open the door to a new world of scents vol.9 Rhubarb

【香料連載】 第9回 ルバーブ

Miller Harris (手前上): ルバーブを中心に、アールグレー、ローズ、ベルガモットを散りばめたさりげない美しさ。kerzon (同下): ローズ、ムスク、ウッディの甘美な大人の世界に、ルバーブとカラブリアンベルガモットが眩しい希望を添えていく

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【香料連載】 第9回 ルバーブ

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photography: So Mitsuya
text: AYANA
edit: Miwa Goroku

フレグランスを構成する<香料>を軸に、ファッションフレグランスからニッチなメゾンフレグランスまでをピックアップ & アーカイブ。ビューティライターの AYANA が毎回のテーマに沿って、香りの魅力を掘り下げていく本連載。今月フォーカスするのは「ルバーブ」。ちょっといいレストランで出会う食材のイメージが先行しがちですが、探してみると多くのフレグランスに香料として使われています。さて、その特徴は。撮影は、デジタルコラージュの手法にますます磨きがかかる写真家・三ツ谷想が担当。

ルバーブは、日本ではまだそこまで馴染みのない食材ですが、欧米ではかなりポピュラーな存在。セロリのような茎には赤と緑の美しいコントラストがあり、そこにドラマティックな葉があわさったビジュアルは強烈な印象を残します。食用部分は茎のみで豊かな酸味があり、ジャムをはじめパイやクランブル、肉料理のソース、サラダなどに使われます。

香りにおけるユニークな点は、生の状態と加工した状態で、放つ印象がガラリと変わるところにあります。生のときは青々としたグリーンの香気に強い酸味が合わさっていますが、たとえば煮詰めてジャムなどにすると、酸味はまろやかになり、トロピカルな甘酸っぱさが生まれてきます。この多面的な香りのレンジは、ルバーブがフレグランスの世界において幅広く愛される理由のひとつといえるでしょう。

Hermès (手前) : 2016年にエルメスの香水クリエーション・ディレクターとなったクリスティーナ・ナジェルによる香り。緑と赤のコントラスト、カリッとした噛みごこちと煮詰めたやわらかさ、シャープな酸味とまろやかな甘み……ルバーブが持つ2面性を豊かに表現

ルバーブの香りには「カリッとした」という表現がよく使われます。みずみずしくジューシーな茎をカリッと噛んだような、あるいはスパッと切ったような、酸味を伴うフレッシュな透明感。そこには開放的な季節の始まりを告げるポジティブな空気が感じられます。ですがそれだけではなく、トロピカルな側面から放たれるエキゾチックなニュアンスや、ジャムのような蜜の感触、さらには幼少の頃のおやつの時間を思い出させてくれるノスタルジーが含まれているのです。

クラシックなフローラルブーケにはモダンなひねりを。ミステリアスなムスキーノートにはポジティブな余韻を。濃密なグルマンノートには爽やかな清涼感を。あらゆる香調とぴったりマッチし、幸福をともなった意外性をさりげなく添えていくその手腕はルバーブならではのものです。

ADDICTION (手前左): 気配を香りに映したようなブレンド。その人のパーソナリティが透明感をおびて浮かび上がるよう。DAWN Perfume (同右): 鮮やかな爽快感とピュアな蜜。桃源郷に存在する果実のようなルバーブの二面性を表現した香り