コッキとマサユキキヌタが繋がる、手仕事の世界。ドーバー ストリート マーケット ギンザにて特別インスタレーションを開催中
News
コッキとマサユキキヌタが繋がる、手仕事の世界。ドーバー ストリート マーケット ギンザにて特別インスタレーションを開催中
KHOKI
presents an installation with MASAYUKI KINUTA at Dover Street Market Ginza
東京を拠点に活動するファッションブランド KHOKI (コッキ) が、DOVER STREET MARKET GINZA (ドーバー ストリート マーケット ギンザ) 2階にて、アーティスト MASAYUKI KINUTA (マサユキ キヌタ) との特別インスタレーション展示及びポップアップを開催中。今回のコラボレーションを記念し、デザインチーム KHOKI からディレクター Koki Abe と、アーティスト MASAYUKI KINUTA の2人にインタビューを実施した。
12月25日(木)までの開催となる、本インスタレーションの中心となるのは、ドールハウスをそのまま拡張したような小さな家。その内部には、KHOKI がコレクションで使用してきた貴重なヴィンテージのアメリカンキルトやオリジナルで制作したキルト、カンタのはぎれを素材とし、MASAYUKI KINUTA が全て手作業で仕上げた一点ものの猫の“布の彫刻”が配される。ノスタルジックで穏やかな空間が広がるインスタレーション内では、猫の“布の彫刻”に加え、KHOKI が買い付けたヴィンテージトートバッグに半立体作品 “Wall Cat” がドッキングされたものやオリジナルプリントTシャツなど特別なラインアップが限定販売。今回のコラボレーションを記念し、デザインチーム KHOKI のディレクターである Koki Abe と、アーティスト MASAYUKI KINUTA の2人に、両者がものづくりの根底に据えてきた“手仕事”を軸にした制作と、本コラボレーションについて話を聞いた。
Interview with Koki Abe and Masayuki Kinuta
—お二方は“手仕事”による物作りを軸とされていますが、この表現方法に行き着いた背景や経緯を教えてください。
MASAYUKI KINUTA (以下、K): 今の作風で制作をする前は、音楽と絵をやっていました。ただ、どちらの活動も思うようにいかず、違う手法で圧倒的なオリジナリティを得るにはどういうアプローチをすればいいのかを考えていたんです。まずは独学で、身近にあるもので始めようと思い、着れなくなったデニムと家にあった裁縫道具で作り始めたことがきっかけです。当時は音楽とファッションが連動していた時代。音楽が好きだったから、自然とファッションにも興味があり、布を使った作品に行き着いたのかなと思っています。最初は『星の王子さま』に出てくる象をイメージしてデフォルメした動物をモチーフにしていました。最初に作ったのは20年前、出だしは時間はかかりましたが、なんとか続けて来れました。
Koki Abe (以下、A): 僕は元々ファッションの勉強をしていて、キャリアの始まりはウィメンズブランド、まさにモード最前線という感じでした。そんな中、 KHOKI というブランドを始めるにあたって、もう少し自分の背景を知る必要があると思い、自分の生まれ育った環境に帰るタイミングが増えたんですよ。僕は山梨の清里という町出身なのですが、自分の生まれ育った町はアメリカ人が開拓した土地で、日本の田舎の風景にアメリカナイズされた牧場や教会、フォークアートが入り混じる不思議な町でした。当時は知らなかった背景ですし、ただただ何もない町という印象で、ある意味アンチテーゼ的な気持ちで上京してきたのですが、改めて地元に帰ってみると、手仕事を感じられるヴィンテージキルトやフォークアートが身近にあった。手仕事に美しさと尊敬の念を感じるようになりました。今はその感覚が、KHOKI の物作りの根幹である「人の手が見えるモノ作り」という表現に繋がっています。
—“手仕事”という表現で繋がる KHOKI と MASAYUKI KINUTA さんのコラボレーションが実現した経緯を教えてください。
A: 初めてのコラボレーションは昨年の冬。KHOKI を取り扱いをしてくれている、名古屋のセレクトショップ kink (キンク) さんで、KINUTA さんがイベントをされていて、お店の方が、「コラボレーションをしてみたら」と繋げてくれました。昨年のコラボレーションは kink さん、2回目となるコラボレーションは DOVER STREET MARKET GINZA (ドーバー ストリート マーケット ギンザ)さんが声をかけてくれたことで実現しましたね。誰かが声をかけてくださるおかげで、僕たちの表現できる場ができた。とてもありがたいことですよね。
K: 初めて Abe さんと出会ったときは、僕の勉強不足で KHOKI のことをあまり存じ上げていなかったのですが、最初から僕をリスペクトしてくれる感じがしました。だから、コラボレーションをやりましょうと話が進んだときには、素直に良いものを作りたいと言う気持ちになりましたね。前回のコラボレーションでは1度しか実際に会っていないんですよ。
A: KINUTA さんは初めて出会ったときから違和感がなく、うちのスタッフとも自然なリレーションシップをとってくれる。今回のインスタレーションのビジュアルは、友達の家に行くような感覚で KINUTA さんのアトリエに行って、撮影しました。コラボレーションって、ナーバスになる部分もあると思うのですが、KINUTA さんとの場合は、同じチームで一緒に働いているような感覚ですね。自分がやるべきことがそれぞれ分かっていて、とても健康的なものづくりができています。
—KHOKI が集めたヴィンテージキルトやオリジナル生地で作られた猫の“布の彫刻”、半立体作品がドッキングされたヴィンテージのトートバッグ、オリジナルTシャツなど、今回のコラボレーションでの具体的な制作プロセスを教えてください。
K: 布の彫刻のプロセスでいうと、 KHOKI が集めたキルトやオリジナルの生地のはぎれがまとまって送られてきて、それからどう作品を作るかは僕に任されています。柄や色の当てこみは、1体ごとに似たものが出ないようにと工夫しながら、できるだけバリエーションを出すようにしています。どうしても後半になるとデザインが偏ってしまうので、そうならないように初めから意識しながら、今回は計33体の作品を作りました。ヴィンテージキルトは数が少なかったのですが、より良い組み合わせができて僕も嬉しかったです。
A: KINUTA さんの作品を見ていると、耳や鼻のようなわずかな面積の部分にまで、驚くほど丁寧に生地が当て込まれているのがわかります。しかもその布の組み合わせは偶然ではなく、意図が感じられる組み合わせというのが、本当にすごいですよね。細部まで目を凝らしてみると、ヴィンテージの古い生地同士の組み合わせが絶妙で、立体になる前から好きだった布が、さらに別の布と隣り合わせになることで魔法をかけられたように感じられる。そのおもしろさに惹きつけられます。僕たちは KINUTA さんの作品をファッションのフィールドに持ち込むため自分たちが身につける時にしっくりくるトートバッグや、プリントTシャツを作りました。トートバッグはヴィンテージのものを仕入れ、バッグの色と半立体の作品が合うようにチームでそれぞれ色合わせをし、全て手で縫い合わせています。Tシャツは KHOKI の定番ボディをベースにしつつ、通常より丈を短くしたボックスシルエットにアレンジしています。架空のイベントTシャツをテーマにしたプリントの一部にトロンプルイユ風にパッチワークを施しています。
—今回制作された什器に関してはどうでしょうか。
A: KINUTA さんの猫の“布の彫刻”は躍動感があり、まるで生きているようなリアルさがあるので、その猫が生活している姿が自然と浮かび上がるようなデザインにしたいと思ったんです。そこで、猫のサイズに合わせたドールハウスを制作しました。ただ作品を並べるだけではなく、猫が窓から顔を覗かせている姿など、猫らしい仕草が感じられる見え方にしたら面白いなと思いながら作りました。
—お二方は繊細で幅広い布地を素材として扱われていますが、テキスタイルについてこだわりがあれば教えてください。
K: 僕の作品はどんな布を使うかで大きく変わるので、材料とする生地を何にするのかが、1番大事なことだと思ってます。結構難しいのですが、市販では売られていない生地を探すことがこだわりです。今は一緒に作品を作っている人たちからの情報を頼りに、色んな生地を探していますね。今回だと KHOKI さんから布を提供してもらい、新しい作品を作ることができたので、モチベーションに繋がりましたし、ラッキーだなと思っています。
A: 僕たちは奥行きがあるヴィンテージの生地の質感に憧れを抱いているのですが、KHOKI のミッションはそれらの布が持つ儚さや美しさをオリジナル生地でも作ることだと考えています。ブランドとして量産できる環境があるからこそ、ヴィンテージが持つパワーをオリジナルでも表現したい。手仕事に100%魅力を感じていない方たちにも、手仕事の良さを伝えていきたいと感じています。
-最後に、今回のインスタレーションやコラボレーションアイテムで注目して欲しいポイントを教えてください。
K: 手作業のパワーや遊び心を感じて欲しいです。猫の家のようなドールハウスの什器は、僕自身も作品がどんな風に見えるかとても楽しみにしていた部分です。お客さんにはどんな形であれ、印象に残るものが作ることができていたらいいなと思っています。
A: お越しいただいた方には、ぜひ作品を手に取って欲しいです。猫を飼っている方はわかると思うのですが、KINUTA さんの作品を撫でて触ってみると、背中の曲線や重みが本物の猫に感じられて驚くと思います。それが猫の“布の彫刻”と呼ばれる所以だと思うんですよね。ただ観るだけではなくそこまで踏み込んで、楽しんでいって欲しいです。












