加瀬亮が着るルメール。ジョゼフ・ヨアクムの世界〈前編〉
lemaire
with ryo kase
model: ryo kase
photographer: ittetsu matsuoka
hair & make up: aiko tokashiki
edit & text: manaha hosoda
生い立ちから晩年の経歴まで、その多くが謎に包まれているネイティブアメリカンのフォークアーティスト、Joseph Yoakum (ジョゼフ・ヨアクム)。独学で絵を始め、世界各地へ渡った旅先で描かれた風景画は、実在する世界をなぞりながらも、作家の心象風景ともとれるような詩的な情景が浮かび上がる。LEMAIRE (ルメール) は今シーズン、Joseph Yoakum の作品を、シルクとコットンの軽やかなシリーズに落とし込んだ。東京・表参道では、「INSCAPE」というタイトルのもと同氏の作品が一堂に会する展覧会も開催中(~4/3)。
少しずつ日が長くなり、冬の終わりを感じるある日の午後、設営前の会場に足を踏み入れたのは俳優の加瀬亮。LEMAIRE とも親交が深く、2020年にはランウェイとルックブックに登場して話題を集めた同氏は、アートにも造詣が深い。私物で持っていたという Joseph Yoakum の画集を片手に、LEMAIRE の服に袖を通して作品に改めて向き合った。
加瀬亮が着るルメール。ジョゼフ・ヨアクムの世界〈前編〉
北欧の最高峰とされるスカンディナヴィア山脈のガルフピッゲンと、その麓にたおやかに流れる川と、青々と広がる木々……LEMAIRE がシャツにプリントした「GOLDHOPIGGAN OF HARDANGENVIDDO GLACIER NEAR DOMBAS NORWAY N.E.E.」に代表されるように、ボールペンや色鉛筆、パステルを用いて、柔らかな色彩で描かれる幻想的で豊かな自然。サーカス団の一員として過ごした幼少期、第一次世界大戦では兵士としてフランスへ渡るなど、その激動の人生からは想像できないほど、Joseph Yoakum の世界は穏やかで、やさしい。これからの季節にさらりと羽織りたいドライシルク製のシャツに描かれたノルウェイの雄大な景観に想いを馳せながら。会場から望むことのできる日常的な東京の風景とのコントラストが、不思議と心地いい。