nairu yamamoto

移ろいやすい空模様のような女心を揺り動かす。⼭本奈⾐瑠が出合うエスメラルダ・サービスド・デパートメント

11月に入ってもなお秋のような気候が続く今日この頃。女心と秋の空とはいうけれど、移ろいやすい天気に振り回され、毎朝クローゼットと作戦会議。自分に似合うことはもちろん大前提としてあるけれど、トレンドにだって敏感でいたいし、新しい洋服やブランドを見つけた時の高揚感は何にも代え難い。

2022年に東京・富ヶ谷にオープンした Esmeralda Serviced Department (エスメラルダ・サービスド・デパートメント) では、そんな願いを叶える洋服に出合うことができる。独自の審美眼でセレクトされた気鋭ブランドやヴィンテージのアイテムたちは、決して派手ではないけれど、どうしても忘れられない魅力を秘めている。今回、モデルだけでなく、近年は俳優として目覚ましい活躍をみせている⼭本奈⾐瑠が、Esmeralda Serviced Department で見つけた最旬アイテムをまとって登場。今月公開となった主演映画『ココでのはなし』について話を聞きながら、写真家の河野幸⼈がレンズを向ける。

nairu yamamoto

model: nairu yamamoto
photography: yukihito kono
styling: coco kanayama
hair & make up: boyeon lee
edit & text: manaha hosoda & miu nakamura

肌触りの良さとシンプルでモダンなデザインが特徴の、フランスとデンマークを拠点に活動するサスティナブルブランド Baserange (ベースレンジ) の一着。ストレッチ性のあるシルクサテン素材が軽やかな印象を与える。ドレス/Baserange (ベースレンジ) ¥42,000、靴、ブーツ/スタイリスト私物、ピアス/モデル私物

2022年にパリで設立された、新進気鋭ブランド Bambou Roger Kwong (バンブー ロジャー クォン) のブルーのワンピース。身体にフィットしたデザインが洗練された佇まいを生む。 ドレス/Bambou Roger Kwong (バンブー ロジャー クォン) ¥91,200、靴、ブーツ/スタイリスト私物、ピアス/モデル私物

ウール素材を使用したバンブー ロジャー クォンのセットアップ。起毛感のある厚手の素材が新しい季節のムードを感じさせる。トップス/Bambou Roger Kwong (バンブー ロジャー クォン) ¥61,600、パンツ/Bambou Roger Kwong (バンブー ロジャー クォン) ¥124,300、靴、ブーツ/スタイリスト私物、ピアス/モデル私物

―『猫は逃げた』や『走れない人の走り方』、最近では『SUPER HAPPY FOEVER』など主演が続いていますが、今回の『ココでのはなし』はこれまでの作品との違いはありましたか?

私が映画のお仕事をさせていただくようになった大きなきっかけが、初めて主演を務めさせて頂いた映画『猫は逃げた』という作品でした。それは2022年に上映したものですが、その次に撮ったのがこの作品だったんです。『ココでのはなし』の現場は『猫は逃げた』に比べて同世代の監督や演者の方が多かったので、年が近い人たちが多いチームで一丸となって作りあげていく感じが新鮮でした。あとは最近色んな映画の現場に参加させていただける機会が増えたのですが、現場によって雰囲気が全然違くて。それぞれ監督の持つ空気が現場の全ての空気になるので、現場ごとにその監督の脳や体に入っている感じがして毎回面白いです。

―最初に脚本を読んだ時の主人公・詩子の印象を教えてください。

この映画に出てくる悩みは誰でも抱えているような、聞いたことあるようなことだと思います。でも自分の中では本当に大きな事件ってあるじゃないですか。もっと周りのこと考えて、社会のことや危機感を持って調べたり考えたりしたいけど、そんなことよりも今は自分のことで頭いっぱいみたいな。そういう状況に詩子はいたんだなと思いました。自分が暮らしていた街の外に行ける機会があったことで、やっとこういう人生も有りなんだと違う世界を知っていく詩子ですが、今自分が抱えていることやいかに自分を苦しめているかも気づいてない人だなと思いました。でも気づいた時にどうやって寄り添ってあげるかみたいなのは近づこうと思いましたね。なので、初めて読んだ時に、大変だなとか可哀想だなっていうふうに思うよりは、どうやったらこの人になれるかなと考えていました。

―詩子と奈⾐瑠さんが共通する点、逆に演じる上で難しかったことはありますか?

物事への傷つき方や自分がどうしていいか分からない状況が訪れることはよく理解できます。でも1番強く共感したのは、家族の大変さ。離れて暮らしていても家族とはずっと関わり続けていくものなので、それって面倒だけど重要だなと思いました。友達やパートナーのように、一度何かのアクションを起こして解決する関係性でもない。そういう関係性はあるよなと思ったし、その人たちにしかわからないはっきりしない辛さがあると思うので、こういう人いるなではなくて、きちんと自分が当事者であると思って演じるということを心掛けました。

―奈⾐瑠さんが編集長を務められている『EA Magazine』では、メディアを通して社会に対する疑問や違和感を積極的に発信されている姿が印象的です。今回は映画というメディアで主演を演じることも一種の物作りではないかと思いますが、映画に対してはどのように捉えていますか?

『EA Magazine』の時と変わらず、社会に対しては今も変わらず関心があるし、自分の生活も触れているものなので、そこを無視して生きて物作りするっていうのは私は無理だなと。やはり自分の体から外に出ていることは、SNS も含めて誰かの何かに影響してしまうと思うので、メディアが持つパワーは計り知れないと感じています。特に映画は世界を作ってしまうので良くも悪くも人をコントロールできる。なのでそこで間違った選択をして、誰かに辛い思いさせてしまうようなものに加担したくないとは思っています。そうは思っていても、結果的になってしまうこともあると思う。もし誰かに辛い思いをさせてしまった時は、その起こったことに対して自分がどのように接してあげるかがすごく大事だと思います。いかに周りのことを見ながら表現できるか。自分が思うままに表現していますが、そのパワーがどんなものかというのは自覚するようにしています。自分がこの女性性を持った人間としてこの仕事をする上で、自分が持つ言葉や行動がどんな意味があるのかは常に考えながら向き合っていきたいです。