青と紫、意思が透けるまなざし。
The opposite is also beautiful
art direction & make up: tomohiro muramatsu
photography: yasutomo ebisu
styling: mayu takahashi
hair: yusuke morioka
model: yuki beniya
edit & text: miwa goroku
なぜ人はアイシャドウを塗るのか。「もともとは目を守ったり、呪術的な意味合いが強かったのだと思います。たとえばアイラインやマスカラが自分を延長する表現だとしたら、アイシャドウにはさらに自己を超越するための変身願望が含まれている気がします」とメイクアップアーティストの村松朋広さん。メイクで何かを変えたいと思った瞬間、色の選択肢はリップでもチークでもなく、アイシャドウで最も広がる。メイクアップの原点に迫る本連載、第2回は目元に映える色を求めて、寒色のアイシャドウにフォーカス。
青と紫、意思が透けるまなざし。
THE EYES
自分から遠い色
血色が透けるリップやチークは、そのトーンの延長にある暖色を重ねるのが最適解だが、一方のアイは特別。寒色からモノトーンまで、さまざまなスタイルで自由にアプライできるメイクパーツは、考えてみれば他にない。「特にブルーやパープルは、そもそも肌が持つ色味と離れているので、顔にコントラストがついて、まず見た目の印象がグッと映えます。肌色から遠く、自分が持っていない色だからこそ、変身がかなう。同時に強い意志を感じる色です」と村松さん。今回手がけたパープルのメイク (写真上) は強さを貫きながら、アイラインとアイシャドウのバランスを模索。「アイシャドウ単体だと、スペースの印象だけが広がって顔立ちが間延びしてしまうし、アイラインだけだとコントラストがつきすぎてしまう。アイラインとアイシャドウには相互関係があり、このバランスをコントロールすることで、楽しみ方は無限に広がります」。
OPEN MIND
青のパワー
もともとは目を守ったり、呪術的な意味合いが強かった、目に色を塗るという行為。「特にアイホール全体を使うのは、自分を強く見せることの象徴です。なんとなく良き塩梅の中で選択をするのではなく、自分はどうありたいか、どうなっていきたいか。その気持ちを受け止める、無限のポテンシャルがアイメイクにはあります」 と村松さん。中でもブルーは、冷静なクールトーンでありながら、気分を高揚させるエネルギーを持った色。バブル時代には多くの女性たちが、ブルーのパワーを目に宿らせた。今は技術進化とともに質感や発色の表現が広がって、チルアウト、ピュア、ロマンティック……甘さすら秘めた優しいニュアンスも誕生。星の数ほどあるシェードの中で、ブルーは日々の揺らぐ感情にもしなやかに寄り添うパワーカラーとして浮かび上がる。