Let's Think About Giorgio Armani's Fur-Free Announcement

Giorgio Armani (ジョルジオ・アルマーニ) が毛皮の使用廃止を発表、ファッションとエシカル思想の今後は

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Giorgio Armani (ジョルジオ・アルマーニ) が毛皮の使用廃止を発表、ファッションとエシカル思想の今後は

Let's Think About Giorgio Armani's Fur-Free Announcement

Giorgio Armani (ジョルジオ・アルマーニ) が今後自身のコレクションにおいて毛皮に使用を廃止することを発表。ファッションと倫理観、今後の行く末やいかに。

来る日も来る日もニュースリリースで埋め尽くされるメールボックス。そんな中ひときわ目を引く件名、「アルマーニが毛皮を廃止」。送り主はNPOの動物愛護団体だ。内容を見ると、Giorgio Armani (ジョルジオ・アルマーニ) 氏本人の発表により、2016年秋冬コレクションからリアルファーの使用を廃止するとのこと。半信半疑でブランドの担当者に問い合わせたところ、事実アルマーニ グループは国際連盟「Fur Free Alliance (ファー・フリー・アライアンス)」との合意のもと、全ての製品において天然の毛皮の使用を廃止すると発表したとのこと。ファッション業界で長きに渡り議論を呼んできた毛皮の使用に対する是非だが、Giorgio Armani ほどのビッグネームが社を上げてアンチ・ファーを表明したとなれば事態は一様ではない。ファッションと毛皮、そして倫理観、ここで今一度これらのあり方について考えてみよう。

まずファッションデザイナーにとって長い間毛皮が必要不可欠な素材であったことは言うまでもないだろう。そのしなやかな手触りや表情豊かな素材感、そして入手困難だからこそ生まれるエクスクルーシブさは、ラグジュアリーの価値観と常に同じ文脈で語られてきた。そのことは Paul Poiret (ポール・ポワレ) のシグネチャーであるオリエンタルモチーフのコートにあしらわれたブラウンカラーのテン (セーブル) のトリミングを見れば分かるはずだ。

世界で初めて毛皮を用いないプリントのレオパードが発表されたのが1947年のこと。製作したのは他でもない、Christian Dior (クリスチャン・ディオール) だ。しかしながら、当時のファッションといえば大衆文化ではなく上流社会に向けたものであり、ムッシュ・ディオールが発表した世界初のアンチ・ファー” 作品も、あくまで表現方法の一環であったことを考えると、その後動物愛護に対する気風が高まるのに30年以上もの時間を要したことにも納得がいく。

恐らく世界中で最もよく知られる動物愛護団体である PETA (People for the Ethical Treatment of Animals、動物の倫理的扱いを求める人々の会) が誕生したのが1980年。1985年には Trans Species Unlimited (トランス・スペイシーズ・アンリミテッド) CAFT (Coalition to Abolish the Fur Trade、毛皮貿易を廃止する連合) 2つの活動団体による世界初のプロテストが NY にて行われている。ちなみに Trans Species Unlimited の代表である George Cave (ジョージ・ケイヴ) Cres Vellucci (クレス・ヴェルッチ) 1986年から定年で開催している「Fur-Free Friday (ファー・フリー・フライデー)」は今なお世界中から賛同を集め、盛大に祝われている。

ファッション業界きっての動物愛好家である Stella McCartney (ステラ・マッカートニー) が台頭したのが90年代。レディ トゥ ウェアはもちろんのこと、バッグに使用されるレザーですら排した人気シリーズ「ファラベラ」は、エシカル思想とファッショナブルであることが両立可能であることを堂々と証明した。また同じく菜食主義者の Vivienne Westwood (ヴィヴィアン・ウェストウッド) も自身のコレクションでリアルファーを用いないことを発表している。そして毛皮の使用についての議論が活発化したのもこの頃だ。

Shrimps 2016年プレスプリングコレクション

Shrimps 2016年プレスプリングコレクション

とはいえフェイクファーがリアルファーの代替品として十分な役割を果たせるのかというと、些か疑問が残るというのが正直なところだ。フェイクファーは多くの場合手触りが悪く、耐久性などの面においても不十分な点が多い。そもそも最上級の素材を用いることが大前提であるラグジュアリーファッションの世界において、リアルなフェイクファーという “まやかし” は必ずしも魅力的な提案ではないはずだ。昨今ではフェイクファーの素材感をあえて全面に押し出し人気を博すイギリスのブランド Shrimps (シュリンプス) やイタリアの Alabama Muse (アラバマ・ミューズ) なども登場しているが、その一方で Fendi (フェンディ) は毛皮だけに特化したオートクチュールショー「オート フリュール」を昨年発表し、リアルファーが依然高い需要を保っていることを示している。「肉食文化の現代において毛皮製品の是非を問うこと時代がナンセンス」とかつて言い放った Karl Lagerfeld (カール・ラガーフェルド) は同コレクションの発表に際して『WWD』のインタビューで、良質な毛皮の流通が毎年入手困難になっていることを嘆き、その上で本物の毛皮の美しさが他に代え難いものとしてコメントしている。

このことから分かる通り、ファッションという小さな世界において見ても毛皮に対する見解は全くの平行線をたどっているというのが現状だろう。殺傷が悪である、ということは誰にでも分かるが、それのみによって毛皮を全くの悪として捉え、全面的に使用を禁ずるには状況が複雑すぎる。しかしながら、否、だからこそアルマーニによる今回発表した方針は、単なる一企業の CSR としてだけではなく、間違いなく業界全体に波紋を広げる重大な意味を持っている。賽は投げられた。