Steidl; where the most beautiful books are made

PORTRAITS | Nov 18, 2016 9:00 PM
Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) や Jeff Wall (ジェフ・ウォール) など名だたるクリエイターのヴィジュアル・ブックを45年のキャリアの中で制作し続ける出版社、STEIDL (シュタイデル)。ドイツの小さな町で今も45名の社員を率いて、すべてを難なくこなす Gerard Steidl (ゲルハルト・シュタイデル) 本人にインタビューすることができた。本とは彼にとってどんな存在なのか、そしてこれからの展望について語ってもらった。

Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) や Jeff Wall (ジェフ・ウォール) など名だたるクリエイターのヴィジュアル・ブックを45年のキャリアの中で制作し続ける出版社、STEIDL (シュタイデル)。ドイツの小さな町で今も45名の社員を率いて、すべてを難なくこなす Gerard Steidl (ゲルハルト・シュタイデル) 本人にインタビューすることができた。本とは彼にとってどんな存在なのか、そしてこれからの展望について語ってもらった。

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

 

STEIDL を立ち上げたキッカケはなんですか?

実は、まったく計画していなかったことなんです。当時は、カメラマンとして自身の写真の技術を高めるためウェディング・フォトグラファーをやったり、アーティスティックな写真を撮影して媒体に提供したりしていました。そんな時に、ふと自分が撮る写真に将来性を感じることができなくなったんです。このまま三流のカメラマンとしてやるのだったら、辞めるのは今のうちだと思いました。代わりに、優秀なフォトグラファーの作品を扱う仕事に就きました。当初はプリント制作のみで、暗室での作業をメインに行こなっていたのですが、後に銀塩プリントやフィルムの現像から芸術家の版画制作を手がけるようになりました。いわゆる、ハンドメイドの技術に特化したスキルを習得することができ、フォトグラファーのプリントを制作するようにもなりました。その前からフィクションからノンフィクションの書籍をドイツで出版していたのですが、本格的なフォトブックの製作は 1995年頃に手掛け始めました。出版社の元で案件をいただきながら、アーティストの作品をプリントするといった形態が理想でした。しかしながら、出版会社はバジェットの関係で、妥協して製作をすることで内容が結局はつまらなく感じました。結果、自分で製作の全てを手がけることで、クオリティーのコントロールが出来るという結論に至りました。

映画『世界一美しい本を作る男~シュタイデルとの旅~』内にて、印象的だったアーティストと密着度ですが、どんな関係性を保ちながら書籍の内容やデザインなどプロセスを進めていますか?

アーティストの作風を理解し、彼らのニーズに最善に応えることが私の役目です。どのような場所でその本が発表されるのか、そして一番適切なアドバイスをあげられるのも私だと思っています。アーティストとして経験を積んだからこそ言えること、対等な関係を保てる理由なのではないかと思います。世界に存在する出版社はほとんどが、利益を得るためにひたすら業務をこなす所が多く見られるでしょう。私は、その真逆を歩んできました。成功するにはリスクが伴われると Karl Lagerfeld に言われたことがあります。アーティストはまさにそうでしょう。作品が売れるかどうかも、定かではなく、多くの人々の目に止まり、いいものだと評価されるかもわからない。ですが、私にはアーティストの “賭け” を理解し、理想の書籍を具現化する自信がある。45年の経験を持っているので、何がベストな形というのもすべて把握しています。なぜならば、失敗も経験してきたからです。

— 一冊の本にどのくらいの時間をかけて製作に取り組んでいますか?

アーティストが STEIDL に日曜日に来社し、月曜から火曜日にかけて書籍のテーマを見極めながら、アイデアを練る作業をします。水曜から木曜日は構成を考え、金曜日にはテスト・プリントします。どんな紙に印刷したらいいのかなどを定め、3、4週間後にはアーティストが戻ってきて確認をするというのが標準的な流れといえるでしょう。ですが、アーティストが30年以上もしくは長年に渡り、じっくりと時間をかけて作品を手がけてきた場合は、果たしてどのような条件が理想の本になるのだろうか、シリーズ化するかなども視野に入れることも重要な要素。よって、投資する時間もバラバラです。Robert Adams (ロバート・アダムス) とはもう、12年程かけたプロジェクトになってます。現在、30冊の中15冊の書籍は終えたところです。多分、25年ぐらいかけなければ、完成はしないでしょう。

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

— どんな時に喜びを感じますか?

本が完成した時に、絶対に校正します。すべて完璧がどうか。ですが、長年やってきた仕事ですので、常に手元に持っていないことを意識しています。すべての過程は、頭の中にインプットしていて、まだ未完成だと感じたプロジェクトに関しては、2、3年ほど熟成させるため眠らせる時もあります。その期間に分かることは、無駄に手を加えないことで完成と言える本。または、何かしらの校正が必要だと感じる場合もあります。

最も楽しいと感じる瞬間は、本を作っている最中です。アーティストと一緒に子供のように海辺でお城を砂で作り、波打ちに流されて、また次の日に新しいお城を建てる。少しずつ、アイデアを洗礼させていく楽しさ。それが私にとって一番の醍醐味といえます。本は、私にとって子供で。私が父親だとしたら、アーティストが母親です。本が完成し、世の中に出回った時には、その本は成人になった子供のように羽ばたいていくのです。

デジタル化されてきてるこの世の中ですが、テクノロジーの進化によって書籍の価値は衰えてきてると思いますか?

ここ10年、心配されてきたことではありますが、逆に本を読む、そしてその価値は、上昇している文化だと思います。アメリカでは7%がデジタルによる書籍だという統計を読んだことがあります。ドイツでは、2%だと言われています。電子機器で書籍を読むことは、決していけないことではないと思います。実際の本というのは、それ以上の魅力を持っていて、開いた本に当てられる電気による反射、または、日差しによって作られる書籍の影。電子機器の場合だと絶対にも表現ができない美しさを本は作ることができます。

スイスの高級時計 Patek Philippe (パテック・フィリップ) の広告で「自分のために買う時計ではなく、次世代のために買う時計」というキャッチコピーが使われています。それは本でも同じで、書籍を重宝させていくことで、本は親から子、子供からその孫へと伝えらえる大事な知識が詰まった家宝となるのです。書籍が置いてある家というのは、人生を豊かにする大事な要素だと思います。

— 現在使っている、印刷機はどれぐらい古いですか?

週7日、24時間ずっと働いている印刷機は、購入して7年経ちます。清掃やメンテナンスのため、一時的に停止することもあるのですが、それ以外はずっと印刷しています。何かの原因で突然故障してしまうと、同時進行中のプロジェクトの支障をきたしてしまうため、8年のスパンで必ず買え変えています。ですから、デジタル機器やアナログに関してもすべて新しめの機材を使ってます。

私が最も不思議だと感じたのは、アメリカの出版社の印刷機を見たときです。ほとんどが、未だプロッピー・ディスクを活用していて、印刷機は、1900年代のものだったりと、効率が悪く感じました。現代の最新機器を使うことで、最前線で活躍するアーティストの書籍を責任もって任せられるのだと思います。

映画の本編でも語っていた、「書籍の香り」について教えて下さい。

インクジェット印刷の場合、無臭のところ、伝統的な印刷の手法はすべてオイルベース。新聞もそうです。油絵も50年経っても、香りはずっと続きます。紙も同じく、香りは染み付き、私の中で紙とインクが融合するのは例えると結婚式を挙げるのと同じだと思っています。紙とインクのすべてを操れるようになったら、香水の調香師のように配合を本の要素として加えることもとても重要です。

写真展 PROOF にて展示された「box polaroid 002 」

写真展 PROOF にて展示された「box polaroid 002 」

5年後の自分はどんな生活をしていると思いますか?

インク、紙、色彩と書籍に関わる仕事をするとこの仕事をする前から確信していました。同年代の友人たちはそれぞれ異なる道を進んでいますが、自分は絶対それはないという自信がありました。決して、5年後も違う業種に突然就いてることはないと思いますが、世界中のギャラリーを回り、展示会のキューレーションすることに興味を持ち始めました。私のように本のデザインや構成を考え、発行に至るまでの一連を今までやってきた分、ギャラリーの白い壁は、白紙の紙同様、展示会全体を組み立てるのに、とても想像がしやすいです。すべてを知り尽くしているからこそ、できる仕事でありとても喜びを感じます。 Tomasz Gudzowaty(トマシュ・グゾバティとのコラボレーションによる写真展「PROOF」は、まさに私がやってきた仕事を屈しし、お互い特化している拠点を一緒に表現しているため、とても見ごたえがある展示だったと思います。

— その写真展の見どころはどんなところでしたか?

「PROOF」は、Tomasz Gudzowaty の生涯の作品を代表していて、最もインパクトある展示になっていました。撮影し、現像した時には白黒写真なのですが、数年後、セピア調になる不思議なポラロイドは、知る人ぞ知る、幻のポラロイド紙「Polarioid TYPE 55」。ですが、私が魅了されたのは、ネガ・フィルムの表現力と照らし合わせられる、インスタント・フィルム。通常ゴミだと思われてしまうものだけれど、それもまた、数年後まで保管することで、どこかアーティスティックにみえるところ。それを比較し、表現しているのが「PROOF」のテーマとなっていた。

STEIDL では経営面においてもあなたが全ての指揮を取っていると伺いました。

すべて、私です。銀行にローンを組んだこともなく、すべて私自身の書籍からの利益から書籍へ投資、投資しては本を発行し、また、発行しては大事なコレクションとして保管し、またアーティストとコラボレーションをしています。私のビジネスはそうやってサイクルよく賄ってます。プライベートもビジネスもすべてまとめて一緒で、私のすべてを託して、捧げています。サマーハウスがあるわけでもなく、有名スポーツ車を所有しているわけでもありません。書籍を作るための人生。そして、それが私のすべてです。

書籍の用紙はどこ産を使用していますか?

すべての紙は、ヨーロッパ産です。ドイツはとても品質良く、高級だといわれています。その他、スウェーデン産も使用することがありますが、カナダやロシアからは絶対発注しません。理由は、森林の木を切っては、木を植える活動に劣っているため、フェアトレードで、きちんと環境のことを考慮していることがとても重要です。また、カバー紙は世界中から発注しています。特に日本の「takeo」はクオリティーが高く、信頼性ある紙ですね。テスト紙はオーダーする用紙の30%を占めるのですが、プロセスの一部でもとても重要な部分で、惜しまず使うことで結果、素晴らしい書籍が仕上がるところもきちんと理解して欲しいことです。

— 現在、インターンは募集していますか?

もちろんです。常に世界中からインターンが来て働いてくれます。スウェーデンやシンガポール、スペイン。それぞれ個性的で、とてもいい仕事環境だと思います。ぜひ、日本の方も応募して頂きたいです。

— 次世代の出版に興味のある若者に何を伝えたいですか?

ただ写真を撮るだけだったら、誰でもできるし、何もアピールできないと思います。自らアナログ印刷の手法をスキルとして取り入れて、作品を作ってください。中古のコピー機は安いはずです。自宅でもワーキングスペースを作って、必ず、デジタルに頼らず、研究しながら、アナログ手法で作品を制作ください。なぜならば、デジタルは消え去っても、アナログは一生モノだからです。誰かを頼るのでなく、足で運んで、言葉にして営業していってください。そうすることで、誰かと必ず繋がることができるからです。伝えることが絶対、あるからです。ドイツではこれが当たり前です。自らの手でお金がなくてもビジネスをスタートするのが当たりだというのがとてもドイツらしいといえるでしょう。

— 今回は、スーツケースをいくつ持ってきましたか?

11個です。そのうち、1つは映画にも出てきたキャリーオンのスーツケースです。

HP: steidl.de

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