souta fukushi & marika matsumoto

自らの選択が自分をつくる。福士蒼汰と松本まりか、葛藤を持った二人の行方〈後編〉

悠然とした様子で、リードするように半歩先を歩く福士蒼汰。無精髭を生やした野生的な一面を持ちながらも、父性に近い安心感がある人だ。その隣には、可憐という言葉がよく似合い、無防備な笑顔を向ける松本まりか。撮影が始まると覚悟ある目つきへと変わり、その緩急にはっとさせられる。映画『湖の女たち』では、福士演じる刑事・濱中圭介と、松本演じる介護士・豊田佳代は、大きなきっかけもなく自然と惹かれあっていく。そこには、個々で抱える葛藤の行き場を探していたふたりを受け入れ、静観している湖があった。

souta fukushi & marika matsumoto

model: sota fukushi & marika matsumoto
photography: michi nakano
styling: toshihiro oku (sota) & mana kogiso (marika)
hair & make up: asako satori (sota) & taisei kuwano (marika)
text: rei sakai
edit: manaha hosoda

ブルゾン ¥132,000/STUDIO NICHOLSON (スタジオ ニコルソン)、デニムジャケット ¥52,800、シャツ ¥92,400、パンツ ¥41,800/AURALEE (オーラリー)、シューズ *スタイリスト私物

ドレス ¥330,000/HAENGNAE (ヘンネ)、ピアス¥27,500、(右手・人差し指)リング ¥36,300/以上 BAUGO HEIAN (バウゴヘイアン)、(左手・中指)リング ¥18,700/liquid (リキッド)、インナー *スタイリスト私物

—本作で、圭介と佳代の関係が自然と深まった背景には、何か強烈な直感もあったように思います。おふたりは最初に会った時、どのような印象を抱きましたか?

福士:今回現場で言葉を交わすことをあえてしなかったので、こういうお話をするのは今日が初めてなんです。だからこそ言葉を選びますが……、猫のような一面がある方だなと感じました。

松本:(爆笑)。なるほど、それで?(笑)

福士:人がすごく好きだし、人と触れ合いたいと思っていて、自分が触れたいときに触れるけど、相手にぐっと来られたらちょっと引くというか。一見自分のペースを大事にされているかと思いきや、人のこともちゃんと見ている。そんなところが猫のようだなと…(松本の方を見る)

松本:(笑)。

福士:と思ったり、思わなかったり(笑)。

松本:思わなかったりね(笑)。私は本当に圭介として見ていたので、今日初めましてのような感じです。素の部分は正直わからなかった。圭介みたいな人だなって(笑)。

福士:語弊があります(笑)。

松本:語弊あるか(笑)。でも悪い意味ではなくて、魅力という意味で。普段はもうちょっと軽やかなイメージかなあと思っていたので。

福士:本当はもっと軽やかなんです!(笑)

松本:なんだけど、男っぽいなと思って。圭介としてはすごく支配的で危険な香りがしていて、とても魅力的でした。撮影中に「福士くん」「圭介」という言葉が聞こえると、私としては拒絶反応がすごくて、本当に怖かったんですよ。だからあまり一緒にいたくないというか、近づきたくないって思っていましたね。 でも、怖さだけじゃなくて魅力も持ってくださっていたから、どんなに嫌な感じであろうと信頼できました。魅力の部分がない人もいるので。これからは福士くんの男っぽい部分もぜひ打ち出してほしいですね。

福士:確かに今作は僕にとって貴重な時間でした。

—本作では、タイトルにもある湖が印象的に描かれていました。さまざまな個人の葛藤や、社会的な事件も引っくるめてすべてを受け止め、変わらずそこにいる。お二人にとって、湖のような場所や人はいますか?

松本:この映画に出てくる湖は、何も答えてくれないんですよね。ただそこにいる。だから結局自分で答えを見つけなきゃいけないし、見出さなくちゃいけない。でもそれは普段の生活でもそうで、結局誰かに相談をしても、最後は自分次第なんです。なので自分の中に湖があるような感じだし、すべての人が湖であるというか。依存できないものなんですよね、湖って。たとえ依存しても動かないですから。

—自分の中に湖があっても、見て見ぬふりをして、カオスのまま何となく誤魔化すこともできますよね。松本さんは、誤魔化さずに等身大の自分を真摯に受け入れ、向き合われているのでしょうか?

松本:カオスのまま誤魔化してしまう時もあるんですけど、結局それでも還ってきますからね、自分に。積み上がったカオスに、その都度向き合って内省していかないとためにならないということは、人生経験の中で学びました。1個1個、片付けていくしかないんですよね。

—自分で選んだことは、良くも悪くも、すべて映し鏡のように還ってきますね。

福士:映し鏡といえば、僕は人が好きで、自分がなりたい人と一緒にいるようにしています。

松本:一緒〜!!環境を整えるの、大事!

福士:一番近くにいる5人が自分の映し鏡だとよく言われるんです。だから、どんな人になりたいかとか、どんな人と一緒にいたら楽しいかっていうのをちゃんと自分で見つめていかないと、自分に跳ね返ってくる。逆に言えば、なりたい自分になっていけるっていうことですよね。 僕は上昇志向がある人とか、格闘技とか運動のプロフェッショナルの人たちに会ったりしています。自分のモチベーションも上がるし、同じ目線でいれるように頑張ろうと自分を鼓舞できます。

松本:あるね。自分のなりたい人もそうだし、心の美しい人、清潔な人が大事。本当に自分が尊敬する人とだけ一緒にいるようにしています。そうしていくと、勝手に頑張らせてくれるからすごく自然体で入れる。ちょっと背伸びした自分でいれるので、ずっと成長し続けられる。

福士:そうなんです!

松本:初めて盛り上がったね(笑)。