Ayumi Hamamoto × Chika Kisada
Ayumi Hamamoto × Chika Kisada

濱本愛弓の試着歩き #1 Chika Kisada

約70mもの生地を使いながら、軽やかな着心地のチュールドレス。Chika Kisada 2021年春夏コレクションより

Ayumi Hamamoto × Chika Kisada

photography: kyohei hattori
interview & styling: ayumi hamamoto
text: miwa goroku
edit: miwa goroku, mikiko ichitani

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スタイリストの濱本愛弓が気になるブランドのアトリエやプレスルームを訪ね、最新アイテムをチェック&試着してまわる連載がスタート。スタイリスト×デザイナー=ファッションの最前線を走る者同士の、ファッション愛に満ちた会話とともにお届けする。第1回目に訪れたのは、Chika Kisada (チカ キサダ) のアトリエ兼オフィス。“パンクのエレガンス” をコンセプトに、元バレエダンサーの幾左田千佳が手がける人気急上昇中のウィメンズブランドだ。

濱本愛弓の試着歩き #1 Chika Kisada

2018年9月、ミラノファッションウィークに初参加しショー形式でコレクションを発表。続くパリでも展示会を開催し、認知度を一気に高めている Chika Kisada。国内外で取り扱いが増える中、今年8月にはプレスルームを都心へと移転。コロナの状況下にありながら「リースなどのお問い合わせはむしろ増えています。作業が追いつかず、泣く泣くお断りすることもあるくらい」とデザイナーの幾左田さんは今日も忙しそう。こうして話している間にも、問い合わせの電話が鳴ったり、リース返却のインターホンが鳴ったり……

Chika Kisada プレスルームにて

 

濱本愛弓 (以下、H) : チカさんは、デザインからリース対応まで全部 1人でやってるんですよね!?

幾左田千佳 (以下、K) : そうなんです。ありがたいことに最近はリクルートのお問い合わせをたくさんいただくようになり、いずれは人数を増やしたいと考えているところです。

H: すごいな。私はいつも展示会でお洋服を拝見していて、プレスルームにお邪魔するのは初めてなので、今日すごく楽しみにしていました。

K: いつもありがとうございます。

H: 私、Chika Kisada で毎シーズン必ずチェックするシリーズがあるんです。最近のアイテムでいうと 2020年秋冬のフリンジのトップス、これはかなりヘビロテです。レザーっぽく見えるテープコーティングでできた服なんですが、いろんな着方ができるし、ものすごくバエます。21年春夏でオーダーしたのは、このビジューのトップスの黒。今日は、色違いのクリアを試着してみてもいいですか。

Tシャツの上、ジャケットの下、コートの上…… いろいろ着まわせそうなビジューのトップス (¥46,000)。ナチュラルな質感の麻のテーラードジャケット (¥88,000) は、切っぱなしのディテールと大きめサイジングがユニセックスで楽しめそうなムード。

K: このビジューの服はパターンを使わず、職人さんに手作業で組んでもらっています。

H: その手間を考えたら、かなりお値打ちですね。チカさんの服を着てると、それどこの? とよく聞かれます。去年一番聞かれたのは、ナイロンの羽織かな。ドレスみたいにフワッとしたシルエットで、着やすいのにカジュアルにならないところがお気に入り。ロケで大活躍です。

K: 撥水機能があるから、雨の日にも着れていいですよね。羽織りなんですが、閉じるとちょっとしたドレスにもなったり。Chika Kisada の服は、日常着であることを大切にしています。

2着目に試着したのはチュールのドレス (¥280,000)。上からチュールのブラウス (¥40,000) をレイヤード。こちらのブラウスはブロードブラウスとセットになった 4WAYのデザインで、今日はチュールだけを外してコーディネイト。

H: わ !  軽い ! Chika Kisada のチュールドレス、自分で着るのは初めてです。

K: 生地は70mくらい使用していますが、重さを感じないドレスに仕上げています。

H: しかも今、着やすくてびっくりしてます。ドレスの前後さえわかれば、あとは上から体をスポッと入れるだけ。サイズ展開はあるんですか?

K: フリーサイズです。身長が高くない人でもお直しはいらないくらいの丈感。背の高い人が着たらまた違うバランスできれいに見えるようにつくっています。

H: こういうチュールだけのドレスって、意外と見つけるのが難しいんです。日本だと裏地をつけることが多いから。Chika Kisada のドレスは自分の組み合わせでコーディネイトできるから、すごく楽しい。

K: ドレスはショーをきっかけにつくり始めたのですが、想像以上に多くのお問い合わせをいただいています。今年は8月に開催するバレエ公演の衣装監督を担当することになったんです。雑誌の撮影やウエディングで着てもらうのとはまた違った雰囲気になると思うので、私自身今からとても楽しみにしています。

H: チカさんはいつバレエを始めたんですか?

K: 3歳からクラシックバレエを始めました。今は健康目的の趣味になってますが、ずっとバレエスタジオには通い続けています。バレエに対する憧れや慈しみが幼少時からあって、自分の名前でブランドを出す時は、バレエのコンセプトでつくりたいとずっと思っていました。

H: バレエの衣装監督のオファーは、すごく嬉しいですよね。

K: そうなんです。バレエの衣装はいつかつくりたいと思っていて、思いのほか早く声がかかったので。着る人によって個性が際立つデザインを生み出していきたいです。

デザイナーの幾左田千佳さん

H: チカさんは、こういう人間になりたいとか、将来の自分像ってありますか。

K: 憧れの人はいろんなジャンルにたくさんいます。全体的なバランスでいうと、やっぱり Pina Bausch (ピナ・バウシュ)。見た目も精神性も、彼女が作り上げる世界観も、そのすべてが圧倒的にかっこよくて憧れています。日本人でリスペクトしているのは、ピアニストの向井山朋子さん。エレガントでありながら強い、それが2人の共通点であり、自分も目指していきたいところです。

H: 仕事は自分にとってどんな存在ですか? 私の場合、好きなことが仕事になっているので、仕事に関してはノンストレスなんです。生きていく上で必須のもの。

K: 私も同じかな。好きなことを仕事にできていて、完全に生活の一部です。体を休める意味でのオンオフはあるけれど、旅行や遊びに出かけている時も、ついモノをつくるためのフィルターでいろんなことを見てしまう。ハッとするものに出会えると、吸収したいと思う。

H: これからについて、考えていることや目標はありますか。

K: 今コロナで生活が一変して、いろんなことを考えますよね。私の場合、SNSとの付き合い方が変わって、ポジティブなパワーをもらってます。お客様やファンの方の声を聞く機会ってこれまであまりなかったんですけど、今は SNS を通してダイレクトに届いてくる。ファッションの無力さを後ろめたく思う時もあったけど、みなさんからの温かくて嬉しいメッセージを読むたび、ものすごく救われてます。

ビジュートップスを持つ手元はデザイナーの幾左田さん。宝石集めが趣味で手元にはリングがたくさん

H: コロナ禍の中で、私は買い物の仕方が変わりました。手元に置いておくものは、ずっと大切にしていきたい。

K: 私も同じ気持ち。着ることで昨日までの自分と違う気持ちになれるとか、人の心に入るデザインをどうやったら生み出すことができるかを、日々悶々と考えています。人の心に寄り添うことのできる服は、安易なデザインではかなわないと思うから。これからの Chika Kisada は、そこをもうちょっと濃くしていきたいです。

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