Nakahira Takuma: Burn—Overflow

写真家・中平卓馬による約20年ぶりとなる大回顧展「中平卓馬 火―氾濫」が東京国立近代美術館にて開催

中平卓馬《無題 #437》2005年、発色現像方式印画、90.0×60.0cm 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

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写真家・中平卓馬による約20年ぶりとなる大回顧展「中平卓馬 火―氾濫」が東京国立近代美術館にて開催

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戦後日本を代表する写真家の一人、中平卓馬 (1938-2015) の没後初めてとなる本格的な回顧展が東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリーにて開催中。これまで未公開の作品を多数展示するほか、中平の作品を発表してきた雑誌から中平の試みを読み解いていく。会期は4月7日 (日)まで。

日本の戦後写真における転換期となった1960年代末から70年代半ばにかけて、大きな足跡を記した写真家である中平卓馬。その存在は森山大道や篠山紀信ら同時代の写真家を大いに刺激し、またホンマタカシら後続の世代にも多大な影響を与えてきた。会場では初期から晩年まで約600点の作品・資料を展示し、中平の写真をめぐる思考と実践の軌跡をあらためて丁寧に辿っていく。特に1975年頃から試みられ、1977年に病で中断を余儀なくされることとなった模索の時期の仕事に焦点を当て、再起後の中平の活動も追う。

第1章では、「来たるべき言葉のために」という題名のもと、雑誌編集者だった中平が写真家・東松照明との出会いをきっかけに写真家へと転身するとともに、季刊同人誌『PROVOKE』を創刊するといった初期の活動を追う。2章「風景・都市・サーキュレーション」では、1970年代初頭に数多く発表された「都市」や「風景」というテーマとの関係性を探る。

また第3章は、「植物図鑑」というキーワードを掲げ、これまでの自身の作品を批判して新たな方向性をめざした道のりを扱う。続く第4章「島々・街路」は、奄美やトカラ列島や、中上健次との協働をする中で南方の島々への関心を深めていった時期の活動を追う。ラスト章である「写真原点」では、急性アルコール中毒によって記憶の一部を失った中平が、その後何十年ものあいだ写真家としてあり続け、キャリアの前半とは違った存在感を獲得していった軌跡を辿る。日本の写真を変えた中平卓馬が歩んできた人生を、是非会場でじっくり堪能してもらいたい。

中平卓馬ポートレイト 2003年 撮影:ホンマタカシ ©Takashi Homma