一生に一度の大きな変化のなかにいる。杏が出会う新鮮な夏
春から夏へと季節が移り変わっていく東京で、杏が身につけたのは Stella McCartney (ステラ マッカートニー) の涼やかなセットアップ。ほどよい光沢感でかっちりと決まるシルエットのなかに、柔らかさと美しいドレープが同居するさまは、彼女自身がまとう空気感ともマッチする。
生地には木をもとにした再生繊維・ビスコースが採用されており、森林や環境への配慮も魅力のひとつ。Stella McCartney がサヴィルロウで積んだ経験を彷彿とさせるブレザーとワイドパンツは一見シンプルでありながら、新鮮なディテールがいくつも隠されている。
「東京で生まれて東京で仕事をしてきた私にとって、生まれた街を離れるという経験は今が初めて。そういう大きな変化を、一生に一度は経験してみたかったんです。できることもできないこともあるけれど、自分には変化そのものが興味深いことだから」。8年ぶりとなる主演映画『かくしごと』が間もなく公開される杏は、フランスにもうひとつの拠点を持ち、生き生きと日々を過ごしている。これから訪れる新しい季節への期待感とともに、変わりゆく彼女の今を目に焼きつけておきたい。
anne
model: anne
photography: masayuki ichinose
styling: chiaki furuta
hair & make up: akemi nakano
text: mayu sakazaki
edit: manaha hosoda
6月7日公開の映画『かくしごと』で杏が演じたのは、ある事故をきっかけに記憶をなくしてしまった少年・拓未と出会う女性・千紗子。拓未の身体に虐待の痕があることに気づいた彼女は、「あなたは、私の子どもなの」と、許されないとわかっていながらもひとつの嘘をつく。絶縁状態だった父親・孝蔵が認知症になったことをきっかけに、田舎に戻って同居をはじめていた千紗子は「疑似親子」となった3人での暮らしのなかで、少しずつ喪失を取り戻し、新たな家族関係を築いていく。けれど、嘘のうえに成り立った幸せは長く続かなかった─。過去に傷を持つ人たちが「正しさ」に翻弄されながら家族の在り方を再構築していく、今の時代や社会を色濃く反映したヒューマン・ミステリー。