今週のTFP的おすすめ映画
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おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
『旅と日々』
©︎2025「旅と日々」製作委員会
『夜明けのすべて』『ケイコ 目を澄ませて』で知られ、日本映画界に強い存在感を放つ三宅唱監督が、漫画家・つげ義春の「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を実写映画化。初版から50年以上を経た作品を見事な手腕で現代的にアップデートし、アメリカ、フランス、東アジアやポルトガル、ギリシャでの配給も決定するなど、世界からも高い注目が集まっている。行き詰まった脚本家・李は、つげ義春の短編漫画「海辺の叙景」を原作に、夏の海を舞台にした脚本を書く。その映画が大学の授業の一環として上映され、落ち込んだ彼女は旅に出る。一面が銀世界の町に降り立ち、無計画な旅路でやっと見つけたおんぼろ宿には、ものぐさな宿主・べん造が住んでいた。そしてある夜、べん造は李を雪の原に連れ出すのだった。美しい自然を背景に、心の回復を丁寧に紡いだ本作が、観る者の心をそっと包み込む。
公開日: 11月7日(金)
監督: 三宅唱
原作: つげ義春「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」
出演: シム・ウンギョン、堤真一、河合優実、髙田万作
HP: bitters.co.jp/tabitohibi
『ぼくらの居場所』
©︎2021 2647287 Ontario Inc. for Compy Films Inc.
さまざまな環境下で暮らす子どもたちが教育センターで出会い、絆を育んでいく様子を描いたドラマ作品。メガホンをとったのは、ドキュメンタリーの名手である Shasha Nakhai (シャシャ・ナカイ) と Rich Williamson (リッチ・ウィリアムソン)。カナダ人作家の Catherine Hernandez (キャサリン・エルナンデス) が実体験をもとにしたデビュー作『Scarborough』を自ら脚本化し、2人に持ち込んだことから本作が誕生した。物語の舞台となるのは、多様な文化を持つ人々が多く暮らす、カナダ・トロント東部スカボロー。そこには、精神疾患を抱えた父親の暴力から逃げるように引っ越してきたフィリピン人のビン、家族4人でシェルターに暮らす先住民の血を引くシルヴィー、そしてネグレクトされ両親に翻弄され続けるローラが暮らしていた。彼らは唯一の居場所である地域の教育センターで、徐々に互いに心を通わせていく。主役に抜擢された3人は、いずれも本作でスクリーンデビューを果たした子どもたち。驚くほど自然で純真な演技が、観る者の心に強く訴えかける。現代社会が抱える問題を提起しながらも、人々の希望やコミュニティの温かさ、美しさを表現した本作は、未来を優しく照らしてくれるはず。
公開日: 11月7日(金)
監督: Shasha Nakhai、Rich Williamson
出演: Liam Diaz (リアム・ディアス)、Essence Fox (エッセンス・フォックス)、Anna Claire Beitel (アンナ・クレア・ベイテル)
HP: culturallife.co.jp/bokuranoibasho
『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』
©︎2024 Crow’s Nest Productions Limited
第二次世界大戦下、ヒトラーが猛威を振るうナチスで、スパイ活動に身を投じた牧師がいた。ドイツ人牧師ディートリヒ・ボンヘッファーの殉教から80年が経った今、その壮絶な人生が明らかになる。1933年、ヒトラーが最初にドイツ国内で掌握したのは教会だったという。独裁者を神のように崇拝する聖職者が続々と現れ、ボンヘッファーは危機感を抱く。彼は教会という聖域を守るためスパイとなり、ユダヤ人の大虐殺を行うナチス政権を崩壊させるためのスパイになることを決意。信仰と信念を貫き、命をかけて闘うボンヘッファーに、究極の運命が待ち受けていた。「20世紀を代表するキリスト教神学者の一人」と呼ばれる彼は、いかにしてヒトラー暗殺の共謀者へと生まれ変わったのだろうか。勤勉なキリスト教徒であり、そして抵抗運動の闘士として生きたボンヘッファーの39年間という濃い生き様を通して、英雄の知られざる人生を浮かび上がらせていく。自らの命を犠牲にし、多くの命を救った彼の姿を、スクリーンで見届けてほしい。
公開日: 11月7日(金)
監督: Todd Komarnicki (トッド・コマーニキ)
出演: Jonas Dassler (ヨナス・ダスラー)、August Diehl (アウグスト・ディール)、Moritz Bleibtreu (モーリッツ・ブライブトロイ)
HP: hark3.com/bonhoeffer
『ハッパーズ・コメット』
ロサンゼルスを拠点に活動する若手クリエイター集団「オムネス・フィルムズ」の重要人物である Tyler Taormina (タイラー・タオルミーナ) 監督。最新作のリリースに先駆けて、監督の長編2作を上映する特集がスタートする。『ハッパーズ・コメット』は、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックによる断続的なロックダウン期間中に撮影された作品。製作スタッフは監督と撮影監督を務めたジェシー・スパーリングのわずか2名のみ。キャストはタオルミーナの地元コミュニティの人々で構成され、ほとんどが自宅で自身をモデルにした役を演じたという。パンデミックという状況から生まれたユニークなプロセスで制作された本作が写し出すのは、郊外の町に漂う孤独感。深夜、それぞれのひとときを過ごす住民たちを覗き見ると、静かにローラーブレードで夜の闇へと抜け出していく人々の姿が浮かび上がるのだった。コロナ禍の町の静けさや真夜中の冷ややかさを見事に表現した本作をぜひ体感してほしい。
公開日: 11月7日(金)
監督: Tyler Taormina
出演: グレース・ベルリーノ、Michael Guglielmo (マイケル・グリエルモ)、Jax Terry (ジャックス・テリー)
HP: tyler-taormina2025
『旅人の必需品』
1996年の長編デビューから30年経った今も、ペースを崩すことなく自身のフィルモグラフィを発表し続ける Hong Sang-Soo (ホン・サンス) 監督。大作商業映画からは距離を置いた映画の製作体制を築き、世界の映画祭で唯一無二の存在感を発揮してきた彼のデビュー30周年を記念して、「月刊ホン・サンス」が開催される。2023年以降に作られた新作5本が5ヶ月連続で公開され、東京のユーロスペースを皮切りに全国の劇場で順次公開。TFP では、本イベントの幕開けを飾る『旅の必需品』をご紹介。本作は、監督が Isabelle Huppert (イザベル・ユペール) と3度目のタッグを組んだコメディドラマ。ソウルを旅する謎めいたフランス人女性・イリスを演じ、ミステリアスな世界を作り上げた。イリスはなぜ韓国にやってきて、フランス語教師をしているのか。韓国人の国民的詩人・尹東柱 (ユン・ドンジュ) の詩に触れ、徐々に彼女をまとう秘密のヴェールが明らかになっていく。ホン・サンスの作品からは、偶然に出会った人々が語らい、道に迷い、また出会って語らう、果てしない繰り返しから、ふいに小さな真実と美しい景色が浮かび上がってくる。それは、私たちの日常とどこか重なるかもしれない。独特で不思議な世界は、観る者に世界の新しい視点を与えてくれるかもしれない。
公開日: 11月1日(土)
監督: Hong Sang-Soo
出演: Isabelle Huppert、Lee Hye-yeong (イ・ヘヨン)、Kwon Hae-Hyo (クォン・ヘヒョ)
HP: gekkan-hongsangsoo
『SPIRIT WORLD スピリットワールド』
©︎2024「SPIRIT WORLD」製作委員会
名優 Catherine Deneuve (カトリーヌ・ドヌーブ) が主演を飾り、竹野内豊、堺正章、風吹ジュンという豪華俳優陣がおくる、迷える大人たちの希望と再生を描いた物語。本作は日・仏・シンガポールの国際共同合作で、群馬県高崎市と千葉県いすみ市で撮影された。竹野内扮するハヤトは、父の死をきっかけに高崎市を訪れ、父の遺言とともにフランス人歌手クレのコンサートチケットを発見。その翌日、ハヤトはクレアの突然の死を知る。だが、死後の世界ではハヤトの父ユウゾウとクレアが、見えない存在としてハヤトを見守っているのだった。家族、仕事、人生、さまざまな葛藤を抱えるハヤトが、旅のなかで見つけたものとは。監督は、『家族のレシピ』、『TATSUMI マンガに革命を起こした男』などで知られるシンガポールの鬼才 Eric Khoo (エリック・クー)。この世とあの世を繋ぎ合わせ、それぞれの立場からの愛と絆を繊細に紡いだ。かつてドヌーヴに魅了された世代が時を重ね、現代では親子で映画館へ出かけなくなったのではないだろうか。本作はそんな人々に向けて、愛する人々が再びつながりを深めるきっかけになってほしいという願いが込められている。この機会に、ぜひ大切な人を誘って本作を鑑賞してみては。
公開日: 10月31日(金)
監督: Eric Khoo
出演: Catherine Deneuve、竹野内豊、堺正章
HP: spiritworld.jp
『恋人たち』
©︎松竹ブロードキャスティング
代表作に『ぐるりのこと。』では数々の映画賞を受賞した橋口亮輔が、同作以来7年ぶりに手がけた監督作。本作のリリースから10周年を記念して、テアトル新宿にてリバイバル上映される。本作は、辛い過去を抱える男アツシを主人公に据え、理不尽な世界で生きる不器用な恋人たちの姿を映し出していく。橋梁点検をしているアツシは、通り魔殺人事件によって妻を失い、橋梁点検の仕事をしながら裁判のため奔走していた。健康保険料も払えないほど、彼の生活は困窮している。一方、郊外に住み自分に関心をもたない夫と、そりが合わない姑と3人で暮らす瞳子は、パート先にやってきた男によって日常が色づき始める。そして弁護士として働く四ノ宮は、完璧主義者で一緒に暮らす恋人にも高圧的。だが、学生時代から密かに思いを寄せる男友達に、ささいなことがきっかけで誤解を招いてしまう。それぞれの恋人たちは、失ってはじめて当たり前の日々の大切さに気づく。本作は、決して現状に満足しているわけではない、思い通りにならない日々を等身大に表現。そのやり場のない感情は、10年経った今を生きる我々にも共通しているのではないだろうか。現代の日本が抱えている問題に向き合うとともに、社会から目を背けたくなる現実を受け止める主人公の姿を受け止めてほしい。
公開日: 10月31日(金)
監督: 橋口亮輔
出演: 篠原篤、成嶋瞳子、池田良
HP: koibitotachi.com
『アニタ 反逆の女神』
©︎2023 Brown Bag Productions, LLC
1960~70年代にファッションアイコンとして活躍し、「ローリング・ストーンズのミューズ」として輝いた Anita Pallenberg (アニタ・パレンバーグ) の半生を描く。アニタはローリング・ストーンズの初代リーダーであった Brian Jones (ブライアン・ジョーンズ) と恋に落ち、彼の没後は同じくストーンズの Keith Richards (キース・リチャーズ) との間に子どもを授け、夫婦同然のような仲になった。映画で共演したミック・ジャガーをも虜にしたという魔性さを持ち、ローリング・ストーンズの創造源として重要な存在であり続けた。一方モデルとしては、ボヘミアン・ロック・シックを生み出したファッションアイコンでもある。60年代という嵐の時代に、世界に影響を与え、ドラッグ中毒に苦しみながらも不死鳥のごとく蘇った波乱の人生とは。本作では、Scarlett Johansson (スカーレット・ヨハンソン) がナレーターを務め、彼女の2人の子どもとキース・リチャーズが出演。本人の死後に発見された未発表の回顧録、ホーム・ムービー、家族写真を用いて、愛おしくも痛切な家族の秘話を語る。さらに、アニタを崇拝しているという Kate Moss (ケイト・モス) も登場し、彼女の影響力の大きさ、深さを物語る。常に新しい価値観を切り開き、聡明であり、芸術的センスに長け、愛情深いアニタの存在は、時代を超えて語り継がれていく。
公開日: 10月25日(土)
監督: Alexis Bloom (アレクシス・ブルーム)、Svetlana Zill (スベトラーナ・ジル)
出演: Anita Pallenberg、Keith Richards、Marlon Richards (マーロン・リチャーズ)
HP: anita.onlyhearts.co.jp
『フランケンシュタイン』
『シェイプ・オブ・ウォーター』『パンズ・ラビリンス』で知られる Guillermo Del Toro (ギレルモ・デル・トロ) が、19世紀イギリス人作家 Mary Shelley (メアリー・シェリー) の不朽の名作『フランケンシュタイン』を映画化。本作は、天才だが傲慢な科学者ヴィクター・フランケンシュタインが禁断の実験によって怪物を生み出し、創造者と被創造者による追走劇が繰り広げられていく。デル・トロが長年の夢を実らせたという本作の実写化では、原作の幻想的な要素を壮麗にビジュアライズ。現代的な作風を表現するため、ヴィクターには威風堂々としたファッションを採用し、映像はパステル調の時代劇ではなく、豊かで色彩に満ちたスタイルを表現した。デル・トロは、本作に登場する怪物は彼にとって「守護霊」だと語り、「私は生涯、メアリー・シェリーの創造物と共に生きてきた」と続けている。本作は、配信プラットフォーム Netflix にて11月7日からリリースされ、これに先立って10月24日から一部劇場にて順次公開予定。並々ならぬ熱量で描かれるデル・トロの『フランケンシュタイン』を、ぜひスクリーンで体感してほしい。
公開日: 10月24日(金)
監督: Guillermo Del Toro (ギレルモ・デル・トロ)
出演: Oscar Isaac (オスカー・アイザック)、Jacob Elordi (ジェイコブ・エロルディ)、Mia Goth (ミア・ゴス)
HP: frankensteinfilm
『ハードトゥルース 母の日に願うこと』
©︎Untitled 23 / Channel Four Television Corporation / Mediapro Cine S.L.U.
常になにかに苛立ち、怒りの感情に支配されている女性の姿から、人間とは、家族とは、そして幸せとはなにかという、根源的な問いを見つめ直すヒューマンドラマ。主人公は、夫や息子と暮らす中年女性パンジー。朝から小言を言い、家族との関係もぎくしゃくする日々。しかし、対照的な性格の妹、シャンテルと墓参りに行った日から、パンジーは秘めた思いと向き合い始める。それは、家族に対する複雑な思いや、深い孤独、悲しみだった。監督は、イギリスの名匠 Mike Leigh (マイク・リー)。本作で彼は、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた『秘密の嘘』の Marianne Jean-Baptiste (マリアンヌ・ジャン=バプティスト) と再びタッグを結成。表現者として深みを増した両者が奇跡的に再会し、前作以上にパワフルな人物像を作り上げた。主人公が夫や息子、妹とのねじれた家族関係を見つめ直したとき、どんな感情が浮かび上がってくるのか。笑い、涙、怒りが交錯する人生讃歌を、スクリーンで見届けて。
公開日: 10月24日(金)
監督: Mike Leigh
出演: Marianne Jean-Baptiste、Michele Austin (ミシェル・オースティン)、David Webber (デビッド・ウェバー)
HP: hahanohi-film.com
『大地に詩を書くように』
©︎2024 GIRAFFE PICTURES
韓国人として初めて造景界の最高栄誉賞と呼ばれる「ジェフリー・ジェリコ賞」を受賞した造景家チョン・ヨンソン。代表作には、都心の中のオアシス「仙遊島公園」、韓国初の生態系公園「汝矣島セッカン生態公園」、過去と現在を繋ぐ「京春線・線路跡の林道」、そしてソウルに位置する「峨山病院」が挙げられる。彼女は韓国初の造景家として、1970年代から現在に至るまで韓国各地の空間に「韓国的な美」を息づかせてきた。本作では、そんな彼女とともに四季を過ごし、彼女がどのように人間、空間、自然の関係を見つめているのか、チョン・ヨンソンの哲学に迫り、これからも人類が深く考えるべき「自然と人間の調和」について紐解いていく。監督は、視覚媒体を活用した人間と建築、自然、空間をつなぐ映像作家のチョン・ダウン。2021年にはソウル国際建築映画祭建築文化貢献賞を受賞している。彼女の目を通して、チョン・ヨンソンが生み出す空間が物語として紡がれる。地域の記憶や暮らし、自然を見事に共鳴させるチョン・ヨンソンの美学に触れてみてほしい。
公開日: 10月25日(土)
監督: チョン・ダウン
出演: チョン・ヨンソン
HP: sumomo-inc.com/poetryonland
『次元を超える』
©︎次元超越体/DIMENSIONS
揺るぎない信念と祈りを持ち、世界と映画館を震わせ続ける豊田利晃監督が、7年ぶりに長編作品をリリース。窪塚洋介と松田龍平という異色の W 主演が織りなすのは、時空を越えた壮大な人間ドラマ。物語は、窪塚演じる孤高の修行者・山中狼介が神秘の領域へと姿を消すことから幕を開ける。そして、彼の捜索を依頼された松田演じる謎の暗殺者・新野風は、狼蘇山で彼と対面。過去・現在・未来と次元を超えて対峙し、さらには宇宙に辿り着いた2人が目にしたものとは。 ミニマルな場面と大胆なビジュアルが交錯することで鏡の洞窟、法螺貝の音、宇宙風景まで、多層的な世界が次元の境界を曖昧にし、観る者を作品の世界観に引き込んでいく。さらにストーリーのテーマは、単なる SF やファンタジーの枠を越え、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という根源的な問いを映像の言葉で投げかけてくる。豊田の映画人生を懸けた集大成にして、新境地に達した衝撃作。
公開日: 10月17日(金)
監督: 豊田利晃
出演: 窪塚洋介、松田龍平、千原ジュニア
HP: starsands.com/jigen
『KIDS キッズ』
©︎1995 KIDS N.Y. LLLC. All rights reserved (C)2018 Filmverlag Fernsehjuwelen. All rights reserved.
1995年、写真家 Larry Clark (ラリー・クラーク) が監督デビュー作として放った『KIDS キッズ』。セックス、ドラッグ、暴力、そして HIV という従来の青春映画が避けた「思春期の闇」を赤裸々に描いたセンセーショナルでショッキングな映像は、「フィクションか現実か」という論争にまで発展ほどだ。そんな生々しいドキュメンタリータッチで紡がれるのは、ニューヨークに住む若者たちの24時間。仲間たちがたむろするポールの家で、ビールやドラッグを楽しむ一方、ルビーの家に集まる女子たちもセックスの話ばかり。そして、自身が HIV 感染者だと知らずにヴァージンの女の子とデートを楽しむテリーと、テリーと一度、一夜のみ関係を持っただけで HIV に感染してしまったジェニー。思春期の少年少女を多面的に映し出しながら、不穏な空気が作品全体を包み込む。本作に登場するティーンエイジャーたちは、ほとんどが素人の若者たち。演技未経験ながらにしてヒロインに抜擢された Chloe Sevigny (クロエ・セビニー) は、本作で時代の象徴となり、のちに数々の映画に出演している。 90年代の現実を突きつけ、多くのクリエイターに影響を与えた本作が、30年の時を経てスクリーンに蘇る。
公開日: 10月17日(金)
監督: Larry Clark
出演: Leo Fitzpatrick (レオ・フィッツパトリック)、Justin Pierce (ジャスティン・ピアース)、Chloe Sevigny
HP: kids-movie.jp
『おーい、応為』
©︎2025「おーい、応為」製作委員会
江戸という男性中心の時代を、生来の画才と豪胆な精神で駆け抜けた女性絵師・葛飾応為を描く新時代の伝記映画。主人公は、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘、お栄。父娘にして北斎の師弟であり、父親譲りの才能を発揮した彼女は北斎の右腕として活躍した。その実力は、「美人画では敵わない」と北斎が認めたほど。だが現在、作品はわずかほどしか残っていない。200年ほど前とは思えない、現代的な強さと自由を持つ彼女の、これまで知られることのなかった生き様を描く。本作の脚本・監督を務めるのは、『日日是好日』『星の子』などで人間の深層を優しくすくい取ってきた大森立嗣。そして大森と『MOTHER マザー』以来のタッグを組み、ヒロインを務めるのは長澤まさみ。また葛飾北斎を演じる永瀬正敏や、髙橋海人、大谷亮平、寺島しのぶなど、日本映画界を代表する俳優陣が集結。古き時代劇の枠を超えて、画家の手触りと息づかいを伝える本作を、ぜひ劇場で鑑賞してみて。
公開日: 10月17日(金)
監督: 大森立嗣
出演: 長澤まさみ、髙橋海人、大谷亮平
HP: oioui.com
『見はらし世代』
©︎2025 シグロ/レプロエンタテインメント
本作の監督は、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に、日本人史上最年少監督としてノミネートされた団塚唯我。オリジナル脚本、そして初長編作品にして大いなる快挙を成し遂げ、映画界で沸々と話題を呼んでいる。そんな国内外から注目を浴びる本作で映画初主演を飾ったのは、NHK 連続テレビ小説「ブギウギ」で俳優デビューを果たした黒崎煌代。また遠藤憲一、井川遥など、ベテラン俳優らも登場し、新人監督がつむぐ瑞々しい世界観に深みをもたらした。物語は、再開発が進む東京・渋谷を舞台に、ばらばらになった家族を映し出す。主人公の青年、蓮は、渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働いている。ある日、蓮は疎遠になっていた父に数年ぶりに遭遇。だが、結婚を控える姉は父に関心を持たない。変わりゆく街並みを見つめながら、蓮はもう一度家族の距離を測り直そうと決意し、家族にとって最後の一夜を迎える。本作は、母親の喪失と、父親との疎遠という出来事から、個々の人生と家族の相関性を繊細に浮き彫りにしている。さらに都市開発がもたらす影響にまでテーマを広げ、新たなスタイルの日本映画に挑戦。切実さを失わず、軽やかにすすんでいく物語の結末は、スクリーンでたしかめてほしい。
公開日: 10月10日(金)
監督: 団塚唯我
出演: 黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥
HP: miharashisedai.com
『秒速5センチメートル』
©2025「秒速5センチメートル」製作委員会
リリースから18年経った今も根強い人気を持つ新海誠の劇場アニメーション『秒速5センチメートル』が実写映画化。新海誠作品では初の実写化となる本作を手がけたのは、映像監督・写真家の奥山由之。34歳の若さにして CM「ポカリスエット」や自主映画『アット・ザ・ベンチ』など、あらゆる才能を発揮する彼が並々ならぬ熱量で初の大型長編商業映画に挑む。物語のはじまりは、1991年の春。東京の小学校で出会った遠野貴樹と篠原明里が離れ離れになり、中学1年で再会。そして時は流れ、時代は2008年を迎える。30歳を前にした2人は、約束の日を胸に抱えながらそれぞれの人生を歩んでいた。奥山は四季をまたぎながら東京、種子島などを舞台に全編ロケで制作。18年という年月と、異なる速さで人生を歩む2人をセンチメンタルに表現した。互いを常に意識しながら交わらない運命を進む2人を演じたのは、松村北斗と高畑充希。新海誠監督作『すずめの戸締まり』にも出演し、新海が「最も信頼している」と評価している俳優・松村が主演を飾り、新たな新海ワールドを演出する。また、同じく新海作品『天気の子』に出演した森七菜や、『うみべの女の子』で圧倒的存在感を放った青木柚、宮崎あおい、日本の演劇・コントユニット・ダウ90000主宰の蓮見翔など、個性豊かなキャストが集結。大切な人との巡り合わせを淡く、静かに紡いだ不朽の名作が実写として生まれ変わる瞬間を、ぜひ見届けてみては。
公開日: 10月10日(金)
監督: 奥山由之
出演: 松村北斗、高畑充希、森七菜
HP: 5cm-movie.jp
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
©︎2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの世界3大映画祭すべてで監督賞を受賞した名匠 Paul Thomas Anderson (ポール・トーマス・アンダーソン) が放つ、怒涛の逃走劇。ストーリーは、Leonardo DiCaprio (レオナルド・ディカプリオ) が演じる主人公ボブの平穏な生活が一変する大事件からスタート。元革命家の彼は最愛の娘とともに平凡な日々を送っていたが、突然娘が拐われてしまう。犯人は、異常な執着心でボブを追い詰めてきた変態軍人、ロックジョー。次から次へとピンチが襲いかかるボブに謎の助っ人も現れ、戦闘はヒートアップしていく。本作では、主演の Leonardo DiCaprio のみならず、圧倒的な演技力を持つ Sean Penn (ショーン・ペン)、そして現在公開中の Wesley Anderson (ウェス・アンダーソン) 監督最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』では主演を飾った Benicio Del Toro (ベニチオ・デル・トロ) など、豪華スターが集結。個々に強い存在感を放つ彼らが Paul Thomas Anderson の世界に入り込み、単なる逃走劇の枠を超えた人間ドラマを展開する。逃げる者と追う者が入り乱れ、心をかき乱される追走劇をスクリーンで体感してほしい。
公開日: 10月3日(金)
監督: Paul Thomas Anderson
出演: Leonardo DiCaprio、Sean Penn、Benicio Del Toro
HP: onebattlemovie











