Albert Hammond Jr.
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The Strokes (ストロークス) のギタリスト、Albert Hammond Jr. (アルバート・ハモンド・ジュニア) インタビュー

Albert Hammond Jr.

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Albert Hammond Jr. (アルバート・ハモンド・ジュニア) は苦しんでいた。いや、人生を謳歌していた?2000年代に入ってすぐ、The Strokes (ストロークス) のギタリストとして誰もが羨む名声を手に入れたあと、あっさりドラッグとアルコールに溺れた。誰がどう見てもズブズブで、今から考えれば恥ずかしいくらいの全能感に満ちあふれていた。だが、そのあとはいつもコントラストの激しすぎる虚無感が彼に襲いかかった。彼のソロ新作『Momentary Masters (束の間の支配者)』はまさにそのことが主題になっている。

The Strokes (ストロークス) のギタリスト、Albert Hammond Jr. (アルバート・ハモンド・ジュニア) インタビュー

取材・文: 長畑宏明 写真: 菊地佑樹

 

Albert Hammond Jr. (アルバート・ハモンド・ジュニア) は苦しんでいた。いや、人生を謳歌していた?2000年代に入ってすぐ、The Strokes (ストロークス) のギタリストとして誰もが羨む名声を手に入れたあと、あっさりドラッグとアルコールに溺れた。誰がどう見てもズブズブで、今から考えれば恥ずかしいくらいの全能感に満ちあふれていた。だが、そのあとはいつもコントラストの激しすぎる虚無感が彼に襲いかかった。彼のソロ新作『Momentary Masters (束の間の支配者)』はまさにそのことが主題になっている。当時の彼は“諸行無常”という概念は理解できても、一瞬の夢心地をなかなか忘れられず、曲を書くことに集中していたとは言いがたい。リハビリに通って何とか中毒から抜けだしたあともしばらくはクリエイティブの砂漠を彷徨った。

だが、The Strokes の「One Way Trigger」(2013年リリースの『Comedown Machine』収録) を書いたことがキッカケで、彼は再び曲作りに精を出すように。今作に多大なインスピレーションを与えた過去の恋人、サラと運命的な出会いを果たし、The Strokes で何度も作業を共にした Gus Oberg (ガス・オバーグ) を自宅のスタジオに呼び入れた。朝にメンバーと一緒にランニングし、部屋に戻ってからゆっくりと音を出し始める。これまでは不可能だったストイックな作業を通じて完成した新作は、「完全無欠のポップロック」と断言できる傑作に仕上がった。ヴォーカルは過去2作で聴けるそれとは比べ物にならないほどクリアで、バックのインストゥルメンタルは見事なまでに構築的。後半を駆け抜けるいくつかのファストチューンも、けっして勢いだけの代物ではなく、見事な抑揚の上に成り立っている。ある意味、『Momentary Masters』はアルバートにとってセラピー的な役割を果たしている作品かもしれないが、ここにある正統派のアプローチには、光のない音楽の海をさまよう現代のリスナーを安心させる要素も多く含まれている。

 

!!! (チック・チック・チック) に引き続き、今回も『The Fashion Post』では「Albert Hammond Jr. をもっと知るための35の質問」を用意。まずはこの質問から。

 

1. 朝はいつも何時に起きる?

理想的なのは、夜10時に寝て6時に起きること。

2. 朝にかけるレコードは?

Police (ポリス) のデビュー盤 (『Outlandos d’Amour』) だね。

3. 曲作りは何から取り掛かる?

メロディ。適当に何か口ずさんでみる。

4. ハウススタジオで自慢できるところは?

昔はタスカムの4トラックを使っていたけれど、今は24チャンネルのミキシング・コンソールに進化した。他にもたくさんの機材があるけれど、僕1人ではとても使いこなせないから、いつもメンバーに助けてもらうんだ。

5. 弾ける楽器をすべて教えて。

ピアノ、ドラム、ベースは作曲する時に使うことはあっても、ステージで披露したことはない。ギターに関しては、いまメタリカのソロをマスターしているところ。

6. 自分のレコードはどのくらい聴く?

作品がリリースされてから確認のために何回か聴き返す程度かな。

7. ここ1週間でよく聞いている曲は?

Tame Impala「Elephant」、Little Walter「Blue And Lonesome」、Kurt Vile「Pretty Pimpin」、The View「Under The Rug」、Ennio Morricone「Con La Madre」

8. 本は月に何冊読む?

最近はほとんど読めていないな……。

9. 人生で最も影響を受けた映画は?

David Lynchの『Blue Velvet』。

10. 絶対に聞かない音楽のジャンルは?

うーん、そういうのはないと思う。

11. 趣味と呼べるものはある?

モーターサイクルとスキューバダイビング。

12. ファッションのテーマがあれば教えて。

たとえば、料理でもいま食べたいものを作るように、洋服もいま着たいものを着るだけ。

13. 今日のステージ衣装は?

東京で白の Levi’s® 501 を買ったから、Tシャツも白にして、靴下を赤にするっていうアイデアを思いついたんだ。

14. シューズは何を履くことが多い?

Converse (コンバース) か Dr.Martens (ドクターマーチン)。Adidas (アディダス) と Nike (ナイキ) の“ラクなやつ”も好き。

15. ニューヨークでお気に入りのレストランは?

HASAKI」という日本食のレストラン。

16. ツアーに出る前夜はどんな気持ちになる?

僕はすごく几帳面だから、パッキングするときに何か忘れ物がないか超不安になる。

17. Albert Hammond Jr. 史上最高のライブは?

ロスの『Telegraph』でやったライブはアメイジングだった。終始クラウドサーフィンしている奴もいたし、「Slide Boob (横乳)」っていう曲を演奏した時には、1人の女の子がステージにあがってきて、僕が彼女の“スライド・ブーブ”にサインをした。

18. 「Slide Boob」のタイトルの意味は?

そのまんまだよ。もちろん、曲自体にはもう少し深い意味があるけど、このタイトルをつけた理由は単に人目を引くから。

19. 「ストロークスと対バンしてみたい」と言っていたマック・デマルコの音楽は好き?

去年のツアーの移動中、車のなかではずっと『Salad Days』がかかっていた。

20. 参加して1番エキサイティングだったフェスは?

ワシントンのフェス、「Landmark」。とにかく声援がデカかった。ショーの後は1時間以上柵越しにサインをしていたね。

21. ライバルだと思ったバンド/ミュージシャンはいる?

特にいない。みんなよりも上に行きたいとは思っているけどね。

Photography: Yusuke Kikuchi
22. ミュージシャンになっていなければ何を?

コックかメイド。ポルノ映画の監督もいいね。

23. クレイジーなパーティーに出たことはある?

かつては僕自身がクレイジーなパーティーみたいなもんだった。

24. 今回のアルバムのテーマを一言で。

“Rejuvenating Hit”(元気を取り戻す会心の一撃)

25. まわりのアルバムに対する評判はどうだった?

すごくいい。徐々にひろがっているのを実感するよ。

26. アルバートにとって“良い曲”とは?

1つの決まった形はないと思う。

27. 東京の魅力は?

食べ物、人、秩序のなかのカオス。

28. 東京の欠点は?

タトゥーがあるとジムに入れないこと。

29. あなたにとってのポップアイコンは?

Buddy Holly (バディ・ホリー)、Elvis Presley (エルヴィス・プレスリー)、The Beatles (ザ・ビートルズ)、Michael Jackson (マイケル・ジャクソン)、Phil Collins (フィル・コリンズ)、George Michael (ジョージ・マイケル)。

30. インディーズバンドでベストは誰?

今はロックというジャンル自体がインディーになってしまったよね。あえて誰かを挙げるなら Tame Impala。

31. 奥さんのジャスティナが今作のなかで1番気に入っている曲は?

「Born Slippy」。この曲のビデオの監督は彼女が務めたんだ。

32. 何歳までミュージシャンを続けるのが理想?

どんな形でも死ぬまで音楽には関わっていたい。

33. バンドを長く続ける秘訣は?

ストロークスのこと?あのバンドはみんな強烈な個性の持ち主だからね。そうだな……誰かを介してコミュニケーションをとらないこと、かな。何にせよ、直接話すことが大切だ。

34. ティーンに何か声をかけるとしたら?

僕の音楽をどう思う?

35. 今日はどんなステージになる?

クールなロックンロールショーさ。楽しみにしていて!