フェミニスト・アートの先駆者、ジュディ・シカゴとマリアの対話、ディオール 2020 春夏 オートクチュール コレクション
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フェミニスト・アートの先駆者、ジュディ・シカゴとマリアの対話、ディオール 2020 春夏 オートクチュール コレクション
dior
Haute Couture Spring-Summer 2020 Collection
by Manaha Hosoda
Maria Grazia Chiuri (マリア・グラツィア・キウリ) による Dior (ディオール) 2020 春夏 オートクチュール コレクションが1月20日にパリのロダン美術館にて発表された。本コレクションのインスピレーションとなったのは、アイコン的存在であるアメリカ人アーティスト Judy Chicago (ジュディ・シカゴ) によって提起された問いかけ「What if Women Ruled the World? (もし女性が世界を支配したなら?の意)」。今回も Maria Grazia Chiuri はコレクションを通して、フェミニズムとフェミニニティの複雑な関係の探求を継続している。
様々な女性アーティストとコラボレーションを果たしてきた Maria Grazia Chiuri が今回指名したのが、アメリカのフェミニスト・アートのパイオニアとして知られる Judy Chicago。1939年にアメリカ、シカゴに生まれ、60年代よりアーティストとしての活動をスタート。Judy Chicago は1966年にカリフォルニア州立大学フレスノ校で「フェミニスト・アート・プログラム」を開校。70年代にアメリカで興隆したフェミニスト美術運動の中心的人物として知られている。彼女の代表作である「The Dinner Party」は、Emily Dickinson (エミリー・ディキンソン) や Virginia Woolf (ヴァージニア・ウルフ)、Georgia O’Keeffe (ジョージア・オキーフ) ら多大な功績を遺してきた女性達に捧げたインスタレーション作品で、ブルックリン美術館で常設展示されている。
Judy Chicago は Dior のためにショーの舞台であり巨大なインスタレーション作品である「The Female Divine」を制作。ロダン美術館の庭園に突如出現したシェルターに踏み込んでみると、ランウェイとともに並んだ挑発的な疑問が記されたバナーの数々が目に飛び込んでくる。この作品が提案するのは、人類学者によると青銅器時代までは社会で確認されていたという女家長制(家母長制)の原則が現在まで続いていたらというもうひとつの歴史であり、ジェンダーのレンズを通して現代における共生を決定付けている役割と力関係についての再考を促しているという。
ランウェイでは、古代ギリジアで女性が着ていたペプロスから着想を得た美しいイブニングドレスの数々が登場。アテナのような女神を表現した古典的な芸術作品にインスピレーションを受けたという Maria Grazia Chiuri は、黄金色の恵みをもたらす麦の穂を象徴的なモチーフに、ゴールドを基調とした見事なカラーパレットで壮麗なコレクションを完成させている。現代のファッションやファッションのメディア化は、衣服の先にあるストーリーを伝えるための唯一のフレームワークを成すものと考える彼女は、エレガントなドレープや構築的なシルエットといったメゾンのコードを際立たせながらも、新たな解釈を加えることで、想像力にあふれる揺るぎない女性像を表現している。
また、Dior から届いたドレスのサヴォワールフェール動画もエクスクルーシヴにご紹介。一枚仕立てのシフォンで仕上げられたペプラムドレスはまさに、「サモトラケのニケ」やボッティチェッリの「プリマヴェーラ」が代表する美と知性の調和した女神像を彷彿とさせるタイムレスな一枚。フロントとバックにドレープとツイストでアクセントが加えられており、一見するとモダンで軽やかな印象だが、なんと20mものシフォンが用いられ、完成までに600時間を要した至極のクチュールピースだ。