去の楽曲群を今に披露することの意味、バンドやファンへの信頼、そしてアーティストとして今抱いている時代への危機感について。
Photo by Toshio Ohno

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思えば、常に危うげな雰囲気を纏うロックスター然としたアーティストを見る機会が少なくなった。そんななか、Deerhunter (ディアハンター) のフロントマン Bradford Cox (ブラッドフォード・コックス) は今どき珍しい “アーティスト” と言うことができるだろう。世界の終末後の有り様を描いたようなオリエンタルなムード漂う最新アルバム『Why Hasn’t Already Disappeared?』は Jean Baudrillard (ジャン・ボードリヤール) の詩世界や、Percy Bysshe Shelley (パーシー・ビッシュ・シェリー) の詩「オジマンディアス」(見知らぬ地で見知らぬ人に出会い、その見知らぬ人がいかに自分の王国や都市が素晴らしいかということを主人公に話すけれど、そこはもう砂に埋もれてしまった…という詩) に共鳴して作られたという。今作も過去作同様、どこか死の影や退廃的な世界を想起させる言葉が並ぶ。にもかかわらずその音像や醸し出すフィーリングに閉塞感は不思議とない。これは彼やバンドの成長によるものか、それとも精神的な困難を通過してきたことによるものなのだろうか (昨年11月に2012年まで Deerhunter を支えてきたベースの Josh Fauver (ジョッシュ・フォーバー) が死去している)。はたまた、今作で多用された様々な楽器の効果によるものか。

渋谷 O-EAST にて行われる老舗インディ・レーベル 4AD 設立40周年を記念したショーケースイベントを控え、リハーサル後に案内された楽屋では、Bradford Cox 本人が衣装だらけの部屋を行ったり来たりしていた。時折長椅子に座ったかと思えば、インタビュー後に控えたシューティング用の衣装を気にしてか何着か着替えをはじめたりしていた。これが彼の普段通りなのかどうかは解らないが、それでも『気にしないで質問を続けて! ちゃんと聞いてるよ』といった具合で、オープンな心持ちでこちらの質問に耳を傾けてくれる。短い時間の対話ではあったが、彼の口から飛び出したのは今作の楽曲製作のインスピレーション、過去の楽曲群を今に披露することの意味、バンドやファンへの信頼、そしてアーティストとして今抱いている時代への危機感について。散文的ではあるが、一度話しだすと熱を帯びて止まらない様子で語りかけてくれた。

 

—今作『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』はこれまでと比べて、ハープシコードやチェンバリン、そしてシンセが効果的に用いられているアルバムでした。なぜサウンドのバリエーションが増えたのでしょうか?

僕はスタジオに入る前に、何かを予め想定してやるということは一切しないんだ。画家が白いキャンバスの前に臨んだときに、『よし、今日は黄色を使おう』と思い至る感じに近いかもしれない。だから自分がどんな楽器を使うかは、その瞬間が来るまで分かっていないんだよ。そういう意味で“今作では楽器を沢山使おう”というテーマがあった訳ではないんだ。

—“暴力” “死” などを引き続きモチーフにしているなかでも、音像に今までにない風通しの良さを感じました。バンドのどのような要素がこの効果を生んでいるのでしょうか?

(まじまじとこちらの目を見つめながら) へぇ〜、そう聴こえたんだ。面白い意見だね。個人的にはむしろ継ぎ接ぎだらけの “酷さ” や “汚さ” のある音を創造したいと思って今作を創ったんだ。

—ミキシングデスクにギターを直刺しするという新しいスタイルを実践されたんですよね。

そうそう。多分こういう創り方を選ぶ感覚は “侘び寂び” の美意識に近いものがあるかもしれないな。“金継ぎ” をする日本人の美学というか。“金継ぎ” って古く壊れたものを再び今に甦らせる技術だよね。その美的センスに近いと思えるんだ。…誤解してほしくないのは、今僕が日本にいるからおべっかで言っている訳でもなんでもなく、日本の美意識からの影響は本当のことで。だって実際に3作品くらい金継ぎされた陶器の作品を持っているからね。今回の来日でも古いグラッフィックアーティストの画集を沢山買ったんだ。音楽以外でそういうものを参考にすることが多いかな。

Photo by Toshio Ohno

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—音像にしても今日のお召し物にしてもうまくコラージュしている感覚というか。古いものを現代にいかに応用するかに関心があるということですね?

そのとおりだね。アンプやスピーカー、そしてファッションのテキスタイルにしても新しいものに本当に惹かれなくなってしまった。レコーディングの機材や方法論にしても同じで。だから通常とは全く違うやり方を採用したんだよ。

—レコーディングプロセスにおけるモダンなテクノロジーやスタイルへの抵抗という意味では、“終末的な世界感” をモチーフにしたアルバムとの重なりを感じます。

アルバムのモチーフのビジョンはすごくナチュラルな形で浮かんで来た。言葉で説明するのは難しいけれど、日々世界中で起きている予期せぬニュースによってもたらされているものかもしれないし、今の時代を生きていく中で全く別のところからインスピレーションを受けたものもあるかもしれない。

—たとえば『Microcasle』(2008) のリリースや、ご自身のソロプロジェクト Altas Sound (アトラス サウンド) の『Logos』(2009) から10年経って、あの頃描いた退廃的な世界の様相や感覚が、より現実的に感じられるようになったというのはありますか?

うーん、それはまったく別のものだな。僕にとって当時描こうとしていた感覚や感情は大切な記憶の結晶であるけど、ノスタルジーに浸る類のものではないんだ。当時の楽曲についてはあくまで楽しみを感じながら、今演奏しているよ。“Nothing Ever Happened” にしても、過去にあった感情を遡ることをしないで、今ここにあるフィーリングを立ち上らせることを大切にしているというか。

—直近のライブ動画を見させてもらうと、バンドとしてのパフォーマンス自体もよりアグレッシブなものになっているように感じて。メンバー間のフィーリングが向上しているのでしょうか?

これだけ長いことバンド活動を続けているから自信がついたというのが大きいだろうな。バンドに向けられる批評や批判に対して、あんまり気にしないでやれるようになってきたのもあるかもしれない。ドラマーの Moses Archuleta (モーゼス・アーチュレッタ) の出すフィーリングも素晴らしいし、みなそれぞれの音を一生懸命理解しようとしている。ただ目の前のオーディエンスをハッピーにすることだけを考えているよ。

Photo by Toshio Ohno

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Photo by Kazumichi Kokei

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—“ハッピーにする” という言葉が出ましたけど、これまでの作風から考えるとリスナーを高揚せることに感心があるのが意外な気もしました…。

だってお金をわざわざ払って観に来てくれている人たちをガッカリさせたくないからね。特にパリ、ロンドン、東京、LA、NY とかはチケットが高いから、それでもお金を払ってライブを観に来てくれた人たちを楽しませたいという気持ちが湧くのは当然でしょ? あとは、今の自分がやれる最大限を毎日素直にやることを大事にしているというか。そのシンプルな考え方が今の自分達の在り方につながったかな。

—毎日やれることを素直にやる。

そう。実は以前アメリカのメディアで “自分はデヴィッド・ボウイに近い存在” と言って批判されてしまったことがあるんだ。でも自分って音楽以外にもファッション、映画、文学とか色んなことに興味があって、そうだという意味で話したんだけど。

—彼もまた音楽以外のところから、多大なインスピレーションを受けている一人ですもんね。

そう。だから他意はないんだ。最近思うんだけど思ったことを皆ハッキリと言わなくなってきているでしょ?誰かから『傲慢だ』と非難されてしまうのを恐れて、優雅な感じで黙ってやり過ごすのに慣れてしまっているんだ。でもそれはアイデアのないことで、何にも起きなくなるんだよ。なーんにも!

—確かに。それは一つの問題というべきテーマですね。

世の中全体が “親切で安全であるべき” と思うなら別だけど、それってすごく退屈なことじゃない? 少なくとも僕にとって、みんながみんな礼儀正しくて、感じよく生きるのって、退屈だと思うんだ。僕が知っている世界の在り方はそんなんじゃない。幼少時代の自分や今大人になってからの言動を振り返ってみてもね。だから僕としては毎日素直に言いたいことを発言して活動して、そういう中からアートというものを感じていきたい。それだけなんだよ。

Photo by Toshio Ohno

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<プロフィール>
Deerhunter (ディアハンター)
2001年にジョージア州アトランタにてフロントマンの Bradford Cox (ブラッドフォード・コックス) と Moses Archuleta (モーゼス・アーチュレッタ) によって結成されたロックバンド。2007年にリリースした2ndアルバム『Cryptograms』がピッチフォーク・メディアなどで高く評価され、Bradford Cox のソロプロジェクト Altas Sound (アトラス サウンド) 共々 4AD と契約を結ぶ。今年1月、最新アルバム『Why Hasn’t Already Disappeared?』をひっさげて、レーベルの40周年を記念したショーケースイベントのために来日。名古屋、大阪、東京の3都市にて 4AD 所属アーティストたちと共に熱狂的なライブパフォーマンスを行った。

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