ニューアート、ニュールック。ディオール ウィンター 2021-2022 メンズ コレクション
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ニューアート、ニュールック。ディオール ウィンター 2021-2022 メンズ コレクション
dior
winter 2021-2022 men's collection
Kim Jones (キム・ジョーンズ) による DIOR (ディオール) ウィンター 2021-2022 メンズ コレクションが1月22日に発表された。Kim Jones は今回、アーティストの Peter Doig (ピーター・ドイグ) とコラボレーション。会場装飾から舞台演出、コレクションピースまで、すべてがアート作品かのようなランウェイを披露した。
かつてムッシュ ディオールが Jean Cocteau (ジャン・コクトー) や Christian Berard (クリスチャン・ベラール) ら芸術家と友情を築き上げたように、Kim Jones は今回、現代アートの最も熟達したアーティストの一人である Peter Doig との緊密なコミュニケーションのもとコレクションを作り上げていった。Peter Doig は、スコットランド・エジンバラ出身で、現在はトリニダード島とロンドンを中心に活動。「絵画の死」といわれていた頃、絵画の中心に据えた議論に再び焦点を当て、絵画を伝え、表現するため、美術史への深い知識とともに写真や映画の題材を融合する独創的なアプローチで精力的に作品を発表し続けてきた。その30年間にも及ぶキャリアにおいて、様々な功績を成し遂げ、2008年には Tate Britain (テート・ブリテン) で回顧展が開催されるほど、高い評価を集めてきた。
“ファッションとは、アートのひとつの形態”として、Kim Jones は Peter Doig の作品をファッションに置き換えることに挑戦。ショーの舞台もアート作品となり、Peter Doign による青空のインスタレーションがお目見え。音響システムが積み重ねられた演出は、「SPEAKER/GIRL」(2015)をはじめとするアーティストの絵画から取り入れられたものとなっている。
アートとファッションの対話の一環として、Peter Doig は DIOR のために2つの動物をモチーフとしたエンブレムを特別に制作。ひとつは Christian Dior (クリスチャン・ディオール) の愛犬、ボビーを思わせるもの、もうひとつのライオンは Peter Doig の絵画のキャラクターと1949年当時メゾンのアトリエにいた Pierre Cardin (ピエール・カルダン) がムッシュ ディオールのためにデザインした仮面舞踏会用コスチュームを同時に彷彿とさせるもので、どちらもコレクションの随所随所に散りばめられている。
ジュエリーとベルトには、Peter Doig が彫刻したライオンのモチーフを。ファブリックは緻密なジャカードやプリントによって、キャンバスとエッチングを再現している。アーティストの作品「MILKY WAY」(1990)から取り入れた夜空がさまざまなルックを飾り、夜空の星々がメゾンのラッキーモチーフである星と共鳴。ソフトでくすんだブルー、ネイビー、ダスキーモーブ、ディオール グレーといったメゾンのカラーパレットが Peter Doig の作品を彩り、ブリリアントイエローやブラッドオレンジ、グリーンといった色鮮やかなトーンが生き生きとした喜びを表現している。
ブラシのタッチは手作業による刺繍、ニット、ハンドペイントなどで再現。まるで衣服そのものが絵画であるかのように、パイピング、バウンドトリム、バロック刺繍が衣服の「額縁」となり、コレクションの形と輪郭はアートのキャンバスに変身した。また、Peter Doig は Stephen Jones (スティーブン・ジョーンズ) が手がけたウールフェルトハットにハンドペイントデザインも施している。
また、Kim Jones は儀式用の服装に宿る贅を尽くした男性らしさから着想を得て、刺繍や装飾があしらわれたユニフォーム、とりわけフランス芸術アカデミーのコスチュームに着想を得たスタイルをクチュールの男性的な解釈として提示。くるみボタンはアイコニックな「バー」ジャケットから、また1960年代に Marc Bohan (マルク・ボアン) がデザインしたオートクチュールのイブニングガウン「ロゼラ」から金糸の刺繍を取り入れるなど、装飾やモチーフではメゾンのアーカイブを再解釈している。今と昔をつなぎ、新しいルックを生み出すアーティスト2名の化学反応をしかと目に焼き付けてほしい。