TFP Recommended Movies

【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画

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【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画

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「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を週替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。

5月27日〜6月2日

『秋が来るとき』

©2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME

カンヌ、ベルリン映画祭の常連、Francois Ozon (フランソワ・オゾン) 監督の最新作。フランス映画の名匠が新たに手がけたのは、自然豊かなフランス・ブルゴーニュの秋を舞台とした人生ドラマ。監督が幼い頃に毎年訪れていた町で、彼自身の思い出を着想源に制作した。主人公は80歳の女性ミシェル。たまの休暇に孫と会うことを楽しみに、家庭菜園をし、親友と森を散歩しながら語らう日々。彼女はささやかな日常を守り抜くため、ある秘密を守り抜く決心をする。美しいブルゴーニュの景観を背景に、後ろめたい過去を抱えつつも人生の終盤を生き抜く強さ、親友を信じる絆と愛情を繊細に写し出す。そしてサスペンス的な要素も垣間見える演出は、成熟した大人や映画ファンに新たな感覚をもたらすだろう。また、キャスト陣には新旧のオゾン・ファミリーが一堂に集結。熟練の演技力が光る、Francois Ozon ファン必見の一作。

公開日: 5月30日(金)
監督: Francois Ozon
出演: Helene Vincent (エレーヌ・バンサン)、Josiane Balasko (ジョジアーヌ・バラスコ)、Ludivine Sagnier (リュディビーヌ・サニエ)
HP: longride.jp/akikuru

『犬の裁判』

©BANDE A PART – ATELIER DE PRODUCTION – FRANCE 2 CINEMA – RTS RADIO TELEVISION SUISSE – SRG SSR – 2024

『シンプルな情熱』『ACIDE/アシッド』で知られるフランス系スイス人女優 Laetitia Dosch (レティシア・ドッシュ) が監督・主演を務め、実在した裁判をもとにコメディ作品を制作。犬が被告となった前代未聞な裁判の模様を、フランスらしいユーモアで描く。ある日、負け裁判ばかりで事務所から解雇寸前の弁護士アヴリルは、絶望的な状況にある犬コスモスの弁護を依頼される。アヴリルはどうしても見過ごすことができず、引き受けることに。勝ち目のない状況で、犬の命がかかった裁判。本作は、時には人間と動物の関係に疑問を投げかけながら、にぎやかに展開していく。果たしてコスモスには、どのような判決が下されるのだろうか。コスモス役に出演したサーカス犬のコディは、2024年・第77回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドッグ賞を受賞。彼の名演技にも注目。

公開日: 5月30日(金)
監督: Laetitia Dosch
出演: Laetitia Dosch、Francois Damiens (フランソワ・ダミアン)、Jean-Pascal Zadi (ジャン=パスカル・ザディ)
HP: onlyhearts.co.jp

『マリリン・モンロー 私の愛しかた』

©2023-FRENCH CONNECTION FILMS

長年に渡りセクシーアイコンとして知られるマリリン・モンロー。彼女のスキャンダラスで野心的な生涯を新たな見解で辿ってゆくドキュメンタリーが誕生した。マリリン・モンローは幼い頃性的虐待を受けた過去を乗り越え、モデルとしてのキャリアをスタート。ヌード写真が流出したピンチもチャンスに変え、女優としてさまざまな賞を獲得したが、人気絶頂期にすべてを捨てて演技を一から学び直した。そして、当時では珍しかった個人プロダクションを設立するなど、常に男性優位の社会で戦い続けた。女優として、ファッションアイコンとして、そして自らのイメージを完璧にコントロールしたビジネスウーマンとしての多彩な才覚は、現在再評価されつつある。マリリン・モンローの素顔と色褪せることのない魅力、力強い人生を紐解く、時代を超えたドキュメンタリー作品。

公開日: 5月30日(金)
監督: Ian Ayres (イアン・エアーズ)
出演: Marilyn Monroe (マリリン・モンロー)、Tony Curtis (トニー・カーティス)、Jerry Lewis (ジェリー・ルイス)
HP: marilynmonroe.ne.jp

『ジョン・バージャーと4つの季節』

©2015 The Derek Jarman Lab

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』での活躍が記憶に新しい世界的女優 Tilda Swinton (ティルダ・スウィントン) が製作を手がけ、イギリス人作家 John Berger (ジョン・バージャー) の晩年にフォーカスしたドキュメンタリー。彼は1972年に小説『G.』で、英語圏で最も権威ある文学賞の一つ・ブッカー賞を受賞。2017年に他界したが、小さき声、声なき声に耳を澄ませた作品は現在でも世界的に評価されている。そして Tilda Swinton にとっても、彼の存在は常に特別な存在であったという。本作では、彼女が John Berger の住む村・カンシーを訪ねる場面から始まり、4つの季節に合わせて編まれた4つのチャプターで届けられる。戦争の記憶、人間と動物、政治とアートといった彼の作品のテーマを一つずつ掬い取り、次世代へバトンを渡していく。彼と、彼を慕う人々との対話が、彼の作品の世界を立体的に浮かび上がらせる。混沌とした現代社会に向けた John Berger の置き手紙かのような本作を、ぜひ受け取ってみてほしい。

公開日: 5月24日(土)
監督: Tilda Swinton、Colin MacCabe (コリン・マッケイブ)、Bartek Dziadosz (バルテク・ヅィアドーシュ)、Christopher Roth (クリストファー・ロス)
出演: John Berger、Tilda Swinton
HP: johnberger4.babelo.co

『血』

ポルトガルの鬼才 Pedro Costa (ペドロ・コスタ) の伝説前夜ともいえる、鮮烈な長編デビュー作『血』。自らが受けた映画史と、自国の記憶を色濃く反映し、漆黒のモノクロで表現した作品がスクリーンに蘇る。ストーリーの主人公は、青年ヴィンセント。彼が病に苦しむ父親を安楽死させ、墓地に埋めてから、周囲の人々の人生が狂い始める。ヴィンセントの叔父は父親の消息に疑問を持ち、彼の弟を連れ去ってしまう。一方、父親の負債の返済を求めて現れる2人組。そして、弟を取り返すべく動き出した彼を2人が追うことになる。人々の不安や恐れ、幻想的な森、黒く光る沼、得体の知れない男性たちなど、謎深い要素とフィルムノワール的な構成で、観る者を世界観へ包み込む。本作は、「ペドロ・コスタ はじまりの刻 1989-1997」と題された特集上映として、Pedro Costa の初期3作が劇場公開。さらに監督は今年8月、東京にて日本初となる個展の開催を予定している。劇場、併せて展示へと足を運び、Pedro Costa の魅力に触れてみては。

公開日: 5月24日(土)
監督: Pedro Costa
出演: Pedro Hestnes (ペドロ・エストネス)、Nuno Ferreira (ヌーノ・フェヘイラ)、Ines de Medeiros (イネス・デ・メディロス)
HP: cinematrix.jp/early_pedro

『サブスタンス』

©2024 UNIVERSAL STUDIOS

『ゴースト ニューヨークの幻』でヒットしたスター女優 Demi Moore (デミ・ムーア) を主演に迎え、若さを再び手に入れようとする元トップ女優の波乱な運命を描いた異色のホラーエンターテイメント。主人公は、50歳の誕生日を迎えた元人気女優エリザベス。容姿の衰え、仕事の減少から、新しい再生医療「サブスタンス」を受けることに。自分の殻を破るように現れたのは、自分と上位互換の存在スーだった。エリザベスの経験を持ったまま若く美しい容姿のスーは一気にスターダムへと駆け上がる。一つの魂をシェアして生きる2人は1週間ごとに入れ替わる生活を送っていたが、スーがタイムシェアリングのルールを破り始める。弾けるような若さと美しさで Demi Moore に対峙したのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演歴のある Margaret Qualley (マーガレット・クアリー)。Demi Moore の圧倒的怪演と、予測不可能なラストが、観客をこれまでにない映画体験へと導く。

公開日: 5月16日(金)
監督: Coralie Fargeat (コラリー・ファルジャ)
出演: Demi Moore、Margaret Qualley、Dennis Quaid (デニス・クエイド)
HP: gaga.ne.jp/substance

『ガール・ウィズ・ニードル』

©NORDISK FILM PRODUCTION / LAVA FILMS / NORDISK FILM PRODUCTION SVERIGE 2024

現在は「幸せの国」として知られるデンマークで、第1次世界大戦直後に起こった連続殺人事件を描く。舞台は首都のコペンハーゲン。お針子として働くカロリーネは、アパートの家賃が支払えず困窮していた。やがて勤め先の工場長と恋に落ちるも、身分違いの恋は実らず、妊娠していたにも関わらず捨てられ、さらに失業。ある日、表向きはキャンディショップを経営、裏では養子縁組斡旋所を経営している女性ダウマと出会う。カロリーネは乳母の役割を引き受け、2人の絆は強まっていくが、やがて彼女は悪夢のような世界を知ることになる。監督・脚本を手掛けたのは『波紋』『スウェット』といった鋭い視点の作品で世界的注目を集める Magnus von Horn (マグヌス・フォン・ホーン)。漆黒の映像美と徐々に闇が色濃くなる展開、心理的恐怖を煽る音響で、観客を妖しくも魅力的な闇の世界へと誘う。2024年カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映されると話題騒然、ポーランド映画祭では過去最多の11冠を受賞。本当の罪とは何なのか、怪物は誰なのか。人間の闇と光に迫る、新たなゴシック・ミステリー。

公開日: 5月16日(金)
監督: Magnus von Horn
出演: Vic Carmen Sonne (ビク・カルメン・ソンネ)、Trine Dyrholm (トリーヌ・ディルホム)、Besir Zeciri (ベシーア・セシーリ)
HP: transformer.co.jp/needlemovie

『ノスフェラトゥ』

©2024 Focus Features LLC. All rights reserved.

アメリカの鬼才 Robert Eggers (ロバート・エガース) が、幼い頃虜になった1922年公開のサイレント映画『吸血鬼 ノスフェラトゥ』をインスピレーション源に作品を制作。監督は「本物」にこだわり、当時の建物や衣装などを細部まで再現。そのリアルさは、第97回アカデミー賞®️で撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門にノミネートされたほど。主人公・エレン役を務めるのは、Johnny Depp (ジョニー・デップ) の娘である Lily-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ)。吸血鬼・オルロック伯爵には、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』で戦慄の渦を巻き起こした Bill Skarsgard (ビル・スカルスガルド) を抜擢。Robert Eggers 監督の圧倒的熱量と実力派俳優、制作陣が届ける、いつまでも色褪せないゴシック・ロマンスホラー。

公開日: 5月16日(金)
監督: Robert Eggers
出演: Bill Skarsgard (ビル・スカルスガルド)、Nicholas Hoult (ニコラス・ホルト)、Lily-Rose Depp (リリー=ローズ・デップ)
HP: universalpictures.jp/nosferatu

『クィア/QUEER』

©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l. © Yannis Drakoulidis

『君の名前で僕を呼んで』では、ひと夏の恋を詩的に描いた Luca Guadagnino (ルカ・グァダニーノ) 監督が新たに手がけたのは、あまりに一途に、大切な人と愛を分かち合いたいと切望する男の物語。舞台は1950年代、メキシコシティ。退屈な日常を過ごすアメリカ人駐在員のウィリアム・リーは、若く美しくミステリアスな青年ユージーン・アラートンに一目で恋に落ちる。ユージーンを求めれば求めるほど孤独が増していくリーは、2人で奇跡の体験をしようと、ユージーンを幻想的な南米への旅へと誘い出す。愛を見つけ、途方も無い孤独に溺れるリーを演じるのは、『007』シリーズの主人公、ジェームズ・ボンドの鎧を脱ぎ捨てた新生 Daniel Craig (ダニエル・クレイグ)。そしてユージーン役には、映画ファンの中で話題沸騰中の Drew Starkey (ドリュー・スターキー) を抜擢。一心に愛を求め、もがき、惹かれ合う2人。誰もが彼らの情熱と葛藤に、翻弄されるはず。

公開日: 5月9日(金)
監督: Luca Guadagnino
出演: Daniel Craig、Drew Starkey、Jason Schwartzman (ジェイソン・シュワルツマン)
HP: gaga.ne.jp/queer

『新世紀ロマンティクス』

©2024 X stream Pictures All rights reserved

中国の名匠 Jia ZhangKe (ジャ・ジャンクー) 監督が、22年間かけて制作した超大作。ミレニアムの幕開けから、怒涛の変貌を遂げた現在の中国の変遷を背景に、ひとりの女性の出会いと別れを映し出す。主人公のチャオは、山西省・大同(ダートン)を出て戻らぬ恋人ビンを求め、奉節(フォンジエ)を訪れる。一方ビンは、奉節からマカオに経済特区・珠海(チューハイ)に移動していた。時は流れ、2人はまた大同へ戻っていく。恋人たちの関係と比例するように、街は変化していく。22年かけて旅するチャオは、どこへ辿り着くのだろうか。撮影当初は道路が塗装されておらず、二つ折りの携帯電話を手にした人々が行き交っていた世界も、高層ビルが立ち並び、スマートフォンが普及し、AI ロボットがスーパーマーケットで接客をしている。街は壊され、再構築され、姿を変えて人々を飲み込んでいく。監督は本作で、ドキュメンタリーとフィクションを大胆に融合。時代の流れに翻弄されながらも何かを掴もうともがく主人公の姿に、誰もが共感するだろう。

公開日: 5月9日(金)
監督: Jia ZhangKe
出演: Zhao Tao (チャオ・タオ)、Li Zhubin (リー・チュウビン)、Zhou You (チョウ・ヨウ)
HP: bitters.co.jp/romantics

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』

©BROUHAHA LEE LIMITED 2023

トップモデルから写真家へと転身し、戦争へと赴いたリー・ミラーの人生を描く。『VOGUE』誌をはじめ、トップモデルとして華やかで自由な生活を謳歌していたリー・ミラー。数多くの名だたるアーティストを魅了したその輝きは、写真家としても発揮。やがて彼女の情熱、エネルギーは戦場へと向けられ、英国版『VOGUE』誌の記者となって第二次世界大戦中のヨーロッパを取材。そして、ナチス政権の残虐な行為や戦争の犠牲者、悲惨な姿をフィルムに収めた。彼女が従軍記者兼写真家として記録した写真は、戦争写真の在り方を変えただけでなく、歴史的にも重要な資料として残り続けている。本作は、彼女の生き方に大きく感銘した女優 Kate Winslet (ケイト・ウィンスレット) が制作総指揮を執り、主演を務めた。リー・ミラーが戦場の前線で目撃した真実と、人生をかけて遺したものを、ぜひ受け止めてほしい。

公開日: 5月9日(金)
監督: Ellen Kuras (エレン・クラス)
出演: Kate Winslet、Andy Samberg (アンディ・サムバーグ)、Alexander Skarsgard (アレクサンダー・スカルスガルド)
HP: leemiller_movie

『季節はこのまま』

©Crole Bethuel

私たちも過ごした5年前のパンデミック。「あの日々」に人生を見つめ直す、圧倒的共感の物語がリリースされる。2020年4月、新型コロナウイルスの影響で外出が制限された春。映画監督のポールと、音楽ジャーナリストである弟のエティエンヌは、それぞれの恋人とともに、子どもの頃に暮らした郊外の家で生活することに。懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚……。止まってしまった時間のなかで彼らは不安を抱えながらも、ゆっくりと互いのことを見つめ直し、愛と人生の新たな側面を発見していく。美しく、ゆっくりとした日々を表現するのは、フランス映画界の宝石たち。主演には、Olivier Assayas (オリビエ・アサイヤス) 監督と3度目のタッグを組むVincent Macaigne (ヴァンサン・マケーニュ)、そして弟エティエンヌを演じるのは、『映画を愛する君へ』での活躍が記憶に新しい Micha Lescot (ミーシャ・レスコ)。また、本作は実際に監督が弟と子ども時代を、そしてロックダウン期間を過ごした両親の家で撮影。彼自身が「これまでの作品のなかで最もパーソナルで親密」と語る作品に仕上がった。本作を鑑賞して「あの頃」を振り返り、それぞれが経験した日々を見つめ直してみては。

公開日: 5月9日(金)
監督: Olivier Assayas
出演: Vincent Macaigne、Micha Lescot、Nine d’Urso (ナイン・ドゥルソ)
HP: kisetsufilm.com

『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』

©2024 CG CINEMA • THEO FILMS • ARTE FRANCE CINEMA

『ポンヌフの恋人』『アネット』などで知られる名匠 Leos Carax (レオス・カラックス) が初めて編集を手がけ、コラージュをほどこしたセルフポートレート作品。本作は、パリの現代美術館ポンピドゥー・センターで行う予定だった展覧会が、予算が膨らみすぎて実現不可能となり、代わりのような形で制作された。ポンピドゥー・センターから「君は今どこにいる?」という問いかけを根源的に捉え直し、自分がどこからきて、どこへ行くのかという答えのない謎に迫っていく。世界的映画監督 Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) の後期にみられるエッセイ・スタイルをオマージュしながら、カラックスらしい夢想的・連想的な要素を取り入れた。ホームビデオから映画、音楽、写真とさまざまなジャンル、フォーマットの映像を夢の断片のようにコラージュしながら、自身のポートレートをダイレクトに描く。彼の過去から現在、表面から深層部まで深く写し出す、私的で詩的なメッセージ。

公開日: 4月26日(土)
監督: Leos Carax
出演: Denis Lavant (ドニ・ラバン)、カテリーナ・ウスピナ、ナースチャ・ゴルベワ・カラックス
HP: eurospace.co.jp/itsnotme

『ミステリアス・スキン』

©MMIV Mysterious Films, LLC

幼少期に心の傷を負った2人の少年の行く末を描いた本作が制作から20年の時を経て、ついに劇場公開。アメリカ人小説家 Scott Heim (スコット・ハイム) が自身の経験をもとにした小説『謎めいた肌』を原作に、90年代、ニュー・クィア・シネマのムーブメントを牽引した Gregg Araki (グレッグ・アラキ) 監督がメガホンをとった。舞台となるのは、カンザス州の田舎町ハッチンソン。1981年の夏、8歳の少年ブライアンとニールは、常習的に幼い子どもへの性加害を行なっていたコーチによって大きく人生を狂わされる。精神的なショックから記憶をなくしてしまったブライアンと、コーチと自分の間に愛があったと信じ、年上の男性に体を売って生きていく道を選んだニール。10年後の2人は、どのような未来を描くのだろうか。主演のニール役を務めるのは、『(500)日のサマー』『インセプション』など、有名作品での活躍が目覚ましい俳優 Joseph Gordon-Levitt (ジョセフ・ゴードン=レビット)。撮影当時は23歳であり、ブレイク前の若かりし姿にも注目。

公開日: 4月25日(金)
監督: Gregg Araki
出演: Joseph Gordon-Levitt、Brady Corbet (ブラディ・コーベット)、Michelle Trachtenberg (ミシェル・トラクテンバーグ)
HP: mysterious-skin

『来し方 行く末』

©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

弔辞作家の日常というユニークな題材を軸に、人々の人生模様や死生観を繊細に織り込んだヒューマンドラマが誕生。主演には、華やかな時代劇スターから静的なキャラクターまでこなす国民的人気俳優の Hu Ge (フー・ゴー) を抜擢。そして彼の同居人シャオインには、『西湖畔に生きる』で圧倒的な演技力を披露し、本作が Hu Ge と3度目の共演となる Wu Lei (ウー・レイ)。世界の映画祭で高い評価を受ける Liu Jiayin (リュウ・ジャイン) 監督が長年の思索を重ねて熟成させた待望の新作に実力派俳優が集結した。本作の主人公のウェン・シャンは脚本家として花開くことができず、弔辞の代筆業で生計を立てている。このアルバイトを通してさまざまな境遇の依頼主と出会い、交流を重ね、彼の中で止まっていた時間がゆっくりと動き出していくのだった。Liu Jiayin が14年ぶりにスクリーンに放つ、人生の回り道を優しく包み込む静謐なヒューマンドラマ。

公開日: 4月25日(金)
監督: Liu Jiayin
出演: Hu Ge、Wu Lei、Qi Xi (チー・シー)
HP: mimosafilms.com/koshikata

『けものがいる』

©Carole Bethuel

『アデル、ブルーは熱い色』、『美女と野獣』の Lea Seydoux (レア・セドゥ) を主演に、人間の感情が消去される近未来社会で、100年以上の時を超えて転生を繰り返す女と男の数奇な運命を描く。本作は、AI に国家が管理された2044年のパリ、35mmフィルムで撮影し、華麗なコスチューム・プレイが繰り広げられる1910年、そしてガラス張りの豪邸を舞台にしたスリラー劇から目が離せない2014年という3つの時代をクロスオーバー。主人公の女性ガブリエルはそれぞれの世界で出会うルイを巡って、過酷な道を突き進む。衝撃的な真実と、予測不可能な2人の運命とは。本作は、イギリスの文豪 Henry James (ヘンリー・ジェイムズ) による傑作長編小説『密林の獣』を自由かつ大胆に翻案。自分に見合った興味深い仕事か、夢描いた恋愛かという選択を主人公に課すという、現代的なテーマに切り込んだ。飛躍したビジュアライズで冷ややかなリアルを写し出す本作は、我々の心にどのように響くのだろうか。Bertrand Bonello (ベルトラン・ボネロ) 監督の新たな挑戦を、ぜひスクリーンで見届けて。

公開日: 4月25日(金)
監督: Bertrand Bonello
出演: Lea Seydoux、George MacKay (ジョージ・マッケイ)、Guslagie Malanda (ガスラジー・マランダ)
HP: kemonogairu.com

『異端者の家』

©2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.

これまでに規格外の狂気を表現し続けてきた映画スタジオ A24 が新たに仕掛けるのは、信仰心を揺さぶる異端の脱出スリラー。並外れた頭脳を持つ悪役には、これまで『ノッティングヒルの恋人』、『ラブ・アクチュアリー』といったラブコメ作品で人気を博してきた Hugh Grant (ヒュー・グラント) を起用。彼の新境地となる猟奇的な演技は、スクリーンを恐怖に包み込み大絶賛を受けた。彼が演じるのは、森に囲まれた一軒家に住む謎の男、リード。シスター・パクストンとシスター・バーンズは布教のため彼の家を訪れると、徐々に不穏な空気に。帰ろうとする2人に、リードは2つの扉を提示する。どちらかしか家を出ることができないという扉の先で、悪夢のような真相が彼女たちを待ち受けていた。本作は、『クワイエット・プレイス』の Scott Beck (スコット・ベック) & Bryan Woods (ブライアン・ウッズ) が監督・脚本を手がけ、人間に対するプリミティブな恐怖を突きつける。閉ざされた家で男が迫る究極の選択は、我々を出口の見えない迷路へと引き摺り込むだろう。

公開日: 4月25日(金)
監督: Scott Beck、Bryan Woods
出演: Hugh Grant、Sophie Thatcher (ソフィー・サッチャー)、Chloe East (クロエ・イースト)
HP: happinet-phantom.com/heretic

『KIDDO キドー』

©︎2023 STUDIO RUBA

母娘版『ボニーとクライド』のような、遊び心あふれるロードムービーが日本に上陸。監督は、そのビジュアルセンスとプレイフルな作風で注目を集めるオランダの新星 Zara Dwinger (ザラ・ドヴィンガー)。長編デビューとなった本作がさまざまな映画祭で賞賛され、『ANORA アノーラ』で知られる Sean Baker (ショーン・ベイカー) 監督からも絶賛されるなど、世界的注目が高まっている。1960〜70年代の印象を受けるサウンドトラックで、アメリカン・ニュースネマへの愛を散りばめた、どこか懐かしく、だが新しい逃避劇を生み出した。物語は、児童養護施設で暮らす11歳の少女ルーのもとに、ある日突然母親から連絡が入る。自称ハリウッドスターの母・カリーナは、施設からルーを連れ出し、「ポーランドのおばあちゃんのところへ行く」と告げる。ルーは破天荒な言動を見せるカリーナに戸惑いながらも、母と一緒にいたいという思いでついていく。独特な世界観で描く2人の逃避行の終着点を、ぜひ見届けて。

公開日: 4月18日(金)
監督: Zara Dwinger (ザラ・ドヴィンガー)
出演: Rosa van Leeuwen (ローザ・ファン・レーウェン)、Frieda Barnhard (フリーダ・バーンハード)
HP: kiddo_film

『メイデン』

©︎2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.

カナダ・カルガリー郊外を舞台に、思春期の少年少女の友情、孤独、喪失の悲しみを紡ぎ上げたメランコリックな青春映画。登場するのは、カイル、コルトン、ホイットニーの3人の高校生。カイルとコルトンは親友であり、毎日スケートボードや渓谷での水遊びなど、気の向くままに遊んでいた。夏のある夜、2人は立入禁止区域に侵入し、惨たらしい出来事に見舞われる。一方その頃、行方不明となったホイットニーの日記帳をコルトンが拾う。彼女の心の闇は、どれほど彼女自身を苦しめていたのだろうか。3人の運命が交錯する様子を、粒子の粗い16mmフィルムでみずみずしく描ききった本作は、圧倒的映像美で観る者を浮遊感漂う世界へと導いていく。メインキャストを担う Jackson Sluiter (ジャクソン・スルイター)、Hayley Ness (ヘイリー・ネス)、Marcel T. Jimenez (マルセル・T・ヒメネス) の3人は、全員オーディションで見出され、本作で映画デビューを果たす。彼らの鮮烈な演技力と存在感は、誰しもが自身の若き日に慕情を抱かずにはいられないだろう。

公開日: 4月18日(金)
監督: Graham FOY (グラハム・フォイ)
出演: Jackson Sluiter、Hayley Ness、Marcel T. Jimenez
HP: maiden.com

『カップルズ』

『ヤンヤン 夏の想い出』、『エドワード・ヤンの恋愛時代』などで知られる台湾の名匠 Edward Yang (エドワード・ヤン) が1996年に手がけた映画が、4kレストア版として日本初公開。のちに彼の新台北3部作と呼ばれる作品群の第2作にあたる本作では、喜劇と悲劇が表裏一体の緊張感が漂う。現代社会において、欲望の追求に夢中になった先にある悲劇と希望を浮き彫にし、現在から約30年前の製作ながら、ますます現代性を帯びたテーマとなった。またキャストは、のちに『8人の女たち』に登場する Virginie Ledoyen (ビルジニー・ルドワイヤン)、『牯嶺街少年殺人事件』で主演を務めた Chen Chang (チャン・チェン) などが出演し、Edward Yang 作品常連の顔ぶれが集結。彼らが務めるのは、混沌とした90年代半ばの台北で、自由気ままに生きる4人組の青年ギャング団。ある日、フランスからマルトという女性が台北にやってきたことから、彼らの歯車は狂い始め、やがて後戻りのできないほどに変化していく。青い日々をリアルに切り取った青春群像劇で、Edward Yang の巻き起こした台湾ニューウェイブの風を感じてみて。

公開日: 4月18日(金)
監督: Edward Yang
出演: Virginie Ledoyen、Chen Chang、Ko Yu-Luen (クー・ユールン)
HP: edwardyang2025

『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』

©︎2023 Zeitsprung Pictures GmbH

ヒトラーの腹心としてプロパガンダ政策を担った男性、ゲッベルスに焦点を当てたドラマ作品。ヨーゼフ・ゲッベルスは、1933年のヒトラー首相就任から彼が亡くなるまでの12年間、ナチス・ドイツの宣伝大臣として国民を扇動してきた。演説、ラジオ、映画など、あらゆるメディアを駆使して国民感情を煽り、操ったその戦略は、のちに「フェイクニュースの祖」と呼ばれるほど。本作は入念なリサーチにもとづき、過去の実際の映像も使用しながら、ゲッベルス、ヒトラー、ナチ幹部たちの驚くべき行動や言動を暴き出す。ヒトラーを国民的ヒーローに押し上げ、大量虐殺に国民を加担させた驚愕の手法とは。そして本作は現代を生きる我々にも警鐘を鳴らしている。ウクライナやガザにおける戦争、ポピュリズム、量産されるフェイクニュース……。インターネット全盛期を迎えた社会で、どのように真実を見極めていくべきだろうか。強いメッセージを込めた一作が、スクリーンに放たれる。

公開日: 4月11日(金)
監督: Joachim Lang (ヨアヒム・A・ラング)
出演: Robert Stadlober (ロバート・スタッドローバー)、Fritz Karl (フリッツ・カール)、Franziska Weisz (フランツィスカ・ワイズ)
HP: goebbelsmovie.com

『片思い世界』

©︎2025「片思い世界」製作委員会

『花束みたいな恋をした』を手掛けた脚本家の坂元裕二、映画監督の土井裕泰のタッグが贈る、注目の最新作。主演を務めるのは、広瀬すず、杉咲花、清原果耶といった国民的女優の3人。本作では、東京の片隅にある古い一軒家で共同生活をする3人が抱えた切実な片思いを描いた。広瀬すず演じる美咲、杉咲花演じる優花、清原果耶演じるさくらは、それぞれ仕事、学校、アルバイトに毎日出かけて行き、帰宅するとみんなで夕飯。そして、リビングでおしゃべりし、同じ寝室で寝て、起きたら3人で歯磨きと、楽しく何気ない日常を過ごす。家族や同級生でもないが、固い絆で結ばれる彼女たちの片思いの行く末は。豪華キャストが届けるこの物語をお見逃しなく。

公開日: 4月4日(金)
監督: 土井裕泰
出演: 広瀬すず、杉咲花、清原果耶
HP: kataomoisekai.jp

『教皇選挙

©︎2024 Conclave Distribution, LLC.

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。その総本山であるバチカンのトップを決めるローマ教皇選挙「コンクラーベ」の様子を、緊張感たっぷりに映し出す。ローマ教皇が死去するか、辞任した時に教皇選挙が開催される。世界中が固唾を飲んで注目する一大イベントは、外部からの介入や圧力を徹底的に遮断しており、秘密のベールに包まれている。内部では、世界中から集まった有力な候補者たちが政治家に見えてくるほどのパワーゲームが繰り広げられていた。差別、スキャンダル、陰謀……熾烈なパワーゲームが、先読みを一切読めないミステリーへと観る者を誘っていく。選挙を取り締まるローレンス枢機卿の苦悩が最高潮に達し、新教皇誕生が差し迫ったとき、バチカンを揺るがす大事件が勃発するのであった。監督は Netflix で配信された戦争映画『西部戦線異状なし』で高く評価を得た Edward Berger (エドワード・ベルガー) 監督。一瞬も見逃せない緊迫感に、スクリーンを包み込む。

公開日: 3月20日(木・祝)
監督: Edward Berger
出演: Ralph Fiennes (レイフ・ファインズ)、Stanley Tucci (スタンリー・トゥッチ)、John Lithgow (ジョン・リスゴー)
HP: cclv-movie.jp

『ANORA アノーラ

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アメリカ社会の「声なき声」をすくいあげてきた Sean Baker (ショーン・ベイカー) 監督が贈る人間讃歌。主人公は、ニューヨークでストリップダンサーとして暮らすアノーラ。職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、夢のような幸せを掴みかけていたが、彼の両親は息子と娼婦との結婚に猛反対。厳しい現実を突きつけられ、アノーラの物語は第二章を迎える。本作で監督が表現したのは、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する、若きストリッパーの生きざまだ。身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを21世紀風に描き直し、セックス、美、富、社会的階級といったリアリティ溢れる要素を取り入れた。そしてパワーゲームのなかで利用されながらも、階級意識や偏見に抗うパワフルなアノーラ役に抜擢されたのは、新星 Mikey Madison (マイキー・マディソン)。また、ロシア新興財閥の息子イヴァン役には「ロシアのティモシー・シャラメ」と謳われる Mark Eydelshteyn (マーク・エイデルシュテイン) が登場し、本作が英語劇初挑戦となる。Sean Baker の作品史上、最もエンターテイメント性が高く、清濁合わせ呑む人間らしさに溢れた本作。アノーラの圧倒的パワーとエネルギーが、凝り固まった今の世の中を鮮やかに蹴り飛ばす。

公開日: 2月28日(金)
監督: Sean Baker
出演: Mikey Madison、Mark Eydelshteyn、Yuriy Borisov (ユーリー・ボリソフ)
HP: anora.jp