Teatum Jones
Teatum Jones

Teatum Jones (ティータム・ジョーンズ) デザイナー、Catherine Teatum (キャサリン・ティータム) & Rob Jones (ロブ・ジョーンズ)

Teatum Jones

Portraits/

インターナショナル・ウールマーク・プライズは1953年にスタートし、世界各地から優れた才能を発掘するデザイン・アワードのひとつ。過去には Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド)、Yves Saint Laurent (イヴ・サンローラン) が受賞した経歴も。2016年の大会には62ヶ国から選ばれた気鋭な80名のデザイナーが参加した。

Teatum Jones (ティータム・ジョーンズ) デザイナー、Catherine Teatum (キャサリン・ティータム) & Rob Jones (ロブ・ジョーンズ)

インターナショナル・ウールマーク・プライズは1953年にスタートし、世界各地から優れた才能を発掘するデザイン・アワードのひとつ。過去には Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド)、Yves Saint Laurent (イヴ・サンローランが受賞した経歴も。2016年の大会には62ヶ国から選ばれた気鋭な80名のデザイナーが参加した。ニューヨークファッションウィークの最中、2月12日に開催されたインターナショナル・ウールマーク・プライズ。そのウィメンズ部門でロンドンを拠点にCatherine Teatum (キャサリン・ティータム) とRob Jones (ロブ・ジョーンズ) がデザイナーを務める Teatum Jones(ティータム・ジョーンズ)が受賞を果たした。伊勢丹新宿店で今回のコレクションが初お披露目となり、2人の初来日も実現。ウールという素材に対する想い、ブランドとしてこれからの挑戦を聞かせてもらった。

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

— 日本にまだついたばかりなんですね。

Rob : まだ来て1日しか経ってないんだ。日本に来て、食事が美味しくて驚いているよ。寿司、天ぷら、蕎麦、イギリスにも日本食はあるけど、全く別物だね。

Catherine : 原宿に行って、若者のファッションを体感してみたいし、キディランドに行って、お土産を買ったりして過ごす予定。BEAMSや伊勢丹みたいなセレクトの感度が高いお店も覗いて日本のリサーチもしないとね。それに今まさに1週間限定の私たちのショップが伊勢丹新宿店にオープンしているから足を運んで、お客さんとの交流も楽しみにしているの。

— 日本では全く初めてのショップですよね。

Catherine : 伊勢丹のバイヤーが今回のウールマーク・プライズのファイナリストたちを期間限定ショップの候補に入れていたの。その数ある中から私たちの Teatum Jones を選んでくれてすごく嬉しかった。彼らは私たちのブランドの動向に注目してくれていて、評価してくれたんだと思う。昨晩日本に到着して、まだお店の様子が見れてないからドキドキね。

— 日本には数日の滞在なんですね。

Catherine : そうなの。バンドのライブツアーみたいに今回のウールマーク・プライズを授賞して、色んな国を周ってるわ。

— 二人でブランドをスタートさせるきっかけはどんなものでしたか?

Catherine : Rob と私がお互い “ヒューマンストーリー” に関心があって。人々が持つ物語からインスピレーションを受けて、それがブランドに反映されているの。そしてこだわりのあるファブリックを使用することにもこだわっているわ。ブランドとして、洗練されていること、物事を受け入れる器を持つこと、プロフェッショナルであること、そしてクリエイティブな服を作ることを私たちは心がけているの。

— ブリティッシュメイドであることへのこだわりはありますか?

Rob :  洋服たちに使われる生地自体も自分たちで開発しているんだ。イタリアやフランスやイギリスなど、その土地のプロフェッショナルな工場の人たちと直接やりとりをしている。100年以上の歴史を持つ伝統的な工場の人たちに働きかけて、その技術を現代的に応用できるように工夫しているよ。

— 新しい技術と伝統の融合ですね。

Catherine : まさにそうね。技巧、クラフトに対する尊敬の念を持つのと同時に、進化した技術を率先して使う、それが私たちのブランドのDNAの一つだと言えるの。この二つのどちらも欠けてはダメなの。

— 日本の工場や技術にも興味がありますか?

Catherine : 日本の伝統的な着物のデザインや生地に強く惹かれるの。とても研究し甲斐があるわ。着物みたいなオリジナリティに溢れる服は世界中のどこを探しても見つからないんじゃないかしら?足袋や下駄に至るまで、とってもユニークよね。そのデザインや生地の質感は私たちにも影響しているの。

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

— 二人はそもそもどうやって知り合ったのですか?

Rob :  僕も彼女もレディースの服を別々のタイミングで勉強していたんだけど、働き始めたのはメンズウェアのブランドで。その職場で彼女に出会った。そこで仲良くなって、次第にふたりが同じヴィジョンを持っていることがわかってきて。それからしばらくして、独立してブランドをたちあげようって話になったんだ。

— ブランドの中でふたりはどのような役割分担ですか?

Catherine : 毎シーズンのコレクションを発表する、その行為は映画を製作して公開する作業に似ているわ。Rob は音楽にインスパイアされることが多いし、私は “言葉” からテーマやデザインを連想することが多い。その裏に隠されたヒューマンストーリーを融合させてファブリックやデザインに落とし込んでいく。俳優が女優が、その物語を演じるためにたくさんのリサーチをして役に臨むように、私たちもそのストーリーを掘り下げているの。

Rob はどんな音楽から影響を受けていますか?

Rob : その物語の内容でも変わってくるよ。でも音楽だけじゃなくて、誰かの生き様に興味を持てば、その人にインタビューをして話を聞いて、そこからインスパイアされることもある。ある一定の時代にすごく惹かれることもあるし、政治や社会のスピーチから発想を得ることもある。

Catherine : 教育も受けずに亡くなっていく少女たちがまだこの世界には存在しているの。だから女性の人権を尊重している政治家だったり、女性の権利のために闘ったり、社会的なアクションを起こしている女性に私たちはインスパイアされているわ。ミシェル・オバマもそのひとり。彼女たちが切り開いていく、そのストーリーを掘り下げて、そこにあるアイデアを服に転化していくのがプロセスよ。映画や音楽、小説からも勿論アイデアを得ているけれど、やはりそういった女性たちのライフストーリーが Teatum Jones の軸になっているの。

— お互いの尊敬している面はどんなところですか?

Rob : Catherine の素晴らしいところはどんな小さなディテールでも気付くことができる審美眼だね。すっごく遠くにある小さな小さなものまで彼女は見逃すことはないね (笑) それに加えて、物事を前に進めていくことのできるエネルギー。これはブランドを続けていくためには欠かせないものなんだ。

Catherine : いい質問ね。その答えは3つあるわ。

Rob :  僕は2つしかしか言ってないのに (笑)

Catherine : まず1つは彼の忍耐強さ。2つ目にユーモアのセンス、あと1つは何かしら (笑)。やはり彼のポジティブな性格だと思う。ショーが近づくとトラブルも多発して、チームの中に不穏な空気が漂いがちだけど、彼はいつも気分が上がる音楽をセレクトしてくれたり、ムードメーカーとして場の空気を和ませてくれるのよ。

— インターナショナル・ウールマーク・プライズでは他ブランドがトーンオントーンでの合わせであったり、素材の施し方で勝負していたのに対し、Teatum Jones ではひときわ鮮やかでロマンティックなコレクションを披露されていたかと思います。賞を獲得できた理由はどんなところにあったと思いますか?

Catherine : 私たちが賞を獲得できたのは、きっと他のブランドたちとアプローチ方法が違うものだったからだと思うの。私たちの通常のコレクションと逸脱したものは作りたくなかった。だからウールを何かしらの形で取り込んでいる生地を使って、私たちの DNA や世界観と融合させることにフォーカスしてコレクションを完成させたの。他のブランドや過去のエントリーした作品はウールマーク・プライズに出品するために特別なデザイン、コンセプトを作り出して、そもそも自分たちが持つブランドの魅力を二の次にしがちだと思う。例えば、私たちの服でコットンを使用している服があれば、それをウールを使用したファブリックで代用してデザインするように考える。レースなどの繊細なパーツもウールを使ったレースを開発して工夫する。そうすることで新しいファブリックの表情がデザインに新たな魅力を加えてくれるわ。今まで一緒に仕事をしてきた素晴らしい職人がいる工場に私たちは素材であるウールを渡して、彼らと二人三脚で取り組んできた結果が実って嬉しいわ。

Rob : 伝統的なウールに対するイメージってセーターだったり、ずっしりとした重量感だったり、するけど、その従来のイメージから逸脱するのが面白いんだ。

Catherine : このレザージャケットに見えるジャケットも100%ウール素材からできてるの。手触りが違うから触ってもらうと、驚いてもらえると思う。

— 初めて手にしたニットは何でしたか?

Catherine : 私の祖母はいつも手編みでセーターを作っていて、私のニットも彼女のお手製のものだった。

Rob :  僕はウールでできた小さなブーツだよ。赤ちゃんの時に履いていたみたいだね。

— 近年のファッション業界では、異業種とコラボしたりファッションの魅せ方や枠がどんどん広がっているように思います。ウェブサイトとコラボし、SeeNow by Now (ショーで見てすぐ買える) などショーでの魅せ方も変わってきており、テクノロジーも進化し続けています。先日のパリコレクションではシャネルが光るバッグを出していましたね。今後新たな取り組みややってみたいことなどがあれば教えてください。

Rob :  今まではレディースだけの展開だったけど、メンズのコレクションも準備中だよ。キャンバスに絵を描いてもらって、それを作品に落とし込んだり、色んなジャンルのアーティストとのコラボレーションで新しいことに挑戦している。ヴァーチャルルームで3D の洋服を着ることができる最新技術の開発に僕らも関わっているから、ワクワクしているよ。

Catherine : 3D プリンターで服を作る技術も進化を続けていて、そういった研究チームの中で私たちも貢献できたら嬉しいわ。

— 最後にデザイナーを目指す若者に向けて何かメッセージを送るとしたら何かありますか?

Catherine : Don’t Give Up! (あきらめないこと) 。新しい世代のデザイナーたちはお互いが競い合わなければならない状況に何度もぶち当たるけど、あきらめないことが大切よ。それに加えて強くて明確な意志やヴィジョンを持っていることが重要になってくるわ。

Rob : ファッションに限らず、アートや建築にも共通して言えると思うけれど、目に映る世界の形や色に常に関心を持って、それを自分の世界に取り入れて欲しい。

HP: teatumjones.com