Interview with Nicolas Winding Refn

PORTRAITS | Jan 11, 2017 10:00 PM
2012年に公開された大傑作『ドライヴ』(2011) の Nicolas Winding Refn (ニコラス・ウィンディング・レフン) 監督の最新作『ネオン・デーモン』がいよいよ1月13日 (金) に公開する。同氏が今回描いたのはファッション業界。究極の美を追い求めるファッション業界の裏側に渦巻く女性たちの欲望を、白昼夢のような幻想的か煌びやかな映像で描いた衝撃のサスペンスだ。今回『The Fashion Post』では、公開に先立ち Nicolas Winding Refn 監督にお話を伺うことができた。

 


© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 

めまいを起こさせるほどのカメラストロボが別世界へと誘う。『セックスと嘘とビデオテープ』でも猛威を振るった Cliff Martinez (クリフ・マルティネス) の音楽が腹に刺さる冒頭から始まるこの映画は、終始神秘的な血なまぐささに覆われ、観る者全てを魅了する。

最高潮の緊張感と興奮をもたらした『ドライブ』(2011) や男たちの聖なる闘いが美しい『オンリー・ゴッド』(2013) で、肉体の内に秘められた衝動を描いてきたデンマークの鬼才、Nicolas Winding Refn (ニコラス・ウィンディング・レフン) 監督。彼が今回手がけたのは、モデルの世界を舞台に“美”を追い求める人間たちの衝動と執着だ。主人公ジェシーが持つ“美”を残酷にも追い求める緊張感と共にストーリーが進む中で、女豹や満月など魔術的なアイコンが度々登場し、その衝撃のラストを示唆している。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 

メイクアップアーティストのルビー、整形を繰り返しているモデルのジジ、そしてモデルとしての仕事が減ってきているサラ。彼女たちの羨望の眼差しの先にいるのは、ジョージアの田舎町から出てきた、天然でピュアな美しさを持ったモデル志望のジェシー。彼女は大手のエージェンシーによる「世界で活躍するモデルになる」という予言通り、出会う人たちを次々に魅了してゆく。ルビーが求めるバージニティ、ジジがどうやっても手に入らない自然の美しさ、サラが奪われることになる活躍の場。それら全てを兼ね備えたジェシーはやがて、彼女を求める三人が仕掛ける死のトライアングルに、捕らわれてしまうことになる…。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 

「“美”の肉体に対する寿命がどんどん下がってきている」と語るレフン監督。彼の作品には、『ドライブ』(2011) で見られる見事なドライビング・テクニックや、『オンリー・ゴッド』(2013)で披露される格闘技ムエタイ、そして今回はモデルという肉体の”美”に対する追求など、しばしば肉体を酷使または執着という表現が常に感じられる。これは初期の『プッシャー』(1996) シリーズをはじめとする作品たちに共通する、バイオレンスやスリラー、エロスといったジャンル、この表現に共通しており、もしかしたら監督の肉体への執着、欲求というものがクリエイトの源としてあるのかもしれない。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

 

—あなたのこれまでの作品は、主に男性が主人公でした。彼らは皆、裏社会に潜む闇の中で生きている存在です。しかし今作『ネオン・デーモン』では一転して、一見華やかな世界の闇に飲み込まれるピュアな女性が主人公となっています。以前インタビューで「女性を描くことに興味がでてきた」という言葉を拝見しましたが、具体的に女性のどのような側面を描きたいと思い、今回の作品に至ったのでしょうか。

Nicolas Winding Refn | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Nicolas Winding Refn | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

僕はこれまでの作品でも、確かに男性が主人公ではあったけれど、女性的な描き方をしてきたと思っています。僕自身が女性を通して映画で語りたいとか、映画で女性についての映画を作りたいとか思ったわけではありません。そもそも僕は映画の作り手として、チャレンジしたいカテゴリーや物語を描く時がきたとか、そういうことは一切考えないタイプなんです。その時に自分が見たいもの、作りたいものを作っているだけですから。この作品は、女性性や女性の複雑さというものに対して考察している映画では一切ありません。それよりも“美”についての映画が作りたいと思って、この映画は始まりました。“美”とは僕にとって面白い主題であり題材だけど、“美”と男を絡めてもあまり面白くはない (笑)。だから自然と、女性が出てくる映画になったわけなんです。

—『オンリー・ゴッド』(2013) では主人公と敵役の戦いが聖なる (ゴッド)“儀式”のように描かれていましたが、『ネオン・デーモン』では主人公が通過するラン・ウェイのシーンを呪術的な (デーモン)“儀式”のように表現しています。実際ジェシーはこの後、何かに取り憑かれたかのように自らの表情や運命が変わっていきますね。先ほど映画を通して“美”を描きたかったと仰いましたが、それは“美”を求める人間たちの心の中に巣食う悪魔を表しているのでしょうか。

確か人儀式的な要素という意味でこの2作は共通していますが、『オンリー・ゴッド』(2013) の儀式は宗教的なものであったのに対し、『ネオン・デーモン』の儀式はカルト的な表現ではないかと、僕は思います。『ネオン・デーモン』で描かれているのは、我々が抱く飽くなき”美”への追求、そしてその先で出会い、見つけたものたちです。我々の人生において”美”というものは、すごく大きな主題であり、とても時間をかけて消費されていくものです。しかし現代において”美”そのものの寿命はどんどん短くなってきており、若ければ若いほうが良いという傾向があります。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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—常連の Ryan Gosling (ライアン・ゴズリング) や Mads Mikkelsen (マッツ・ミケルセン)、今作の Elle Fanning (エル・ファニング) もそうでしたが、あなたの作品に出てくる役者は皆、震えるような抑えたトーンで話し、それが画面にとてもいい緊張感を生み出しています。この独特の発声は作中の音楽と絡まり、結果的に絶妙な空気を生み出しています。役者たちに向けた声に対する演技指導みたいなものがありましたら教えてください。

役者への声のアプローチですね。僕はとにかく「内に込める」ということを大切にしています。感情を抑制できればできるほど、その声がより苛烈なものになっていきます。抑制してリラックスし、なるべくその人の動きや癖のようなものを取り外し削除していくことで、より感情は声に乗っていく。そのように僕は考えています。また役者には、発声の前に「ためる」ように指導しています。実際にセリフを発した時の観客の反応よりも、言うまで時間に観客が抱く期待のようなもののほうが大きいですからね。

—まるで小津安二郎の映画のようですね。

(笑) とても恥ずかしいのを承知で言うと、実は小津作品を観たことがないんだけどね…。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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—Elle Fanningには Mark Robson (マーク・ロブソン) 監督の『哀愁の花びら』(1967) と Russ Meyer (ラス・メイヤー) 監督の『ワイルド・パーティー』(1970) を観るように言ったそうですが、この2本から彼女にどんな要素を読み取ってほしいと思ったのでしょうか。

エルにその2本を勧めたのは、『ネオン・デーモン』が持つコメディの要素を理解してほしかったからなんです。ユーモアと、キャンプ (悪趣味) な雰囲気のミックスとでも言ったらいいのでしょうか。またエンターテインメント界で活躍する女性だけを描いた映画って、実はとても数が少ないんです。だからこの2本をみることによって、なにか掘り下げられるところをエルに感じてもらえるかな、と思いました。

—『ネオン・デーモン』の音楽を担当している Cliff Martinez 氏は、あなたの作品でいつも組んでいる名コンビですね。あなたはいつも脚本を自ら手がけていますが、脚本を書いている段階でクリフ氏とはどの様に世界観を一緒に作りあげていくのでしょうか。

© 2016, Space Rocket, Gaumont, Wild Bunch

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自分と共犯関係を持つことができる人間、そして彼らの技が僕のやりたいと思っていることより高みに連れてってくれるような人間。もしそんな相手を見つけたなら、僕はその人と仕事をどんどんして、関係を深めていくべきだと思っています。クリフのようなね。そしてそれは、彼らと共通言語を持つということでもあります。また彼らは時折、僕に挑戦を叩きつけてくれます。そのこともすごく重要で、やはりイエスマンばかり周囲に置いていてはいけない。僕とは違う視点を持ち寄ってほしいんです。クリフとはもう組んで3本目ですね。僕の妻のドキュメンタリー映画も、クリフが音楽を担当しています。そしてもうひとり僕にとって大切な鍵となる存在は、編集の Mat Newman (マット・ニューマン)。彼とはもう5本も一緒に組んでいます。僕+クリフ+マット。この3人のトリオで一緒に組んで映画を作っていくということが、僕はとても気に入っています。このカオスがすごく心地いいんです。求めるもの自体は自分の中にあるけれども、このトリオで作り上げていくというところにすごく安心感を感じているんです。

—特に今回の音楽は、作品の登場人物のひとりとも言えるほどの存在感でしたね。

もちろんそれはわざとで、意図したところでもありました。今回は音楽を、オペラ的な響き方にしたかったんです。“音色”という意味でなく“表現方法”としてね。『ネオン・デーモン』はタイトルだけでなく、エルの存在をどんな音で表現出来るだろう、ということを念頭に置きながら作りました。

—最後に一言だけお願いします。以前「『ドライヴ』(2011) が質のいいコカインだとしたら、『オンリー・ゴッド』(2013) はアシッド (LSD) 映画」と例えていましたが、それでは『ネオンデーモン』は何だと思いますか?

始めなきゃよかったよ、この例え (笑)。そうだね…。自分が美しい16歳の少女だったら、という空想を生きた。それがこの作品だと思うんだよね。

<プロフィール>
Nicolas Winding Refn (ニコラス・ウィンディング・レフン)
1970年9月29日、デンマーク生まれ。24歳で監督を務めた『プッシャー』(1996) でデビュー。三部作として続編が製作され、カルト的作品を誇る。トム・ハーディ主演『ブロンソン』(2008) で、各国のメディアから「次世代ヨーロッパにおける偉大な映像作家」と称賛を浴びる。2011年、ライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』(2011) で、カンヌ国際映画祭の監督賞など数々の賞を受賞。世界的に注目を集める。その2年後には、ライアン・ゴスリングと再びタッグを組んだ『オンリー・ゴッド』(2013) で同じくカンヌのコンペティション部門でパルムドールを争い、国際的評価を揺るぎないものにした。観る者の陶酔を誘い、想像力を刺激するレフン作品の世界観は、多くの観客を魅了。2014年カンヌ国際映画祭では 審査員を務めるなど、話題に尽きない。

Nicolas Winding Refn | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

Nicolas Winding Refn | Photography: Hiroki Watanabe | © The Fashion Post

作品情報
映画タイトル ネオン・デーモン
原題 The Neon Demon
監督・脚本 Nicolas Winding Refn (ニコラス・ウィンディング・レフン)
出演 Elle Fanning (エル・ファニング)、Karl Glusman(カール・グルスマン)、Jena Malone (ジェナ・マローン)、Bella Heathcote (ベラ・ヒースコート)、Abbey Lee (アビー・リー )、Keanu Reeves (キアヌ・リーヴス)
製作年 2016年
製作国 フランス・アメリカ・デンマーク合作
上映時間 118分
配給 ギャガ
HP gaga.ne.jp/neondemon
2017年1月13日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか 全国順次ロードショー

 

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