Interview with Jean-Paul Goude

PORTRAITS | Dec 17, 2018 9:00 PM
銀座のシャネル・ネクサス・ホールで、ジャン=ポール・グードの展覧会「in Goude we trust!」が開催されている(12月25日まで)。90年代初頭より続いてきたシャネルとのコラボレーションの軌跡をはじめ、希代のイメージメーカーが手がけてきた映像やドローイング、写真、そしてインスタレーションなどが並び、訪れた人々を圧倒的な世界へと誘っていく。来日中の彼に、シャネルに対する想いや表現への原動力について訊いた。

銀座のシャネル・ネクサス・ホールで、Jean-Paul Goude (ジャン=ポール・グード) の展覧会「In Goude we trust!」が開催されている(12月25日まで)。90年代初頭より続いてきた CHANEL (シャネル) とのコラボレーションの軌跡をはじめ、希代のイメージメーカーが手がけてきた映像やドローイング、写真、そしてインスタレーションなどが並び、訪れた人々を圧倒的な世界へと誘っていく。来日中の彼に、シャネルに対する想いや表現への原動力について訊いた。

─今回の展示 「In Goude we trust!」 は、構成からすべてあなたが手がけたそうですね。このタイトルもあなたが?

「グード」に「Bon(フランス語でGood)」という意味があるためか、私の名前は昔からよく言葉遊びに使われるんです。ある日、この展示のために新しいネーミングを考えていたときも、シャネルの誰かが1ドル札にある「In God We Trust」の文字に目を留めて「ワオ!これ最高じゃないか!」って盛り上がって。それがそのままタイトルになりました。だから厳密にいえば、私が自分を神に例えたわけでは決してありませんよ(笑)。このような言葉遊びは楽しいものですし、私はセレブリティのフェイクな世界を愛しているので、そんなムードを表現できた秀逸なタイトルだとも思っています。とはいえ、本当に大切なのはイメージ性よりも、私がしてきた仕事そのものです。

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

© Chanel

1/21

─シャネルとお仕事を続けて30年になりますね。ずばり、シャネルというブランドの魅力は?

クラシックとトレンドの絶妙なバランスにはいつも敬服しています。ただ、シャネルの魅力をひとつの物語にまとめることなど到底できないでしょう。シャネルという産業、シャネルという帝国……その全てが私を魅了し続けています。

─Vanessa Paradis (ヴァネッサ・パラディ) が鳥かごの中で歌う「ココ」のCMをはじめ、あなたは Gabrielle Chanel (ガブリエル・シャネル) 本人をたびたび作品のなかに登場させていますね。深いリスペクトを感じますが、彼女についてはどんな印象を持たれていますか?

Gabrielle Chanel のオリジナリティは唯一無二だと思います。それは、本人の生き方だけでなく、彼女の友好関係にも現れています。Jean Cocteau (ジャン・コクトー) のような詩人であったり、Stravinsky (ストラヴィンスキー) のような音楽家であったり……。私はロシアバレエを愛しているのですが、Gabrielle Chanel はバレエ・リュスの創設者 Sergei Diaghilev (セルゲイ・ディアギレフ) を財政的に支援するだけでなく、芸術面でも深くサポートをしていました。彼女は、劇場というものと密に繋がっていた最初のファッションデザイナーだと思います。そこをリスペクトしますし、シンパシーも感じます。彼女が人生において作り上げてきた仕事を見てみると、どれだけ素晴らしい人物であったかがわかりますよ。同時に一筋縄ではいかない人物だったとも思いますが(笑)。

─今回の展示にも、大きな鳥かごのなかに手のひらサイズの Gabrielle Chanel が現れ、私たちに語りかけてくれる立体映像作品がありますね。

彼女は「流行は変化していくものだけれど、スタイルは永遠」など、多くのアフォリズム(格言)が有名ですよね。これはそのアフォリズムを題材にした作品です。楽園にいる彼女にお願いをして、現実世界の私たちを訪ねて来てもらった、という設定なのです。彼女は生前に「死んだら天国で、天使たちに服を作る」と言っていました。だからオープニングでは「私はあちらで、本物の天使が着る服をデザインしているわ」と話してもらっているのです。

─映像や仕草にリアリティがあり、もし現実に妖精が現れたらこんな感じだろうな、という不思議な感覚に包まれました。

設定はユニークですが、面白おかしくしすぎてはシャネルというブランドの威厳が保てないですからね。そのバランスには気をつけました。でも、あの作品もまだ改良の余地があるのですよ。小さな人間があんな大きな声では話さないでしょう?もっとウィスパーボイスで、マイクを持って話したらようやく聞こえるくらいでないと。

Photo by UTSUMI

Photo by UTSUMI

─言われてみれば。そうなるとさらにリアリティが増しますね。

小さなことがすべてを左右しますからね。なんでもディテールが大切です。ともかく、この作品で私は Gabrielle Chanel のアメージングなキャラクターを引き出しました。私の仕事は基本的に、ある人物を見て、その人の個性──美しさやインテリジェンスなど、それは人によって色々ですが──を見つけ、発展させていくことです。そしてその個性を祝福し、周りにアピールしていくのです。見て見て!この人はこんなにすごいよ!あなたもそう思うでしょ?って。

─その人をプロモーションしていくということですね。

ある価値をプロモーションするという行為。これはまさに私が愛していることですし、ファッションとは?という問いへの答えでもあるのではないでしょうか。これはあり、これはなし、これは美しい、これは時代にそぐわないなどとジャッジしていく。私にはその適性があるのですね。また、たとえば映画業界や音楽業界と比較しても、ファッション業界は実に様々な要素を包括していますよね。そして求められる指標は「見た目」なのです。ハードなこともありますが、私にはファッションの世界が肌に合っていると感じています。

─「この人にはこんな一面もあったのか!」と驚いてしまうほど、対象の個性を引き出すのが上手でいらっしゃいますが、何か特殊技術があるのでしょうか?

その人が部屋に入って来た瞬間に、一目見て、恋に落ちるだけです。それはもう、毎回雷が落ちるくらいの衝撃なんです。だからといって、もちろん突然飛びついたりはしませんからご安心を(笑)。技術のようなものはなく、私には自然にそれができてしまうのです!

Fire, CHANEL Fine Jewelry, 2001. In collaboration with Pierrick Sorrin. | © JEAN-PAUL GOUDE

Libertango, Costume design, felt-tip and sticky tape on paper, New York, 1981 | © JEAN-PAUL GOUDE

Slave to the rhythm, cut-up transparency, Paris, 1986 | © JEAN-PAUL GOUDE

1/3

─あなたの作品は壮大で、ファンタスティックです。でも、そこにファンタジーではなくリアリティを感じるのです。これはあなたが持つ対象への情熱や愛情によるものでしょうか。

私の創造するものは、一見中身のない表層的な印象を与えるかもしれません。というのは、何かそこに社会的なメッセージを込めているわけではないからです。私は純粋に美を祝福しているだけ。そこにあるのは祝福するためのアイデアなのです。

アートの祭典などに行くとよく思います。現代アートの作家たちは、人間の苦しみを題材にし、作品として可視化せねばならないという義務感を抱いているのでは?と。それはある意味素晴らしいことですが、作品を平凡に見せる要因になっていないでしょうか。私は崇高な理想を目指すよりも、感じた美を心から表現したいと思うのです。ただ、その美によってもたらされる癒しにはとても興味があります。どちらかというと、改革よりも治癒を担う存在でありたいですね。

─あなたの作品には、多様な人種のモデルや民族的なモチーフが登場しますね。それらのすべてが等しく、大切に扱われているという印象を受けます。

それは私が政治的・社会的な偏見を持っていないからです。純粋に対象の美しさにだけフォーカスしているからそう映るのでしょう。私はとてもラッキーな生い立ちでした。母がアメリカ人のダンサーで、戦時中フランスに生まれながらアメリカの魅力について知ることができたのです。コカコーラ、チューインガム、キャデラック、ロックンロール、そしてリズム&ブルース、ブラックカルチャー……。当時のフランスでは、アフリカ系アメリカ人のジャズ歌手、Josephine Baker (ジョセフィン・ベーカー) が大人気でした。パリにおけるブラックカルチャーは、貧困や暴力ではなく、アメリカを楽しくするパワーの象徴だったのです。彼らの存在がなかったら、今のヨーロッパ音楽なんてどうなっていたことやら。ワルツやポルカみたいなものばっかりだったのではないでしょうか?

こういった美しきパワーを私は愛しているのです。私の作品にはアフリカ系アメリカ人も多く登場します。そこに政治的なメッセージを読み取る人もいるかもしれない。でもそれは誤解です。私は純粋に、そのミステリアスな才能に魅了されているだけなのです。もちろん、私たちが生きている社会には様々な問題が潜んでいます。他の皆と同じように、私だって心を痛めたり、悲しみに暮れることは沢山あります。でも、私は哲学者でもなければ政治家でもない。小さな頃からダンスとドローイングが得意で、ミュージカルの世界を愛している……そんな人間なんですよ。

─ミュージカルもあなたにとって特別なものでしたね。

母は自身のスクールを持つほどのダンサーでしたが、幼少の頃の私はそこまでダンスに魅力を感じていませんでした。だって男の子の趣味としては、ちょっと格好良さに欠けるでしょう?でも、17歳のときでしょうか、私はアートスクールの学生だったのですが、学校の向かいにある映画館で、1930年代から60年代までのミュージカルをリバイバル上映していて。それを観てからというもの「これが私のやりたいことだ!」とすっかりのめり込んでしまったのです。思えば、私はその時からずっと踊り続けているのかもしれません。シャネルのような、すばらしいパートナーたちと一緒に。

Photo by UTSUMI

Photo by UTSUMI

<プロフィール>
Jean-Paul Goude(ジャン=ポール・グード)
1940年フランス生まれ。60年代初頭にイラストレーターとしてパリで活動を開始。70年代にはアメリカで雑誌「Esquire」のアーティスティックディレクターに就任した。写真、ダンス、映像、グラフィックデザインなど多分野にわたって活躍し、80年代に創り出したグレイス・ジョーンズのイメージにキャリア初期の成果を結実させた。82年に初の作品集「Jungle Fever」を刊行。89年には、フランス革命200周年記念パレードの芸術監督を務めた。主な個展に、2012年パリ装飾芸術美術館での回顧展「グードマリオン」、2016年ミラノの現代アートパビリオンでの「So Far So Goude」。日本では2014年に21_21 DESIGN SIGHTで開かれたグループ展「イメージメーカー展」に参加しているほか、2018年4月にKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2018にて日本初の回顧展を開催している。

展覧会情報
展覧会名 “In Goude we trust! “
an exhibition by Jean-Paul Goude
会期 2018年11月28日(水)~12月25日(火) ※年中無休
会場 シャネル・ネクサス・ホール
住所 中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
時間 12:00~19:30
入場料 無料
HP chanelnexushall.jp
Related Articles

Connect with The Fashion Post