‘GRAND PIANO’ to launch in Japan from March 8

『グランドピアノ~狙われた黒鍵~』エウヘニオ・ミラ監督インタビュー

©NOSTROMO PICTURES SL / NOSTROMO CANARIAS 1 AIE / TELEFÓNICA PRODUCCIONES SLU / ANTENA3 FILMS SLU 2013

‘GRAND PIANO’ to launch in Japan from March 8
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『グランドピアノ~狙われた黒鍵~』エウヘニオ・ミラ監督インタビュー

‘GRAND PIANO’ to launch in Japan from March 8

コンサート中に命を狙われるピアニストとスナイパーの攻防を描くサスペンス映画『グランドピアノ~狙われた黒鍵~』が現在公開中だ。若き天才ピアニスト・トム(イライジャ・ウッド)は、亡き恩師のパトリック・ゴーダルーの追悼コンサートに出演するため、シカゴに降り立った。音楽界の奇才と呼ばれたパトリックが作った超絶技巧が必要とされる、難曲「ラ・シンケッテ」の演奏に失敗し、極度のステージ恐怖症に陥り、人前に出ることを拒み続けていたが、人気女優の妻エマ(ケリー・ビシェ)に背中を押され、5年ぶりに復帰したのだった。コンサートで使用するピアノは、パトリックの遺した世界最高級ブランド ベーゼンドルファー。このピアノは通常のピアノよりも9つ黒鍵が多く、低音部を黒く塗られているという特徴を持つ。ところがコンサート会場で渡された楽譜には、「一音でも間違えるとお前を殺す」の赤い文字が。不審に思い、周囲を見渡したところ狙撃者の銃口が自分に向けられていることを知る。正体不明の男(ジョン・キューザック)に脅されるまま、トラウマのもとになった「ラ・シンケッテ」の演奏に挑むことになる。果たして、トムは一音も間違えず、演奏することができるのか。そして、ピアノと曲に隠された謎とは何なのかーーー。最高潮の緊張感の中、最もスリリングなピアノコンサートが今始まる。

©NOSTROMO PICTURES SL / NOSTROMO CANARIAS 1 AIE / TELEFÓNICA PRODUCCIONES SLU / ANTENA3 FILMS SLU 2013

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コンサート中に命を狙われるピアニストとスナイパーの攻防を描くサスペンス映画『グランドピアノ~狙われた黒鍵~』が現在公開中だ。若き天才ピアニスト・トム(イライジャ・ウッド)は、亡き恩師のパトリック・ゴーダルーの追悼コンサートに出演するため、シカゴに降り立った。音楽界の奇才と呼ばれたパトリックが作った超絶技巧が必要とされる、難曲「ラ・シンケッテ」の演奏に失敗し、極度のステージ恐怖症に陥り、人前に出ることを拒み続けていたが、人気女優の妻エマ(ケリー・ビシェ)に背中を押され、5年ぶりに復帰したのだった。コンサートで使用するピアノは、パトリックの遺した世界最高級ブランド ベーゼンドルファー。このピアノは通常のピアノよりも9つ黒鍵が多く、低音部を黒く塗られているという特徴を持つ。ところがコンサート会場で渡された楽譜には、「一音でも間違えるとお前を殺す」の赤い文字が。不審に思い、周囲を見渡したところ狙撃者の銃口が自分に向けられていることを知る。正体不明の男(ジョン・キューザック)に脅されるまま、トラウマのもとになった「ラ・シンケッテ」の演奏に挑むことになる。果たして、トムは一音も間違えず、演奏することができるのか。そして、ピアノと曲に隠された謎とは何なのかーーー。最高潮の緊張感の中、最もスリリングなピアノコンサートが今始まる。

出演は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのイライジャ・ウッド、スナイパーには『推理作家ポー 最期の5日間』のジョン・キューザック、『アルゴ』のケリー・ビシェ、『4.3.2.1』のタムシン・エガートンが名を連ねる。

監督を手がけるのは本作で長編4作品目となるスペイン出身のエウヘニオ・ミラ。音楽家、作曲家でもある同氏は、劇中で重要な鍵を握る難曲「ラ・シンケッテ」の作曲も担当した。そんなさまざまなジャンルで才能を発揮しているミラ監督の最新インタビューを全文掲載する。

– ミラ監督が本作に携わることになった経緯を教えてください

『映画監督も観客の一人であって、誰もが新しいものを撮ろうと思っている。そんな中でこのグランドピアノは僕にチャンスを与えてくれた特別な企画なんだ。大変だったけど、その努力に見合う作品だったんだ。』

– 脚本について

『とても素晴らしいし、美しく、紙の上では成立している内容。プロデューサーからも面白い、みんな気に入っているよと聞いていたんだ。しかし気に入ったからにはこれをどう映像に、スクリーン上に落とし込むのかで少し冷や汗をかいたよ。これを映画化する監督は普通の映画の五倍は努力、仕事量を要求されるだろうと感じていたからね。
見た方に信憑性を持たせなければいけない。リアルを体感してもらおうと作るというのがチャレンジだったね。』

– 脚色について

『なるべく脚本に忠実に撮ろうと思っていました。すごく複雑な面を含めて、できればそのまま映像化したいと思っていて、実際にそれをどうやって撮るのか悩んだね。変更した点はたしかにあるが、脚本家と密にやりとりをして、セリフやキャラクターについてだったので、事件についてはそのまま。
(カットしたシーンだが)イライジャが最初譜面に赤い文字を見た時に、劇場スタッフに伝えようとするシーンで、反射する光で訴えかけるのだが、なかなかシーンとして成立するのが難しく、撮らなかったんだ。それ以外は忠実であることを心掛けたね。』

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– できあがった作品をご覧になってみて、どんな感想をお持ちになりましたか?

『テキサス州オースティンで開催されているファンタスティック映画祭で観たんだけど、実は2005年のデビュー作で参加している映画祭なんだ。その時よりも目に見えて成長している映画祭で、この映画祭に来る観客は映画に対して理解が深いんだ。そういう意味でもこの映画を最初に見せる場所としてふさわしかったんだ。この作品はシネマというものに対する僕からのラブレターでもあるからね。今まで描かれたことのない、命を狙われながらピアノを弾き通さなきゃいけない、心理的なスリラーの物語であって、上手くそれが伝わるかなと思っていたら、映画を観始めて5分くらいでみんなの反応が熱くて、上手くいっているんだと肌で感じることができました。映画祭のレビューも99%ポジティブで上手く観客に伝わって良かった。』

– 撮影の苦労

『アーティスティックなものであると同時に科学的な面もあるんだ。プリプロダクションで、すべてのことを極め細やかにデザインしてから臨むスタイルで。最初からゴールを明確にすることが大切だった。責任ある映画作りと僕は言っているんだけどね。脚本などの素材を責任持って映画にするという。ヒッチコックやスピルバーグがそうだったように、彼らの手にかかると元の素材を遥かに超える作品が作られていて、本当に撮りたいものが撮れる、それが分かっている監督なんだ。リドリー・スコットやマイケル・マンのように素材をベースに編集などで更に何かを築きあげていくタイプもいて。このグランドピアノに関しては、撮影の前に編集をしようという姿勢で臨みました。そのためには何が必要なのかを、最初に明確にしなくてはならなくて、撮影は8週間、クレーンの動きからVFX、モーションコントロールをどうするかまですべてを入れ込んで撮影できる準備をしています。これが20年前のハリウッドだったら3~4か月必要な作品だったんですけど、短く撮り、準備万端で、とにかく新鮮でいるという部分を心掛けたね。撮影はテイク数を重ねて正確に撮ること、元々プリプロで緻密に設計していたから、ピースを集めていく作業だった。それが新しいチャレンジでしたね。すべての要素を抑えて撮ると同時にイライジャの演技も抑えなきゃいけない。さらに一つ一つを試行錯誤しなきゃいけなかったんだ。』

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– 撮影で気を配った点について

『アートなどにはないツールがシネマにはあるので、それをいかに使ってストーリーを伝えるのか。それが監督の醍醐味。今回は特に同時にいろんなことが起きるので、タイミングに気を配ったんだけれども。この映画は多音性だから、そこが実は元々まだ掘り下げられてない部分なんじゃないかなって思って。一つのシーンを観ていても、いろんなアイディアを見せることができるのが映画なので、自分は今何を観ているのか、その裏には何があるのか。今、何が起きているのか。このグランドピアノも観る度に観え方が変わって。カメラワークもきちんとタイミングを抑えなきゃいけない。サイレント映画のような古き良きシネマも起きていることをすべて追いかけて伝えているので、本作もそのスタイルに近いんじゃないかな。トムと犯人とのやりとりのシーンでカメラがマイクのような役割をしている場面もあるからね。すごいエモーショナルが伝わる作品なんだ。』

– 一番印象に残っているシーンは?

『エモーショナルな意味で言うと、タブレットで“ラ・シンケッテ”を書き出す場面。心理的に彼が犯人を上回るシーンだからね。5年前のことがあって彼もあがってしまう、呼吸困難になってしまうんだよね。犯人よりも一歩上手になったのに、舞台裏で舞台恐怖症に陥ってしまうバランスが面白いんだよ。エマの友達が殺されてしまうシーンもサイレント映画の要素を含んでいてお気に入りだね。』

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– イライジャ・ウッドについて

『イライジャとは2010年のオースティンでのファンタスティック映画祭で会っていたんだ。カラオケにも行ったし(笑)そして2011年に再会した時に僕のことを覚えていてくれて、ハグしてくれたんだ。彼は地に足が着いた人なんだよ。たまたま再会の2か月前にグランドピアノの脚本を仕上げていて、その時にこれはイライジャかな?って思っていたんだよね。トムは天才少年、ワンダーボーイだから、イライジャも“ロード・オブ・ザ・リング”で素晴らしい演技を見せて、みんながそのあとどうするの?って気になっていて、彼の持っている優しい部分もこの役にピッタリだと思ったんだよね。トムは最初冷たいし、共感しにくいように見えるけど、見ていくうちに段々と共感していけるようなキャラクター造形になっていて。一つ何かが飛びぬけている存在なんだ。映画祭後スペインに戻ってプロデューサーに話して、脚本を送って、すぐにやりたいって言ってくれたんだよ。』

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– 彼のピアノ演奏はどうでしたか?

『幼少期に習ったピアノはすべて忘れてしまっていたらしい(笑)でもカラオケに行った時にリズム感があると思って。僕はミュージシャンだから、イライジャの素質をすぐに見抜いたんだよ。もちろんピアノコーチについてもらったし、手元のクローズアップのシーンは別にしても、90%をイライジャが演じているんだ。撮影はシンプルな曲から、難しい曲を撮って、徐々に慣れてもらってね。』

– 撮影現場でのイライジャについて

『イライジャは本当に大きな存在で、要求に何でも応えてくれる才能あふれる俳優であるばかりか、フィルム・メーカーでもあるんだ。だから脚本に対しての理解以上の深いものを持って作業にあたってくれるんだ。彼はハリソン・フォードのようだったよ。監督とキャストが共犯関係にある。そう思わせてくれる俳優だね。
撮影時にはイヤーピースを使ってアクションのタイミングだったり、セリフ、助監督からの指示を出していたんだけど、イライジャがバッチリタイミングを合わせてくれたおかげでスムーズに進んだよ。
うまくいかなかったところも彼からもう一回やろうと言ってくれたおかげで助かったんだ。何せイヤーピースが入ったまま演技ができること自体が、彼の俳優としての凄さを物語っているよね。カメラワークとイライジャ間の対話というか、いくら技術的なことが決まっても、そこに演技がないと成立しないからね。そこにマッチするスーパーな逸材がイライジャだったんだ。』

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– イライジャの演技で、ここは素晴らしいと思った点はありますか?

『多音性に対する要求に応えること。これは彼に備わった自然な才能だと思うんですけど、すごい肉体的な俳優だと感じたね。“雨に唄えば”などのサイレント映画に通ずるんだけども、走るにしても、動くにしても、それを通して演技ができる、表現を伝えることができる役者なんで素晴らしいね。ピアノから身体を、指を離す動きにそれを感じたね。』

– ジョン・キューザックについて

『この物語を成立させるにはビッグネームが必要だったんだ。いろんな方々の名前が挙がる中で、僕の中のファーストチョイスはジョン・キューザックだったんだ。シカゴ出身ってこともあってね。今のハリウッドじゃこういう映画は撮れないって彼自身も言ってくれて。映画を本当に愛していてくれているんだなと。製作者でもあるからね。
先に彼のセリフを録って、イライジャが聴きながら演技をしたんだ。そのあと先に2人のバトルシーンを撮って。またアフレコもしてもらって。冷たい声から落ち着いた声、怒る声など本当にプロフェッショナルなものを監督の僕に届けてくれたんだ。本当にオファーを受けて本当に良かったと心から思ったね。』

– 音楽と“ラ・シンケッテ”について

『作品の一部としてうまくハマるように、そして作曲のビクターが作業しやすいように、楽曲も映画の中の出来事を支えてくれるようにしたんだ。音楽で流れを作っているのもあるしね。逆に音楽のない段階からセリフなどをデザインしなければならなくて、シーンの抑揚やスピード感を測っていって、ピアノソロからオーケストラといった流れで作っていったんだ。先に撮ってから音楽を付け足したから、すごい複雑な作業だったんだよ。
撮影の何か月も前に、まず音楽がどう物語を追うのか、こういう風な楽曲が良いと地図を描いて、ラフマニノフやチャイコフスキーの要素を持ってきて、僕がコラージュして。その上にピアノの旋律を重ねてまとめて。求めるダイナミックさやテンポが分かりやすいものをビクターに渡して作ってもらったんだ。特にこだわったのは“ラ・シンケッテ”だけはとにかくリアルに感じるようにすることだったんだ。ラベルなどの低音なイメージで、実際は僕が何年も前に書いた曲だから作曲という立場なんだ。カタルシスを感じさせるような作りで、最後の15小節は演奏不可だよ(笑)本当にスポーツだからね。最初の1~2分は演奏できるけど、トムが感情的に乗って行って誰にも止められない感じかな。スナイパーの呼びかけにも応えないみたいな。プロデューサーがその方向性を信頼してくれたのでラッキーだったね。』

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– 世界最高級ブランドであるベーゼンドルファーのインペリアルを使うということで何か特別な想いはありましたか?

『元々知っていて、最初に作曲した映画のサントラを書くためにブルガリアのソフィアに行った時に、たまたまインペリアルが2台あったんだよ。音楽界の黒のキャデラック2台が(笑)この映画の話を考えた時にドイツだとベーゼンドルファーは小さな黒い小人と呼ばれていてイライジャと繋がって面白いなと(笑)』

– 今回、主人公は大きなプレッシャーに陥りますが、監督ご自身は、プレッシャーに対してどのようにはねつけていますか?

『企画や脚本が通るか通らないかの時だけしか緊張しないね。自分の作品はプレッシャーは感じない。結果がどうとか、こうなりたいとかあまり考えないからね。作ったことによってどうこうではなく、作ること。僕にとっては撮ることがゴールなんだ。』

– 監督が命を狙われながら、演奏しなくてはならないという同じ状況に陥った時、どうしますか?

『人間はスランプに惹かれるもの。だから間違えそうな演奏でも興味を引かれちゃうんじゃないかな。人前での演奏経験はあるけど、恐怖症までには至ってないね。バンドとかでも緊張はしないけど、ピアノだとなるんだよ。やっぱり心理的な作用があって、人がそういった状態に陥ったら見たいもんだよ。銃口を突きつけられたらスピーチを始めるね。注目を集めて移動して、殺されないようにするよ(笑)』

– 映画監督になろうと思ったきっかけは?両親もアーティストだったのですか?

『両親は陶芸家でヴァレンシアでアートを学んでいるときに出逢ったんだ。いろんなアートに触れて、ピアノを3、4歳から始めたんだ。だから一つの言語として音楽が身に付いていたんだよ。英語もそうなんだ。映画をたくさん観たら自然と話せるようになったんだよ。“ジョーズ”とか“E.T.”とか“スター・ウォーズ”を観て育った僕は80年代の産物だからね。才能あふれる監督たちが本当にすごい作品を撮っていた時代だったね。“バック・トゥ・ザ・フューチャー”なんて素晴らしい技を感じる作品で。質の高い映画が世に送り出されていた時代だったから、映画が好きになって監督を目指したんだ。スピルバーグたちは映画に対するラブレターと呼べる作品をたくさん作っていたんだよね。そんな彼らに影響を及ぼしたのが名匠で、そこも興味深いよね。テクノロジーの進歩も監督になったきっかけかもね。それこそ今の若い子は簡単に編集をしてアップロードもできるからね。僕らの頃のハンディカムやVHSのよりも更に飛び込みやすくなったんじゃないかな?僕が今19歳だったらまた違ったキャリアになってたんじゃないかな?また監督は声を持っていなきゃいけないね。コーエン兄弟やスピルバーグにはきちんと監督の声があるんだよね。』

– 監督の哲学とは?

『たとえばシーンのクオリティを要する場合に10の内10を求めなきゃいけなくて、嫌われ者にならなくてはならないけど、僕はそれに興味がないんだ。だから10の内6か8でも僕は良いんだよね。それが僕の哲学かな。人間的に健康な状態で撮りたいんだ。監督4作目だけど、この作品は今までで最高の現場だったんだ。複雑な内容ではあったけど、撮影は本当に楽に進んだよ。』

– 監督にとって映画とは

『映画は20世紀の真の表現だと思っている。まだまだこれからも新しい表現ができると思う。尺が映画の中でキャラクターの一生だったり、1日だったり、自由自在に感じさせることができる。まるでイリュージョンだね。そんなように人を驚かせていきたい。そんな映画を撮っていけたら。』

– 全編英語の映画だが

『助監督で参加した“インポッシブル”以外はすべて全編スペイン語で。元々全編英語の作品を撮りたかったんだよね。アメリカンフィルムメーカーとして。ポランスキーやバーホーベンが僕に近い存在だと思うけど、アメリカのシネマはコスモポリタンなんだ。片田舎だと少し違ってくるけど。80年代のような映画を撮れないにせよ、いつか撮りたいんだ。
スペインの作家たちも僕らの世代から世界を意識している人たちが増えている気がするんだよね。』

– 今後の作品について

『もうイライジャと次の企画の話をしていて、30年代のニューヨークのアドベンチャーなんだ(笑)お互い乗り気で、これ以上は言えないけど、実現するといいな。自分の企画や制作をどんどんやっていきたいね。監督とはまた違った表現法をしていきたいね。“ゼロ・グラビティ”のようなデザイン性が求められるような。僕の中ではミスティックホラーと呼んでいる“2001年宇宙の旅”みたいなね(笑)ジャンルを新しく開拓するような。秘密結社やタイムトラベルを精神的な面から探るのにも興味があるね。文化人や作家本人に焦点を当てたりして。そして他の方の映画作りも助けていけたら。』

– 日本について

『今村昌平が大好きで60、70年代の白黒映画にはすごい魅せられた。資本主義へと移り変わる中での黒澤映画も面白いね。スピルバーグやジョージ・ルーカスも大きな影響を受けているしね。でも僕はまだ黒澤映画を観ていないんだ。映画祭で20本観ても3本くらいしか面白くなかった時に、僕にはまだ観ていない黒澤映画があるって思えるからね(笑)侍ものだったり、気持ちをコントロールして突然爆発するようなことで、魅力的な表現に繋がるのが面白いよね。』

– 日本のみなさんに向けて
『多様な国民性が僕に似ているように感じるんだ。だから見え方が変わる本作を楽しんでほしいね。自分にとっても特別な一本なので。スキルを持った人に偏見を持ってしまいがちだけど、本当はハートなんだよ。そういう誤解を本作で解きたいんだ。心が大切なんだよ。』

 

<映画情報>
グランドピアノ~狙われた黒鍵~
監督: エウヘニオ・ミラ
脚本: ダミアン・チャゼル
出演: イライジャ・ウッド、ジョン・キューザック、ケリー・ビシェ
配給: ショウゲート
2013年/スペイン・アメリカ
新宿シネマカリテほか全国公開中
©NOSTROMO PICTURES SL / NOSTROMO CANARIAS 1 AIE / TELEFÓNICA PRODUCCIONES SLU / ANTENA3 FILMS SLU 2013
URL: http://grandpiano-movie.jp