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おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』

© 2025 TPS Productions, LLC. All Rights Reserved..jpg
シンメトリーな映像美、個性豊かなキャラクターなど、唯一無二な世界観で観る者を魅了する Wes Anderson (ウェス・アンダーソン) 監督の最新作。自身の原点に立ち返り、家族の絆と再生をテーマにしたクライム・ファミリー・コメディを制作した。物語の舞台は1950年代、架空の大独立国フェニキア。大富豪ザ・ザ・コルダは、大規模プロジェクト「フェニキア計画」のため、家庭教師のビョルン、そして離れて暮らす一人娘・リーズルとともに、資金集めの旅に出ることに。あらゆる妨害をすり抜け、出資者との駆け引きを続けるうちに、冷え切った親子関係は徐々に変化していく。無事にプロジェクトを完遂し、リーズルの母親を殺した犯人を見つけ出し、そして「本当の家族」になれるのだろうか。本作で主演を飾るのは、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』に続くウェス作品への出演となる Benicio Del Toro (ベニチオ・デル・トロ)。また Tom Hanks (トム・ハンクス)、Scarlett Johansson (スカーレット・ヨハンソン)、Benedict Cumberbatch (ベネディクト・カンバーバッチ)、そして Bill Murray (ビル・マーレイ) といったウェス作品を象徴する俳優陣が集結。今作では、どんな愛くるしいキャラクターたちに出会えるのか楽しみだ。
公開日: 9月19日(金)
監督: Wes Anderson
出演: Benicio Del Toro、Mia Threapleton (ミア・スレアプレトン)、Michael Cera (マイケル・セラ)
HP: zsazsakorda-film.jp
『宝島』

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会
戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描き切った真藤順丈による傑作小説『宝島』を映画化。監督を務めるのは『るろうに剣心』シリーズで知られ、時代劇からアクション、ミステリーやファンタジーまで、あらゆる表現に挑戦し続ける大友啓史。元「沖縄が沖縄がアメリカだった時代」を真正面から捉え、実際に起きた事件をリアルに表現した。物語が展開される時代は、1952年。当時、米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。彼らが一世一代の襲撃に出た夜、彼らの英雄的存在だったリーダー、オンは予想外の戦果を手に入れ、突然消息を絶つ。オン以外の3人はそれぞれの道を進むが、20年後、ある事件が勃発。オンが持ち出したものを追って米軍さえも動き出す事態の先には、衝撃の真実が待ち受けていた。本作の主演には妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太といった豪華キャストが集結。日本に見捨てられ、アメリカに支配されていた沖縄。混沌とした時代を全力で駆け抜けた若者たちの姿を、圧倒的熱量とスケールで映し出す。
公開日: 9月19日(金)
監督: 大友啓史
出演: 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝
HP: takarajima-movie.jp
『ファンファーレ!ふたつの音』

©Thibault Grabherr
白血病と診断された世界的指揮者が生き別れの弟と出会い、音楽で人生を好転させていく人間ドラマ。本国フランスでは動員数260万人を誇り、3週連続1位を記録した人気作が、日本上陸を果たす。主人公は、世界を飛び回るスター指揮者のティボ。突然白血病と診断され、ドナーを探していると自分が養子であること、生き別れた弟ジミーがいることを知る。寂れた町に住み、小さな吹奏楽団でトロンボーンを楽しむジミーの演奏から、ティボは類まれな音楽の才能を発見。ティボが全力でジミーを応援していくうちに、2人の未来だけではなく、楽団や町の人々の運命も動かしていく。監督は俳優としてのキャリアのほかに、脚本やディレクションも手がける Emmanuel Courcol (エマニュエル・クールコル)。彼が大切にしている友愛、絆、機会、社会決定論といったテーマを一つの物語に集約。撮影では、フランス北部の町ラレンにあるラレン市営炭鉱労働者楽団のメンバーが作中の楽団員を演じ、クラシックの名曲から現代のヒット曲まで披露。その音楽は映画を飛び越えて、観る者の人生をも励ますだろう。
公開日: 9月19日(金)
監督: Emmanuel Courcol
出演: Benjamin Lavernhe (バンジャマン・ラベルネ)、Pierre Lottin (ピエール・ロッタン)、Sarah Suco (サラ・スコ)
HP: movies.shochiku/enfanfare/
『ムガリッツ』

毎年11月から4月の半年間、新メニュー開発のため休業するというユニークなミシュランの常連レストラン・ムガリッツ。名店の革新的な料理の制作秘話に迫る、ガストロノミック・ドキュメンタリー。1998年にムガリッツはスペイン、サンセバスチャンに店を構え、2005年にはミシュラン2つ星を獲得。常に挑戦する姿勢を崩さず、従来のレストランコードにとどまらない独自の世界観を追求してきた。本ドキュメンタリーでは、厨房に潜入し、新たなメニューが創作される様子を捉える。農場を訪問し、養蜂を学び、納豆や昆布、出汁、麹といった日本食が用いられることも。幅広い食材が大胆にアレンジされ、2回にわたる試食会を経てメニューが完成。そして、シーズンが終わるとレシピに火が放たれる。まるで祭りのようにすべてを葬り、翌年にはゼロからの挑戦がスタート。その過程が驚きの連続であり、ムガリッツの独自性を表しているかのようだ。本作を手がけたのは、自身がムガリッツの熱心なファンだという Paco Plaza (パコ・プラサ) 監督。前代未聞の厨房の舞台裏を、ぜひスクリーンで楽しんで。
公開日: 9月19日(金)
監督: Paco Plaza
出演: Benicio Del Toro、Mia Threapleton (ミア・スレアプレトン)、Michael Cera (マイケル・セラ)
HP: gaga.ne.jp/mugaritzmovie
『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』

©-MACT PRODUCTIONS-LE SOUS-MARIN PRODUCTIONS-INA-PANTHEON FILM-2024
映画の歴史を変えた音楽家、Michel Legrand (ミシェル・ルグラン) の人生の軌跡と最後の舞台に迫る圧巻のドキュメンタリーが誕生。フランスを代表する作曲家、編曲家、ピアニスト、歌手、指揮者の Michel Legrand は、『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』をはじめとする200本以上の映画音楽を手がけてきた。Jacques Demy (ジャック・ドゥミ) 監督とのコンビで名作を生み、Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) などヌーヴェルヴァーグの監督たちから高い評価を獲得。その名声は海を越え、ハリウッドでも成功を収めた。本作では、ルグラン本人と関係者が映画を振り返る形で貴重な作曲の舞台裏を披露。練習に一切妥協しない姿勢、数々の栄光に隠された挫折と苦悩など、これまで明かされてこなかった素顔にも焦点を当てる。75年間の生涯で数々の映画作品に携わり、後世に影響を与え続けるルグランの伝説ともいえる人生を映し出す。
公開日: 9月19日(金)
監督: David Hertzog Dessites (デビッド・ヘルツォーク・デシテス)
出演: Michel Legrand、Agnes Varda (アニエス・ヴァルダ)、Jacques Demy
HP: unpfilm.com/legrand
『Dear Stranger ディア・ストレンジャー』

©︎Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
監督・脚本は『ディストラクション・ベイビーズ』『宮本から君へ』などの真利子哲也。主演には西島秀俊、共演に Guey Lun-mei (グイ・ルンメイ) を迎え、日本・台湾・アメリカが共同で作り上げたヒューマンサスペンス。本作の舞台は全編ニューヨーク。西島演じる日本人助教授・賢治と、グイ演じる中華系アメリカ人の妻ジェーンは、仕事や介護、育児に追われる日々のなか、ある日、4歳の息子が誘拐される。この悲劇をきっかけに、互いに秘めてきた本音や秘密が次々に露見。やがて殺人事件へと発展していく事件とともに深まっていく夫婦の溝。家族の運命はどこへ向かうのだろうか。『ドライブ・マイ・カー』での活躍が記憶に新しい、硬軟を自在に操る日本の実力派俳優・西島秀俊と、『薄氷の殺人』『鵞鳥湖の夜』で一躍世界の注目を集めた Guey Lun-mei が真っ向から対峙し、後戻りのできない関係へと突き進んでいく。鋭い言葉を放ちながら家族の再生へともがく夫婦の姿に、感情を大きく揺さぶられてみて。
公開日: 9月12日(金)
監督: 真利子哲也
出演: 西島秀俊、Guey Lun-mei
HP: d-stranger.jp
『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』

©︎2019(PUPKIN)
バルカン半島のボスニア生まれ、オランダ育ちである Ena Sendijarevic (エナ・センディヤレビッチ) 監督の長編デビュー作。自身のルーツを主人公に重ね、監督が心酔する Jim Jarmusch (ジム・ジャームッシュ) 監督『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に影響を受けて本作を制作した。主人公は、少女でも大人でもない年頃の少女アルマ。父の入院の知らせを聞き、母国ボスニアへ1人で向かうと、空港で待っていたのは、従兄弟のエミルとその親友デニス。アルマは、冷たい態度のエミルに置き去りにされたり、キャリーケースは壊れたりと、その旅路は一筋縄ではいかない。そんななか、エミルのインターンを名乗る男デニスだけが、アルマの話に耳を傾けてくれるのだった。時間はゆっくりと流れ、余白に満ちた空間で、主人公の「自分探し」という普遍的なテーマを追求していく。大人の入り口に立つアルマは、世界をどのように捉えるのか。居場所のない祖国で自身のアイデンティティと安らぎを求める少女の衝動を詩的に紡いだ、青春ロードムービー。
公開日: 9月13日(土)
監督: Ena Sendijarevic
出演: Sara Luna Zoric (サラ・ルナ・ゾリッチ)、Ernad Prnjavorac (エルナド・プルニャボラツ)、Lazar Dragojevic (ラザ・ドラゴイェビッチ)
HP: take-me.crepuscule-films.com
『こんな事があった』

©︎松井良彦/Yoshihiko Matsui
『追悼のざわめき』などで国内外から支持を集める松井良彦監督が、18年ぶりに新作をリリース。東日本大震災から10年、2021年の夏の福島を震えるほど静謐に描き出す。本作でフォーカスするのは、原発事故で離ればなれになった家族と、青春を奪われた青年たちの姿。17歳のアキラは母親を被曝で亡くし、原発職員だった父は罪の意識に苛まれ除染作業員として働き始める。独りになり、学校にも行かず彷徨うアキラ。アキラの友人、真一は彼を心配するが、真一もまた人には話せない孤独を抱えていた。ある日、アキラはサーフショップを営む夫婦に出会い、彼らに心を開き始め、真一もサーフショップに通い始めることに。しかし、癒えることのない心の傷は静かに彼らは蝕んでいくのだった。主演を務めるのは、是枝裕和監督『奇跡』で映画デビューにして初主演を飾り、着々とキャリアを積む前田旺志郎。真一役には、映画やドラマ、CM など活躍の場を広げる窪塚愛流を抜擢し、期待の若手俳優たちが行き場のない怒りを抱えた青年たちの感情をリアルに表現する。さらに井浦新、柏原収史など、日本の映像業界を牽引する実力派俳優が集結。傷痕が深く残る福島の地で、さまざまな立場で苦しみ、もがく人々の姿を映し出す。
公開日: 9月13日(土)
監督: 松井良彦
出演: 前田旺志郎、窪塚愛流、柏原収史
HP: each-time.jp/konnakotogaatta
『シナリオ』

2022年9⽉13⽇、世界的名匠 Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) は自身が手がけたシナリオに従って自発的な死を遂げた。その2年前から彼は『シナリオ〔Scénario〕』と題した遺作の制作に取り組んでおり、その企画説明の模様を収めたのが本作である。彼は最後の長編作品をつくるにあたって、アイデアやモンタージュの構想を何冊ものノート、手帳に記した。だが死の数日前、その企画は仕切り直され、ゴダールは2部構成の映画を仕上げるよう指示。コラージュ技法による18分間の短編『シナリオ〔Scénario〕』が制作された。本作では、長年アシスタントを務めたジャン゠ポール・バタジアとファブリス・アラーニョにゴダール本人が企画の説明を行う様子が丁寧に写し出されている。静止画像と動画像を混ぜ合わせ、読むことと見ることの中間にあるような映画体験を通じて、Jean-Luc Godard の世界に触れてみて。
公開日: 9月5日(金)
監督: Jean-Luc Godard
HP: roadstead.io/scenarios
『遠い山なみの光』

©︎2025 A Pale View of Hills Film Partners
2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが、自身の出身地・長崎を舞台にした同名小説を映画化。日本、イギリス、ポーランドの3カ国合作による国際共同製作で、『ある男』などで知られる石川慶が監督を務める。本作は、戦後まもない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を交錯させながら記憶の秘密を紐解いていく。物語の主人公ニキは、日本人の母とイギリス人の父を持つ。大学を中退して作家を目指し、戦後長崎から渡英してきた母・悦子の半生を作品にしたいと考えた。そこでニキは、母の知られざるひと夏の思い出について知ることになる。その話に心を揺さぶられると同時に嘘に気づき始めた彼女は、やがて思いがけない真実に辿り着くことになる。長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに悦子の夫に松下洸平、その父親に三浦友和と、日英映画界の煌びやかな至宝がそろった。カズオイシグロの長編小説デビュー作が豪華キャストによって彩られ、ついにスクリーンに放たれる。
公開日: 9月5日(金)
監督・脚本・編集: 石川慶
出演: 広瀬すず 二階堂ふみ 吉田羊、カミラ・アイコ、柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜、松下洸平、三浦友和
原作: カズオ・イシグロ、小野寺健訳『遠い山なみの光』(ハヤカワ書房)
配給: ギャガ
上映時間: 123分
HP: gaga.ne.jp/yamanami
『九月と七月の姉妹』

©︎Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024
フランス人俳優 Ariane Labed (アリアン・ラベド) がメガホンをとり、長編デビュー。本作は史上最年少のマン・ブッカー賞候補となった作家 Daisy Johnson (デイジー・ジョンソン) の同名小説に着想を得て制作され、ラベドの公私に渡るパートナーである Yorgos Lanthimos (ヨルゴス・ランティモス) を中心として生まれた映画ムーブメント「ギリシャの奇妙な波」を継ぐ作風で脚光を浴びた。物語を彩るのは、10ヶ月違いで生まれた一心同体の姉妹・セプテンバーとジュライ。我の強い姉は内気な妹を支配し、2人は強い絆で結ばれていた。2人は時折とあるゲームに興じていたが、アイルランドの海辺近くに引っ越してから徐々に2人の関係は変化し始めていく。ただの戯れだったはずのゲームは緊張感を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく。セプテンバー役の Pascale Kann (パスカル・カン)、ジュライ役の Mia Tharia (ミア・サリア) はともに本作が映画デビュー。互いの境目がわからないほどに絡み合う姉妹を見事に演じきった。狂気を帯びていく幼き少女たちのゲームがスクリーンを不穏な予兆で充たし、観る者を悪夢へと誘う。
公開日: 9月5日(金)
監督: Ariane Labed
出演: Mia Tharia、Pascale Kann、Rakhee Thakrar (ラキー・タクラー)
HP: sundae-films.com/september-says
『タンゴの後で』

2024 ©︎ LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT
1972年に発表された、Bernardo Bertolucci (ベルナルド・ベルトルッチ) 監督作『ラストタンゴ・イン・パリ』。大ヒットを記録した本作の舞台裏で起こった、1人の女優の怒りと葛藤を映し出し、エンターテインメント業界における権力勾配、搾取について鋭い視線を投げかける。19歳の若手女優 Maria Schneider (マリア・シュナイダー) はベルナルド・ベルトルッチ監督と出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターへ駆け上がった。しかし、ヒーロー役を務めた48歳の Marlon Brando (マーロン・ブランド) との過激な性描写シーンの撮影は彼女に苛烈なトラウマを、その後の人生に大きな影を落としていく。大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼び、「70年代最大のスキャンダル」と呼ばれた作品の裏では何が起きていたのか。映画の撮影現場での問題について声を上げた最初の女性の一人である、マリア・シュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てる。
公開日: 9月5日(金)
監督: Jessica Palud (ジェシカ・パルー)
出演: Anamaria Vartolomei (アナマリア・バルトロメイ)、Matt Dillon (マット・ディロン)、Giuseppe Maggio (ジュゼッペ・マッジョ)
HP: transformer.co.jp/afterthetango
『バード、ここから羽ばたく』

©︎2024 House Bird Limited, Ad Vitam Production, Arte France Cinema, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Pinky Promise Film Fund II Holdings LLC, FirstGen Content LLC and Bird Film LLC. All rights reserved.
イギリスの名匠 Andrea Arnold (アンドレア・アーノルド) 監督最新作。『フィッシュ・タンク』や『アメリカン・ハニー』で社会の片隅に生きる人々の姿を映し続け、賞賛を浴びてきた彼女が、リアリズムと神話的ファンタジーの融合という新境地を拓く舞台は郊外の下町。孤独な12歳の少女ベイリーは、謎の男「バード」と出会い、わずか4日間の不思議な交流によって世界との距離が開かれていく。瑞々しい成長物語の主演には、演技経験ほぼゼロの Nykiya Adams (ニキヤ・アダムズ) を抜擢。思春期の揺れをリアルに表現した。そして演技派の Barry Keoghan (バリー・コーガン) が父親バグを演じ、家族への愛情を内包した姿が観る者の胸を打つ。また、映像美も本作の魅力のひとつ。Andrea Arnold とは多くの作品でタッグを組んでいる撮影監督 Robbie Ryan (ロビー・ライアン) が、16mmフィルムとスマホのデジタル映像を融合させ、リアルのなかから詩的な世界を際立たせる。日常の隙間に魔法が降り注ぐ瞬間を繊細に掬い上げた、珠玉のヒューマンドラマをぜひ体感してほしい。
公開日: 9月5日(金)
監督: Andrea Arnold
出演: Nykiya Adams、Franz Rogowski (フランツ・ロゴフスキ)、Barry Keoghan (バリー・コーガン)
HP: bird-film.jp
『SEX』

©︎Motlys
ベストセラー小説家や図書館の司書といった異色の経歴を持ちながらも、北欧映画界では確かにその実力が評価されてきた Dag Johan Haugerud (ダーグ・ヨハン・ハウゲルード) 監督による最新作。本作は、トリロジー「SEX / LOVE / DREAMS」の第1作としてリリースされる。2024年の第74回ベルリン国際映画祭でエキュメニカル賞をはじめ複数の部門を制した本作では、煙突掃除というミステリアスかつ詩的な職業に従事する中年男性2人が主人公。1人は男性客との衝動的な一夜を経て新たな刺激を覚え、もう1人は夢の中でデヴィッド・ボウイに女性として見られ、他人の視線によって形成される自分の姿に興味を持ち始める。「どこからが浮気か」「夢は現実にどのような影響を与えるのか」といった普遍的なテーマを掲げ、妻子持ちの男性2人の会話劇が繰り広げられていく。アイデンティティ、欲望の交錯といったデリケートな話題を含みつつ、あっけらかんとした会話にはオフビートな雰囲気が漂う。Dag Johan Haugerud が織りなす異色なコメディを、あなたの感性で受けとめてみて。
公開日: 9月5日(金)
監督: Dag Johan Haugerud
出演: Jan Gunnar Roise (ヤン・グンナー・ロイゼ)、Thorbjorn Harr (トルビョルン・ハール)、Siri Forberg (シリ・フォルバーグ)
HP: bitters.co.jp/oslo3
『ユニバーサル・ランゲージ』

© 2024 METAFILMS
本作の舞台は、ペルシャ語とフランス語が公用語となり、イラン文化が強く反映された架空のカナダ・ウィニペグ。そんな「もしも」の世界で繰り広げられるのは、個性的なキャラクターたちの風変わりな日常を映し出したすれ違いのファンタジードラマ。監督は、カナダ首相の座を巡る権力争いを皮肉と遊び心たっぷりに描いたブラック・コメディ『The 20th Century』で大絶賛された実験映画監督 Matthew Rankin (マシュー・ランキン)。切れ味のあるユーモアセンスと、Abbas Kiarostami (アッバス・キアロスタミ) などに強く影響を受けたキュートで詩的な映像がカンヌ国際映画祭で高く評価され、オスカー国際長編映画賞のカナダ代表にも選出される快挙を達成した。ある日少年オミッドは、暴れ回る七面鳥に新調したばかりのメガネを奪われてしまう。それに同情した同級生のネギンとナズゴルは、凍った湖の中にある大金を取り出し、新しいメガネを買うアイデアを思いつく。周囲の大人たちに助言を求めるが、ヘンテコな彼らはあまり助けにならない。無事にメガネを買うことはできるのだろうか。言語や文化、さらには自分と他人の境界も曖昧になった世界で、それでも人と関わろうと奮闘する愛らしい登場人物たちの姿を楽しんで。
公開日: 8月29日(金)
監督: Matthew Rankin
出演: Rojina Esmaeili (ロジーナ・エスマエイリ)、Saba Vahedyousefi (サバ・ヴェヘディウセフィ)、Pirouz Nemati (ピローズ・ネマティ)
HP: klockworx.com/universallanguage
『COW 牛』

©Cow Film Ltd & British Broadcasting Corporation 2021
過去3度にわたりカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したイギリスの名匠 Andrea Arnold (アンドレア・アーノルド) 監督。これまで日本国内では、映画祭や限定上映でしかスクリーンで観られる機会がなかったが、最新作『バード ここから羽ばたく』の劇場公開を記念して、2021年に製作された『COW 牛』が上映される。本作は、酪農場の1頭の乳牛を4年間密着したドキュメンタリー。大規模酪農場で飼育されている牛、ルマは、彼女が産んだ子牛からから引き離され、搾乳機に繋げられ、餌を食べ、種付けをされて、再び子牛を産む。Andrea Arnold は、そのサイクルとルマの生涯をカメラで捉え続けた。本作の特徴は、ナレーションやテキストによる説明を一切排除したこと。カメラは牛の目線に据えられ、農場の日々の営みと、家畜たちの日常を淡々と綴っていく。そして突然訪れる衝撃的な展開は、動物と人間の共生や社会批評、警鐘など、鮮烈なメッセージを私たちに提示するだろう。乳牛ルマの物言わぬ瞳が語りかけているものとは。被写体への圧倒的な信頼に裏打ちされた、「本物」といわざるを得ないドキュメンタリーを、ぜひ体感してほしい。
公開日: 8月30日(土)
監督: Andrea Arnold
HP: arnold-film.com
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』

©︎2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. A
軍事クーデターで政権を掌握し、独裁者と批判されるほど強大な権勢を振るったパク・チョンヒ大統領。1979年、そんな彼が側近のキム・ジェギュによって暗殺された事件が起こった。本作は、このこのセンセーショナルな事件の裁判と、10月26日大統領暗殺から12月12日軍事クーデターという韓国近代史の中でも大きな事件に巻き込まれた3人の男を、一部フィクションを交えて史実に基づき描いた。主人公チョン・インフは、厄介な事件の裁判を多く担当する弁護士会のエース。ある日、大統領暗殺事件に巻き込まれた中央情報部長の随行秘書官、パク・テジュの弁護を引き受ける。軍人であるがために軍法裁判にかけられ、たった一度の裁判で刑が確定する彼のために、チョン・インフは公正な裁判を求めて戦う。だが、のちに軍事反乱を起こす巨大権力の中心人物、合同捜査団長チョン・サンドゥによって裁判は不正に操られていた。本作は、韓国史上最悪の裁判ともいわれる大統領暗殺審判を、弁護する者、裁かれる者、裏で操る者、それぞれの目線でドラマチックに映し出した。本作は、当時に生きた人々の声にならない悲痛な叫びを掬い取り、政治裁判の裏側を暴く。
公開日: 8月22日(金)
監督: Choo Chang-min (チュ・チャンミン)
出演: Jo Jung-Suk (チョ・ジョンソク)、Lee Sun-Kyun (イ・ソンギュン)、Yoo Jae-Myung (ユ・ジェミョン)
HP: daitoryoansatsusaiban-movie.jp
『大長編 タローマン 万博大爆発』

©︎2025「大長編 タローマン 万博大爆発」製作委員会
「1970年代に放送された特撮ヒーロー番組」という体裁のもと、岡本太郎の言葉と作品をモチーフに制作され、2022年に NHK のEテレにて放送された「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」。1話5分、全10話から構成される物語が大長編となり、スクリーンに放たれる。物語の舞台は1970年。万博開催に日本が沸き立っていた頃、2025年の未来から万博を消滅させるべく恐ろしい奇獣がやってくる。でたらめな奇獣に対抗するにはでたらめな力が必要だが、未来の世界では秩序や常識に溢れ、でたらめな力は絶滅寸前。地球防衛軍は万博を守るため、タローマンとともに未来へと向かう。本作では、1970年の日本と2025年の未来をクロスオーバー。だが、現代の2025年ではなく、1970年頃に想像されていた未来像としての2025年「昭和100年」の世界を描く。幾何学的な建物や透明なパイプで空中移動をする自動車など、昭和のこどもたちが目を輝かせていた近未来を見事に表現。さらに解説には、サカナクションの山口一郎を抜擢。ミュージシャンでありながらタローマングッズのコレクター第一人者としても知られる彼の熱い語りにも注目だ。
公開日: 8月22日(金)
監督: 藤井亮
出演: 山口一郎
HP: taroman-movie.asmik-ace.co.jp
『国宝』

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会
『悪人』、『怒り』に続き吉田修一による小説を映像化してきた李相日監督が、今回は誰もみたことのない禁断の世界「歌舞伎」をテーマにした作品を実写化。本作は、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記。美しい顔を持つ喜久雄は、父を抗争で失った後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られる。そこで半二郎の実の息子、俊介に出会う。将来を約束された御曹司の俊介と、彼とは正反対の血筋を受け継ぐ喜久雄。2人はライバルとして互いを高め合うが、多くの出会いと別れによって彼らの運命は大きく変わっていく。主人公・喜久雄を演じるのは、美貌と圧倒的演技力を併せ持つ吉沢亮。そしてそのライバルである俊介には、アカデミー賞をはじめ数々の受賞歴を持つ横浜流星。さらに世界的俳優と名高い渡辺謙も顔を連ね、日本を代表する豪華俳優陣が集結した。美しい伝統芸能の世界の裏にある信頼と裏切り、歓喜と絶望。芸の世界にしがみつき、激動の時代を生き抜く者たちの壮絶な人生が、観る者の魂を震わせる。
公開日: 6月6日(金)
監督: 李相日
出演: 吉沢亮、横浜流星、高畑充希
HP: kokuhou-movie.com