Interview with Hirofumi Kurino of UNITED ARROWS LTD. on his favorite brands: part 4

PORTRAITS | Mar 28, 2013 8:00 AM
日本のファッション界最重要人物のひとり、栗野宏文氏。日本を代表するファッション小売業 ㈱ UNITED ARROWS (以下: ㈱ UA) のクリエイティブディレクション担当上級顧問であり、日本のファッション業界をドメスティックとインターナショナルな視点から俯瞰的に語ることができる数少ないファッション・ジャーナリストでもある。業界歴35年というキャリアもさることながら、政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとしても、国内外で高く評価されている。栗野氏にとって、ファッション業界の過去・現在・未来とは?

取材・文: 編集部  ポートレート写真: 三宅英正

日本のファッション界最重要人物のひとり、栗野宏文氏。日本を代表するファッション小売業 ㈱ UNITED ARROWS (以下: ㈱ UA) のクリエイティブディレクション担当上級顧問であり、日本のファッション業界をドメスティックとインターナショナルな視点から俯瞰的に語ることができる数少ないファッション・ジャーナリストでもある。業界歴35年というキャリアもさることながら、政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとしても、国内外で高く評価されている。栗野氏にとって、ファッション業界の過去・現在・未来とは?

(第1回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、ディレクションや流行予測のエッセンス

 (第2回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、日本のアパレル市場とアントワープ王立芸術アカデミー

(第3回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、JFWと日本のファッションの最大の特徴

TOGA S/S 2013

TOGA S/S 2013

– 最近、気になる東京のお店はありますか?

PARCO (パルコ) は、できたときから知っているので、もう40年くらい前でしょうか。久しぶりに去年の12月に行ったら、すごくおもしろくてうれしくなりました。テナントもガラっと変わり、本屋さんもますますパワフルになっていました。ちょうど ANREALAGE (アンリアレイジ) の展覧会をやっていたり、Village Vanguard (ヴィレッジ・ヴァンガード) のお店があったり、古い雑誌が売っていたり、PARCO 全体が下北沢化しています。下北沢がそのまま PARCO になったという感じはすごくウェルカムです。

– 海外で評価が高い日本のブランドはどこでしょうか?

いまは、まず kolor (カラー) と sacai (サカイ) ですね。kolor はメンズ、sacai はメンズ・ウェメンズ共にすごい評価が高いですね。あと最近、東南アジアでは TOGA (トーガ) の勢いがすごいです。

– 海外の気になるブランドにはどのようなものがありますか?

一昨年くらいから UNITED ARROWS では UMIT BENAN (ウミット ベナン) というブランドをプッシュしていまして、実際にすごく売れてきました。その次に会社をあげて注目しているのが、1205 (トゥエルブ オー ファイブ) という英国のブランドです。個人的には AI (エー アイ) という、Andrea Incontri (アンドレア・インコントリ) というデザイナーのブランドがこれからくるとおもっています。それから小物でいうと、Leitmotiv (ライトモチーフ) というイタリアのブランドがおもしろくて、実際に売れてもいます。また、オーストリアの気になるブランドも2つありまして、1つ目は rosa mosa (ロサ モサ) というユニークなシューズブランド。インディペンデントな存在ですが、他のメゾンやデザイナーに影響を与えています。2つ目は Florian (フローリアン) というアクセサリーブランドで、パリの colette (コレット) やロンドンの Dover Street Market (ドーバーストリートマーケット) でも人気です。

1205 S/S 2013

1205 S/S 2013

1/2ページ: これから海外で勝負したいと考えている日本のブランドへのアドバイス

– District で今年の春夏一押しのブランドはなんでしょうか?

日本でいうとやはり kolor です。マイナーなブランドですと、 & wears (アンド ウェアーズ) というところが良いモノを作っていますね。海外だとやはり 1205 と Christopher Raeburn (クリストファー レイバーン) です。今日私が履いている、HESCHUNG (エシュン) というシューズブランドは、去年の秋冬にすごく売れたので、当分しっかりとやっていきたいブランドですね。

Christopher Raeburn S/S 2013

Christopher Raeburn S/S 2013

– これから海外で勝負したいと考えている日本のブランドにアドバイスをお願いします。

なぜ海外に行きたいのかというのをきちんと考えてから出た方が良いです。海外進出すること自体が目的にならないことが大切。ショーをやるにしても最低1,000万円以上かかりますから、それでも持って行きたいのか、勝算はあるのか?考えた方が良いでしょう。皆さんが思っているようなメンズマーケットは海外には存在しないので、余程コレはスゴイというモノを作って行かないかぎり、買ってくれないとおもいます。

日本のメンズマーケットはものすごく大きく、世界一です。さきほど言ったように、日本のファッションには階級がなく、性的誘惑も無い為に、素直に服をたのしめる男の子が山ほどいます。だから日本のメンズ・ファッションマーケットはおもしろい。昔ほどスーツを着なくなったとはいえ、本来ならば、男の人はスーツを着て会社に行きます。スカートは履かないし、ワンピースも着ない。男の人は着れる服の範囲がすごく狭いです。逆に、女の人はあらゆるオケージョンで服を着替えられるし、服を着ることにまだまだ意味があります。そう考えると、日本でここまでメンズファッションが盛んになったこと自体、奇跡のような話ですね。

それは、1976年創刊の『Popeye (ポパイ) 』や『Brutus (ブルータス)』、『Hot-Dog PRESS (ホットドッグ・プレス)』『Checkmate (チェックメイト)』、そしてもっと昔からあった『MEN’S CLUB (メンズクラブ)』などの影響がすごく大きいとおもいます。もっと後に出てきた『Smart (スマート)』や『HUgE (ヒュージ) 』などの影響もあります。1970年代に『Popeye』を見た外国人が、「これはゲイマガジンか?」と聞いてきたんです。女の人の裸が出てないじゃないですか。例えば世界の一流と言われているメンズマガジンのひとつ、『GQ (ジーキュー) 』のイギリス版、アメリカ版、フランス版、どれを見ても女の人の裸は絶対出ていますよね。一応日本の『GQ』にも女の人は出ていますが、大した量ではない。日本は、洋服の話できちんと一冊の本を作れてしまう国なのです。読者もそれでまったく平気です。そのような国は他にはないですよ。

そういうことをいろいろと分かった上で、「海外進出したいのかい?」ということなんです。Comme des Garçons や JUNYA WATANABE (ジュンヤ ワタナベ)、UNDERCOVERや kolor の成功を見ながら、自分も向こうに行ったらああいうふうに成功できるんだと勘違いしてしまっている人が多いのではないでしょうか。ニューヨークでも男性はみんな普通のコンサバな格好をしていますからね。アメリカ人男性には、ゲイだと誤解されたくないという気持ちがあるんです。人間の権利としてゲイは認められていますし、ゲイ同士の結婚も、もちろん認められています。しかし、自分がゲイだと誤解されたくないという人の方が圧倒的に多い。例えば東京で私たちがしているような格好のままニューヨークを歩いたら、75%はゲイだと思われてしまうのではないでしょうか。日本国内にいたらまったく平気ですよね。誤解しようがないので。だけど、そういう違いはすごく大きいです。

– 栗野さんの今後のご予定をお聞きしたいです。

いま、次のジェネレーションが育ってきているので、彼らをしっかりと育てたいです。30代のバイヤーや、20代30代のプレスを含め、次世代の育成が私の目標ですね。自分が元気なうちに伝えられるものは伝えておかないと。肉体はどんどん衰えていきますから。

– 最後に、東京のおすすめスポットを3つ教えてください。

1. 下北沢のウィレッジヴァンガード

住所: 東京都世田谷区北沢2-10-15マルシェ下北沢
URL: http://www.village-v.co.jp 

2. 新宿ルミネ1, 2

住所: 新宿区西新宿1-1-5, 新宿区新宿3-38-2
URL: http://www.lumine.ne.jp/shinjuku

3. 新丸ビルの7階

住所: 東京都千代田区丸の内1-5-1
URL: http://www.marunouchi.com/shinmaru

新丸ビルは飲食店がすごく充実していて、夕方には富士山が見える。夜は東京駅がきれいに見えるので最高です。私がこの業界に入って35年ほど経ちますが、あれほどよくできている商業施設は世界でも例を見ないとおもいます。

(第1回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、ディレクションや流行予測のエッセンス

 (第2回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、日本のアパレル市場とアントワープ王立芸術アカデミー

(第3回/全4回) 【インタビュー】(株) ユナイテッドアローズのクリエイティブディレクション担当上級顧問 栗野宏文氏が語る、JFWと日本のファッションの最大の特徴

栗野宏文 (くりの ひろふみ)
株式会社ユナイテッドアローズ
クリエイティブディレクション担当 上級顧問

1953年生まれ。主に東京・世田谷で育つ。中学・高校時代は音楽やイラストレーションに熱中。1977年からファッション業界に身をおく。

株式会社ユナイテッドアローズでは、長年にわたりバイヤーやブランドディレクターを担うと同時に、社会潮流を読みディレクションを発信する全社のクリエイティブディレクション担当上級顧問を務める。政治経済・音楽・映画・アートから国内外情勢を投影した時代の潮流(ソーシャルストリーム)を捉えるマーケターとして、またそこからファッションを読むファッションジャーナリストとして数々の連載寄稿・取材や講演を行なう。

国内外におけるファッション文化貢献活動にも参画。Royal Academy of Fine Arts Antwerp (アントワープ王立芸術アカデミー) では度々卒業ショーの審査員も務める。2004年には、英王立芸術大学院「Royal College of Art」からHonorary Fellowship(名誉研究員)を授与。現在日本ファッション・ウィーク推進機構 コレクション事業委員会 委員として東京コレクションの開催運営に関するアドバイザーや、国際的な服地見本市のプルミエール・ヴィジョン(PV)が2009年9月展から新設した、出展社の最新生地を対にした「PVアワード」の初代審査委員メンバーに就く。

UNITED ARROWS LTD.
URL: http://www.united-arrows.co.jp

 

 

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