Ingrid Brochard
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『Panoply (パノプリー)』創設者、Ingrid Brochard (イングリッド・ブロシャードゥ) インタビュー

Ingrid Brochard

Portraits/

「『買う』から『レンタルする』時代へ」と話す、『Panoply (パノプリー)』共同創設者の Ingrid Brochard (イングリッド・ブロシャードゥ)。2016年10月に同ファッションレンタルサイトを立ち上げ、2,000点以上の最旬アイテムを取り扱うサイトに育てた。取り扱うのは、Marc Jacobs (マーク ジェイコブス) や SONIA RYKIEL (ソニア リキエル)、KENZO (ケンゾー)、Proenza Schouler (プロエンザ スクーラー) などの有名ブランドばかり。200ユーロ (約23,000円) のプランであれば、10日間で6つのアイテムをレンタルすることができ、気軽に目的や気分に合わせたコーディネートを楽しむことができる。また19歳にして化粧品ビジネスを起業したという Ingrid は、そのほかにも子供向けモバイルミュージアム『MuMo』やコンテンポラリーアート雑誌『BC』をローンチしたという変わった経歴の持ち主。そんな彼女が『Panoply』を立ち上げた経緯や今後のプロジェクトなどについて語ってくれた。

『Panoply (パノプリー)』創設者、Ingrid Brochard (イングリッド・ブロシャードゥ) インタビュー

 

Ingrid Brochard | Photo by Erick Faulkner

Ingrid Brochard | Photo by Erick Faulkner

「『買う』から『レンタルする』時代へ」と話す、『Panoply (パノプリー)』共同創設者の Ingrid Brochard (イングリッド・ブロシャードゥ)。2016年10月に同ファッションレンタルサイトを立ち上げ、2,000点以上の最旬アイテムを取り扱うサイトに育てた。取り扱うのは、Marc Jacobs (マーク ジェイコブス) や SONIA RYKIEL (ソニア リキエル)、KENZO (ケンゾー)、Proenza Schouler (プロエンザ スクーラー) などの有名ブランドばかり。200ユーロ (約23,000円) のプランであれば、10日間で6つのアイテムをレンタルすることができ、気軽に目的や気分に合わせたコーディネートを楽しむことができる。また19歳にして化粧品ビジネスを起業したという Ingrid は、そのほかにも子供向けモバイルミュージアム『MuMo』やコンテンポラリーアート雑誌『BC』をローンチしたという変わった経歴の持ち主。そんな彼女が『Panoply』を立ち上げた経緯や今後のプロジェクトなどについて語ってくれた。

—まずは『Panoply』の仕組みを教えてください。

『Panoply』は、2000点以上のハイモードなデザイナーズアイテムを取り扱っている、ファッションレンタルサービス。カジュアルやウェディング、バケーション、ワークウェアといった目的に合わせて、必要なアイテムだけを選ぶことができるし、ブランド別に検索して少し冒険してみることもできる。費用は、60ユーロ (10日間で1アイテム)、120ユーロ (10日間で3アイテム)、200ユーロ (10日間で6アイテム)、320ユーロ (10日間で10アイテム) と4つのプランを用意。200ユーロのプランが一番人気で、全ての費用にクリーニング代と返送料が含まれているの。またパリにショールームを構え、サービスの説明やイベントを開催するなど、お客さまとさまざまなエンゲージメントも測っているのも魅力のひとつね。『Panoply』を立ち上げてまだ半年だけど、今のところ評判がよく、お客さまからも「高い服にお金をかけていた、昔のような生活に戻ることはできない」というコメントも寄せられている。今後は、生活に欠かせないもののひとつになってくれたら嬉しいわ。

—いわゆる「ファッションの民主化」ということでしょうか?

Panoply

そうね。このサービスをさらに発展させたら、好きな時に、好きな場所で、好きなブランドのアイテムを自由にレンタルすることができる。もちろん無料ではないけれど、ファッションへの新しいアプローチだと思うわ。私自身もクローゼットに沢山服が入っているのに、「着る服がない!」って思うことがある。いわゆる「着る服がない症候群」ね。多くの女性が同じ悩みを抱えているんじゃないかしら。また SNS の普及で世の中に情報が溢れかえっているから、いいと思って買った服も、気づいた時にはもう流行遅れ。そんな流行の早さについていくのも疲れるし、心からファッションを楽しむことができなくなる。それに私たちが行った調査によると、ファストファッションの影響で60%の女性が5年前よりも多くの服を買っているそう。でも1シーズンで着なくなる服が多いことから、満足度は低いみたい。そんなことから私たちも、購買欲を促すのではなく、ファッションの楽しさを取り戻したいと考えているの。ファストファッションの価格で、ラグジュアリーアイテムが着れるなら、レンタルした方が心もお金も豊かに暮らすことができると思わない?

Panoply's showroom | Photo by Erick Faulkner

Panoply’s showroom | Photo by Erick Faulkner

—「買わずにレンタル」と聞いて、不安に思うラグジュアリーブランドやデザイナーもいますか?

先日、ミラノで Dolce&Gabbana (ドルチェ&ガッバーナ) の関係者に会ったけど、私たちのサービスに強い関心を示してくれたわ。オープンな心で接してくれたし、「買う」から「レンタル」の時代に移り変わっていくという考えに共感してくれた。でも大手 EC サイトの『Net-A-Porter (ネッタポルテ)』への出店を決めるのに6年もかかったというのだから、検討する時間が必要。ラグジュアリーブランドやデザイナーもすぐには価値観や消費者とのコミュニケーションのあり方を変えられないみたいね。

—フランスでも最新テクノロジーに対する興味や関心を強くなっていますか?

フランスの企業が保守的で、最新テクノロジーの導入に時間がかかるのは事実。でもサービスの開始が決まれば、浸透は早いと思うわ。『Uber』のようにね!個人的には、ビッグデータや予測アルゴリズムに興味がある。それらを活用することによって、ビジネスミーティングやオペラの鑑賞など、顧客のスケジュールや天気に合わせたアイテムを提案することができるようになるといいわね。提携しているブランドも、どのアイテムが、どのタイミングで借りられたといったデータに関心があるみたい。またフランスの消費者も正規品よりもセール品ばかりを購入しているから、これらのテクノロジーを活かして、顧客と消費を促すような信頼関係を築けたら嬉しいわ。

—経歴について教えてください。

ビジネススクールを卒業後の1995年、19歳にしてフランスと中国を結ぶ化粧品ビジネスを設立。マスマーケットにフォーカスしたビジネスで、この間は香港や韓国、タイ、台湾などのアジア諸国を訪れたわ。その後、『BC / Be Contemporary』という季刊誌を創刊し、注目のアーティストやギャラリーを紹介するアートのテレビ番組も制作。共同創設者の Emmanuelle Brizay (エマニエル・ブリゼ) もビジネススクールで学んだ後、ウィメンズフォーラムに勤め、そこで女性の社会進出や職場環境に関する問題に取り組んだと聞いているわ。またコンサルティング会社やアパレル企業でもキャリアを積んだ。私たちが出会ったのは8年前で、それから一緒にさまざまなプロジェクトに取り組んだ。『Panoply』のアイデアも、二人で話している時に生まれたの。私がセール品しか買わない消費者の話をすると、エマニエルも小さい時に思いついた「服をレンタルする」というアイデアを教えてくれた。それで何か新しい事を始めよう!ってなったの。

—モバイルミュージアム『MuMo』も含め、どのプロジェクトにも「シェアリング」や「共有」といったメッセージが含まれているようですね。

交換や共有する仕組みの「シェアリングエコノミー」が世界的にもトレンドになってきている。民泊や『Airbnb』などが良い例。ホストが空いている部屋や家に世界中のゲストを招くことによって、ホストもゲストもユニークな体験ができるのは素晴らしいことだと思うわ。このようなサービスは、デジタルネイティブ世代にぴったり。彼らは、所有することに興味がなく、ミニマリストやノマド的なライフスタイルを好む傾向にあって、若者の車離れが問題になっているように、所有することが重荷になる。そんな消費者とどう向き合っていくかがこれからの鍵ね。『Panoply City』も共有や体験を軸にプロジェクトを展開しているわ。人々を結びつけ、みんなを幸せにすることを願っている。また「買わずにレンタルする」という新しい価値観を世界にもっと発信できたらいいなと思っている。

—ではこのプロジェクトを通して、最も驚いたことは何ですか?

多くの女性たちが毎日違う服を着るように心がけていること。海外では「Outfit Repetition Syndrome (ORS)」と呼ばれ、特に SNS にセルフィーをアップする際は、「同じ服を着ていると思われたくない!」って思うそう。

—今後予定しているプロジェクトを教えてください。

まずは、『Panoply』の必要性や利点を理解してもらうことが先決。私たちの調査によると、80%の女性が私たちのサービスに関心を示してくれたけど、実際にレンタルするところまでは至らなかった。だから私たちのサービスのことをもっと知ってもらう必要があるし、「買う」から「レンタルする」時代にシフトしていることを分かってもらいたい。目標としては、18ヶ月後までに1500ブランドと提携し、ほかのファッション都市でも展開できたらと良いなと思っている。また今後の戦略のひとつとして、百貨店などにポップアップショップをオープンすることも視野に入れているわ。オンラインで提供しているサービスだけど、実店舗での体験も実現したい。先日もフランスのギャラリー・ラファイエット百貨店が2018年、シャンゼリゼ大通りに新店舗をオープンすると聞いて、百貨店関係者に話を聞いてきたの。また具体的な話は進んでいないけど、百貨店内に『Panoply』のレンタルカウンターがあったら面白いと思わない?

HP: www.panoplycity.com

Ingrid Brochard | Photo by Erick Faulkner

Ingrid Brochard | Photo by Erick Faulkner