suzu hirose

広瀬すず、強く穏やかな瞳の奥にみえたもの

suzu hirose

model: suzu hirose
photography: ryutaro izaki
stylist: shohei kashima
hair & make up: Rie Shiraishi
interview & text: rei sakai
edit: Manaha Hosoda, Miu Nakamura

彼女は日常の中でなにを見て、感じ、考えている人なのだろうか。広瀬すずの佇まいには、媚びや見栄、第三者の目を気にしたそれは一切なく、演じた役柄の感情や、それに呼応する自分自身の感情について赤裸々に話し始める。映画『水は海に向かって流れる』で初共演となった大西利空に対しては、「こうなりたかった」と笑いながら話し、ときに臆病な目を覗かせ、弱冠25歳の葛藤がうかがえる。いつの日か感情の出し方を忘れてしまった人へ、広瀬が本作に込めた想いとは。

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広瀬すず、強く穏やかな瞳の奥にみえたもの

—本作で広瀬さんは、過去に起きたとある出来事をきっかけに、恋愛をしないと誓う主人公・榊さんを演じられています。シェアハウスに突然現れた直達くんのはたらきかけによって、彼女の心境に少しずつ変化が見られるようになりますが、そのきっかけを一つ挙げるとしたら何だと思いますか。

怒りを共有できたことだと思います。私だけ怒っていると思っていたものに、一緒に怒ってくれる人がいる。喜ぶこととか、嬉しいことはすぐ人と共有できるし、自分のことのように相手が喜んでくれたりもしますが、怒りの共有ってすごく難しいと思うんです。役者のお仕事をしていても、私自身が頑張って評価されたものに対して一緒に喜んでくれる人はいますが、理解できないと思ったことを話しても、それを共感してもらったことはありません。榊さんと直達くんは、怒りを共有できたことで、それぞれ抱えていた感情が分散されて楽になったのだろうなと思います。

—榊さんは感情を溜め込むタイプですが、ご自身はいかがですか?

似てる部分はあると思います。ただ、私の場合は我慢しているわけではなくて、言わなくていいやって。平和に物事が収まってほしいので、伝えてややこしくなりそうなら言いません。榊さんの気持ちはわかる一方で、最近は感情をオープンに出せるようにもなってきました。昔は自分の話を一切人にしないタイプで、何か聞かれることとか、興味をもたれることもあまり好きではありませんでした。でも年齢とともに甘えられるようになって、甘えたら楽だということに少しずつ気づき始めています。

—いいことですね。榊さんも、拠りどころが欲しいからこそシェアハウスをしているのかもしれませんね。

擬似家族に近いですよね。榊さんは、本当に何事もなく普通に暮らしたい人なんです。普通に暮らせなかった人だから。家族が好きで、人が好きで、そこからもらえるものってすごく大きいじゃないですか。だからこそ、それがすべてなくなった時、すごく寂しいんだろうなって。ちょっとした直達くんの一言とか、お父さんの一言に傷ついちゃうからこそ、外への感情が強くなるんだろうなと思います。不機嫌で強そうに見えるけど、実はものすごく繊細。そういう一面は親近感があって、演じるのが面白そう、表現してみたいと思いました。

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—直達くんとの会話の中で、榊さんが「見つけてくれてありがとう」と言うシーンがあります。ここでの表情や声色に、複数の感情が込められているように感じ一番印象的なセリフでした。この言葉に対して、どのように向き合い、表現しようと思ったのでしょうか。

すごく難しいセリフでした。主語がないのできっと意味があるんだろうと思っていたのですが、ここではおそらく、直達くんにしか共有できなかった感情を見つけてくれて、感じ取ってくれてありがとうということなのかなって。あの時、一緒に馬鹿になれたこともすごく楽だったし、でもそれは誰でもよかったわけではなくて、直達くんだからこそできたこと。お芝居で出した言葉というより、自然現象のように違和感なく口から出てきましたね。

—感情に蓋をしないために、しかし感情に振り回されないために、ご自身の中で意識していることはありますか?

自分の話をするときは、笑ってもらえるように、ネタとして話すようにしています。一番楽じゃないですか、笑ってもらえるのって。人を悪い気分にさせるつもりは一ミリもないので。嫌な気分になること以外は、オープンに話すように心がけています。