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おすすめ映画
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
『次元を超える』

©︎次元超越体/DIMENSIONS
揺るぎない信念と祈りを持ち、世界と映画館を震わせ続ける豊田利晃監督が、7年ぶりに長編作品をリリース。窪塚洋介と松田龍平という異色の W 主演が織りなすのは、時空を越えた壮大な人間ドラマ。物語は、窪塚演じる孤高の修行者・山中狼介が神秘の領域へと姿を消すことから幕を開ける。そして、彼の捜索を依頼された松田演じる謎の暗殺者・新野風は、狼蘇山で彼と対面。過去・現在・未来と次元を超えて対峙し、さらには宇宙に辿り着いた2人が目にしたものとは。 ミニマルな場面と大胆なビジュアルが交錯することで鏡の洞窟、法螺貝の音、宇宙風景まで、多層的な世界が次元の境界を曖昧にし、観る者を作品の世界観に引き込んでいく。さらにストーリーのテーマは、単なる SF やファンタジーの枠を越え、「人はどこから来て、どこへ行くのか」という根源的な問いを映像の言葉で投げかけてくる。豊田の映画人生を懸けた集大成にして、新境地に達した衝撃作。
公開日: 10月17日(金)
監督: 豊田利晃
出演: 窪塚洋介、松田龍平、千原ジュニア
HP: starsands.com/jigen
『KIDS キッズ』

©︎1995 KIDS N.Y. LLLC. All rights reserved (C)2018 Filmverlag Fernsehjuwelen. All rights reserved.
1995年、写真家 Larry Clark (ラリー・クラーク) が監督デビュー作として放った『KIDS キッズ』。セックス、ドラッグ、暴力、そして HIV という従来の青春映画が避けた「思春期の闇」を赤裸々に描いたセンセーショナルでショッキングな映像は、「フィクションか現実か」という論争にまで発展ほどだ。そんな生々しいドキュメンタリータッチで紡がれるのは、ニューヨークに住む若者たちの24時間。仲間たちがたむろするポールの家で、ビールやドラッグを楽しむ一方、ルビーの家に集まる女子たちもセックスの話ばかり。そして、自身が HIV 感染者だと知らずにヴァージンの女の子とデートを楽しむテリーと、テリーと一度、一夜のみ関係を持っただけで HIV に感染してしまったジェニー。思春期の少年少女を多面的に映し出しながら、不穏な空気が作品全体を包み込む。本作に登場するティーンエイジャーたちは、ほとんどが素人の若者たち。演技未経験ながらにしてヒロインに抜擢された Chloe Sevigny (クロエ・セビニー) は、本作で時代の象徴となり、のちに数々の映画に出演している。 90年代の現実を突きつけ、多くのクリエイターに影響を与えた本作が、30年の時を経てスクリーンに蘇る。
公開日: 10月17日(金)
監督: Larry Clark
出演: Leo Fitzpatrick (レオ・フィッツパトリック)、Justin Pierce (ジャスティン・ピアース)、Chloe Sevigny
HP: kids-movie.jp
『おーい、応為』

©︎2025「おーい、応為」製作委員会
江戸という男性中心の時代を、生来の画才と豪胆な精神で駆け抜けた女性絵師・葛飾応為を描く新時代の伝記映画。主人公は、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘、お栄。父娘にして北斎の師弟であり、父親譲りの才能を発揮した彼女は北斎の右腕として活躍した。その実力は、「美人画では敵わない」と北斎が認めたほど。だが現在、作品はわずかほどしか残っていない。200年ほど前とは思えない、現代的な強さと自由を持つ彼女の、これまで知られることのなかった生き様を描く。本作の脚本・監督を務めるのは、『日日是好日』『星の子』などで人間の深層を優しくすくい取ってきた大森立嗣。そして大森と『MOTHER マザー』以来のタッグを組み、ヒロインを務めるのは長澤まさみ。また葛飾北斎を演じる永瀬正敏や、髙橋海人、大谷亮平、寺島しのぶなど、日本映画界を代表する俳優陣が集結。古き時代劇の枠を超えて、画家の手触りと息づかいを伝える本作を、ぜひ劇場で鑑賞してみて。
公開日: 10月17日(金)
監督: 大森立嗣
出演: 長澤まさみ、髙橋海人、大谷亮平
HP: oioui.com
『モロカイ・バウンド』

©︎2024 MOLOKAI BOUND, LLC, ALL RIGHTS RESERVED
ネイティブ・ハワイアンと沖縄にルーツを持つ新鋭 Alika Tengan (アリカ・テンガン) 監督が、現代ハワイに生きる親子の絆を描く。彼だからこそ持つことのできた視点で、ハワイの現在と、時代を越えて繋がってきたハワイアンの魂を切り取った新たなハワイ・ニューウェイブを生み出した。本作の舞台となるのは、ハワイ諸島の中でも観光開発が最も少なく、手つかずの自然とハワイの伝統文化が息づくモロカイ島。人口は約7,000人、そしてそのほぼ半数がネイティブ・ハワイアンの血を引いているという島で、父子の姿からアイデンティティを鋭く問い直していく。登場人物の父親カイノアは、とある事情で服役し、仮釈放されたばかり。「前科者」というレッテルに苦しみながらも、疎遠となった息子との再会を願う。先住民としての誇りと「前科者」という烙印の狭間で揺れ動く彼は、無事息子との関係を修復できるのだろうか。主要なキャラクターにはネイティブ・ハワイアンの地を持つ者を起用し、監督の生きる世界と作品の背景をリアルにマッチさせた。再犯問題、生まれた土地以外でとのように自身の文化を守るべきか、「前科者」に向けられる偏見など、本作のメッセージは、ハワイから遠い場所に暮らす我々にも強く訴えかけるだろう。
公開日: 10月17日(金)
監督: Alika Tengan
出演: Holden Mandrial-Santos (ホールデン・マンドリアル=サントス)、Achilles Holt (アキレス・ホルト)、Kamalani Kapeliela (カマラニ・カペリエラ)
HP: molokaibound.jp
『見はらし世代』

©︎2025 シグロ/レプロエンタテインメント
本作の監督は、第78回カンヌ国際映画祭の監督週間に、日本人史上最年少監督としてノミネートされた団塚唯我。オリジナル脚本、そして初長編作品にして大いなる快挙を成し遂げ、映画界で沸々と話題を呼んでいる。そんな国内外から注目を浴びる本作で映画初主演を飾ったのは、NHK 連続テレビ小説「ブギウギ」で俳優デビューを果たした黒崎煌代。また遠藤憲一、井川遥など、ベテラン俳優らも登場し、新人監督がつむぐ瑞々しい世界観に深みをもたらした。物語は、再開発が進む東京・渋谷を舞台に、ばらばらになった家族を映し出す。主人公の青年、蓮は、渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働いている。ある日、蓮は疎遠になっていた父に数年ぶりに遭遇。だが、結婚を控える姉は父に関心を持たない。変わりゆく街並みを見つめながら、蓮はもう一度家族の距離を測り直そうと決意し、家族にとって最後の一夜を迎える。本作は、母親の喪失と、父親との疎遠という出来事から、個々の人生と家族の相関性を繊細に浮き彫りにしている。さらに都市開発がもたらす影響にまでテーマを広げ、新たなスタイルの日本映画に挑戦。切実さを失わず、軽やかにすすんでいく物語の結末は、スクリーンでたしかめてほしい。
公開日: 10月10日(金)
監督: 団塚唯我
出演: 黒崎煌代、遠藤憲一、井川遥
HP: miharashisedai.com
『秒速5センチメートル』

©2025「秒速5センチメートル」製作委員会
リリースから18年経った今も根強い人気を持つ新海誠の劇場アニメーション『秒速5センチメートル』が実写映画化。新海誠作品では初の実写化となる本作を手がけたのは、映像監督・写真家の奥山由之。34歳の若さにして CM「ポカリスエット」や自主映画『アット・ザ・ベンチ』など、あらゆる才能を発揮する彼が並々ならぬ熱量で初の大型長編商業映画に挑む。物語のはじまりは、1991年の春。東京の小学校で出会った遠野貴樹と篠原明里が離れ離れになり、中学1年で再会。そして時は流れ、時代は2008年を迎える。30歳を前にした2人は、約束の日を胸に抱えながらそれぞれの人生を歩んでいた。奥山は四季をまたぎながら東京、種子島などを舞台に全編ロケで制作。18年という年月と、異なる速さで人生を歩む2人をセンチメンタルに表現した。互いを常に意識しながら交わらない運命を進む2人を演じたのは、松村北斗と高畑充希。新海誠監督作『すずめの戸締まり』にも出演し、新海が「最も信頼している」と評価している俳優・松村が主演を飾り、新たな新海ワールドを演出する。また、同じく新海作品『天気の子』に出演した森七菜や、『うみべの女の子』で圧倒的存在感を放った青木柚、宮崎あおい、日本の演劇・コントユニット・ダウ90000主宰の蓮見翔など、個性豊かなキャストが集結。大切な人との巡り合わせを淡く、静かに紡いだ不朽の名作が実写として生まれ変わる瞬間を、ぜひ見届けてみては。
公開日: 10月10日(金)
監督: 奥山由之
出演: 松村北斗、高畑充希、森七菜
HP: 5cm-movie.jp
『グランドツアー』

©2024 ‒ Uma Pedra No Sapato ‒ Vivo film ‒ Shellac Sud ‒ Cinéma Defacto
ポルトガルの鬼才 Miguel Gomes (ミゲル・ゴメス) 監督が4年の歳月をかけて制作し、第77回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『グランドツアー』。歴史と幻想、美と旅の狭間を巧みに揺らぐメランコリックな旅を描き出す。時は1918年。現在はミャンマーとして知られるビルマのラングーンで、大英帝国の公務員エドワードは、婚約者モリーと出会う約束を破り失踪する。逃げるエドワードを追いかけ、アジアを巡る大旅行が繰り広げられる。本作は、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、日本、中国のアジア7カ国でロケを敢行。監督自身がアジア各地で撮影した実景素材と、スタジオセットで構築した幻想的な風景を組み合わせ、「旅行映画」のあり方そのものを問い直すような斬新な手法が用いられた。また、モノクロームの古典映画調と現代のドキュメンタリー風映像を交錯させ、時代や場所の境界をクロスオーバー。過去と現代、現実と幻想、カラーとモノクロが混ざり合い、共鳴しながら織りなす類まれな映画の旅を、あなた自身の目と心で味わってほしい。
公開日: 10月10日(金)
監督: Miguel Gomes
出演: Goncalo Waddington (ゴンサロ・ワディントン)、Crista Alfaiate (クリスティーナ・アルファイアテ)、Claudio da Silva (クラウディオ・ダ・シルバ)
HP: mimosafilms.com/grandtour
『ホーリーカウ』

©2024 – EX NIHILO – FRANCE 3 CINEMA – AUVERGNE RHONE ALPES CINEMA
コンテチーズの故郷として知られるフランスの・ジュラ地方を背景に、不器用な手つきで人生を切り開こうとする青年を描いた青春譚。主人公は、自由気ままな日常を楽しむ18歳のトトンヌ。ある日、チーズ職人だった父親が不慮の事故で亡くなり、現実は一変。7歳の妹の面倒を見ながら生計を立てる方法を見つけなければならない事態が襲いかかる。そんな時、3万ユーロの賞金が出るチーズのコンテストを発見。金メダルを目指し、伝統的な製法で最高のコンテチーズを作ることを決意するのだった。監督は、本作の撮影地であるジュラ地方出身の気鋭監督 Louise Courvoisier (ルイーズ・クルボワジエ)。キャストには地元の演技未経験者を起用し、農場を営む監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加するなど、ユニークな撮影陣で見事本作を作り上げた。ジュラ山地が生み出す壮大な自然の景色をとともに、美しいだけでない農村のリアルな暮らしをフィーチャー。小規模ながらも確かな魅力が光り、本国では約1000万人を動員するなど、サプライズヒットを巻き起こした。青春、挫折、再生といった映画の定石要素が息づきながらも、リアリティと主人公の未熟な情熱が、そっと観る者の心を突き動かしてくれるだろう。
公開日: 10月10日(金)
監督: Louise Courvoisier
出演: Clement Faveau (クレマン・ファボー)、Luna Garret (ルナ・ガレ)、Mathis Bernard (マティス・ベルナール)
HP: alfazbetmovie.com/holycow
『そういうものに、わたしはなりたい。』

監督は、窪塚洋介、松田龍平の W 主演が話題となっている『次元を超える』の公開を10月17日に控えている豊田利晃。過去に手がけ、ライブハウスでの上映のみとなっていた幻の短編を再編集した『そういうものに、わたしはなりたい。』が、渋谷ユーロスペースにて緊急公開される。本作は、ネット社会から離れ、精神的な修行を行うことの豊かさについて問う、新たな生き方の修行映画。作中にて神社で怒り、燃え上がる松明を手に山を登り、滝に打たれ、五体投地をしながら旅をするのは渋川清彦。豊田作品を語るに欠かせない俳優・渋川が、今回も鬼気迫る演技力を余すことなく発揮し、スクリーンを縦横無尽に暴れ回る。そして音楽には切腹ピストルズ、向井秀徳といった豊田との魂の共同体として知られるミュージシャンが集い、映像の躍動感、臨場感をスケールアップ。現代において修行の意味について考えさせる、新たな希望の映画作品が今、スクリーンに放たれる。
公開日: 10月10日(金)
監督: 豊田利晃
出演: 渋川清彦
HP: toyodafilms.net
『ホウセンカ』

©此元和津也/ホウセンカ製作委員会
2021年のオリジナルテレビアニメ「オッドタクシー」のクリエイターである木下麦、此元和津也が再タッグを結成。大逆転に人生をかけた、ある男の愛の物語をアニメーションで表現した。物語の主人公は、無期懲役囚の老人・阿久津。彼が独房で孤独な死を迎えようとしていたときに声をかけたのは、人の言葉を操るホウセンカだった。その会話の中で、阿久津は自身の過去を振り返り始める。そこには、素朴で、破天荒で、愛情に溢れた男の生涯があった。W主演を務めるのは、主人公・阿久津の過去と現在を演じ分ける小林薫と戸塚純貴。共演には満島ひかり、宮崎美子、ピエール瀧といった実力派俳優が名を連ね、個性豊かなキャラクターに魂を吹き込む。さらに、全編を通して音楽を担当したのは、エッジの効いた音の世界で聴く者を虜にするバンド、cero。圧巻の花火とともに象徴的なオープニングテーマが鳴り響き、物語を鮮やかに彩る。アニメーションであることを忘れさせるほどのリアルなドラマが、切なく美しい映画体験へとあなたを導く。
公開日: 10月10日(金)
監督: 木下麦
出演: 小林薫、戸塚純貴、満島ひかり
HP: anime-housenka.com
『ワン・バトル・アフター・アナザー』

©︎2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの世界3大映画祭すべてで監督賞を受賞した名匠 Paul Thomas Anderson (ポール・トーマス・アンダーソン) が放つ、怒涛の逃走劇。ストーリーは、Leonardo DiCaprio (レオナルド・ディカプリオ) が演じる主人公ボブの平穏な生活が一変する大事件からスタート。元革命家の彼は最愛の娘とともに平凡な日々を送っていたが、突然娘が拐われてしまう。犯人は、異常な執着心でボブを追い詰めてきた変態軍人、ロックジョー。次から次へとピンチが襲いかかるボブに謎の助っ人も現れ、戦闘はヒートアップしていく。本作では、主演の Leonardo DiCaprio のみならず、圧倒的な演技力を持つ Sean Penn (ショーン・ペン)、そして現在公開中の Wesley Anderson (ウェス・アンダーソン) 監督最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』では主演を飾った Benicio Del Toro (ベニチオ・デル・トロ) など、豪華スターが集結。個々に強い存在感を放つ彼らが Paul Thomas Anderson の世界に入り込み、単なる逃走劇の枠を超えた人間ドラマを展開する。逃げる者と追う者が入り乱れ、心をかき乱される追走劇をスクリーンで体感してほしい。
公開日: 10月3日(金)
監督: Paul Thomas Anderson
出演: Leonardo DiCaprio、Sean Penn、Benicio Del Toro
HP: onebattlemovie
『アフター・ザ・クエイク』

©︎2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ
原作は、村上春樹の傑作短編連作『神の子どもたちはみな踊る』。今回、刊行から25年経った今も世界中で愛読されている物語の実写映画化が実現した。本作の主演を飾るのは、岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市といった超豪華俳優たち。また物語の鍵を握る「かえるくん」の声をのんが務め、奇妙で美しい物語世界を表現した。そして監督は連続テレビ小説「あまちゃん」、映画『その街のこども』など数々の話題作を手掛けてきた井上剛が務める。プロットは、ギャラクシー賞を受賞したNHK ドラマ「地震のあとで」と共有させたうえ、4つの時代を結ぶ新たなシーンも追加。30年間のなかで4つの時代をクロスオーバーさせた1本の映画が完成した。物語のはじまりは、阪神・淡路大震災以降の1995年。それぞれ異なる主人公を据えながら2011年、2020年、そして我々が生きる2025年へと展開していく。村上春樹の短編らしい要素が随所に散りばめられ、観る者を気づかぬうちに包み込む不可思議な世界を、巧みに映像に落とし込んだ『アフター・ザ・クエイク』。誰もが一度は悩んだことがある不安や孤独に真っ向から向き合い、人とのつながり、目に見えない想像力の大切さを伝える本作は、忙しい日々を送る我々の心に安らかなゆとりをもたらしてくれるかもしれない。
公開日: 10月3日(金)
監督: 井上剛
出演: 岡田将生、鳴海唯、渡辺大知
HP: bitters.co.jp/ATQ
『ジュリーは沈黙したままで』

©︎2024, DE WERELDVREDE
エグゼクティブ・プロデューサーに大坂なおみを迎え、少女の揺れ動く心情を繊細に捉えたドラマ。ベルギーの新鋭 Leonardo Van Dijl (レオナルド・バン・デイル) が長編初監督・脚本を手がけ、スポーツ界で子どもが「小さな大人」として扱われる現実に疑問を投げかけた。主人公は、ベルギーのテニスクラブに所属する15歳のジュリー。彼女はその実力で奨学金を獲得し、いくつもの試合に勝利してきた将来有望のテニスプレーヤーだ。そんなある日、信頼していた担当コーチが指導停止となり、突然姿を消す。そこから彼の教え子だった生徒が過去に自殺した事件をめぐり、不穏な噂が立ち始める。大きなテストを控えるなか、クラブに所属する全選手へのヒアリングが行われることに。日々のルーティンを崩さずトレーニングに打ち込むジュリーは、コーチに関する調査に沈黙を続けるが、彼と最も近しい関係だった彼女には大きな負担がのしかかっていく。主役のジュリー役には、実生活でもテニス選手として活動する Tessa Van den Broeck (テッサ・バン・デン・ブルック) を抜擢。観る者にジュリーの沈黙の行方をそっと委ね、まったく新しい視点で15歳テニスプレーヤーの心に迫り、「静かなる傑作」と世界でも呼び声の高い一作だ。語らずして語っているジュリーの心の声に、そっと耳を傾けてほしい。
公開日: 10月3日(金)
監督: Leonardo Van Dijl (レオナルド・バン・デイル)
出演: Tessa Van den Broeck (テッサ・バン・デン・ブルック)、Claire Bodson (クレール・ボドソン)、Pierre Gervais (ピエール・ジェルベー)
HP: julie_keeps_quiet
『テレビの中に入りたい』

©︎2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
2度のオスカーに輝いた女優 Emma Stone (エマ・ストーン) が設立した制作会社 Fruit Tree (フルーツ・ツリー) と、映画界で最も注目を浴びる映画スタジオのひとつ A24 が共同製作を手がけた本作。1990年代のアメリカで、自分のアイデンティティにもがく若者たちを描いた、切なくも幻想的なメランコリック・スリラー。物語を彩るのは、ティーンエイジャーのオーウェンとマディ。彼らは毎週土曜日22時半に放送される謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」に心酔。番組を生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所としてのめり込み、次第に番組の登場人物と自分たちを重ねていく。しかしある日、マディはオーウェンのもとから突然去ってしまう。残されたオーウェンは自分自身を見つめ、自答していく。自分は一体どんな人間なのだろうか。彼は知りたい気持ちと恐怖のはざまで身動きは取れない。オーウェンは無事、「自分探し」の答えを見つけられるのだろうか。Emma Stone が惚れ込んだという注目の気鋭監督 Jane Schoenbrun (ジェーン・シェーンブルン) が紡ぐ、蠱惑的で特異な吸引力に満ちた本作の世界を、ぜひ体験してみて。
公開日: 9月26日(金)
監督: Jane Schoenbrun
出演: Justice Smith (ジャスティス・スミス)、Jack Haven (ジャック・ヘブン)、Helena Howard (ヘレナ・ハワード)
HP: a24jp.com/tv-hairitai
『宝島』

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会
戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描き切った真藤順丈による傑作小説『宝島』を映画化。監督を務めるのは『るろうに剣心』シリーズで知られ、時代劇からアクション、ミステリーやファンタジーまで、あらゆる表現に挑戦し続ける大友啓史。元「沖縄が沖縄がアメリカだった時代」を真正面から捉え、実際に起きた事件をリアルに表現した。物語が展開される時代は、1952年。当時、米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。彼らが一世一代の襲撃に出た夜、彼らの英雄的存在だったリーダー、オンは予想外の戦果を手に入れ、突然消息を絶つ。オン以外の3人はそれぞれの道を進むが、20年後、ある事件が勃発。オンが持ち出したものを追って米軍さえも動き出す事態の先には、衝撃の真実が待ち受けていた。本作の主演には妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太といった豪華キャストが集結。日本に見捨てられ、アメリカに支配されていた沖縄。混沌とした時代を全力で駆け抜けた若者たちの姿を、圧倒的熱量とスケールで映し出す。
公開日: 9月19日(金)
監督: 大友啓史
出演: 妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝
HP: takarajima-movie.jp
『ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家』

©-MACT PRODUCTIONS-LE SOUS-MARIN PRODUCTIONS-INA-PANTHEON FILM-2024
映画の歴史を変えた音楽家、Michel Legrand (ミシェル・ルグラン) の人生の軌跡と最後の舞台に迫る圧巻のドキュメンタリーが誕生。フランスを代表する作曲家、編曲家、ピアニスト、歌手、指揮者の Michel Legrand は、『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』をはじめとする200本以上の映画音楽を手がけてきた。Jacques Demy (ジャック・ドゥミ) 監督とのコンビで名作を生み、Jean-Luc Godard (ジャン=リュック・ゴダール) などヌーヴェルヴァーグの監督たちから高い評価を獲得。その名声は海を越え、ハリウッドでも成功を収めた。本作では、ルグラン本人と関係者が映画を振り返る形で貴重な作曲の舞台裏を披露。練習に一切妥協しない姿勢、数々の栄光に隠された挫折と苦悩など、これまで明かされてこなかった素顔にも焦点を当てる。75年間の生涯で数々の映画作品に携わり、後世に影響を与え続けるルグランの伝説ともいえる人生を映し出す。
公開日: 9月19日(金)
監督: David Hertzog Dessites (デビッド・ヘルツォーク・デシテス)
出演: Michel Legrand、Agnes Varda (アニエス・ヴァルダ)、Jacques Demy
HP: unpfilm.com/legrand