内田紅甘が纏うファッション、綴る言葉。「ネグリジェ姫」〈前編〉
俳優やエッセイストとして自身を表現する内田紅甘。その佇まいや眼差し、そして選ぶ言葉には、ひと言では言い表すことのできない魅力が滲む。普段のやわらかな物腰、纏っているやさしい空気は、カメラの前で一変。凛とした表情に、思わず釘づけになる。
少女のように透き通った瞳に、世界はどのように映っているのか。彼女を取り巻く「内」と「外」の世界を舞台にした2部構成で、写真家の鈴木親が撮り下ろしたファッションストーリー。内田紅甘自身が綴った、ショートエッセイとともにお届けする。
guama
model: guama uchida
photography: chikashi suzuki
styling: sumire hayakawa
hair: tsubasa
makeup: kie kiyohara
edit: daisuke yokota & yuki namba
text: guama uchida
初めてネグリジェというものを知ったとき、おどろいた。小学生の頃、読んでいた漫画の中のヒロインが眠るときにドレスのようなものを着ていて、そのときはなんだろうと思って終わったのだが、あとでそれがネグリジェと呼ばれるものだと知ると、急にあこがれた。
そして、今まで着ていた上下別々のパジャマをほっぽりだし、ワンピース型のパジャマで眠るようになった。ついでにナイトキャップなんかも被ったりして、お姫さまになった気分で寝床についていたけれど、しかし寝ている間に魔法は解けて、朝になると服ははだけてパンツ丸出し、ナイトキャップも脱げてどこかへいっており、早く起きなさいという母の怒号が寝ぼけた頭にきんと響く。
朝だけでなく、夜寝るときも裾がまくれないようにふとんにもぐるのは手間だったし、正直寝づらいと思っていたけれど、それでも私はどうしてもその姿で寝たかった。眠るためにワンピースに着替えるのが、ひとつの楽しみになっていた。