次世代のニュー・ウェイブ。迸るエナジー The Lounge Society
the lounge society
model: Cameron Davey, Archie Dewis, Herbie May & Hani Paskin-Hussain
photography: syuya aoki
styling: riku oshima
text & edit: Manaha Hosoda & honami wachi
8月の厳しい日差しにじりじりと焦げつく渋谷・某所。日本に比べればずっと涼しいロンドンからのフライトを終えたばかりだというのに、暑さをものともしない輝かしい若さにあふれる彼らは、アートロックバンドの The Lounge Society (ザ・ラウンジ・ソサイエティ)。
もともとは同じ高校に通う同級生で、Black Midi (ブラック・ミディ) や Wet Leg (ウェット・レッグ) らを仕掛けた敏腕プロデューサー Dan Carey (ダン・キャリー) に一通のメールを送ったのは、まだ10代の頃だった。
デビューシングル「Generation Game」(2020) に続き、2022年にリリースされた1stアルバム『Tired Of Liberty』は音楽ファンの間に瞬く間にひろまり、イギリス国内のヘッドライン公演はソールドアウト。満を持して挑んだ初来日は、代官山 SPACE ODD の単独公演と、サマーソニック・フェスティバルへの出演だ。ギター2本のスリリングなアンサンブルを軸にしたパンクなファンク・サウンドで、会場を地響きと熱気に包んだ彼らのルーツに迫る。
次世代のニュー・ウェイブ。迸るエナジー The Lounge Society
—初来日、日本の印象はいかがですか?
Cameron Davey (以下 C):今朝到着したばかりですが、今のところ最高です。
Herbie May (以下 Herbie):日本はイギリスと比べて9時間も時差があるから、到着した時は僕の中では真夜中でした。本来、僕たちは寝ているべき時間だけど、全く疲れを感じませんね。
C:とても快適です。まだ日本のすべてを観て周れていないけど、みんな僕たちをとても暖かく歓迎してくれました。
Herbie:全く睡眠が取れていないことを忘れるくらいに元気です。
−今夜(8月18日(金)に代官山 SPACE ODDにて行われた単独ライブ)の意気込みは?
C:準備万端です。
Herbie:とても楽しみです。実は機材の一部がロストバゲージしてしまって、まだドイツにあるみたい。トラブルもありますが、主催者の方々が機材を貸してくれて、とても親切にしてくださいました。それでも少しDIYもしないといけないから新鮮な経験ばかりでライブが待ち遠しいです。
Archie Dewis(以下A):空港から出て来た際、みんな僕たちに声を掛けてくれたのも、すごく嬉しくて感慨深かったです。
Herbie:日本で演奏できるのがとてもありがたく、大きな特権だと思っています。まるで夢のようです。
−4人の出会いや、バンドを組んだきっかけは?
Herbie:何歳の頃だったっけ?たしか14、15歳で、高校生の頃に同じ音楽の授業をとっていて、僕たち4人だけが唯一似た音楽のテイストを共有していたんです。それで自然と仲良くなりました。
C:みんな違うクラスだったけど、なんとなくお互いのことは知っていました。でも、音楽を通して本当に繋がりました。それだけが僕らの共通点だったので。
Herbie:音楽で繋がりができて、同時に友達にもなれた。今もまだ、高校生だった当時と同じノリでいます。今では世界の反対側にいるけど(笑)。
−4人の故郷、Hebden Bridge (ヘブデン・ブリッジ) はどのようなところですか?
A:僕たちの始まりです。Hebden Bridge にTodmoden (トッドモーデン) という街もあって、僕が今着ているTシャツは「Todmoron」(トッドモーロン ※モーロン=「アホ」という意味) と書いており Todmodenを文字っています。Golden Lion (ゴールデン ライオン)という僕らの大好きな箱があり、最初の頃はそこやTrades Club (トレードズ クラブ) でよく演奏していました。完全な田舎町で、何もないところなのですが、たくさんのロックアンドロールやクリエイティブなことが行われている特別な場所です。
Herbie:寒いし、ずっと雨が降っているような場所だけどね (笑)。ふたつの街は特徴的で、それぞれがユニークで、他のイギリスの地域とは全く違います。DIY の精神を強く持っていて、僕たちはそれを守るためなら何でもするし、その一部でありたいとも思っています。他も素晴らしいバンドも輩出していて、アーティストを本業として活動できている人もたくさんいる。クリエイティブな人たちにとって希望溢れる場所であることは間違いありません。
−プロデューサーDan Carey (ダン・キャリー) との出会いについて教えてください。
Herbie:一通のメールから始まりました。当時、マンチェスターにあるAirtight Studios (エアタイト スタジオズ) で、僕たちのシングル「Generation Game (ジェネレーション・ゲーム)」のデモを家からそこまで離れていない場所で収録していました。Speedy Wunderground (スピーディー・ワンダーグラウンド ※Dan Careyが手がけるレーベル) については、PVA (ピー・ヴィー・エー)とか所属しているバンドが好きで聴いていたので、知っていました。それでデモ曲を添付したメールを気軽に送ってみたら、偶然に偶然が重なり、Danのマネージャーの目に留まり、さらにDanの手まで届いた。
A:後から聞いたけど、Danは曲を1度聴いただけで気に入ってくれたらしい。
Herbie:彼は普段どのバンドでも、最初に会ってから契約を結ぶらしいけど、今回はとても珍しいことに僕らに賭けてくれたみたい。僕たちは国の反対側に住んでいて、当時は16歳くらいで、他のバンドよりもずっと年齢も若かったのに。けど一度パブで実際に会って話したら、そこからはとても自然な流れでしたね。僕たちの成長も見守ってくれていて、強い繋がりを感じます。彼自身のプロジェクトも、これまでの期間で成長したと思います。彼も多くの作品を制作していますし、お互いにアイデアを借りあっているように感じます。
−皆さんのファッションの個性や好みについて教えてください。
C:先ほどスタイリストの方とも話していたのですが、「かっこいいもの」は「かっこいい」と思っています。ファッションを色眼鏡で見たことはありません。けどこれはアートにも、音楽にも適用されることですが、ただ気になった物に注目しているだけです。
A:音楽を作るときに他のアーティストからアイデアを借り自分たちの解釈を加えるように、ファションでも、1960、1970年代の The Rolling Stones (ローリング・ストーンズ) のファッションを見て参考にすることもあります。
Herbie:バンドからよく影響を受けますね。けど最近、音楽ストリーミングサービスや、全盛期と比べてロックンロール人気の世界的な低下の影響か、ファッションと音楽の関連性が薄まってきたような気がします。また徐々に戻り始めているようにも感じますが、昔は、人の見た目からのみで「あの人はパンクだ」など簡単に特定ができました。しかし、その特徴が薄まってきて、現代ではこれは不可能。みんなに型にハマってほしい訳ではないけれど、当時は「音楽」がその人の服装に影響を与えていました。今ではみんな着たい物を着て、聴きたい物を聴くようになったけど、そのふたつが結びついたらとても素敵だと思います。
A:そのふたつが合わさると、人々はみんな繋がる。
Herbie:ファッションと音楽の考え方だけで繋がることができるのに、共通のユニフォームのような物があったら、さらに一丸となるよね。
−今後の創作活動でしたいこと。今後の目標は?
C:これからのショーについてなど、色々考えていますね。新曲を考えたりも。
A:新しく作曲もしたいですが、できるだけ旅もしてみたいですね。世界中に僕らの新曲を聴かせて周ったり。
Hani Paskin-Hussain(以下Hani):日本にもできるだけ早く帰って来たいですし、他のアジアの国やオーストラリアなどにも行ってみたいです。どこでも行きたい (笑)。
C:南アメリカとかも行けたら最高ですね。
Hani:けど、今の僕たちにとって一番優先すべきことは、新しい音楽に触れることだと思っています。今週末のSUMMER SONIC 2023 でもたくさんの音楽を吸収したいと思っています。
Herbie:僕たちの音楽が日本ではどう受け止められるのかも気になりなります。学ぶことに興味があるので。
Hani:そうだね。日本はどういう感じなんでしょうね。フェスで色々な人と会うのもとても楽しみです。特に Blur (ブラー) や Kendrick Lamar (ケンドリック・ラマー) に会ってみたい!