French Brands Say 'Non' To The See Now Buy Now Trend

「ショーで見てすぐ買える」風潮、ファッションの本場フランスでは冷ややかな反応も

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「ショーで見てすぐ買える」風潮、ファッションの本場フランスでは冷ややかな反応も

French Brands Say 'Non' To The See Now Buy Now Trend

NY、ロンドン、ミラノに続きファッションウィークの風は本場パリへ。毎シーズン数え切れないほどのデザイナーが新作を発表し、新たなトレンドが生まれるファッションウィークだが、これほど多くの業界人が一つの命題に向けて真剣に取り組んだシーズンがこの5年の間にいくつあっただろうか。ちなみにその命題とは、「ノームコア」では無い。ましてや「ジェンダーレス」でも「アヴァンギャルドの復権」でも無く、「ショーで見てすぐ買える」というファッションショーの新しいあり方に対するものだ。

2016年「フェブラリー」コレクションを発表したばかりの Christopher Bailey (クリストファー・ベイリー) による Burberry (バーバリー)

2016年「フェブラリー」コレクションを発表したばかりの Christopher Bailey (クリストファー・ベイリー) による Burberry (バーバリー)

NY、ロンドン、ミラノに続きファッションウィークの風は本場パリへ。毎シーズン数え切れないほどのデザイナーが新作を発表し、新たなトレンドが生まれるファッションウィークだが、これほど多くの業界人が一つの命題に向けて真剣に取り組んだシーズンがこの5年の間にいくつあっただろうか。ちなみにその命題とは、「ノームコア」では無い。ましてや「ジェンダーレス」でも「アヴァンギャルドの復権」でも無く、「ショーで見てすぐ買える」というファッションショーの新しいあり方に対するものだ。

これまでバイヤーやジャーナリスト、編集者、そしてスタイリストといった一部のファッション業界人のみに向けて発表されてきたファッションショーを、ソーシャルメディア時代の消費者に向けたものに刷新するという新方針は、昨年の12月に米国ファッション協議会 (CFDA) によって提議され物議を醸した。そしてそれに続いて先月には Burberry (バーバリー) のクリエイティブ・ディレクター兼 CEO Christopher Bailey (クリストファー・ベイリー) はメンズ、ウィメンズを統合し、ランウェイの発表直後から店頭での展開を開始する方針を発表している。

それに続いて Tom Ford (トム・フォード) Proenza Schouler (プロエンザ・スクーラー)rag & bone (ラグ&ボーン)Michael Kors (マイケル・コース) など多くのニューヨークデザイナー、そしてパリでは Julien Dossena (ジュリアン・ドッセーナ) による Paco Rabanne (パコ・ラバンヌ) が「すぐ買える」施策への転換を表明している。

I can show my collections and sell them and give people the time to make their choice, to order them and to make them beautifully produced and editors can photograph them

それに対して「ちょっと待った」と言わんばかりに割って入ってきたのが Kering (ケリング) グループ会長の François-Henri Pinault (フランソワ・アンリ・ピノー)Gucci (グッチ) Balenciaga (バレンシアガ)Saint Laurent (サンローラン) など名だたるラグジュアリーメゾンを傘下に抱える同グループの総帥は、消費者主権のファッションショーの開催方法について明確な異議を唱え大きな話題を呼んでいる。またその直後にはフランスオートクチュール・プレタポルテ連合協会 (Fédération Française de la Couture du Prêt-à-Porter des Couturiers and Créateurs de Mode、通称サンディカ)のプレジデントである Ralph Toledano (ラルフ・トレダノ) 同様の異議を表明。米『WWD』の取材において同氏は「パリがファッションの中心地であることは議論の余地も無いでしょう。そして私たちの協会の加盟メゾンにおいて言えば、旧式のファッションショーの開催方法は未だ有用なものだと認識しています。」と発言している。

木材やストロー材など、再生可能な素材を用いた「エシカルファッション」を提案した今季2016年春夏 Chanel (シャネル) オートクチュールコレクション

木材やストロー材など、再生可能な素材を用いた「エシカルファッション」を提案した今季2016年春夏 Chanel (シャネル) オートクチュールコレクション

次々と波紋を呼ぶ「See Now Buy Now」ブームだが、ここまで来たらかの皇帝も黙ってはいられない。Chanel (シャネル) Fendi (フェンディ) というラグジュアリーメゾン2社を手がける、ファッションの世界における祭後の砦 Karl lagerfeld (カール・ラガーフェルド) は先週ミラノにて発表された Fendi (フェンディ) のバックステージにてBusiness of Fashion』の取材において「(ショーで見てすぐ買える施策について聞かれ) めちゃくちゃだ。」とコメント。またファッションショーのあり方について以下のように語り、「すぐ買える」ブームを一蹴している。

「私がファッションショーにてコレクションを発表するのは、それを見た顧客がじっくりと時間をかけて吟味し、工房のスタッフが最高の品質の製品を万全の状態で生産し、また同時にエディターたちがその作品を美しく表現してくれるから。もしそれが無くなったら、何もかも終わりだ。」

インタビュー内において同氏は、ファッションショーのあり方はブランドの企業規模や実店舗の有無、そしてターゲットなどによっても異なるとし、少なくとも Fendi (フェンディ)Chanel (シャネル) においては従来の発表方法を継続するとの見方を示した。

ファッション業界の常識を根底から覆す「すぐ買える」トレンドだが、いずれにせよ今季2016-17年秋冬ファッションウィークにおける各ブランドの困惑ぶりを見ると、足並みを揃えるにはまだ時間がかかりそうだ。