Interview with Daito Manabe

PORTRAITS | Mar 3, 2016 8:56 PM
インターネット以前の時代からコンピューターやオーディオ機器に囲まれて育ち、数学と音楽のバックグラウンドを持つ真鍋大度 (まなべだいと)。代表作の電気刺激装置で国内外に大きな衝撃を与え、日本にメディアアートの存在を広めたと言っても過言ではない。あれから約10年が経った現在、日本を代表するアーティストとして第一線で活躍する彼の素顔に迫るべく、これまでの生い立ちから現在の考察までを語ってもらった。

インターネット以前の時代からコンピューターやオーディオ機器に囲まれて育ち、数学と音楽のバックグラウンドを持つ真鍋大度 (まなべだいと)。代表作の電気刺激装置で国内外に大きな衝撃を与え、日本にメディアアートの存在を広めたと言っても過言ではない。あれから約10年が経った現在、日本を代表するアーティストとして第一線で活躍する彼の素顔に迫るべく、これまでの生い立ちから現在の考察までを語ってもらった。

—まず、真鍋さんの原体験をお伺いしたいです。コンピュータとの出会いはいつ頃ですか?

やっぱりゲームがきっかけですね。小学校1年生の時に FROGGER (フロッガー) をプレイしたのが最初の記憶です。その後は、任天堂のゲーム & ウォッチなどでも遊んでいましたが、5 – 6年生になると、PC-8801 や MSX を使用して、自分でゲームを作るようになりました。1980年代は、世間的にもプログラミングが流行中。BASIC という言語が人気で、僕も専門誌を買って勉強していました。今思えば、親が特別な環境を与えてくれたから出来たことですね。

当時は、レーザーディスクを使用したゲームシステムや、ゲームブックにも影響を受けました。レーザーディスクは、DVD のように映像と音声が記録されている音楽ディスクなんですが、MSX と接続することで、ゲームのようにマルチストーリーに展開されるんです。マルチストーリーで起こる「条件分岐」は、プログラミングの一つの重要なキーワード、ファンクションで、現在僕がやっていることにも繋がっています。プログラミングを始める前に、分岐でストーリーを作ることに慣れ親しんでいたので、考え方自体は小学生の早い段階で習得していていました。

週末になると、祖父と一緒によく秋葉原へ遊びに行きました。祖父はヤマギワのオーディオ機器が目当て、僕はファミコンの本体が千円で買えるジャンケンイベントが目当て。通ううちに、そこにいた大人達とも仲良くなってコピーツールの使い方を教えてもらい、自然とパソコンの使い方を覚えていきました。ゲーム作りやゲームブック、当時の秋葉原が僕のルーツだと思います。

—真鍋さんは音楽一家のご出身と伺ったことがあります。

オーディオマニアでレコードコレクターの祖父、ミュージシャンの両親を持ち、物心がついた頃から、ターンテーブルでレコードを聴いたりレーザーディスクでミュージックビデオを観ていました。シンセサイザーや楽器、オーディオ機材に囲まれて、小学校の頃から音楽を制作する環境に慣れ親しんでいましたね。中学生の頃にレゲエのセレクターをしていた親戚に影響を受け7インチを集め始め、高校ではスクラッチDJにハマりました。1990年代は DJ ブームということもあり、高校生で DJ をしているのが重宝され、色々なイベントや大会に出ていたんです。ポケットには常にフェーダーが入っていて、電車の中でずっとカチャカチャしていましたね。

その後、数学が好きで大学に進学したのですが、入学してすぐにプロとしてお店につき、ほぼ毎日 DJ をする生活を送りました。広告イベントでDJしたり、1日3軒回すこともあったり、結構稼いでいたんです。実は、その稼ぎを超えるまでに、その後かなり時間がかかりましたね (笑)。父親はプロ思考なので、在学中にそこまで活動するのならば、大学を辞めてアメリカに行けとも言われたのですが、数学もDJもどっちつかずの状態で活動して、最終的には大学3年生の時に DJ 中心の生活からは足を洗い、大学の研究に戻ることを決意。規則正しい生活をしているうちに夜型の生活も改善され、改めて自分は数学が好きなんだなと感じたのですが研究の道は厳しく既に手遅れでしたね。

卒業後はプログラミングに関係する職に就きたいなと考え、ゲーム会社を受けたのですが、すべて落ちちゃいまして。そこで少なくとも、映像や音楽に関係しているところで働きたいと考え、会社を選びました。これまでの色々な偶然が重なって現在の活動に行き着いているので、仮にゲーム会社に勤めていたら今の自分はなかったと思います。就職した電機メーカーでは、人命に関わる防災システムを作る部署に配属され、大規模システムの設計と開発に携わりました。安定したシステムを作る仕事で、何度も何度もテストを行う毎日でしたね。僕は設計よりもプログラムを書きたかったので、1年で WEB ベンチャーに転職しました。2000年頃は、ちょうどインターネットバブルの時代。ベンチャーでは、 WEB で有料会員を集めるためのタイアップ企画や、テレビとの連動企画、オンラインゲームを手がけたほか、クラブの美女コンテストの投票コンテンツなども制作しました。現在のような広告モデルはまだなかった時代です。新しい開発環境や言語を使用した仕事に面白みを感じていたのですが、バブルの終焉とともに会社の経営が傾き、退職しました。この頃、既にライゾマ立ち上げ時の3人は一緒に仕事をしていました。

—「Mr. メディア芸術祭」の異名を持つ真鍋さんですが、メディアアートを制作するようになったのはいつ頃ですか?

以前の僕は、メディアアートが何なのか、作品の面白みも分かっていませんでしたが、ベンチャーを退職した頃に、岐阜にある IAMAS (国際情報科学芸術アカデミー) の存在を知りました。 IAMAS で教えていた赤松正行 (あかまつ・まさゆき) 先生や、 三輪眞弘 (みわ・まさひろ) 先生 の作品が好きで、二人の元で勉強したいと思って23歳の頃に入学を決めたんです。メディアアートは、問題の提起やコンセプトの部分がとても大切で、技術はツールやユーティリティでしかありません。 IAMAS では技術を学ぶというよりも、コンテキストを学んだり、コンセプトをしっかり作るベースの訓練を重ねました。現在の環境では実現不可能なアイデアが、未来の社会で実装された場合にどういう世界になるのか、どのような問題が生じるのかを予測してビジョンを作りプレゼンを行うのですが、僕は縮こまった脳みそで入学していたので、自分のアイデアをいかに実装不可能なところまで広げれるかということが大変で、ひたすら思考の訓練をして過ごした2年間でしたね。少人数生で自由な校風でしたので、先生との距離が近く、一緒にプロジェクトを進めている感じが強かったです。中には、生徒の僕が、周りに数学を教える授業もありしましたし。今、自分が教える世代になって感じることですが、メディアアートは、若い世代の方がプログラミング等の技術はもちろん、新しいものに対してのセンスが良いので、通常の先生と生徒の関係が成立しにくいのだと思います。

—真鍋さんにとってのメディアアートの面白みとは?

メディアアートの役割のひとつに、社会で実装される前に特別な環境で研究や実践を行い未来を予測する、というものがあります。時代によりその役割は異なりますが、例えば iPhone や Google 以前であれば Ingress の様な位置情報を使ったゲームや Google Street View、iPhone を傾けて遊ぶゲームもメディアアートの作品として発表されていたと思います。研究論文にもならず、ビジネスモデルを作るのも難しい様なプロダクトがメディアアートの作品として発表されるケースも多かった様に思います。時間が経ってインフラが整備されてたので、現在誰もが使えるものになったんです。では、現在のメディアアートの対象は何かと言うと、例えば、遺伝子工学や、ブロックチェーン、ディープラーニングではないでしょうか。まだ世の中に浸透していないので、まずはメディアアートで実験を行います。法的にもビジネス的にも整備されないと社会には実装されないので、その前に色々試せるのがメディアアートの良いところですね。まだ誰も体験したことがないことを一足早くやることにメディアアートの意義があります。

—顔に電流を流す作品、電気刺激装置「electric stimulus to face」 (2008年) は、国内外で凄い反響でしたね。

この作品のきっかけは、ビンゴで当たったスマイルシャッター付きのカメラ。笑顔検出機能に疑問を持ち、情動についての有名な James-Lange theory (ジェームズ=ランゲ説) 「楽しいから笑うのか、笑うから楽しいのか」というところに繋がりました。感情が先なのか、ジェスチャーが先なのか。仮に笑うから楽しいのであれば、自分の感情が他人にコピー出来るはずですよね。そもそも感情とは何なのかに興味を持ち、研究者の照岡正樹 (てるおか・まさき) さんに装置を制作してもらって実験を重ねました。

《copy my facial expression into my friends’ -test 0》映像

海外では「生み出したものがアート作品なのか、リサーチなのか」ということに対して、線引きが明確で、見解がシビアです。この作品に対しては「アート作品ではなく実験だ」という意見も多く頂きました。僕はこの実験を作品として発表するのが難しいなと感じていたので、その評価に対しては素直に受け止めましたが、一方で、リンツ (オーストリア) で開催されているメディアアートの祭典 Ars Electronica (アルス・エレクトロニカ) からは、映像をアート作品として展示したいという依頼を頂きました。ただの YouTube の面白動画として評価されていたものに対して作品価値を見い出してくれたんですよね。アルスエレクトロニカ・センターでの展示をきっかけに他の美術館にも呼ばれるようになり、アート作品としての評価がついてくるようになりましたね。

僕は解説抜きでアート作品として扱って良いのか分からない状態で発表することが多いのですが、作品について多くを語らないのは、受け手に予備知識や先入観がない状態で見てもらいたいという思いがあります。基本的には、人によって見解が全く違って良いと思っているんです。

—作品制作の問題提起について詳しく聞かせてください。

論文やテキストで未来を予見するのは研究者の仕事ですが、メディアアーティストはそこにちょっとしたユーモアを入れたり、人の感心を引く仕組みを作って問題提起を行います。

映像メディアに対してのアンチテーゼを行う場合、色々な方法があるといますが、《rate》 (2014年) では超高速に光るライトを作りました。僕らの身近にある映像は、基本的には30フレームや60フレームで、1秒間に100回以下で更新されています。それを100万フレームで超高速に点滅させた場合、人間の肉眼では真っ白に見えるのですが、カメラを通して見ると実は全く違う色なんです。人間の認識のいいかげんさを利用して色々なことが成立していますが、《rate》 はそれを考え直すきっかけを作る為に制作しました。通常は工業製品で計測しないと気がつかないのですが、この作品は iPhone のカメラのシャッターの仕組みを利用しているので誰でも観ることが出来ます。

《rate》 映像

人が動くことで映像が変化する様なインタラクティブな作品は時代によって流行や映像のトーンに違いがありますが、コンテンツが異なるだけで、体験が似通っているという問題があると思っていました。インタラクションがどれも似ているんです。では、それをインタラクションに注目をしてどう更新するかと考えた際に、蓄光シートとレーザーを使用した 《UV laser fade out test》 (2010年) を制作しました。蓄光塗料上の光が徐々に暗くなって行くことに着目し、撮影した画像の暗い部分から順番に照射することで、最終的にはグラデーションのある絵が描画されます。通常の映像の体験は人が動いたらすぐに映像が反応しますが、この作品では絵が完成するまでに1分程かかるため、体験者は完成するまでの絵をじっくり眺めることになります。

《UV laser fade out test》映像

—ミュージシャンやダンサーとの共同プロジェクトを行う場合に心がけていることはありますか?

エンターテインメントは映画の製作にも近いのですが、演出家、照明、映像、大道具などの役割が決まっていて、規模が大きい仕事をチームで進めることにやりがいを感じています。ミュージシャンやダンサーとのプロジェクトの場合、僕はアーティストではなくエンジニアとして参加しているので、まず心がけているのは相手への取材ですね。町医者のように、相手が本当にやりたいことを詳しく伺い、さらに、やりたいと思っていたけど気づいていないことを見つけて拾う作業は、彼らのクリエーション行程の深いところまで入り込めるのでとても面白いです。使い回しの作品制作や、パッケージ化して渡すことは行いません。それはとても簡単そうに見えますが、一番アーティストの寿命を縮めることなので、毎回一点もので制作しています。予算に関しては、あまり考えるとアイデアが縮まってしまうので、お金は後からついてくるものと信じ、良いものを作ることに集中しています。現実的に実現しやすいプランに簡単に落とし込んでしまうのは良くないな、と最近特に思いますね。

—個人のとんがった活動とコマーシャルワークの折り合いはどうつけていますか?

僕がソロプロジェクトとして行う研究は、他人にとって面白いものである必要はないと割り切って続けています。現在は、今後の金融や流通の仕組みを大きく変えるブロックチェーンの研究、ビットコインのような仮想通貨の研究をしていて、2016年の3月にパリ (フランス) とカールスルーエ (ドイツ) の展覧会で発表する予定です。

コマーシャルワークは、問題が先に設定され、それをどのように解決するかということが多いので、ソロプロジェクトのように問題提起型ではなく、問題解決型の仕事が多いです。広告で作品を展開することは、もちろん多くの人に知ってもらうきっかけにもなりますが、ほぼ売り切りだと捉えています。現在は特に消費のスピードが速いので、1年かけて作ったものでも1ヶ月後に忘れ去られることだって珍しくない。善し悪しというよりも、そういう環境になってしまったからそれに順応するしかないと考えています。

Rhizomatiks (ライゾマティクス) としては、2015年に設立した R&D、アート部門の「Rhizomatiks Research」として2016年2月にYCAM (山口) で展覧会を予定しています。1月はコミッションワークに集中し粛々と制作、2月に入ったら山口にこもって作品制作を行う感じですね。

—海外と比べて、日本はアイデアへのリスペクトが少ないと感じることがありますが。

残念ながら日本では、本物か偽物かが精査されないままに紹介されていくことが多いですよね。かたや借りてきたようなことをしている人がいて、かたや本当に力を入れて制作している人がいて、それを同列に扱うのは問題だと思っています。

作品を見る際には、 How (どのように作ったか) と Why (どうしてその考えに行き着いたか) という2つの着眼点がありますが、日本は職人文化の影響もある為か、 How に強い関心が集まります。どのようにその考えに行き着いたのか、 Thinker (考える人) で評価をされるのは難しい土壌ですね。そのような環境の日本で、メディアアーティストと名乗ることはなかなか難しいのですが、最終的には肩書きではなく、代表作が履歴書になるのを目標に続けていくしかないと思っています。

—真鍋さんが今気になる人を教えてください。

建築ベースのメディアアートを制作しているアーティスト、イスタンブールの Refik Anadol (レフィク・アナドル) が気になっています。彼とフェスで一緒になった時に作品を見せてもらったのがきっかけです。デザインやプログラミングの技術力はもちろん、Herbie Hancock (ハービー・ハンコック) をはじめとするミュージシャンとのコラボレーションにも注目しています。メディアアートの世界は2 – 3年に1人、スーパースターが生まれるんですが、次は彼が来そうですね。

Refik Anadol
URL: www.refikanadol.com

あとは、既にスーパースターですがオープンソースのソフトウェア開発環境「openFrameworks」の主要な開発者の一人でもあるアーティスト Kyle MacDonald (カイル・マクドナルド) にも注目しています。彼はとにかくフットワークが軽くて、新しい技術が出ると真っ先に作品を作ってしまうんですよね。彼はいまライゾマティクスリサーチに滞在して研究をしていますが刺激を受けまくりです。

Kyle MacDonald
URL: kylemcdonald.net

手前味噌ですが、ライゾマティクスの若い世代のエンジニアも頑張っています。登本悠介 (ともと・ゆうすけ) や花井裕也 (はない・ゆうや) は元々メーカーのエンジニアで技術力は凄く高いのですが、エンターテイメントの世界に興味を持ってライゾマに転職し、スキルをもって大暴れしていますよ。ライゾマ立ち上げ時のメンバーは4人だったんですが、今はバイトも含めると40人くらいの大所帯になりました。世代や仕組みが変わってきたなと感じていますね。

—オンオフの切り替えはありますか?

仕事が終わるのが深夜の1 – 2時なので、きちんとご飯が食べられて、店内禁煙で、お酒も美味しいところで息抜きしています。会社がある恵比寿はバーエリアなので、いくつか行きつけがありますね。

また、半年前くらいから趣味でダンスをしているんですが、振りや立ち位置を覚えた上で作品を見ると色々な発見があるんです。一昨年の紅白で演出のテクノロジーサポートをした Perfume の“Cling Cling”は踊れなかったんですが、去年の“Pick me up”は踊りを練習していたので以前より振付の重要ポイントを把握出来ていたと思います(笑)

今後は、映画の制作にも興味があります。スパイク・ジョーンズにやってみたらとアドバイスをされたことがきっかけなのですが、映画の経験はミュージックビデオやライブ映像にも生かされると思うので、映像作品に対する理解をより深める為にも映画製作をしてみたいですね。まずは自分の得意分野を使って映画の解析から始めています。何についても言えることですが、読み解こうと思ったら、自分で作ってやってみないと分からない。色々と挑戦していきたいです。

—最後に真鍋さんおススメのお店を教えて下さい。

バルコモド
住所: 東京都渋谷区恵比寿西1-14-6 萩原ビル第6 1F
URL: www.barucomodo.com

ターボー80
住所: 東京都渋谷区東2-14-15
URL: tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13056710/

こづち
住所: 東京都渋谷区恵比寿1-7-6 陸中ビルハイツ 1F
URL: tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13001589/

BUY ME STAND
住所: 東京都渋谷区東1-31-19 マンション並木橋302号室
URL: www.abcity-tokyo.com/buy-me-stand/

SON OF THE BAR
住所: 東京都渋谷区東1-31-19 マンション並木橋 303号/302号
URL: sonofthecheese.com

なかよし
住所: 東京都渋谷区恵比寿西1-8-2
URL: tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13080656/

ASYLUM COFFEE ROASTERS
住所: 東京都渋谷区東2-29-6 セントラル恵比寿ビル 1F
URL: asylumcoffeeroasters.com

<今後の活動予定>
■真鍋大度、石橋素による新作展示 (※タイトル未定)
会期: 2016年3月15日 – 2016年5月7日
会場: パリ日本文化会館 (パリ、フランス)
URL: www.mcjp.fr/ja

■新作展示 (※タイトル未定)
「GLOBALE: The new art experience in the digital age (デジタル時代における新しいアート経験)」
会期: 2016年6月19日 – 8月末
メイン会場: ZKM / Center for Art and Media (カールスルーエ、ドイツ)
URL: www.zkm.de

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