TFP Recommended Movies

【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画

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【上映中】 今週のTFP的おすすめ映画

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「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を週替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。

5月6日〜5月12日

『クィア/QUEER』

©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l. © Yannis Drakoulidis

『君の名前で僕を呼んで』では、ひと夏の恋を詩的に描いた Luca Guadagnino (ルカ・グァダニーノ) 監督が新たに手がけたのは、あまりに一途に、大切な人と愛を分かち合いたいと切望する男の物語。舞台は1950年代、メキシコシティ。退屈な日常を過ごすアメリカ人駐在員のウィリアム・リーは、若く美しくミステリアスな青年ユージーン・アラートンに一目で恋に落ちる。ユージーンを求めれば求めるほど孤独が増していくリーは、2人で奇跡の体験をしようと、ユージーンを幻想的な南米への旅へと誘い出す。愛を見つけ、途方も無い孤独に溺れるリーを演じるのは、『007』シリーズの主人公、ジェームズ・ボンドの鎧を脱ぎ捨てた新生 Daniel Craig (ダニエル・クレイグ)。そしてユージーン役には、映画ファンの中で話題沸騰中の Drew Starkey (ドリュー・スターキー) を抜擢。一心に愛を求め、もがき、惹かれ合う2人。誰もが彼らの情熱と葛藤に、翻弄されるはず。

公開日: 5月9日(金)
監督: Luca Guadagnino
出演: Daniel Craig、Drew Starkey、Jason Schwartzman (ジェイソン・シュワルツマン)
HP: gaga.ne.jp/queer

『新世紀ロマンティクス』

©2024 X stream Pictures All rights reserved

中国の名匠 Jia ZhangKe (ジャ・ジャンクー) 監督が、22年間かけて制作した超大作。ミレニアムの幕開けから、怒涛の変貌を遂げた現在の中国の変遷を背景に、ひとりの女性の出会いと別れを映し出す。主人公のチャオは、山西省・大同(ダートン)を出て戻らぬ恋人ビンを求め、奉節(フォンジエ)を訪れる。一方ビンは、奉節からマカオに経済特区・珠海(チューハイ)に移動していた。時は流れ、2人はまた大同へ戻っていく。恋人たちの関係と比例するように、街は変化していく。22年かけて旅するチャオは、どこへ辿り着くのだろうか。撮影当初は道路が塗装されておらず、二つ折りの携帯電話を手にした人々が行き交っていた世界も、高層ビルが立ち並び、スマートフォンが普及し、AI ロボットがスーパーマーケットで接客をしている。街は壊され、再構築され、姿を変えて人々を飲み込んでいく。監督は本作で、ドキュメンタリーとフィクションを大胆に融合。時代の流れに翻弄されながらも何かを掴もうともがく主人公の姿に、誰もが共感するだろう。

公開日: 5月9日(金)
監督: Jia ZhangKe
出演: Zhao Tao (チャオ・タオ)、Li Zhubin (リー・チュウビン)、Zhou You (チョウ・ヨウ)
HP: bitters.co.jp/romantics

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』

©BROUHAHA LEE LIMITED 2023

トップモデルから写真家へと転身し、戦争へと赴いたリー・ミラーの人生を描く。『VOGUE』誌をはじめ、トップモデルとして華やかで自由な生活を謳歌していたリー・ミラー。数多くの名だたるアーティストを魅了したその輝きは、写真家としても発揮。やがて彼女の情熱、エネルギーは戦場へと向けられ、英国版『VOGUE』誌の記者となって第二次世界大戦中のヨーロッパを取材。そして、ナチス政権の残虐な行為や戦争の犠牲者、悲惨な姿をフィルムに収めた。彼女が従軍記者兼写真家として記録した写真は、戦争写真の在り方を変えただけでなく、歴史的にも重要な資料として残り続けている。本作は、彼女の生き方に大きく感銘した女優 Kate Winslet (ケイト・ウィンスレット) が制作総指揮を執り、主演を務めた。リー・ミラーが戦場の前線で目撃した真実と、人生をかけて遺したものを、ぜひ受け止めてほしい。

公開日: 5月9日(金)
監督: Ellen Kuras (エレン・クラス)
出演: Kate Winslet、Andy Samberg (アンディ・サムバーグ)、Alexander Skarsgard (アレクサンダー・スカルスガルド)
HP: leemiller_movie

『季節はこのまま』

©Crole Bethuel

私たちも過ごした5年前のパンデミック。「あの日々」に人生を見つめ直す、圧倒的共感の物語がリリースされる。2020年4月、新型コロナウイルスの影響で外出が制限された春。映画監督のポールと、音楽ジャーナリストである弟のエティエンヌは、それぞれの恋人とともに、子どもの頃に暮らした郊外の家で生活することに。懐かしい風景、新たな生活様式への戸惑い、世界から切り離されたような感覚……。止まってしまった時間のなかで彼らは不安を抱えながらも、ゆっくりと互いのことを見つめ直し、愛と人生の新たな側面を発見していく。美しく、ゆっくりとした日々を表現するのは、フランス映画界の宝石たち。主演には、Olivier Assayas (オリビエ・アサイヤス) 監督と3度目のタッグを組むVincent Macaigne (ヴァンサン・マケーニュ)、そして弟エティエンヌを演じるのは、『映画を愛する君へ』での活躍が記憶に新しい Micha Lescot (ミーシャ・レスコ)。また、本作は実際に監督が弟と子ども時代を、そしてロックダウン期間を過ごした両親の家で撮影。彼自身が「これまでの作品のなかで最もパーソナルで親密」と語る作品に仕上がった。本作を鑑賞して「あの頃」を振り返り、それぞれが経験した日々を見つめ直してみては。

公開日: 5月9日(金)
監督: Olivier Assayas
出演: Vincent Macaigne、Micha Lescot、Nine d’Urso (ナイン・ドゥルソ)
HP: kisetsufilm.com

『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』

©2024 CG CINEMA • THEO FILMS • ARTE FRANCE CINEMA

『ポンヌフの恋人』『アネット』などで知られる名匠 Leos Carax (レオス・カラックス) が初めて編集を手がけ、コラージュをほどこしたセルフポートレート作品。本作は、パリの現代美術館ポンピドゥー・センターで行う予定だった展覧会が、予算が膨らみすぎて実現不可能となり、代わりのような形で制作された。ポンピドゥー・センターから「君は今どこにいる?」という問いかけを根源的に捉え直し、自分がどこからきて、どこへ行くのかという答えのない謎に迫っていく。世界的映画監督 Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) の後期にみられるエッセイ・スタイルをオマージュしながら、カラックスらしい夢想的・連想的な要素を取り入れた。ホームビデオから映画、音楽、写真とさまざまなジャンル、フォーマットの映像を夢の断片のようにコラージュしながら、自身のポートレートをダイレクトに描く。彼の過去から現在、表面から深層部まで深く写し出す、私的で詩的なメッセージ。

公開日: 4月26日(土)
監督: Leos Carax
出演: Denis Lavant (ドニ・ラバン)、カテリーナ・ウスピナ、ナースチャ・ゴルベワ・カラックス
HP: eurospace.co.jp/itsnotme

『ミステリアス・スキン』

©MMIV Mysterious Films, LLC

幼少期に心の傷を負った2人の少年の行く末を描いた本作が制作から20年の時を経て、ついに劇場公開。アメリカ人小説家 Scott Heim (スコット・ハイム) が自身の経験をもとにした小説『謎めいた肌』を原作に、90年代、ニュー・クィア・シネマのムーブメントを牽引した Gregg Araki (グレッグ・アラキ) 監督がメガホンをとった。舞台となるのは、カンザス州の田舎町ハッチンソン。1981年の夏、8歳の少年ブライアンとニールは、常習的に幼い子どもへの性加害を行なっていたコーチによって大きく人生を狂わされる。精神的なショックから記憶をなくしてしまったブライアンと、コーチと自分の間に愛があったと信じ、年上の男性に体を売って生きていく道を選んだニール。10年後の2人は、どのような未来を描くのだろうか。主演のニール役を務めるのは、『(500)日のサマー』『インセプション』など、有名作品での活躍が目覚ましい俳優 Joseph Gordon-Levitt (ジョセフ・ゴードン=レビット)。撮影当時は23歳であり、ブレイク前の若かりし姿にも注目。

公開日: 4月25日(金)
監督: Gregg Araki
出演: Joseph Gordon-Levitt、Brady Corbet (ブラディ・コーベット)、Michelle Trachtenberg (ミシェル・トラクテンバーグ)
HP: mysterious-skin

『来し方 行く末』

©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd

弔辞作家の日常というユニークな題材を軸に、人々の人生模様や死生観を繊細に織り込んだヒューマンドラマが誕生。主演には、華やかな時代劇スターから静的なキャラクターまでこなす国民的人気俳優の Hu Ge (フー・ゴー) を抜擢。そして彼の同居人シャオインには、『西湖畔に生きる』で圧倒的な演技力を披露し、本作が Hu Ge と3度目の共演となる Wu Lei (ウー・レイ)。世界の映画祭で高い評価を受ける Liu Jiayin (リュウ・ジャイン) 監督が長年の思索を重ねて熟成させた待望の新作に実力派俳優が集結した。本作の主人公のウェン・シャンは脚本家として花開くことができず、弔辞の代筆業で生計を立てている。このアルバイトを通してさまざまな境遇の依頼主と出会い、交流を重ね、彼の中で止まっていた時間がゆっくりと動き出していくのだった。Liu Jiayin が14年ぶりにスクリーンに放つ、人生の回り道を優しく包み込む静謐なヒューマンドラマ。

公開日: 4月25日(金)
監督: Liu Jiayin
出演: Hu Ge、Wu Lei、Qi Xi (チー・シー)
HP: mimosafilms.com/koshikata

『けものがいる』

©Carole Bethuel

『アデル、ブルーは熱い色』、『美女と野獣』の Lea Seydoux (レア・セドゥ) を主演に、人間の感情が消去される近未来社会で、100年以上の時を超えて転生を繰り返す女と男の数奇な運命を描く。本作は、AI に国家が管理された2044年のパリ、35mmフィルムで撮影し、華麗なコスチューム・プレイが繰り広げられる1910年、そしてガラス張りの豪邸を舞台にしたスリラー劇から目が離せない2014年という3つの時代をクロスオーバー。主人公の女性ガブリエルはそれぞれの世界で出会うルイを巡って、過酷な道を突き進む。衝撃的な真実と、予測不可能な2人の運命とは。本作は、イギリスの文豪 Henry James (ヘンリー・ジェイムズ) による傑作長編小説『密林の獣』を自由かつ大胆に翻案。自分に見合った興味深い仕事か、夢描いた恋愛かという選択を主人公に課すという、現代的なテーマに切り込んだ。飛躍したビジュアライズで冷ややかなリアルを写し出す本作は、我々の心にどのように響くのだろうか。Bertrand Bonello (ベルトラン・ボネロ) 監督の新たな挑戦を、ぜひスクリーンで見届けて。

公開日: 4月25日(金)
監督: Bertrand Bonello
出演: Lea Seydoux、George MacKay (ジョージ・マッケイ)、Guslagie Malanda (ガスラジー・マランダ)
HP: kemonogairu.com

『異端者の家』

©2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.

これまでに規格外の狂気を表現し続けてきた映画スタジオ A24 が新たに仕掛けるのは、信仰心を揺さぶる異端の脱出スリラー。並外れた頭脳を持つ悪役には、これまで『ノッティングヒルの恋人』、『ラブ・アクチュアリー』といったラブコメ作品で人気を博してきた Hugh Grant (ヒュー・グラント) を起用。彼の新境地となる猟奇的な演技は、スクリーンを恐怖に包み込み大絶賛を受けた。彼が演じるのは、森に囲まれた一軒家に住む謎の男、リード。シスター・パクストンとシスター・バーンズは布教のため彼の家を訪れると、徐々に不穏な空気に。帰ろうとする2人に、リードは2つの扉を提示する。どちらかしか家を出ることができないという扉の先で、悪夢のような真相が彼女たちを待ち受けていた。本作は、『クワイエット・プレイス』の Scott Beck (スコット・ベック) & Bryan Woods (ブライアン・ウッズ) が監督・脚本を手がけ、人間に対するプリミティブな恐怖を突きつける。閉ざされた家で男が迫る究極の選択は、我々を出口の見えない迷路へと引き摺り込むだろう。

公開日: 4月25日(金)
監督: Scott Beck、Bryan Woods
出演: Hugh Grant、Sophie Thatcher (ソフィー・サッチャー)、Chloe East (クロエ・イースト)
HP: happinet-phantom.com/heretic

『KIDDO キドー』

©︎2023 STUDIO RUBA

母娘版『ボニーとクライド』のような、遊び心あふれるロードムービーが日本に上陸。監督は、そのビジュアルセンスとプレイフルな作風で注目を集めるオランダの新星 Zara Dwinger (ザラ・ドヴィンガー)。長編デビューとなった本作がさまざまな映画祭で賞賛され、『ANORA アノーラ』で知られる Sean Baker (ショーン・ベイカー) 監督からも絶賛されるなど、世界的注目が高まっている。1960〜70年代の印象を受けるサウンドトラックで、アメリカン・ニュースネマへの愛を散りばめた、どこか懐かしく、だが新しい逃避劇を生み出した。物語は、児童養護施設で暮らす11歳の少女ルーのもとに、ある日突然母親から連絡が入る。自称ハリウッドスターの母・カリーナは、施設からルーを連れ出し、「ポーランドのおばあちゃんのところへ行く」と告げる。ルーは破天荒な言動を見せるカリーナに戸惑いながらも、母と一緒にいたいという思いでついていく。独特な世界観で描く2人の逃避行の終着点を、ぜひ見届けて。

公開日: 4月18日(金)
監督: Zara Dwinger (ザラ・ドヴィンガー)
出演: Rosa van Leeuwen (ローザ・ファン・レーウェン)、Frieda Barnhard (フリーダ・バーンハード)
HP: kiddo_film

『メイデン』

©︎2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.

カナダ・カルガリー郊外を舞台に、思春期の少年少女の友情、孤独、喪失の悲しみを紡ぎ上げたメランコリックな青春映画。登場するのは、カイル、コルトン、ホイットニーの3人の高校生。カイルとコルトンは親友であり、毎日スケートボードや渓谷での水遊びなど、気の向くままに遊んでいた。夏のある夜、2人は立入禁止区域に侵入し、惨たらしい出来事に見舞われる。一方その頃、行方不明となったホイットニーの日記帳をコルトンが拾う。彼女の心の闇は、どれほど彼女自身を苦しめていたのだろうか。3人の運命が交錯する様子を、粒子の粗い16mmフィルムでみずみずしく描ききった本作は、圧倒的映像美で観る者を浮遊感漂う世界へと導いていく。メインキャストを担う Jackson Sluiter (ジャクソン・スルイター)、Hayley Ness (ヘイリー・ネス)、Marcel T. Jimenez (マルセル・T・ヒメネス) の3人は、全員オーディションで見出され、本作で映画デビューを果たす。彼らの鮮烈な演技力と存在感は、誰しもが自身の若き日に慕情を抱かずにはいられないだろう。

公開日: 4月18日(金)
監督: Graham FOY (グラハム・フォイ)
出演: Jackson Sluiter、Hayley Ness、Marcel T. Jimenez
HP: maiden.com

『カップルズ』

『ヤンヤン 夏の想い出』、『エドワード・ヤンの恋愛時代』などで知られる台湾の名匠 Edward Yang (エドワード・ヤン) が1996年に手がけた映画が、4kレストア版として日本初公開。のちに彼の新台北3部作と呼ばれる作品群の第2作にあたる本作では、喜劇と悲劇が表裏一体の緊張感が漂う。現代社会において、欲望の追求に夢中になった先にある悲劇と希望を浮き彫にし、現在から約30年前の製作ながら、ますます現代性を帯びたテーマとなった。またキャストは、のちに『8人の女たち』に登場する Virginie Ledoyen (ビルジニー・ルドワイヤン)、『牯嶺街少年殺人事件』で主演を務めた Chen Chang (チャン・チェン) などが出演し、Edward Yang 作品常連の顔ぶれが集結。彼らが務めるのは、混沌とした90年代半ばの台北で、自由気ままに生きる4人組の青年ギャング団。ある日、フランスからマルトという女性が台北にやってきたことから、彼らの歯車は狂い始め、やがて後戻りのできないほどに変化していく。青い日々をリアルに切り取った青春群像劇で、Edward Yang の巻き起こした台湾ニューウェイブの風を感じてみて。

公開日: 4月18日(金)
監督: Edward Yang
出演: Virginie Ledoyen、Chen Chang、Ko Yu-Luen (クー・ユールン)
HP: edwardyang2025

『訪問、あるいは記憶、そして告白』

©︎Cineastas Associados, Instituto Portuges de Cinema

100歳を超えてもなお映画を作り続け、現役最高齢の監督として世界中で話題と尊敬を集めたポルトガル出身監督 Manoel de Oliveira (マノエル・ド・オリヴェイラ)。2015年、惜しまれつつもこの世を去った彼が1982年に手がけた自伝的ドキュメンタリーがスクリーンに蘇る。撮影場所は、1942年に建てられて以来、およそ40年間オリヴェイラが過ごした自宅。家族、そして自らの人生を振り返る。彼は自身を「私はシネマトグラフの映画監督だ」と語り、映写機を発明したリュミエール兄弟や、映画製作においてあらゆる技術を生み出した偉大な映画監督 Georges Méliès (ジョルジュ・メリエス) との連なりを強く意識。まさに映画史を体現するかのような唯一無二の姿は、映画の未来を感じさせる瞬間の連続だった。本作はオリヴェイラの希望により、自身の死後に発表。過去、現在、そして未来をつなぐ伝説的な一本。

公開日: 4月18日(金)
監督: Manoel de Oliveira
出演: Manoel de Oliveira、Maria Isabel de Oliveira (マリア・イザベル・ド・オリベイラ)
HP: oliveira2025.jp

4月8日〜4月14日

『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』

©︎2023 Zeitsprung Pictures GmbH

ヒトラーの腹心としてプロパガンダ政策を担った男性、ゲッベルスに焦点を当てたドラマ作品。ヨーゼフ・ゲッベルスは、1933年のヒトラー首相就任から彼が亡くなるまでの12年間、ナチス・ドイツの宣伝大臣として国民を扇動してきた。演説、ラジオ、映画など、あらゆるメディアを駆使して国民感情を煽り、操ったその戦略は、のちに「フェイクニュースの祖」と呼ばれるほど。本作は入念なリサーチにもとづき、過去の実際の映像も使用しながら、ゲッベルス、ヒトラー、ナチ幹部たちの驚くべき行動や言動を暴き出す。ヒトラーを国民的ヒーローに押し上げ、大量虐殺に国民を加担させた驚愕の手法とは。そして本作は現代を生きる我々にも警鐘を鳴らしている。ウクライナやガザにおける戦争、ポピュリズム、量産されるフェイクニュース……。インターネット全盛期を迎えた社会で、どのように真実を見極めていくべきだろうか。強いメッセージを込めた一作が、スクリーンに放たれる。

公開日: 4月11日(金)
監督: Joachim Lang (ヨアヒム・A・ラング)
出演: Robert Stadlober (ロバート・スタッドローバー)、Fritz Karl (フリッツ・カール)、Franziska Weisz (フランツィスカ・ワイズ)
HP: goebbelsmovie.com

『解放』

©︎2025「解放」

『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』『夜明けのすべて』などで知られる新進気鋭の俳優・芋生悠が初監督・脚本・主演を手がけた短編作品。22分間、モノクロの世界で描かれるのは、自らを抑圧し続ける主人公の解放までの道のり。画家の女を芋生悠が、謎の女を小川未祐が務め、セリフなしで躍動感たっぷりの身体表現を披露した。本作はテアトル新宿にてリリースされ、上映とパフォーマンスのセットで公開を予定している。映像とリアルイベントを混ぜ合わせることで、作品の空間表現という要素をより強く体現。さらに、4月11日(金)、12日(土)、 13日(日)は、本作の上映を記念してトークイベントを実施。詳細はこちらからチェックしてみてほしい。繊細で力強く、若き才能の萌芽を感じる作品を、ぜひトークイベントともに楽しんでみては。

公開日: 4月11日(金)
監督: 芋生悠
出演: 芋生悠、小川未祐
公式X: kaihou_movie

『ボサノヴァ 撃たれたピアニスト』

©︎2022 THEY SHOT THE PIANO PLAYER AIE – FERNANDO TRUEBA PRODUCCIONES CINEMATOGRAFICAS, S.A. – JULIAN PIKER & FERMIN SL – LES FILMS D’ICI MEDITERRANEE – SUBMARINE SUBLIME – ANIMANOSTRA CAM, LDA – PRODUCCIONES TONDERO SAC. ALL RIGHTS RESERVED.

ソロアーティストとしてアルバムを一枚しか録音していないにもかかわらず、ブラジル音楽の歴史に名を残した天才ピアニスト Tenório Júnior (テノール・ジュニオル) をテーマにしたアニメーション映画。1950年代後半、ブラジルのボサノヴァが生まれ、世界中の名だたるアーティストが虜となった。時は現代、ニューヨークの音楽ジャーナリストは、当時ボサノヴァの爆発的ヒットに大きく貢献した1人のピアニスト、テノール・ジュニオルを知る。彼の足跡を辿ると、ブエノスアイレスでのツアー中に謎の失踪を遂げていたことが発覚。彼について追っていくにつれて、ラテンアメリカの痛ましい真実を目の当たりにするのだった。本作では『チコとリタ』でタッグを組んだ Fernando Trueba (フェルナンド・トルエバ)、Javier Mariscal (ハビエル・マリスカル) の2人が再び共同監督を務める。また、ジャズピアニストでありながら俳優としても活躍する Jeff Goldblum (ジェフ・ゴールドブラム) が、物語の語り部となるジャーナリスト役で声の出演。本作は、謎多き天才ピアニストを巡り、やがてスリリングで重厚なラテンアメリカの光と影を写し出す旅へと観客を誘う。ボサノヴァの歴史を没入感満載に描く本作を、ぜひ劇場で体感してほしい。

公開日: 4月11日(金)
監督: Fernando Trueba、Javier Mariscal
出演: Jeff Goldblum、Tony Ramos (トニー・ラモス)、Roberta Wallach (ロバータ・ウォラック)
HP: bossanova.2-meter

『片思い世界』

©︎2025「片思い世界」製作委員会

『花束みたいな恋をした』を手掛けた脚本家の坂元裕二、映画監督の土井裕泰のタッグが贈る、注目の最新作。主演を務めるのは、広瀬すず、杉咲花、清原果耶といった国民的女優の3人。本作では、東京の片隅にある古い一軒家で共同生活をする3人が抱えた切実な片思いを描いた。広瀬すず演じる美咲、杉咲花演じる優花、清原果耶演じるさくらは、それぞれ仕事、学校、アルバイトに毎日出かけて行き、帰宅するとみんなで夕飯。そして、リビングでおしゃべりし、同じ寝室で寝て、起きたら3人で歯磨きと、楽しく何気ない日常を過ごす。家族や同級生でもないが、固い絆で結ばれる彼女たちの片思いの行く末は。豪華キャストが届けるこの物語をお見逃しなく。

公開日: 4月4日(金)
監督: 土井裕泰
出演: 広瀬すず、杉咲花、清原果耶
HP: kataomoisekai.jp

『終わりの鳥』

©︎DEATH ON A TUESDAYLLC/THE BRITISH FILM INSTITUTE/BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2024

現在、映画界でフィーチャーされている気鋭の映画会社 A24 が新たに放つ、心揺さぶるファンタジードラマ。クロアチア出身の映画監督 ダイナ・O・プスィッチ の長編映画デビュー作でもあるこの作品は、誰も避けられない”死”を奇想天外にビジュアライズ。母と娘は、命の終わりを告げる世にも奇妙な鳥の「DEATH (デス)」と対峙し、まもなく訪れる別れを受け入れていく。余命残りわずかの娘チューズデー役は、『恋人はアンバー』の Lola Petticrew (ローラ・ペティクルー)。その母親は、アメリカのテレビドラマ 『VEEP (ヴィープ)』で知られる Julia Louis-Dreyfus (ジュリア・ルイス=ドレイファス) が務めた。観る者の感性を刺激する本作を、ぜひ劇場で見届けて。

公開日: 4月4日(金)
監督: ダイナ・O・プスィッチ
出演: Julia Louis-Dreyfus、Lola Petticrew、Leah Harvey (リア・ハーベイ)
HP: happinet-phantom.com/tuesday

『シェルタリング・スカイ』

©︎The Sahara Company Limited & Tao Films SRL. 1990

イタリアの巨匠監督 Bernardo Bertolucci (ベルナルド・ベルトルッチ) が、ニューヨーク出身の Paul Bowles (ポール・ボウズ) による小説を映像化。音楽は、日本を代表する音楽家、坂本龍一が手掛け、過酷なストーリーをポエジーに表現した。1947年北アフリカの砂漠地帯にて、ニューヨークに住む夫婦は冷めきってしまった愛と情熱を探し求めていた。しかし、旅先で夫ポートは、現地の女性と肉体関係を持ち、一方の妻キットもジャックという同行した青年との情事にふける。いずれ、そんな二人は思わぬ悲劇に襲われてしまう。妻役は、数々の作品でアカデミー賞を受賞している Debra Winger (デブラ・ウィンガー)、夫役には、実力派俳優の John Malkovich (ジョン・マルコビッチ) が抜擢。濃厚なエロスと詩情が交錯する傑作が再びスクリーンに放たれる。

公開日: 4月4日(金)
監督: Bernardo Bertolucci
出演: Debra Winger (デブラ・ウィンガー)、John Malkovich (ジョン・マルコビッチ)、Campbell Scott (キャンベル・スコット)
HP: 12cinemarelay.com

『レイブンズ

©︎Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

伝説の写真家・深瀬昌久と、彼の最愛の妻であり最強の被写体・洋子をダークでシュールに写し出したラブストーリー。森山大道らとニューヨークの美術館 MoMa にて展覧会を開き、大絶賛を浴びた日本を代表する写真家・深瀬昌久を演じたのは、ハリウッド製作ドラマ「SHOGUN 将軍」に出演するなど国際的な活躍をみせる浅野忠信。深瀬の78年に渡る波瀾万丈な人生を、実話とフィクションを織り交ぜながら大胆に表現した。写真に取り憑かれた天才の狂気と、撮ることでしか愛し方を知らなかった純粋さを、繊細かつワイルドに演じた浅野忠信の魅力が炸裂する。そして、夫を闇堕ちから守ろうとする洋子を全身全霊で体現したのは、『由宇子の天秤』『敵』などに出演した瀧内公美。洋子は美しさに満ちており、常に深瀬のミューズとして作品の主題であり続けた。2人の歪な愛は、どこまでがリアルで、どこまでがフィクションなのだろうか。疾風怒濤の愛の物語が、スクリーンに放たれる。

公開日: 3月28日(金)
監督: Mark Gill (マーク・ギル)
出演: 浅野忠信、瀧内公美、古舘寛治
HP: ravens-movie.com

『ベイビーガール

©︎2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画界の最前線を駆け抜けるスタジオ A24 が、ハリウッドを代表する女優 Nicole Kidman (ニコール・キッドマン) を主演に迎え、刺激的な映画をリリース。彼女が演じるのは、ニューヨークで CEO として大成功を収める女性、ロミー。優しい夫ジェイコブと子どもたちと暮らし、仕事もプライベートも充実させた誰もが憧れる生活を送っていた。ある時、インターン生として入社したサミュエルは、ロミーの中に眠る欲望を見抜き、挑発を仕掛ける。行き過ぎた駆け引きがヒートアップし、ロミーは危ない橋を渡ることになる。本作では、すべてを兼ね備えながらも満たされない渇きを抱える主人公と、彼女を誘惑するサミュエルをスリリングに写し出す。物語の主導権を握るサミュエルを務めたのは、『マレフィセント2』、『キングスマン ファースト・エージェント』などに出演する Harris Dickinson (ハリス・ディキンソン)。CEO のロミーを巧みに操り、激しく揺さぶる役を見事に演じ切った。ユーモアとロマンティックの交錯する展開の果てに、何が待っているのだろうか。ぜひ映画館で見届けてほしい。

公開日: 3月28日(金)
監督: Halina Reijn (ハリナ・ライン)
出演: Nicole Kidman、Harris Dickinson、Antonio Banderas (アントニオ・バンデラス)
HP: happinet-phantom.com/babygirl

『エミリア・ペレス

©︎2024 PAGE 114 – WHY NOT PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 2 CINEMA COPYRIGHT PHOTO : (C)Shanna Besson

メキシコの麻薬王が女性として新たな人生を歩むという破天荒なストーリーを、異色のミュージカルで描く。メキシコシティで弁護士として働くリタは、麻薬カルテルのボス、マニタスから「女性としての新しい人生を用意してほしい」と依頼される。リタの完璧な計画により、マニタスは姿を消すことに成功。それぞれの人生を送っていた4年後、マニタスはエミリア・ペレスとしてリタの前に現れ、彼女たちの運命は大きく変わっていく。フランスの名匠 Jacques Audiard (ジャック・オーディアール) が手がけた本作は、ゴールデングローブ賞で最多4部門受賞、アカデミー賞®では作品賞、監督賞を含む最多12部門で13ノミネートを果たすなど、現在、世界が最も注目する作品の一つ。また、マニタス、エミリア・ペレスを演じた Karla Sofia Gascon (カルラ・ソフィア・ガスコン) は、本作でカンヌ国際映画祭において初となるトランスジェンダー俳優として女優賞受賞という快挙を成し遂げた。過去と現在、罪と救済、愛と憎しみといった対比を唯一無二の物語に落とし込み、クライム、コメディ、ミュージカルといったあらゆる演出で魅せる。魂を揺さぶるエンターテイメントを、スクリーンで体感して。

公開日: 3月28日(金)
監督: Jacques Audiard
出演: Zoe Saldana (ゾーイ・サルダナ)、Karla Sofia Gascon、Selena Gomez (セレーナ・ゴメス)
HP: gaga.ne.jp/emiliaperez

『ミッキー17

©︎2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

『パラサイト 半地下の家族』で世界にその名を轟かせた Bong Joon-Ho (ポン・ジュノ) 監督が新たに発表するのは、使い捨てワーカーによる権力者たちへの逆襲エンターテイメント。人生失敗だらけの男ミッキーが一発逆転のため、何度でも生まれ変われる「夢の仕事」のはずだった。だが、彼がサインした契約書は、過酷な任務で命を落としては何度も生き返るという内容が書かれていた。ある日、使い捨てられる日々を送るミッキーの前に自分のコピーが現れ、事態は一変。ミッキーはコピーたちとともに復讐に出る。本作の舞台は、労働が搾取される近未来の社会。ブラックユーモアたっぷりな SF エンターテイメントでありながら、現代にも通ずる社会問題を鋭く切り取った。キャストには『TENET テネット』『ザ・バットマン』などに出演し、ハリウッドでも頭角を現しつつある Robert Pattinson (ロバート・パティンソン) や、大ヒット TV ドラマ「ウォーキング・デッド」で脚光を浴びた Steven Yeun (スティーブン・ユァン) などを抜擢。予測不可能な Bong Joon-Ho の世界観が、観る者を衝撃の渦に包み込む。

公開日: 3月28日(金)
監督: Bong Joon-Ho
出演: Robert Pattinson (ロバート・パティンソン)、Naomi Ackie (ナオミ・アッキー)、Steven Yeun (スティーブン・ユァン)
HP: warnerbros.co.jp/mickey17

『BAUS 映画から船出した映画館

©︎本田プロモーションBAUS/boid

多くの観客と作り手に愛され、惜しまれつつも2014年に閉館した吉祥寺 バウスシアター。約90年に渡る長い歴史と、その場所を守り続けた家族を巡る物語が誕生した。時は遡ること1927年。活動写真に魅了され、青森から上京した兄弟・サネオとハジメは、吉祥寺初の映画館、井の頭会館で働き始める。兄は活弁士、弟は社長として劇場の発展を目指していたが、戦争の足音がすぐそこまで迫っていた。井の頭会館は、ムサシノ映画劇場、そしてバウスシアターへと形を変え、時流に翻弄されながらも生き残り続けてきた。映画上映のみにとどまらず演劇、音楽、落語など「おもしろいことはなんでもやる」という無謀なコンセプトで、いつしか文化の交差点に。本作ではそんな唯一無二の場所を守り、娯楽を届け続けた家族の長い道のりを辿っていく。弟サネオ役には染谷将太を、兄ハジメ役にはロックバンド・銀杏 Boyz の峯田和伸をそれぞれ抜擢。また、夏帆、鈴木慶一、橋本愛らが登場。日本を代表する俳優陣・制作陣が、本作に息を吹き込む。

公開日: 3月21日(金)
監督: 甫木元空
出演: 染谷将太、峯田和伸、夏帆
HP: bausmovie.com

『教皇選挙

©︎2024 Conclave Distribution, LLC.

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。その総本山であるバチカンのトップを決めるローマ教皇選挙「コンクラーベ」の様子を、緊張感たっぷりに映し出す。ローマ教皇が死去するか、辞任した時に教皇選挙が開催される。世界中が固唾を飲んで注目する一大イベントは、外部からの介入や圧力を徹底的に遮断しており、秘密のベールに包まれている。内部では、世界中から集まった有力な候補者たちが政治家に見えてくるほどのパワーゲームが繰り広げられていた。差別、スキャンダル、陰謀……熾烈なパワーゲームが、先読みを一切読めないミステリーへと観る者を誘っていく。選挙を取り締まるローレンス枢機卿の苦悩が最高潮に達し、新教皇誕生が差し迫ったとき、バチカンを揺るがす大事件が勃発するのであった。監督は Netflix で配信された戦争映画『西部戦線異状なし』で高く評価を得た Edward Berger (エドワード・ベルガー) 監督。一瞬も見逃せない緊迫感に、スクリーンを包み込む。

公開日: 3月20日(木・祝)
監督: Edward Berger
出演: Ralph Fiennes (レイフ・ファインズ)、Stanley Tucci (スタンリー・トゥッチ)、John Lithgow (ジョン・リスゴー)
HP: cclv-movie.jp

『ジェリーの災難

©︎2023 Forces Unseen, LLC.

定年退職後の男性が警察に強要され、不法捜査に加担させられたという事実を映画化。そしてなんと、この信じがたい事件をベースに脚本を書き、本作の主演を務めたのは、事件の被害者であるジェリー・シューだ。彼自身の身に降りかかった災難を、リアルかつサスペンスフルに描く。69歳ジェリーはある日、中国警察から緊急の電話を受ける。その内容は、国際的なマネーロンダリング事件の捜査で自身が第一容疑者になっていることを知らせる電話だった。ジェリーは逮捕と中国への強制送還を免れるため、スパイとして捜査に協力。数週間にわたって秘密裏に行動する彼だったが、ついにすべてを家族に打ち明けることに。すると彼らは、驚愕の道を選ぶのだった。前代未聞、異色ずくめの本作は、スラムダンス映画祭やサンタバーバラ国際映画祭など40もの世界映画祭で多くの賞にノミネートされ、最優秀主演男優賞を含む受賞歴を獲得。平凡で、どこにでもいる男性だったジェリーが、憧れてきたアメリカンドリームを本作で実現。奇跡の連続のような作品に、誰もが目を奪われるはず。

公開日: 3月20日(木)
監督: ロー・チェン
出演: ジェリー・シュー、キャシー・シュー、ジョシュア・シュー
HP: jerry-movie.com

『ANORA アノーラ

©︎2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©︎Universal Pictures

アメリカ社会の「声なき声」をすくいあげてきた Sean Baker (ショーン・ベイカー) 監督が贈る人間讃歌。主人公は、ニューヨークでストリップダンサーとして暮らすアノーラ。職場のクラブでロシア人の御曹司イヴァンと出会い、夢のような幸せを掴みかけていたが、彼の両親は息子と娼婦との結婚に猛反対。厳しい現実を突きつけられ、アノーラの物語は第二章を迎える。本作で監督が表現したのは、自らの幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する、若きストリッパーの生きざまだ。身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーを21世紀風に描き直し、セックス、美、富、社会的階級といったリアリティ溢れる要素を取り入れた。そしてパワーゲームのなかで利用されながらも、階級意識や偏見に抗うパワフルなアノーラ役に抜擢されたのは、新星 Mikey Madison (マイキー・マディソン)。また、ロシア新興財閥の息子イヴァン役には「ロシアのティモシー・シャラメ」と謳われる Mark Eydelshteyn (マーク・エイデルシュテイン) が登場し、本作が英語劇初挑戦となる。Sean Baker の作品史上、最もエンターテイメント性が高く、清濁合わせ呑む人間らしさに溢れた本作。アノーラの圧倒的パワーとエネルギーが、凝り固まった今の世の中を鮮やかに蹴り飛ばす。

公開日: 2月28日(金)
監督: Sean Baker
出演: Mikey Madison、Mark Eydelshteyn、Yuriy Borisov (ユーリー・ボリソフ)
HP: anora.jp

『アット・ザ・ベンチ』

©︎2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.

ポカリスエットの広告や米津玄師の MV などで知られる映像監督・写真家の奥山由之が自主制作した、全5編のオムニバスムービー。第2編の脚本には8人組ユニット・ダウ90000の蓮見翔が、キャストには広瀬すず、仲野太賀、今田美桜、吉岡里帆、神木隆之介など錚々たる顔ぶれが集結。川沿いの芝生の真ん中にぽつんと置かれたベンチを巡って、訪れるさまざまな人たちの日常を写し出す。別れ話をするカップルとそこに割り込む男性、家出をした姉と、姉を探しにきた妹や、ベンチの撤去を計画する役所の職員たち。繰り広げられる等身大の会話は、まるで我々の日常の延長線上にあるかのようだ。また、本作は過去に動画配信プラットフォーム Vimeo (ヴィメオ) にて第1編、第2編が無料公開され反響を呼び、今回新たに3本のショートムービーが制作された。心地よい温度感と小さな違和感の調和を、スクリーンで楽しんでほしい。

公開日: 11月15日(金)
監督: 奥山由之
出演: 広瀬すず、仲野太賀、岸井ゆきの、岡山天音、荒川良々、今田美桜、森七菜、草彅剛、吉岡里帆、神木隆之介
HP: spoon-inc.co.jp/at-the-bench