アトリエの技術や世界中のクラフツマンシップへのオマージュ。ディオール 2022 春夏 オートクチュール コレクション
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アトリエの技術や世界中のクラフツマンシップへのオマージュ。ディオール 2022 春夏 オートクチュール コレクション
Dior
Spring summer 2022 haute couture COLLECTION
Dior (ディオール) が Maria Grazia Chiuri (マリア・グラツィア・キウリ) による2022 春夏 オートクチュール コレクションを発表した。前回のオートクチュールショーに引き続き、ショー会場に選ばれたのはロダン美術館。
このコレクションで Maria Grazia Chiuri はアトリエの技術や世界中のクラフツマンシップを通して人間関係を讃え、アートを再解釈し、アートとクラフトの境界を完全に取り払いたいという想いを表現している。そして着眼点を置いたのは、アトリエが持つ共通言語を通じたアートとクラフトの出会いという側面。
これまで数々のアーティストとコラボレーションを重ねてきた彼女は今回、インド芸術へのオマージュとして絵画の中での擬人化が特徴のインドのアーティスト Madhvi (マドヴィ) と Manu Parekh (メヌ・パレック) をフューチャー。彼ら夫婦の作品が並ぶ壁一面のアートは、男性と女性という概念を強調することが目的で、二項対立ではなく、補完しあい、永続的に豊かにしていくというメッセージだそうだ。Maria Grazia Chiuri と2人の間にはアートを通しての共通する思い、人間性が垣間見える。まるで絵画のような作品群は、実はクラフツの技巧が贅沢に施されたハンドメイドの刺繍なのだ。これらの刺繍作品は Karishma Swali (カリシマ・スワリ) 監修のもと、Chanakya School of Craft (チャーナキヤ工芸学校) の職人たちが手がけた。
ファーストルックは、シアーなワンショルダーのトップスとシグネチャーでもあるタイツが融合したドレスだ。カラーパレットはグレー、ブラックで構成されており素材感が非常に美しく、刺繍がもたらす立体感が、繊細さやチュールの軽やかさを演出。またピッタリとしたサイズ感がとてもモダンな印象で素肌の存在感がより一層強調されている。
そして今回のショーでハイライトのひとつとなった、ルック33のドレスのサヴォワールフェール動画も公開。パールが贅沢に刺繍された、グレージュメッシュのトップスにレースのルーシュリボンとシルクチュールが波打つようにあしらわれており、スカートはそれぞれアトリエの熟練の職人がひとつひとつ手作業で微細な差を調整しながら完成させていく。製作するためには400mのリボン、500時間という時間が費やされ、5人の刺繍職人と1名の職人がこの作品の制作に携わった。絶妙な素肌の透け感と建築的な刺繍、贅沢な素材づかいで足元まで及ぶ丈感になっており、女性らしさを感じる流線的なシルエットで上品な印象。世界各地の職人やお針子による、卓越した技術との共同作業の結晶だ。
そのほか、シルエットを包み込む幾何学的なラインのダブルカシミアコートや、ジャケットとパンツのコーディネートを覆う、まばゆく光るホワイトのケープも登場。構築的なコートと揺らめくプリーツスカートの組み合わせや、体の動きの一つひとつを強調する、シルバーラメのジャカードファブリック製ドレスも。コンテンポラリーなテイラリングのルックから Dior のヘリテージを再解釈した刺繍パターンが施されたルックまで、至る所でメゾンへのオマージュを感じる。ショーピースの制作風景をチェックしてディテールにも注目してほしい。
昨シーズンの、“存在していること/出会うこと” への回帰としての手に触れて感じられる実体性というテーマを始め、近年のショーから一貫して感じ取ることができるクチュールの本質の探求。そんな彼女が職人たち、人の手から生み出されるハンドメイドという何ものにも変えられない絶対的なクリエイションの価値や、メゾンの真髄をフィジカルが減りバーチャルの時間が増えた、昨今の私たちに示してくれた。アートとクラフトの対話という表現で魅せる Dior 最新オートクチュールコレクションは必見。