TARO HORIUCHI x Takashi Homma

【ファッション写真連載】vol.05 ホンマタカシ × TARO HORIUCHI

TARO HORIUCHI x Takashi Homma
TARO HORIUCHI x Takashi Homma
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【ファッション写真連載】vol.05 ホンマタカシ × TARO HORIUCHI

TARO HORIUCHI x Takashi Homma

by Miwa Goroku

VERSUS TOKYOで初のランウェイを披露した2015年春夏シーズンは奥山由之、続く15-16年秋冬ではロンドンを拠点に活動する Dan Wilton (ダン・ウィルトン) を起用するなど、シーズンによってさまざまなフォトグラファーを起用している堀内太郎=TARO HORIUCHI デザイナー。一方のプレコレクションでは 、2015年プレスプリングから 3シーズンにわたり一人のフォトグラファー、ホンマタカシとのタッグを続けるという、ユニークなスタンスでヴィジュアルを生み出し続けている。自身も学生時代に写真を専攻した経歴を持つ彼の、写真に対するこだわりとは?

VERSUS TOKYOで初のランウェイを披露した2015年春夏シーズンは奥山由之、続く15-16年秋冬ではロンドンを拠点に活動する Dan Wilton (ダン・ウィルトン) を起用するなど、シーズンによってさまざまなフォトグラファーを起用している堀内太郎=TARO HORIUCHI デザイナー。一方のプレコレクションでは 、2015年プレスプリングから 3シーズンにわたり一人のフォトグラファー、ホンマタカシとのタッグを続けるという、ユニークなスタンスでヴィジュアルを生み出し続けている。自身も学生時代に写真を専攻した経歴を持つ彼の、写真に対するこだわりとは?

Spring 2016 "In Bloom" | Photography Takashi Homma

Spring 2016 “In Bloom” | Photography Takashi Homma

ホンマタカシ × TARO HORIUCHI

— ホンマさんとタッグを組んだ最初のきっかけは?

単純にホンマさんの写真の一ファンだというのが一番の理由です。僕は『relax』や『Purple』世代だから、雑誌を介してホンマさんの写真に触れることが多かった。カルチャー的なインスピレーションも多く受けたし、記憶にも強く残っています。

Spring 2016 "In Bloom" | Photography Takashi Homma

Spring 2016 “In Bloom” | Photography Takashi Homma

— プレとメイン、どんな住み分けをしていますか?

シーズンごとに比較的コンセプチャルに作り込んでいくアプローチのものがメインコレクション。時間をかけて蓄積していくブランドのベーシックにツイストを加えていくものがプレコレクションでしょうか。それぞれに異なるスピード感を両立させるのが面白い。プレコレクションでは、コントロールしない面白さや豊かさを加えたいという考えもあって、ホンマさんにお願いしています。

— つまり、じっくり取り組む相手がホンマさん。

アーティストとしてホンマさんは、自分がやりたい事にナチュラルな姿勢があるように思います。撮影では、ブランドと自分の作った服をいかに料理してもらうかを楽しんでいます。一方のメインコレクションでは、よりヴィジュアルを考えながらコントロールして、自らの世界観を強めることを意識しています。

— ロケ撮影が多いですよね。

地域性を入れたほうが面白いかなと考えています。僕自身、海外が長かったせいもあり、日本で撮ること自体が新鮮に感じることもあります。

— 撮影のプランはどのくらいシェアしますか?

シーズンによっても違うのですが、ホンマさんにはまずシーズンのコンセプトなどをお話します。その後、少しのコメントのやり取りを交わしてリサーチするのですが、あとは基本的にお任せです。普段の仕事のやり方として、僕はどちらかというとコントロールフリークなので、アーティストの完成に委ねるという作業は非常に興味深いものです。

Spring 2016 "In Bloom" | Photography Takashi Homma

Spring 2016 “In Bloom” | Photography Takashi Homma

Spring 2015 "Study For A Landscape" | Photography Takashi Homma

Spring 2015 “Study For A Landscape” | Photography Takashi Homma

Spring 2015 | Photography Takashi Homma

Spring 2015 | Photography Takashi Homma

—  撮影ではどんな女性像をイメージしていますか?

都市で生活する人。感覚的には、ホンマさんは服よりも人を撮っているような気がします。作り込んだものではなく、自分たちの住んでいる環境で撮るというのが面白い。たとえばホンマさんに初めて撮ってもらった15年プレスプリングは、アトリエの半径100mくらいで撮影しました。モデルは全員日本人で、そのうちひとりは僕の親類だったり。東京で作られた服を、東京の女性が着て、東京で撮るというような、何層ものレイヤーに面白さを感じます。

— 続くプレフォールで外国人を起用したのは?

実は当初、中国の写真家を呼ぼうと企んでいました。Zhu Lan Qing (朱嵐清 / ヂュー・ラン・チン) というまだ20歳くらいの若い写真家なんですが、おばあちゃんの服を着て自撮りするという作品を撮っていて、これがすごく面白い。考えていたのは彼女に東京に来日してもらいTARO HORIUCHIの服を着て、モデルと一緒に観光をしながら写真を撮り、さらにその撮影風景をホンマさんに撮ってもらうというプラン。ただ、彼女のビザが下りないというハプニングがあり、あえなく断念しました…… 実際の撮影では、外国の女性が東京に来るというストーリーだけ生かし、モデルの子が観光しているようなイメージでホンマさんに撮ってもらいました。

Autumn 2015 "Only Yesterday" | Photography Takashi Homma

Autumn 2015 “Only Yesterday” | Photography Takashi Homma

Autumn 2015

Autumn 2015

— 一方の2015-16年秋冬メインコレクションは、海外での撮影ですね。

ロンドンでストリートキッズをキャスティングしました。撮影を頼んだのは、現地のフォトグラファーのDan Wilton (ダン・ウィルトン)。彼女は、James Blake (ジェームス・ブレイク) などミュージシャンやアーティストを多く撮影していて、インディペンデントな人たちとつながっています。いろいろ話をした上で、フォトグラファー自身が生活する中で面白いと思っている場所で撮ってもらうことにしました。東京で作られた服が、イギリスのフォトグラファーによってイギリスで撮られる。その化学反応が面白いなと。

— 堀内さんがいま、興味があるのはどんな写真でしょうか?

僕は、いわゆるファッションフォトグラフィーではなく、他ジャンルで活躍している人に撮ってもらうのが面白いかなと思っています。服はどうしても作られた世界になるので、写真ではその真逆であることに興味がある。できるだけ作られていない写真がいい。たとえばフラワーアーティストの東信さんのパートナーで、ずっと花の写真を撮っている椎木俊介さんにファッションフォトを撮ってもらったらどうだろうだろうか? 違う側面から撮ってもらうことで、違う何かが見えてくるんじゃないか、とか、そういう方向にも興味があります。

 

Autumn 2015

Autumn 2015

Autumn 2015

Autumn 2015

— 堀内さんにとって、ホンマさんの写真の魅力は?

ある存在そのままを撮るところ。ホンマさんは、1カットにつき3枚程度しか撮らない。しかも写真はトリミングをせずに使用しているので、そのスピード感の中で見えていてトリミングの必要のない写真を撮るところにも凄味を感じさせます。

— 確かに彼にしか見えていない、何かがありそうです。

ですよね。でもそう考えると、写真で気にしているものって何だろうって思います。荒木経惟さんが撮ったBottega Veneta (ボッテガ・ヴェネタ) にしても、レタッチとか入れてなさそうだし。その生々しさや粒子に魅力を感じます。

— 将来、堀内さん自身が撮る可能性は?

Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) とか Hedi Slimane (エディ・スリマン) とか、自分で撮影しているデザイナーってけっこういますよね。僕にはまだそんな度胸はないです(笑)

Taro Horiuchi

Taro Horiuchi

<プロフィール>
堀内太郎 (ほりうち・たろう)
1982年東京生まれ。15歳で渡英し、ロンドンのキングストン大学で写真を専攻。その後、服飾科に進学し、アントワープ王立美術アカデミーに入学。在学中にイタリアのコンペティションITSでディーゼル賞を受賞し、DIESELカプセルコレクションを13カ国にて発表。2007年に同校を主席で卒業。同年、2008年春夏東京コレクションウィーク中に、21_21DESIGN SIGHTで行われたイベント「ヨーロッパで出会った新人達」展に参加。08年渡仏後、NINA RICCIのデザインチームに参加。翌年、2010年春夏シーズンに自身の名前を冠したブランドTARO HORIUCHIを立ち上げる。12年、第30回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。14年VERSUS TOKYO参加。
HP: tarohoriuchi.com