Interview with Chikashi Suzuki, Photographer / Structuring Fashion Photographs Part 1

PORTRAITS | Jun 24, 2014 12:45 PM
90年代半ばから、フランスの雑誌『Purple (パープル)』を拠点に、インターナショナルな活動を続けている写真家・鈴木親 (すずきちかし)。ファッションとアートとストリートの境目を縦横無尽に行き来しながら独自の作風を確立させ、作家としての高い評価を勝ち得てきた。鈴木氏は写真を撮るのみならず、ファッションブランドにコラボレーションワークを仕掛けるなど、クリエイションの現場そのものから作り上げていくパワーとネットワークを持つことでも一目置かれる存在だ。伝説の編集者として語り継がれる故・林文浩=『DUNE (デューン)』編集長には、「日本で唯一のファッション・フォトグラファー」といわしめたこともある彼に、ここではそのファッション写真のロジックについて話を聞く。

取材・文: 合六美和  写真: 鈴木親  英語翻訳: Oilman  取材協力: montoak

 

90年代半ばから、フランスの雑誌『Purple (パープル)』を拠点に、インターナショナルな活動を続けている写真家・鈴木親 (すずきちかし)。ファッションとアートとストリートの境目を縦横無尽に行き来しながら独自の作風を確立させ、作家としての高い評価を勝ち得てきた。

鈴木氏は写真を撮るのみならず、ファッションブランドにコラボレーションワークを仕掛けるなど、クリエイションの現場そのものから作り上げていくパワーとネットワークを持つことでも一目置かれる存在だ。

伝説の編集者として語り継がれる故・林文浩=『DUNE (デューン)』編集長には、「日本で唯一のファッション・フォトグラファー」といわしめたこともある彼に、ここではそのファッション写真のロジックについて話を聞く。

 

(第1回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の構造
(第2回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親が犯すタブーとロジック
(第3回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の9.11以後
(第4回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/フォトグラファーとデザイナーの関係

 

– ずばり本題から入りますが、今のファッション写真を取り巻くシーンを、親さんはどう捉えていますか?

基本、海外の話になります。海外ではファッションとアートと映画、それぞれのシーンにいる人たちが、みんなフラットにつながっています。ファッションのパーティに行けば、そこにはアートの人も映画の人も来ているのが普通の風景です。最近だと Harris Savides (ハリス・サヴィデス) がいい例だと思う。

彼はもともと Gus Van Sant (ガス・ヴァン・サント) 監督のチームメンバーで、最近では Sofia Coppola (ソフィア・コッポラ) 監督の『SOMEWHERE (サムウェア)』や、最新作『The Bling Ring (ブリング・リング)』なども手掛けている撮影監督ですが、彼が撮る映像ってちょっとだけファッショナブルに見えたりするんです。本人はいたって普通のおじさんだしファッションの人では全然ないけど、Gucci  (グッチ) のコマーシャルを撮った経験もあるから、ファッションのツボを知っています。

 

Photography: Chikashi Suzuki

Photography: Chikashi Suzuki

 

– 日本ではどうでしょうか?

日本では、ファッションとアートと映画の人が、残念ながら全部離れています。さらに写真に絞っていうと、フォトグラファーのトップといえば、広告カメラマンということになっていますよね。つまりファッション誌は多くのフォトグラファーにとって、トップに至るまでの登竜門でしかない。ファッションでいい写真を撮ることが目標ではないから、簡単にそれっぽい写真を撮ってしまっていることが多いし、そこでオリジナリティを追求するプライドだったりモチベーションがあまりないわけです。

 

– 写真の方法論はすべてやり尽されたともいわれる今、オリジナリティはどのようにして生まれ、評価されるのでしょうか?

今トップフォトグラファーといわれる人たちは、模写のようなことを必ずやっています。たとえば Inez van Lamsweerde & Vinoodh Matadin (イネス・ ヴァン・ラムスウィールド&ヴィノード・ マタディン) は Irving Penn (アーヴィング・ペン) を、Guy Bourdin (ギイ・ブルダン) や Terry Richardson (テリー・リチャードソン) は Helmut Newton (ヘルムート・ニュートン) を模写しています。Juergen Teller (ユルゲン・テラー) もそうで、Newton が油絵みたいにべったりと色味の強いカラーポジでやっていたものを、Juergen は CONTAX G2 などのコンパクトカメラで撮ることで水彩画のように浅い写真にしている。

そうやってクラシックを理解した上で、彼らはそれぞれ自分のテイストを1ヵ所だけ入れて、独自の方法論を表現しているんです。そうするとアプローチが同じでも、違う表現になりますよね。写真におけるオマージュの入れ方は、映画とも近いです。Spike Jonze (スパイク・ジョーンズ) や Harmony Korine (ハーモニー・コリン) の映画を見ると、その構造がよくわかります。

 

– 確かに海外のトップフォトグラファーは、写真のテイストがそれぞれはっきりしていますね。

若い時にある程度認められたら、その芸風で一生やっていくというのが海外。それらの芸風をコピーしてそのまま雑誌に出すのが日本。

 

– 最近は Ryan McGinley っぽい写真、さらにいうなら鈴木親さんっぽい写真も、ファッションヴィジュアルのトレンドになっている気がします。

誰かが Ryan McGinley をコピーしたとします。海外なら、そもそも掲載前に編集者がはじきますが、仮に掲載に漕ぎ着けたところでそっちのほうが大変です。その人は一生かけて、Ryan のコピーと言われ続けてしまう。Terry Richardson 風の写真というのも最近よく見かけますよね。○○っぽいというのはもちろん海外でもあることですが、Terry っぽいというところでいうなら、似たようなテイストを持つ Kenneth Cappello (ケネス・カッペロ) というフォトグラファーは、きちんと住み分けをしています。Terry は第一線で活躍し、Kenneth はもう少しファッション寄りで Terry ほどはエグくないところがキレイに撮れる。Terry がいるという大前提があった上で、Kenneth がいるだけです。

日本の場合はその境界線がすごく曖昧で、同じフォトグラファーが急に芸風の違う写真を撮ったりしています。今店頭に並んでいる雑誌でも、Juergen Teller が手掛けた Marc Jacobs (マーク ジェイコブス) の 2013 S/S キャンペーンを、そっくりそのままのコンセプトで他のハイブランドにコピーしている写真が平気で出ていたりするからびっくりしますよ。海外だと100%あり得ない。作品に模写するのだったらいいけど、お金をもらって自分のクレジットを出すというのは、悪くいうと泥棒と同じです。アジア圏の中で優秀なフォトグラファーになれたとしても、ヨーロッパでは絶対対等に扱われない。

外国からファッションチームがシューティングに来る時、声が掛かるのはまず荒木経惟さんか森山大道さんであることを考えれば、わかりますよね。彼らは決してファッションの人ではない。でも、絶対的なオリジナリティを持っているから認められる。

 

Photography: Chikashi Suzuki

Photography: Chikashi Suzuki

 

– コンセプトありきの写真はどうでしょう?

畠山直哉さんなど一部の写真家を除いて、なかなか難しいですよね。もともとあるものを撮るという制限がある以上、表現としてはどうしても弱くなります。コンセプトありきでいきたいなら、写真よりも絵のほうが強い表現になると思います。写真の場合は、ちょっとハプニングが入ったほうが面白くなる時があるし、その曖昧さが写真の良さでもあるから。

ひとつのコンセプトを成立させた上でファッションを撮っていくという、Richard Avedon (リチャード・アヴェドン) のような例もあります。なぜ Avedon がすごいのかというと、彼はハリウッド俳優からホームレスまで、全員を白バックの同じフォーマットで撮った。それが1冊の本になった時、人としてみんな同じに見えるというコンセプトがあったんです。この一連のポートレート写真があった上に、Versace  (ヴェルサーチ) のキャンペーンヴィジュアルが生まれたのだという Avedon のルーツを、彼の写真を真似したい人は必ず知っておくべきです。

 

– 親さんの写真は、日本よりも海外の雑誌で多く見かけますが、意識的に仕事をする場所を選んでいるのでしょうか?

日本では僕、しばらく業界から干されていましたからね。いろいろありましたが、未だに忘れられないのが、某ファッション誌の巻頭ストーリーで僕の作品が丸ごとコピーされたこと。本当に信じられなくて、そのフォトグラファーには直接抗議の電話を入れました。そりゃ僕、嫌われますよね (苦笑)。でもそのくらい僕は真剣だったし、お金がない中必死で撮っていた。

海外ではいろんな写真を見たし、現場も見てきました。だから誰が何をどう置き換えて表現しているのか、そのロジックや構造がわかる。だから僕は意識的にコピーしないということができる。ある意味、すごく不器用です。

(第1回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の構造
(第2回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親が犯すタブーとロジック
(第3回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の9.11以後
(第4回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/フォトグラファーとデザイナーの関係

 

鈴木親 (すずき・ちかし)
1972年生まれ。96年渡仏し、雑誌『Purple』で写真家としてのキャリアをスタート。『Purple』(仏)、『i-D』(英)、『Dazed & Confused』(英)、『CODE』(オランダ)、『Hobo』(カナダ)、『IANN』(韓)、『honeyee.com』(日)、『GQ』(日)、『commons&sense』(日)、『Libertine / DUNE』など国内外の雑誌で活動。Issey Miyake、United Bamboo、Toga などのワールドキャンペーンを手掛ける。主な作品集に『shapes of blooming』(treesaresospecial刊/2005年)、『Driving with Rinko Kikuchi』(THE international刊/08年)、『CITE』(G/P gallery刊、09年)など。

Blog: http://blog.honeyee.com/csuzuki
Twitter: https://twitter.com/chikashisuzuki

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