mame kurogouchi

マメ クロゴウチと TSUCHIYA KABAN が提案する、長く愛されるレザーアクセサリーのかたち

Mame Kurogouchi (マメ クロゴウチ) がブランド初となるレザーアクセサリーコレクションを TSUCHIYA KABAN (ツチヤカバン)とのコラボレーションで発表する。1965年に創業した土屋鞄製造所は、その35年後に大人向けのバッグや財布、小物の製造をはじめるまでは、ランドセル一筋で小学生の健やかな成長を支えてきた老舗鞄メーカーだ。一方、Mame Kurogouchi は、ブランド設立当初から日本におけるものづくりを徹底し、企業や職人との協業を通して数々の象徴的なプロダクトを生み出してきた。

今、なぜ両者が手を組み、新たなレザーグッズを発表するに至ったのか。Mame Kurogouchi のデザイナー・黒河内真衣子と、土屋鞄製造所の工房を巡りながら、コラボレーションが生まれた背景を紐解いていく。

mame kurogouchi
with tsuchiya kaban

photography: Takuroh Toyama
text: Runa Anzai

土屋鞄製造所の工房では、朝8時半からラジオ体操を行い、体を温めてから仕事に取り掛かるという。レザーの裁断やランドセルを組み立てる作業は、想像以上に全身を使う。

「レザーのアイテムは今までにも何度か制作したことがありましたが、またいつか挑戦してみたいという気持ちがありました。同時に、コード刺繍やPVCといった素材でバッグを作ってきたブランドが、なぜ今レザーグッズを作るのか、という点では自問自答もありました。さらに、昨今の情勢や材料の確保の問題で自社で作ることの難しさも感じていました」

そう話す黒河内は、協業できる企業を模索する中で、ランドセルを通して、日本の小学生の生活を支え、その技術を連綿と継承してきた土屋鞄製造所の企業姿勢に感銘を受けたという。

Mame Kurogouchi のプロダクトは、日本におけるものづくりとその背景にある技術、歴史への深い理解、そして何よりも鍛錬を重ねた手仕事でプロダクトを作り上げる職人技術なしでは語れない。そんなブランドが手掛ける初のレザーコレクションのコラボレーション相手に、丁寧な日本のものづくりを世界に届けることを理念に掲げる TSUCHIYA KABAN が選ばれたのは自然な流れだったのだろう。

両者のコラボレーションは、構想からわずか4ヶ月というスピードで、9型のレザーグッズとして形になり、今年3月のパリファッションウィークでお披露目された。

「限りなくシンプルで長く愛用し続けられるバッグを作る、というところからスタートしましたが、実際にランドセルの製造工程をみた後に、やりたいことがどんどん増えてしまって…。小学生という成長が著しい期間に、さまざまな身長や体型にもきちんとはまる形。色、素材など、使いやすさや耐久性を考慮してこだわり抜かれたディテール。6年間という時間を思い出に変える工夫がたくさん詰まっていました」

150パーツ、300工程を要するというランドセルの製造現場では、2027年の入学に向けた子供たちへ届ける製品が、一つひとつ丁寧に作られていた。

今回のコラボレーションの中でも一際個性的なのが、ランドセルをモチーフにしたレザーベストだ。黒河内がいうように、発祥から130年以上、基本構造を受け継ぎながら、時代に合わせて改良され続けているランドセルは、実用性だけでなく、プロダクトとしての完成された美しさも兼ね備えている。そうしたランドセルの魅力を再解釈したのが、ベストとして“着用できるランドセル”だったのだ。

「Mame Kurogouchi 特有の丸みを帯びたフォルムを実現するために取り入れた、ダーツの縫いが特に難しく、何度も開き具合や全体の形状を調整しました」

自身も Mame Kurogouchi のファンだという、バケットバッグの製作を担当する職人は、どこか嬉しそうにそう話す。TSUCHIYA KABAN は、これまでにもファッションブランドとの協業を行ってきた。しかし、Mame Kurogouchi とのコラボレーションでは、レザーを用いた表現や技術の幅を拡張していくような挑戦があったという。

「内と外、どちらから見ても美しいというのがこのデザインの大切なところ。そのためには、内外のダーツとその幅が綺麗に揃うように縫っていく必要があります。しかし、縫製の際には、外側しか見えないため、見えない部分は想像するしかありません」。

バッグの縫製に使用されるポストミシン。バッグをはじめ、立体的なプロダクトの縫製を可能にしつつも、その特性から扱うことのできる職人の数は限られている。

長年の経験を持つ職人にとっても、新たな技術として習得が必要だったというダーツの仕様には、 黒河内の“佇まい“へのこだわりが反映されている。

「それぞれのブランドの良さを融合していくと考えた時に、形はシンプルでありながら、どこかに日本らしいディテールがある、美しいバッグが作りたいと思いました。バッグは、使いやすさはもちろん、食事の場などで置いた時の佇まいの美しさも大事だと感じています。そこで、今までも象徴的なシルエットとして取り入れてきた、繭のたおやかな丸みを意識して、バッグを置いた時にも美しい楕円になるように、ダーツやシルエットなど、細かい部分の設計を行なっています」

内側からみても美しいバッグ。ゆるやかな曲線を描くレザーのカット、丸みを帯びたステッチ。こうした細部にまで、繭のような丸みが取り入れられている。

「ランドセルは6年間、子どもたちを絶対に守り抜くという気持ちで作られています。そこで、TSUCHIYA KABAN では、ありとあらゆる状況を想定した独自の品質審査を行なっています。膨大なリストをクリアしなければ商品化はできません。また、レザーそのものに対する品質の審査基準も非常に高いものがあります」

そう話すマーケティング担当者のまっすぐな目からは、高い品質だけでなく、安心をも提供してきたクラフトマンの誇りが感じられた。バケットバッグのハンドルには、竹籠から着想を経た有機的な編みのディテールが取り入れられている。竹籠の自然のフォルムをレザーと言う無機質な素材でどのように表現するか。さらには、耐久性を確保するために重要なハンドル部分に繊細なディテールを用いるため、重量や強度など、品質面でも度重なる試験が行われたという。

「ものづくりの姿勢に自分が共感し、尊敬できるかがコラボレーションにおいてもっとも大切な点」

取材時、黒河内が職人や担当者、一人ひとりに声をかけながら、ねぎらい、時には製造工程について質問を投げかける姿からは、プロダクトの完成度だけでなく、その背後にある人の存在への深い敬意が感じられた。そうした関係性こそが、静かに美しいプロダクトづくりを支えているのだろう。