山縣良和がインスタレーション作品を出展、「アジアのイメージ」展が開催中
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山縣良和がインスタレーション作品を出展、「アジアのイメージ」展が開催中
Yoshikazu Yamagata
exhibits a new installation at the tokyo metropolitan Teien Art Museum
Text: Miwa Goroku
東京都庭園美術館にて開催中の展覧会 『アジアのイメージ―日本美術の「東洋憧憬」』にwrittenafterwards (リトゥンアフターワーズ) のデザイナーでcoconogacco (ここのがっこう) 主宰の山縣良和がインスタレーションを出展している。
アジアの古典美術と、それに魅了された1910〜60年頃の日本人の作家の作品をひとところに並べ、「アジアへの再帰」「古典復興」「幻想のアジア」の3章に編成した本展。明治末から戦後にかけて多くの考古遺物や古美術が日本に持ち込まれた時代、日本の伝統からかけ離れたフォルムや模様、絵柄を持つアジアの古典美術は、衝撃と憧れをもって絵描きや工芸家たちに受け入れられ、新しいイメージを生み出す源泉となった。
日本画、洋画から陶磁器、竹かごまで多彩なジャンルの作品が取り上げられる中、たとえば「アジアへの再帰」では、チャイナドレスにスポットが当てられる。チャイナドレスは元は女性の衣服ではなく、満州の男性用上着を原型に持つ。それがいつしか魅惑的なワンピースに変容したのは、西洋が求めたイメージを受けて近代中国が作り上げた服飾文化であり、このような逆転の東洋趣味を知った上で、安井曾太郎ら日本の画家はチャイナドレスをまとった女性を描いた (ちなみにチャイナドレスは和製英語だ)。
山縣の新作が紹介されるのは「幻想のアジア」の章。これからの日本美術がアジアをどのように見て、何を引き出すべきかという美術館側からのお題に対し、山縣は戦後日本のファッションヒストリーの文脈から、繊維業界が衰退の一途をたどり始めた端緒に立ち返ってみせる。
「日本の歴史を紐解く中でファッションと『沖縄返還』が暗に絡み合っているということを知った僕はこの驚きを緒に制作にとりかかった」という本作品は、1970年代の日米繊維交渉がテーマ。当時の米国では、“One dollar blouse (ワンダラーブラウス)” に代表される日本製の安価な綿製品が爆発的に売れていて、これに危機感を抱いた米国政府は日本政府に対し、綿製品の輸出を自主規制するように圧力をかけた。その代わりに沖縄を返還するから、という交渉が裏では成立しており、これが明るみに出るや当時は「糸を売って縄を買う」といった言葉で皮肉られた、というのが裏に流れるストーリーだ。
本展に向けたスケッチ (※トップイメージ) は実際の展示にはなく、そこに広がるのは壮観かつ示唆に富んだインスタレーションだ。「巨大な “糸” 巻きから伸びる大きな “縄” に絡まりながら悪戦苦闘し、綱引きをしている狸 (=政治家?) たちの一幕」が、黒幕で遮光された闇の空間で繰り広げられる。
展示は年明け1月13日まで。11月29日には山縣のギャラリートーク「幻想のアジア : 自作を語る」も予定されている。