A retrospective of Japanese young adult fashion from 2000-2010

00年代から10年代にかけての、20代若者のファッション志向の変化を読む

A retrospective of Japanese young adult fashion from 2000-2010
A retrospective of Japanese young adult fashion from 2000-2010
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00年代から10年代にかけての、20代若者のファッション志向の変化を読む

A retrospective of Japanese young adult fashion from 2000-2010

by The Fashion Post

00年代から10年代へと時代は変わり、ファッションにも間違いなく大きな変化の時期にさしかかっている。今回はその中でも、その時代のファッションをいつもリードしている20代前半にフォーカスして、プリクラ世代(現在26~35歳)とハナコジュニア世代(現在20~25歳)のファッションについてのマインドと楽しみ方の特徴を考えてみたいと思う。

00年代から10年代へと時代は変わり、ファッションにも間違いなく大きな変化の時期にさしかかっている。今回はその中でも、その時代のファッションをいつもリードしている20代前半にフォーカスして、プリクラ世代(現在26~35歳)とハナコジュニア世代(現在20~25歳)のファッションについてのマインドと楽しみ方の特徴を考えてみたいと思う。

振りかえると00年代は、カジュアルなアイテムとドレッシーなアイテムをあわせる、ロックとフォークロアなど異なるテイストを織り交ぜて着る、といったよ うに、相反する要素を足し引きする「ミックスファッション」の時代だったといえる。ところが、10年代に入り、時代はミックスから「ワンテイストファッ ション」へと大きくシフトしている。昨今のトレンドでは「バナル=普通のものをきちんと着ること」が注目され、「OJI(オジ)ファッション(チノパンやツイードのジャケット、ネクタイなど、オジサンが愛用しているようなオーソドックスなアイテムを取り入れた女の子のコーディネートのこと。)」や「レトロファッション」が登場し、ストリートでは50年代・70年代風のノスタルジックなファッションに身を包んだ人々をたくさん見かけるようになっている。こうしたことも、1つの世界観で全身を固めるスタイルが男女ともに急速に浸透していることを表している。

参考までに、伊藤忠ファッションシステム(ifs)では時代背景や消費の自己裁量権を獲得した時期に応じて世代を10に分け、その価値観や消費性向を分析している(以下参照)。

〜プレバブル世代〜

<キネマ世代(67~76歳)>
戦前、戦中の価値観を持ち、何事も「世間体」や「人並み」を重視する世代
■1936~45年生まれ
■約1600万人

<団塊世代(61〜66歳)>
戦前、戦中の価値観を持ち、何事も「世間体」や「人並み」を重視する世代
■1946~51年生まれ
■約1220万人

<DC洗礼世代(54〜60歳)>
モノによる個性の発揮と他人との差別化を重視した最初の世代
■1952~58年生まれ
■約1150万人

<ハナコ世代(48~53歳)>
価値観はDC洗礼を踏襲するが、バブル景気下で「人との差別化」がより顕著な世代
■1959~64年生まれ
■約950万人

<ばなな世代(42~47歳)>
バブルの果実も余波も直接受けず、客観的。消費や生き方に対して柔軟かつ堅実な世代
■1965~70年生まれ
■約1055万人

ポストバブル世代

<団塊ジュニア世代(36~41歳)>
生まれた時から生活環境が豊かで、消費に対して貪欲ではないが、こだわりを持つ世代
■1971~76年生まれ
■約1160万人

<プリ上世代(31~35歳)>
旬な今を楽しむ気持ちや仲間意識が強く、ギャルなど独自のカルチャーを生み出した世代
■1977~81年生まれ
■約822万人

<プリ下世代(26~30歳)>
プリ上の作った流れに乗っかる他力本願。客観的でハズさない消費を志向する世代
■1982~86年生まれ
■約739万人

<ハナコジュニア世代(20~25歳)>
親ハナコのミーハーさにはいたってクール。置かれた状況を最適化しつつ、損しない消費を志向する世代
■1987~92年生まれ
■約760万人

<ばななジュニア世代(19~14歳)>
ゆとり教育の影響を大いに受ける。状況を肯定し、つつがない毎日を暮らすことを楽しさとする世代
■1993~98年生まれ
■約725万人

(引用)ifs世代区分

 

この変化を後押ししているのが、マーケットの主役交代だ。00年代の終わりから10年代の初めにかけての時期は、ちょうどプリクラ世代(1977年~86年生まれ、現在26~35歳)半数が20代後半~30代となり、ハナコジュニア世代(1987年~92年生まれ、現在20~25歳)が20代前半を占める時期と対応している。これは「トレンドの牽引役=その時代の20代前半」がプリクラ世代からハナコジュニア以降の世代へとバトンタッチされたことを意味している。ここで、それぞれのファッションに対するマインドと楽しみ方の特徴を見ておこう。

まず、プリクラ世代のファッションは、00年代前半のセレクトショップブームを経験したということもあり、自分の感性や価値観に合うものを「編集=ミックス」して取り入れる、「編集感覚&バランス」が特徴になっている。ポイントは「足し引き」の感覚であり、「かわいいものにかっこいいもの」、「エレガントなものにカジュアルなもの」など、相反する要素を合わせることでのバランスを大切にしたファッションを楽しむ。特に、女性では、エレガントをカジュアルダウンする「ダブルエッジ」の時代におしゃれに目覚めたこともあってそういうスタイルが基本になっている。

 

一方、ハナコジュニア世代のファッションはコスプレ感覚&トゥーマッチが特徴で、その日の気分や一緒に過ごす相手に合わせてコスプレ感覚でファッションを楽しみ、スタイリングもミックス・足し引きではなく「ワンテイスト=1つの世界観にはまりきる」。トレンドのアイテムやモチーフを全部「盛り」、大きなヘッドアクセサリーややりすぎギリギリのリメイクアイテムなど、デコラティブな分かりやすいアイテムを気後れすることなく取り入れていて、アニメやゲームの世界から抜けでてきたキャラクターのような姿をしている人を見かけることも少なくない。

以上のような世代のファッション特徴をふまえると、ワンテイストファッションのトレンド化は、送り手側の仕掛けによって作られた面もあるものの、1つの世界観やテーマのもとにファッションを楽しむ志向の強いハナコジュニア世代がマーケットの主役を占める年ごろとなり、彼らの感性に「ワンテイスト」がぴったり合っていたために、よりいっそう加速していると考えられる。トレンドの流れが大きく変わったと評される2012‐13AWコレクションでも、インパクトを放っていたのはマーク・ジェイコブスやルイ・ヴィトンに代表されるような強い装飾性や物語性であり、そのエッセンスは間違いなくハナコジュニア世代が中心となった今後のマーケットに受け入れられていくだろう。世代のマインドと照らしあわせながら、これからの20代が切り拓いていくファッションとマーケットの動きにこれからも注目したい。

中村 ゆい
2008年一橋大学大学院社会学研究科修士課程終了、同年伊藤忠ファッションシステム(株)入社。生活者の「見た目」と「気分」を切り口に、消費や市場の動向を分析している。現在は主に、生活者の気分を視点として次代の消費を分析する、異業種の企業からなる会員制マーケティング組織「ファッションアスペクトクラブ(通称FAクラブ)」の運営、および食品・流通・家電・自動車・住宅などの国内外の企業とブランド開発・デザイン開発などのプロジェクトに携わっている。

伊藤忠ファッションシステム: http://www.ifs.co.jp
FAクラブ: http://www.ifs.co.jp/link/fa/fa.html