【香料連載】 第9回 ルバーブ
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【香料連載】 第9回 ルバーブ
open the door to a new world of scents vol.9 Rhubarb
photography: So Mitsuya
text: AYANA
edit: Miwa Goroku
フレグランスを構成する<香料>を軸に、ファッションフレグランスからニッチなメゾンフレグランスまでをピックアップ & アーカイブ。ビューティライターの AYANA が毎回のテーマに沿って、香りの魅力を掘り下げていく本連載。今月フォーカスするのは「ルバーブ」。ちょっといいレストランで出会う食材のイメージが先行しがちですが、探してみると多くのフレグランスに香料として使われています。さて、その特徴は。撮影は、デジタルコラージュの手法にますます磨きがかかる写真家・三ツ谷想が担当。
ルバーブは、日本ではまだそこまで馴染みのない食材ですが、欧米ではかなりポピュラーな存在。セロリのような茎には赤と緑の美しいコントラストがあり、そこにドラマティックな葉があわさったビジュアルは強烈な印象を残します。食用部分は茎のみで豊かな酸味があり、ジャムをはじめパイやクランブル、肉料理のソース、サラダなどに使われます。
香りにおけるユニークな点は、生の状態と加工した状態で、放つ印象がガラリと変わるところにあります。生のときは青々としたグリーンの香気に強い酸味が合わさっていますが、たとえば煮詰めてジャムなどにすると、酸味はまろやかになり、トロピカルな甘酸っぱさが生まれてきます。この多面的な香りのレンジは、ルバーブがフレグランスの世界において幅広く愛される理由のひとつといえるでしょう。
ルバーブの香りには「カリッとした」という表現がよく使われます。みずみずしくジューシーな茎をカリッと噛んだような、あるいはスパッと切ったような、酸味を伴うフレッシュな透明感。そこには開放的な季節の始まりを告げるポジティブな空気が感じられます。ですがそれだけではなく、トロピカルな側面から放たれるエキゾチックなニュアンスや、ジャムのような蜜の感触、さらには幼少の頃のおやつの時間を思い出させてくれるノスタルジーが含まれているのです。
クラシックなフローラルブーケにはモダンなひねりを。ミステリアスなムスキーノートにはポジティブな余韻を。濃密なグルマンノートには爽やかな清涼感を。あらゆる香調とぴったりマッチし、幸福をともなった意外性をさりげなく添えていくその手腕はルバーブならではのものです。