「Co-Ed (コー・エド)」 という概念が導く未来 vol.1 Wet
maison margiela
Spring Summer 2021 'co-ed' collection
photography: tomoyuki kawakami
styling: riku oshima
hair & make up: taro yoshida
model: ali tillman, matthew, muhanad
text: miwa goroku
edit: manaha hosoda
「Co-Ed (コー・エド)」 は、Maison Margiela (メゾン マルジェラ) のクリエイションの頂点に位置する 「Artisanal (アーティザナル)」 と称するオートクチュールにおいて、クリエイティブ・ディレクターの John Galliano (ジョン・ガリアーノ) が提起するアイデアや技術がプレタポルテとして具現化された男女共通のライン。メゾン独自のナンバリング・システムに加わりながらもナンバーを持たず、真っ白なラベルで区分されている。
ジェンダーレスをコンセプトに掲げるが、たとえばシェアやミニマルといったワードにも置き換えられる近年のユニセックスウエアのムードとは根本から何かが違う。つながり、コミュニティ、協調すること…… 二項を対立させることなく 「Co-Ed」 がスポットを当てるのは、透明性や包含性だ。タフな時代を生きる私たちが今、持つべきものはなんだろう。「Co-Ed」 はそのアーティスティックなクリエイションのプロセスを明らかにすることで未来へと続く答えを示し、検証する。(第1回/全4回)
「Co-Ed (コー・エド)」 という概念が導く未来 vol.1 Wet
切り裂かれたフォーマルジャケットやコートの断面から素材のレイヤーがあらわになり、奥からフリルが踊るように飛び出す。仮縫いされたままの糸が生むリズム、垂らしたペイントが残す濡れたようなエフェクト…… 激しくもフレッシュなディテールを持つ2021年春夏の 「Co-Ed」 コレクションは、アルゼンチンのタンゴのカルチャーにインスピレーションを受けてつくられた。
Maison Margiela は、2020年秋冬 「アーティザナル」 コレクションにおいて多くのブランドがそうしたようにデジタルでの発表を選択。「S.W.A.L.K.(=Sealed With A Loving Kiss)」と題された、52分にも及ぶドキュメンタリー形式のフィルムは、 Zoom を介したクリエイターたちのディスカッションにはじまり、アトリエの制作風景にも潜入するものだった。続く今シーズン 2021年春夏 「Co-Ed」 コレクションの 「S.W.A.L.K. II」(44分) ではさらに、メゾンのクリエイションの頂点に位置する 「アーティザナル」 のテクニックがプレタポルテでどのように製品化されているのか、そのプロセスとストーリーが実証されていく ── クリエイティブ・ディレクターの John Galliano (ジョン・ガリアーノ) がアルゼンチンで出会ったタンゴのストーリーを、「Co-Ed」 の服を着た男女で再現ドキュメントしたドラマティックな映像とともに。それは、隔離された生活を余儀なくされた時代の中で渇望される人との繋がりを、ダンスの接続性と強調を通して表現したものだ。
本フィルムではまた、メゾンのラベルに付けられたナンバリング・システムと数字が持つ意味についてもJohn Galliano 自らが改めて触れている。いわく、すべての服やアクセサリーのテクニックの基盤となるのはライン’0′ で示される 「アーティザナル」 コレクションで、うち男女共通の 「Co-Ed」 は真っ白なラベルで区分され、それらはジェンダーレスでタイムレスなワードローブを意味するライン’4′ とライン’14’ へと繋がっていく。不変のエコシステム中で進化し続ける Maison Margiela の哲学の真髄が、ここに循環する。