【香料連載】 第3回 ラベンダー
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【香料連載】 第3回 ラベンダー
open the door to a new world of scents vol.3 Lavender
photography: So Mitsuya
text: AYANA
edit: miwa goroku
フレグランスを構成する<香料>を軸に、ファッションフレグランスからニッチなメゾンフレグランスまで、気になる香りをピックアップ & アーカイブしていく本連載。ビューティライターの AYANA が香りの魅力を紐解きます。ヴィジュアルは、独自のデジタルコラージュで注目を集める写真家・三ツ谷想が担当。3回目のテーマは「ラベンダー」。リラックスを誘う香りとして有名ですが、その裏にはもっと野性的な匂いが隠れているようです。
ラベンダーはあまりにも有名で、身近で、親しみやすく、万能な薬草(メディカルハーブ)です。アロマテラピーやガーデニング、オーガニックコスメ、植物療法などの世界に足を踏み入れたら、まず避けては通れないポピュラーな存在でしょう。ラベンダー精油はかなりマルチな機能を持っており、抗菌や沈静、心身のバランス調整など、じつに150種類以上の効能が認められています。有能ながら比較的安価で手に入りやすいことも、広く知られる理由のひとつではないでしょうか。
ラベンダーの代表的なイメージといえば「癒し」。興奮を鎮めて安眠したいとき、リラックスしたいとき、ラベンダーの存在を思い出す人は多いかもしれません。あるいは、ドライフラワーやポプリのイメージも?ドライになっても美しい紫を保つラベンダーは、ヨーロピアンカントリーな雰囲気を醸し出し、空間をノスタルジーで満たしてやわらかにみせてくれます。
しかし意外と、フレグランスの世界でラベンダーが癒しのキャラを発揮することは少ないのです。ラベンダーが大きく活躍するのは、オークモスやトンカビーン、ゼラニウムなどとアコードを作るフゼアノート。ハーバルなすがすがしさと、土っぽい重厚感が混ざり合ったメンズフレグランスです。きりっとしたなかに渋さもあるかっこいい香りに、ラベンダーはよく似合います。
ラベンダーは万人ウケする香りと捉えられがちですが、実は結構好き嫌いが分かれる、というのもおもしろいところ。甘さの奥に苦みがあり、さわやかさの後に渋みがやってくる……けっしてかわいい香りではないばかりか、相反する要素が同居していて、意外と複雑な性格だったねあの人、みたいな。とはいえその多面性ゆえに、癒しの世界にもダンディな世界にも君臨できてしまうんですよね。