今週のTFP的おすすめ映画
TFP的
おすすめ展覧会
「今、観るべき」「今からでも観れる」映画を月替わりでご紹介。東京都心で公開中の映画を中心に、
The Fashion Post (ザ・ファッションポスト) 編集部おすすめの作品を、大型シネコンからミニシアターまでセレクト (毎週火曜更新)。
8/2025
「上田義彦 いつも世界は遠く、」

1957年、兵庫県生まれの写真家・上田義彦。都市、自然の風景、ポートレイト、広告写真など幅広い分野で活躍し、国内外で高い評価を得てきた。瞬間を捉える感性と卓越した技術で、時代とともに変容する作風でありながら一貫して普遍的な美が作品に込められている。公立美術館において、約20年ぶりの個展となる本展では、代表作から未発表の初期作品、最新作まで自ら現像とプリントを手掛けた約500点を通じ、40年の軌跡を辿ることができる。これまで展示の機会の少なかった映像作品、チベットの人々を記録した最新作は特に見どころ。上田のすべてが紡がれた大回顧展。二度とないこのチャンスにぜひ足を運んでほしい。
会場: 神奈川県立近代美術館 葉山
住所: 神奈川県三浦郡葉山町一色 2208-1
会期: 7月19日(土)~11月3日(月)
時間: 9:30-17:00
休館日: 月
HP: www.moma.pref.kanagawa.jp
「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」

1958年ポルトガル生まれの鬼才 Pedro Costa (ペドロ・コスタ) 映画監督。日本のスクリーンに幾度も登場した彼の映像作品の魅力は、静寂な夜のシーンや、暗闇と明暗の強いコントラスト、そしてアフリカの移民たちの過酷な日々にフォーカスし、社会構造に鋭く切り込んでいるところにある。総合開館30周年の記念展となる「インナーヴィジョンズ」は、東京では初めての美術館での個展であると同時に、日本最大規模となるエキシビジョンである。本展は、同氏が10代の頃に出会い深い影響を受けた、ミュージシャン Stevie Wonder (スティービィー・ワンダー) のアルバム『Innervisions (インナービジョンズ)』(73年) と同名のタイトルがつけられた。音楽を通じて、社会と個人の関係に迫ったこのアルバムの美学は、Pedro Costa の映像制作のアプローチとも深く響き合っている。今回展示されるのは、ポルトガルで暮らすアフリカ系移民の歴史を照らし出した『Horse Money (ホースマネー)』(14年) など、同氏の作品において重要な役割を担う、移民労働者 Ventura (ヴェントゥーラ) をはじめとする登場人物や、彼らが生きる場所に関わる映像作品に加え、東京都写真美術館が所持するコレクションが公開される。Pedro Costa の映像表現とその背景に介在する歴史的・社会的問題に触れることで本タイトルについて考えを深める機会となる。この特別な展覧会では、映画が持つ力と同氏の世界観の奥行きを新たな角度から楽しむことができるはず。
会場: 東京都写真美術館
住所: 東京都目黒区三田1-13-3
会期: 8月28日(木)~12月7日(日)
時間: 10:00-18:00 *木・金 20:00まで、8月28日(木)~9月26日(金)の木、金は21:00まで
休館日: 月 *月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館
HP: topmuseum.jp
Yuta Okuda「Blooming with Gratitude」

ファッションブランドでデザイナーとして活動したのち、2016年にアーティストとしての道を歩み始めた奥田雄太。以降、国内で個展やグループ展に精力的に参加し、製作と発表を続け、キャリアを築いている。奥田にとって過去最大規模となる本展では、作家がコロナ禍を通して再認識した日常の「当たり前」を感謝の形に表現した約400点以上もの絵画が並ぶ。家族と過ごす時間、健康に生きていけること、誰かとのささやかな会話といった「当たり前」の日々。そうしたささやかな瞬間に目を向け、「with gratitude (感謝を込めて)」というテーマで描き上げられた。アイコニックなシリーズである「一輪」では、365日のさまざまな感謝の形が花として昇華されており、会場一面に咲き誇る。彼が描く、色鮮やかな365輪は、鑑賞者の心を明るく照らし、ポジティブな力を与えてくれる。
場所: PARCO MUSEUM TOKYO
住所: 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 4F
会期: 8月23日(土)~9月7日(日)
時間: 11:00-21:00
HP: shibuya.parco.jp
「遮光1 IRUBOOKS × 保科良介」

2018年より守本勝英に師事し、2022年よりフリーランスのフォトグラファーとして活動する保科良介。ファッション誌や、ブランドルック、アーティスト写真など、多方面で活動している。本展は、アートディレクター・永戸鉄也とともに創刊した ZINE 「遮光1」のローンチを記念して行われるもの。永戸の新プロジェクトである「IRUBOOKS (イルブックス)」の第2弾となるこのシリーズで掲載されるのは、保科が都市を散策し、撮影したどこにでもある普通の路地や人々。しかし、彼が映し出す写真は、美しく、どこかユーモラスな、芸術作品のような魅力を持つ。街に溶け込みながら、静かに瞬間を切り取る保科の姿は、作品群に触れることで、目に浮かび上がるだろう。本展を通して、ぜひカメラ片手に街を探索する楽しさを味わってほしい。
会場: 初台 Open Room
住所: 東京都渋谷区初台1-39-12 初台富士ハイライズ1F
会期: 8月28日(木)~8月30日(土)
時間: 11:00-19:00
HP: info.openroom.shop
「開館30周年記念展 日常のコレオ」

ジョナタス・デ・アンドラーデ《Jogos Dirigidos (Directed Games)》2019 年
東京都現代美術館の開館30周年を祝し、開催されるエキシビション「日常のコレオ」。本展は、アーティスト、鑑賞者とともに、現代美術を通してこれからの社会を多角的に思考するプラットフォームの構築を目指し、作品展示に加え、鑑賞者参加型のパフォーマンスやワークショップも展開する。国内外で活動する幅広い世代のアーティスト約30名が集う。展覧会では、様々な都市における人々の営みや身振りに目を向け、それを生み出す創造性やユーモアについて考えを膨らませた。そして、日常に内在し、互いに絡み合う文化的、政治的、経済的諸力の関係を掘り下げながら、社会構造に組み込まれ不可視化された暴力や抑圧を作品群に浮かび上がらせている。タイトルに含まれる「コレオ=コレオグラフィー (振付)」は、社会のルールや規範にただ従うだけでなく、そうした統制に対する批判的な考えを通して、日常を振り返り、新たな場や生き方を創造するアプローチを指している。本展は、アーティストと鑑賞者が、視点を共有しながら、それぞれの「日常」の域を問い直す契機を創出する場となる。忙しない日常の中で、社会に流されてしまいそうになる現代人。彼らの作品群は、そんな目まぐるしい社会について再考する機会を提示してくれるはず。
場所: 東京都現代美術館
住所: 東京都江東区三好4丁目1−1
会期: 8月23日(土)~11月24日(月)*8・9月の毎金曜日は21:00まで
時間: 10:00-18:00
休館日: 月(祝日の場合は翌平日)
HP: www.mot-art-museum.jp
「Polylog」

©2025 Polylog/Vacant
「POLYLOG (ポリローグ)」とは、東京・代々木上原を拠点とするクリエイティブ・プラクティスの Vacant (ヴァカント) が提案する「文化的対話」の場である。人それぞれが持つ多層的な文化体験を、他者との対話を通じて再発見し、自らの文化との関係を深めていくことを目的として活動している。本展は、2025年10月に刊行予定の『Vacant/Edition #2 ”Polylog” Issue』に先駆けて、本書内で Vacant のディレクションを行う永井祐介と会話を交わした6名のアーティストによるグループ展だ。登場するのは、韓国・ソウル出身のアーティスト Hyoweon Baek (ベック・ヒョワン)、スウェーデン出身のアーティスト Jon Koko (ヨン・ココ)、北海道・札幌生まれのフォトグラファー牧口英樹、京都府出身で陶芸作家として活躍する明主航、東京都出身の左官である大橋和彰、静岡出身のフォトグラファー佐内正史など、以前 Vacant/Centre (ヴァカント/センター) にて展覧会を開催した経験を持つ作家たち。Vacant/Centre では、見る者が参加アーティストとのコミュニケーションを重ね、展示がどのように構想され、現れていったのかというプロセスを辿りながら、作品を鑑賞できる。多様なアーティストと対話することのできる本展は、新しい文化を発見するきっかけをもたらしてくれるはず。
場所: Vacant/Centre
住所: 東京都渋谷区神宮前3-20-13
会期: 8月22日(金)~9月22日(月)
時間: 13:00-18:00
休廊日: 火、水、木
HP: www.vacant.vc
永田拓也「ささやかなものたち」

ポートレートやファッションを中心とした活動の傍ら、ZINE の定期的な発行など、パーソナルワークを通じて静かな眼差しで写真表現を追求してきた永田拓也。「今までの写真はどこか高姿勢だった」と自身の写真活動を見直したことが、初の単独写真展「ささやかなものたち」を開催するきっかけとなったという。新作品が一堂に会する本展のテーマは、日常にひそむ穏やかなひととき。これまでレンズを向けてこなかった、日常や新しい家族とのささやかな時間の断片を展示する。さらに、過去作品を再構成した展示を実施しており、新旧作品を一堂に会する貴重な機会となる。日常の中の気づきや愛おしさが反映された本展にて、永田の新境地を目の当たりにしてみて。
場所: see you gallery
住所: 東京都渋谷区広尾1-15-7 2F
会期: 8月21日(木)~9月7日(日)
時間: 12:00-20:00
HP: seeyougallery.com
水谷太郎 「12000」

水谷太郎は、圧倒的な美意識とコンセプチュアルな視点を持つフォトグラファー。今回の個展で、水谷がフォーカスしたのは、「光」。人類が光を扱い始めてから12000年目の現在で、本来の「光とは何なのか」という根源的な問いを起点に、今回の展示が構想された。展示される写真群が浮かび上がらせるのは、光を放つ者が彷徨う様子。そしてそれらの作品は、身近に溢れ進化とともに消費されていく光の価値観、向き合い方について鑑賞者に問いかける。「12000」の会場中央に鎮座するのは、大型のマップケース。写真作品に加え、制作時に収集されたオブジェなどが収められたインスタレーションに加え、周辺には現代の光を象徴する液晶モニターが設置され、光を増幅させる映像作品が放たれる。また、本展を構成する要素の1つである本を読むことで、本作全体を体験することができる仕掛けには、特に注目したい。スマートフォンやデジタルメディアに囲まれた現代において、視覚情報の源である「光」の意味を見つめ直し、纏うこと、映すこと、見ることの本質を多層的に再考する本展「12000」。ぜひ会場に足を運んで、時代とともに変容してきた「光」について考えを膨らませてほしい。
場所: (Tentative)
住所: 東京都港区南青山3-2-9 真壁マンション1F
会期: 8月16日(土)~8月31日(日)
時間: 13:00-19:00
HP: www.instagram.com/tentative_research
キム・ボスケ「Kamiya」

オランダ・ヒルフェルスム出身の芸術家 Kim boske (キム・ボスケ)。時間や空間、そして自然との関係性をテーマに、写真と映像により人と風景のつながりを詩的に表現する作品は、国際的に高い評価を獲得している。本展は、Kim boske が徳島県・神山町を2018年から7年にわたり訪れ、制作した作品集『Kamiyama (カミヤマ)』の刊行を記念して開催される。時間を費やし、神山と関係を築いたプロセスを反映させた今回の個展。展示される作品群は、自然環境が主題となっており、町の風景そのものが作品の内部に染み込み、刻まれている。また、同プロジェクトの魅力的なポイントは、「重なり」という構造である。風景を、断片や透明層、リズムとして立ち現わせる手法を採用しており、流動的かつ多層的な作品を仕上げた。本展は、徳島県にてスタートしており、東京・POST (ポスト)、オランダを巡回する予定だ。神山という町で彼女が感じ、形にした、地域の人々との深い繋がりや自然のあり方。そして、静けさの中に垣間見える、神山という町や人々のあたたかな想いにぜひ触れてみてほしい。
場所: POST
住所: 東京都渋谷区恵比寿南2-10-3-1F
会期: 8月15日(金)~9月7日(日)
時間: 11:00-19:00
休廊日:月
HP: post-books.info
坂本龍一 + YCAM「Forest Symphony」

©山中慎太郎 (Qsyum!)
音楽家・アーティストの坂本龍一と山口情報芸術センター [YCAM] が手掛けるサウンドインスタレーション作品「Forest Symphony (フォレスト・シンフォニー)」。東日本大震災以降、坂本が構想していた本展は、樹木が発する微弱な生体電位をもとに生成した音を用いたプロジェクトだ。YCAM InterLab は、生体電位や周囲の環境 (温度・湿度・照度・気圧) を計測するデバイスを開発し、世界各地の樹木に設置。会期中、そのデータがインターネットを通じて会場に送られ、坂本のディレクションによるアルゴリズムで音楽へ変換される。環境情報を映像化したビジュアルも加わり、季節や天候に応じて変化する「森のような空間」が出現する。会場は「雪舟庭」で知られる常栄寺。自然や名跡の新たな魅力を感じられる場となるだろう。
場所: 常栄寺
住所: 山口県山口市宮野下2001-1
会期: 8月8日(金)~11月30日(日)
時間: 10:00-16:30
HP: www.ycam.jp
scopic measure #17 : マヤ・エリン・マスダ「Ecologies of Closeness 痛みが他者でなくなるとき」

《Pour Your Body Out》(2023年)京都芸術センター
撮影:Takuya Matsumi
ベルリンを拠点に活動する、気鋭アーティストのマヤ・エリン・マスダ。映像や液体を用いた作品を通して、人間中心の社会が自然や動植物に与えてきた影響を再考し、「クィア・エコロジー」という視点から、国家が生命や出生を管理する「生政治」とテクロノジーの関係を探求し続けている。本展では、放射線による皮膚の変容や、汚染に晒された動物や土地に起こる変化にまつわるリサーチをもとに制作した新作を主軸に展示。その他、チェルノブイリや福島での原発事故や核にまつわる問題に着目したインスタレーション作品「Pour Your Body Out (ポア ユア ボディ アウト)」(23-25年) も展示される。これらの作品は、目に見えにくい「毒性」とともに生きざるを得ない現実を浮かび上がらせ、人間とその影響を受ける存在との奇妙で親密な関係性を描き出す。「クィア・エコロジー」の視点から出発した、美しさとグロテスクが交錯する複層的な空間に、ぜひ足を運んでみて。
場所: 山口情報芸術センター [YCAM] スタジオB
住所: 山口県山口市中園町7-7
会期: 7月5日(土)~11月2日(日)
時間: 10:00-19:00
HP: www.ycam.jp
イチ・タシロ、ミン・ラン・トン、ローズ・サレーヌ「Fault Lines」

ニューヨークやパリ、香港などで展示を行い、国際的に活躍する Ichi Tashiro (イチ・タシロ) 。同アーティストは、実験的な素材や重層化、加算・減算による相互作用を特徴とし、コラージュ技法に彫刻、スカルプティングといった手法を組み合わせた作品を制作し、本展ではアーティスト兼キュレーターを務める。また、絵画、書、パフォーマンスを用いて作品を制作する香港出身の Minh Lan Tran (ミン・ラン・トラン)、個人やオークション、団体が所有していたコレクション「ダイナミック・セット」の蓄積をインスタレーション作品に昇華するアーティスト Rose Salane (ローズ・サレーヌ) も参加する。3名のアーティストは、「断層線」を意味するタイトル「Fault Lines (フォルト・ラインズ)」をテーマに、身体、記憶、テクノロジーといったシステムが破綻したときに、どのような歴史や物語が浮かび上がるのかを探求した。彼らにより砕かれ、そして崩された表層から露わになるものとは。その思索に、ぜひ踏み込んでみてほしい。
場所: Gallery Common
住所: 東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F
会期: 8月8日(金)~9月7日(日)
休廊日: 月、火
時間: 12:00-19:00
HP: www.gallerycommon.com
「浅間国際フォトフェスティバル2025」

世界中から注目を集める日本最大規模の写真の祭典、浅間国際フェスティバル。本展は、町おこしの一環として設立された複合施設 MMoP (モップ) を活かし、長野県・浅間山麓の地域を舞台に2018年よりスタートした、写真文化を発信する国際的なアートフォトの祭典だ。作品の展示だけでなく、ワークショップや写真教室など、写真の楽しさを提案してくれる体験型のイベントや、長野らしいフードやクラフトなどを堪能できるマルシェイベントなども実施。フェスティバルならではの大型展示、広大な敷地を活かしたユニークな展示手法を五感で楽しめる場になっている。今年のテーマは、「UNSEEN WORLDS まだ見ぬ世界へ」。本展では、このテーマに基づきグローバルなアーティストが個性豊かな作品を展示する。ラインナップするそれらのアートフォトは、「まだ見ぬ世界」への扉を開き、見る者の世界観、価値観を問い直すきっかけを与えてくれる。町を巡りながら五感でアートを楽しむ、新たな回遊体験を楽しんでみて。
場所: MMoP
住所: 長野県北佐久郡御代田大字馬瀬口1794-1
会期: 8月2日(火)~9月30日(火)
時間: 10:00-17:00*最終入場 16:30
入場料: 入場無料*屋内展示鑑賞チケット 1,200円 (会期中何度でも使用可、中学生以下無料)
HP: asamaphotofes.jp
Pulse of Slience「したたりとひたたり ー”Drip and Dwell”」

Pulse of Slience (パルス・オブ・サイレンス) は、京都・両足院の禅僧である伊藤東凌を軸に、アーティストの山田晋也と京都のアンティークショップ Antiques & Art Masa (アンティーク&アートマサ) が2021年より展開してきた現代アートプロジェクト。京都の禅寺や神社、日本の歴史が息づく空間を舞台に、絵画、インスタレーション、パフォーマンス、茶道などを通して、日本の伝統に根ざした「静寂の中の脈動」を現代の感覚で再構築してきた。10回目となる本展のテーマは、「したたりとひたたり」。今回は、京都・両足院にて静寂の美を体感することができる特別なインスタレーション作品が展示される。ひとつの出来事がぽたりと落ちる「滴り」は静かな水面に波紋を起こし、やがて見えない未来に広がっていく。一方で「浸り」は、その出来事が心の奥に染み込み、意識や感覚を変容させていく過程を表現する。この2つの動きに耳を澄ましてみると、日常にひそむ、見過ごしていた小さな現象の本当の姿がふと立ち現われてくるだろう。風情あふれる夏の京都にて、生の静けさを体感してみて。
場所: 両足院 (健仁寺山内)
住所: 京都府京都市東山区小松町591
会期: 8月2日(土)~8月11日(月)
時間: 17:30~20:30*受付終了20:00
HP: ryosokuin.com
濵本奏「ー・・」

2000年生まれ、東京と鎌倉を拠点に活動する写真家・濵本奏。壊れたカメラを用い、廃材や拾った物にイメージを出力するなど、写真を軸にしながら、映像などさまざまな手法へと自在に展開している。そんな彼女により昨年、横須賀市で実施された個展「ー・・(チョー・タン・タン)」が、写真集の刊行を記念して再び展示される。今回の作品の着想は、海底の特攻隊「伏龍」の隊員であった少年たちの手記から得られたという。ある夏、濵本奏はその手記を手掛かりに海を歩くと、彼らの視線と自分の視線が交わるように感じたという。彼らが見たかもしれない景色はどこなのか、過去から現在まで反響し続けて聞こえてくるかもしれない音に耳を澄ませながら撮影とフィールドレコーディングを行った。彼らが手綱を引いて、海底から海面へ送ったモールス信号を受け取り、現在から応答することを試みた本展。「ー・・」にて展示するのは、そんな彼らの手記をコンセプトにした写真と音のインスタレーション作品。濵本奏が、浮かび上がらせる夏の横須賀の物語を、写真集と併せて堪能してほしい。
場所: 横浜市民ギャラリー
住所: 神奈川県横浜市西区宮崎町26番地1
会期: 8月5日(火)~8月11日(月)
時間: 10:00-18:00 *最終日は15:00まで
HP: ycag.yafjp.org/
金川晋吾「祈り/長崎」

写真家・金川晋吾による個展「祈り/長崎」では、原爆の爆心地に近い「浦上」や、平和祈念像が鎮座する長崎・平和公園周辺が撮影の主な舞台。自身のセルフポートレートと土地の風景を交えながら、「祈り」や「信仰」といった目に見えない抽象的な感情や営みに、写真を通じて形を与えようとする試みだ。会場では、書肆九十九より刊行された写真集『祈り/長崎』も販売。収録されたエッセイでは、平和祈念像の過剰な筋肉表現に対して「自分自身を重ねる」と語るなど、信仰をめぐる逡巡や身体感覚を通したまなざしが静かに綴られている。「信じたいと思うこと」と「信じられないという感覚」が共存する、その揺らぎ自体が、作家にとっての「祈り」なのかもしれない。静けさの中に確かな重みを宿す本展は、祈ること・撮ること・見ること、その三者が交わる一点を、静かに見つめさせてくれる。
場所: flotsam books から全国各地
住所: 東京都杉並区和泉1-10-7
会期: 2025年8月1日(金)〜8月15日(金)
時間: 14:00~20:00
休業日: 水
HP: www.flotsambooks.com
永戸鉄也「RAREMETAL」

アートディレクター・永戸鉄也は、コラージュ、写真、映像作品を制作し、個展やグループ展を通して継続的に作品を発表している。彼はこれまでに、印刷物やデジタルデータのコラージュに留まらず、立体的な物質どうし、あるいは異なるグループに属する人々を組み合わせるなど、コラージュの可能性を押し広げるような作品、プロジェクトを手掛けてきた。地殻中の存在量が少ない非鉄金属を意味する、レアメタルをテーマにするこのプロジェクトは、アパレル、作品、テキスト、印刷物の境を曖昧にし混在させるという、永戸らしい新たな実験的制作活動である。本展にて展開されるのは、百貨店という場をモチーフに創出された生活に寄り添った家具や雑貨の作品。また、永戸作品のアーカイブから厳選したグラフィックをアパレルアイテムに落とし込んだコレクションも展示販売される。アパレルアイテムに昇華された永戸作品を、ぜひ楽しんでみて。
場所: 伊勢丹新宿 メンズ館1階 プロモーション
住所: 東京都新宿区新宿3-14-1
会期: 8月6日(水)~9月30日(火)
時間: 10:00-20:00
HP: www.mistore.jp