Interview with Chikashi Suzuki, Photographer / The Logic behind Breaking Taboos Part 2

PORTRAITS | Jun 26, 2014 11:50 AM
90年代半ばから、フランスの雑誌『Purple (パープル)』を拠点に、インターナショナルな活動を続けている写真家・鈴木親 (すずきちかし)。ファッションとアートとストリートの境目を縦横無尽に行き来しながら独自の作風を確立させ、作家としての高い評価を勝ち得てきた。鈴木氏は写真を撮るのみならず、ファッションブランドにコラボレーションワークを仕掛けるなど、クリエイションの現場そのものから作り上げていくパワーとネットワークを持つことでも一目置かれる存在だ。伝説の編集者として語り継がれる故・林文浩=『DUNE (デューン)』編集長には、「日本で唯一のファッション・フォトグラファー」といわしめたこともある彼に、ここではそのファッション写真のロジックについて話を聞く。

取材・文: 合六美和  写真: 鈴木親  英語翻訳: Oilman  取材協力: montoak

 

90年代半ばから、フランスの雑誌『Purple (パープル)』を拠点に、インターナショナルな活動を続けている写真家・鈴木親 (すずきちかし)。ファッションとアートとストリートの境目を縦横無尽に行き来しながら独自の作風を確立させ、作家としての高い評価を勝ち得てきた。

鈴木氏は写真を撮るのみならず、ファッションブランドにコラボレーションワークを仕掛けるなど、クリエイションの現場そのものから作り上げていくパワーとネットワークを持つことでも一目置かれる存在だ。

伝説の編集者として語り継がれる故・林文浩=『DUNE (デューン)』編集長には、「日本で唯一のファッション・フォトグラファー」といわしめたこともある彼に、ここではそのファッション写真のロジックについて話を聞く。

 

(第1回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の構造
(第2回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親が犯すタブーとロジック
(第3回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の9.11以後
(第4回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/フォトグラファーとデザイナーの関係

 

– 親さんは自分のオリジナリティを、どのように追求していったのですか?

まず20代のうちは、コマーシャル仕事は絶対に受けないと決めていました。昔、何度かイタリアの大きいブランドのキャンペーンを結構な額でオファーいただいたことがあったんですけど、すべて断っていました。

なぜならコマーシャルを最初にやってしまうと、コマーシャルの写真家としてしか見られないようになってしまうから。海外での僕の周りの先輩のフォトグラファー達は、いまいち作家として扱われず、ファッションの人として見られがちなのは、コマーシャルを先にやっているからです。だから僕はひたすら我慢しました。

Photography: Chikashi Suzuki

Photography: Chikashi Suzuki

 

– 作家として認められたかったから?

そうです。そのぶん海外の雑誌ではたくさん撮影をしましたが、基本的にあっちは経費しか出ないので、生活は相変わらず苦しかった。そのうち日本で『Brutus (ブルータス)』から声を掛けてもらえるようになり、その後3年間  (1999〜2002年) はやっと普通の会社員くらいのギャラで、生活がしのげるようになりました。当時のファッション撮影で望遠レンズを使うフォトグラファーって少なかったと思うんですけど、僕は『Brutus』の全ての撮影を望遠レンズで撮りました。けっこう面白いページでしたよ。ワンテーマでちょっとギャグっぽさがある感じ、今の『Brutus』にもテイストとして残っていると思います。

 

– 親さんの写真といえば、よく日付が入っていますがその意図は?

デジタル写真が普通になった頃から写真に日付を入れるようになりました。そうすることで、仕事の写真でもドキュメンタリーっぽく自分の作品として見せることができるから。僕はシューティングする時、キャスティングも含めてだいたい自分で組んでしまうので、自分の作品にもなる。しかも数字は、世界共通の言語でもある。僕が数字を入れるのには、そういう理由があります。ファッション写真の場合は、ちょっと気を遣って日にちと時間だけにしたりすることもありますが。(笑) そもそも少し前までは、ファッション写真に日付を入れるのはタブーでしたからね。Ari Marcopoulos  (アリ・マルコポロス) もやっていますね。

 

– ハーフカメラも親さんの芸風ですよね。

ハーフカメラはみんなが使わないという理由で、1000円くらいで叩き売りされているやつを適当に買って、ちょっとだけ使えるように改造したんです。あんな精度の悪いカメラ、それまでは誰もファッションでは使わなかったですよ。雑誌はぜんぶタテだから、ハーフカメラで撮ると1ページで3コマいけたりしますよね。裁ち落としなら、自分でデザインもできちゃうメリットもある。連動でとっているから、もし上の写真が気に入らなくても、見る人によっては上のほうがよかったりする可能性もある。意図してないところが狙えるのが面白いです。

 

– 一時期ハーフカメラが流行ったのは、やはり親さんの影響なんですね。

忘れられたものって、案外強い。あるいは最先端。力があるのはそのどちらかです。ハーフカメラは、フィルムしかない時代は仕事で使用するには NG だった。でもデジタルが出てくると、その弱点が逆に強みになると思った。デジタルではいくらでもシャープにできるから、だったらシャープじゃないもののほうが面白いだろうと思ってやってみたのがハーフカメラです。

Photography: Chikashi Suzuki

Photography: Chikashi Suzuki

 

– タブーを犯す時は、必ずロジックも立つわけですね。

タブーの意味を理解した上で、さらにタブー以外の部分を完全にきっちりやってからじゃないと、それこそ本当にタブーです。タブーを犯すことが最先端とかカッコいいとか、そういう捉え方をするのは良くないことです。

Ryan McGinley の写真は、ちゃんと写っていないことが魅力に見えているかもしれないけど、彼は他の要素を綺麗にしているように思えます。あるいは僕が、あえてモデルを豆粒みたいに引き気味で撮るのは、その人物を風景の中で孤立した状態もしくは風景の中に入れ込んで、スタイリングを引き立たせるという意図があるからです。たまに、ちゃんとスタイリングしたものをただ引きで小さく撮っているだけの写真を見かけますが、残念に思います。

他にもよく用いるタブーがあります。女優さんに服を着せる時って、サンプルサイズだと合わない時があるじゃないですか。洋服を表現する上で、サイズが合っていないというのは良くないです。じゃあどうしよう?となって初めて、寝かして撮ってみようというアイデアが出てきます。ただこれってやっぱり基本的には NG なんです。ワンピースはシルエットが命でしょう? 身長178㎝位のパーフェクト体型のモデルに無地のワンピースを着せて、わざわざ白ホリで寝かせて撮ったような写真が最近の雑誌に載っていますが、意味がないと思います。

 

– 日本だからこそ撮れるものもありますか?

海外とは逆に、無茶な撮り方ができます。ただ、それだとファッション産業の活性にはつながらないし、継続性もない。カルチャーにするためには、ひとつ筋がないとダメだと思う。面白い話があるんですけど、『Purple (パープル)』の AD が日本に来た時、チェックするのはどんなところだと思います?彼らが買って帰るのはコンビニで売っている下着の通販カタログや成人向けの本だったりするんです。そういうのって表紙が変わった装丁だったり、エンボス加工になっていたりするじゃないですか。ヨーロッパの本や印刷物って、もともとは聖書の延長だったりするから、それが彼らの目にはすごく面白く映るんですよね。最近、ヨーロッパの雑誌がエンボス加工になっていたりするのは、そんなのを見たからかと思います。(笑)

Terry Richardson や Harmony Korine もそうでした。彼らが今みたいに有名になる前は日本で林さんが彼らとよくつるんでいたので、それを近くで目撃できたんですけど、林さんが彼らにプレゼントしてお土産にしていたのは、成人雑誌でした。(笑) それも素人の投稿写真系。自分の彼女を歩道橋や駅のホームで脱がせて野外撮影したりとか、海外だと考えられない写真が載っている。Terry の写真って、野外で脱いでいることが多いじゃないですか。このスタイルはニュートンの影響からだけでなく日本のアマチュア写真も影響しているかもしれませんね。ただ全てが Terry の作品になっているので、それが彼のスゴいところですが。

僕が言いたいのは、一流のクリエーターのアイデアのソースが日本の成人雑誌だとわかっていたら、じゃあ俺はこういう方法で撮ってみようかなとか、別のロジックが思いつけるかもしれないということ。ファッションやアートの写真からだけではない。

(第1回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の構造
(第2回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親が犯すタブーとロジック
(第3回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/ファッション写真の9.11以後
(第4回/全4回)【インタビュー】写真家 鈴木親/フォトグラファーとデザイナーの関係

 

鈴木親 (すずき・ちかし)
1972年生まれ。96年渡仏し、雑誌『Purple』で写真家としてのキャリアをスタート。『Purple』(仏)、『i-D』(英)、『Dazed & Confused』(英)、『CODE』(オランダ)、『Hobo』(カナダ)、『IANN』(韓)、『honeyee.com』(日)、『GQ』(日)、『commons&sense』(日)、『Libertine / DUNE』など国内外の雑誌で活動。Issey Miyake、United Bamboo、Toga などのワールドキャンペーンを手掛ける。主な作品集に『shapes of blooming』(treesaresospecial刊/2005年)、『Driving with Rinko Kikuchi』(THE international刊/08年)、『CITE』(G/P gallery刊、09年)など。

Blog: http://blog.honeyee.com/csuzuki
Twitter: https://twitter.com/chikashisuzuki

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