ファッションフォトグラファー Nick Knight (ニック・ナイト) による日本初個展「Still」が The Mass (ザ マス) にて開催

© Nick Knight, Flora, 1994-1997 (73 x 46.5 cm)

原宿のアートギャラリー The Mass (ザ マス) が 、ファッションフォトグラファー Nick Knight (ニック・ナイト) による日本初個展「Still」を11月10日(土)よりスタートする。

世界的なファッションフォトグラファーとして絶対的なキャリアを築いてきた Nick Knight。ご存知の通り手がけた広告キャンペーンは数知れず。彼の創るファッションストーリーは業界の伝統的な常識を打ち破り、写真家としてスタートしてから40年以上経つ今でもレジェンドとして君臨し続けている。独創的な世界観は静止画というフィールドを超え Björk (ビョーク)、Lady Gaga (レディ・ガガ)、Kanye West (カニエ・ウエスト) といったアーティストたちのミュージックビデオで数々の賞を受賞するなど様々なクリエイションにおいても遺憾無く発揮され、世界で注目されるファッションプラットフォーム「SHOWstudio (ショースタジオ)」を主宰するなど、その活動の幅は多岐にわたる。

本展では、そんな Nick Knight のある意味より個人的であり、絶え間無き美学的余白への探求が顕著に現れた特徴的な3作品「Flora」、「Roses, Photo Paintings」、「Roses From My Garden」を展示する。「Flora」は、1997年に出版された作品集から選別された15枚のポートフォリオを展示。大英自然史博物館の600万点もの標本から選別され、大胆かつ包括的にまとめられた46枚の花や植物のイメージから成り立つこの作品集は、Nick Knight とその妻である Charlotte が、3年半にも及ぶ時間を植物の無限の多様性が広がる標本館で費やしたことから生まれたもの。ここから作り出されたイメージの新鮮さは揺るぎなく、質素にも美しく均衡が保もたれている。空間上の形式としてそれぞれのイメージが捉えられ、境界線や遠近法を払拭することにより、色彩が花開き、構造が枯れ、一部のイメージでは有機的に線が崩れるドローイングであるかのように作品が現れる。

削ぎ落されたイメージで構成される「Flora」と対をなすように、「Roses, Photo Paintings」のシリーズはヴァニタスと呼ばれる16世紀の静物画を基点に、文字通り一部が写真、一部がペインティングで構成される技法が融合された作品群となっている。見事な色のウォッシュが伝統花画の様式を引き裂くさまに、儚くもロマンチシズムを感じさせる様式で、枯れていくバラと滴れ る絵の具から薔薇の生活環の儚さを象徴化している。この独特な世界観は Nick Knight と熟練印刷技師である Allan Finamore (アラン・フィナモア) が、10年の時間をかけて編み出した独自の技法で実現しており、作品の色滴れを実現するために印刷処理の段階で熱と水が取り入れられている。

最後に本邦初公開となる「Roses From My Garden」シリーズは、フォトグラファーが常に立ち向かっている問題をテーマにしているという。自身をイメージ・メーカーと称し、アーティストでありフォトグラファーではないと語る Nick Knight が、写真の起源に立ち返り、伝統的なガラス乾板での印刷処理や、伝統的境界線という名のレンズを通して、鑑賞者がどのように彼のコンテンポラリーな作品を見ていくのかを試している。イギリス国外で初めて、これら3作品を同時に扱うこととなった今回の展示では、新たな美の定義と新しいものの見方を発見し、捉えたいと願う Nick Knight の絶え間無き欲求を目撃することができるだろう。

© Nick Knight, Rose I, 2012 (117.47 x 76.2 cm)

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